登録日:2025/07/29 Tue 19:55:11
更新日:2025/07/30 Wed 21:30:05NEW!
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概要
豊和工業は愛知県清須市の機械工業メーカー。
工作機械(マシニングセンター等)、油圧シリンダー、特殊車両(路面清掃車)、防音サッシ、そして官民双方向けの銃器製造を行っている。
本項目では主に銃器に関しての詳細を記述する。
沿革
1907年豊田式織機株式会社を設立。
初代常務取締役(1907~10)は豊田佐吉氏。その後豊田氏が12年に設立したのが今のトヨタグループの源流である豊田自働織布工場である。
1936年設立の昭和重工業と1941年に合併して豊和重工業株式会社になる。そして戦後豊和工業株式会社に改称し今に至る。
銃器産業への参入
1936年より手りゅう弾の弾体製造から兵器製造を開始し、九九式短小銃の製造(名古屋造兵廠製の一部)から銃器製作に参入。
52年より保安隊/陸上自衛隊への手りゅう弾、迫撃砲(ライセンス生産)の納入を開始すると同時に国産小銃の研究を開始する。
M1カービンの国内製造も担当し、60年には民間向け改修型であるM300を生産開始(~90年代)。
そして64年に64式小銃が制式採用され、自衛隊に配備された。
67年にはゴールデンベア、1979年にはM1500の販売を開始している。
その後も手りゅう弾や迫撃砲、自動てき弾銃の納入も継続しつつ89年に89式小銃/2020年に20式小銃を製造し、自衛隊と警察、民間(狩猟向け)の供給を継続している。
主な銃器
M300
M1カービンの自国生産を行っていた際のノウハウを生かし狩猟向けに改修したモデル。
1965年にはタイ警察庁に1万丁が納入され使用された。
M1カービンの部品を流用してしまう事例が多数発生し、日本での規制が強まってしまった。
96年ごろに生産終了。
AR-180
70~74年の間製造されていたアーマライト AR-18の民間向けライセンス生産品。AR-180のライセンス生産は英スターリング・アーマメントでも行われていた。
米黒人解放軍(BLA)やアイルランドのPLAにて使用された形跡があったとする点により通商産業省からの要請で生産停止。
しかしAR-18が多くの5.56x45mm弾使用突撃銃の技術的な見本とされたように、本銃も日本での突撃銃の研究に役立てられたとされる。
フジ スーパーオート/パーフェクトスキート
傘下となったフジ精器製作所との合作となるショートストロークガスピストン式セミオートショットガン。S&W M1000/モスバーグ M1000として海外でも流通した。
軽量さと自動作動の確実性が売りだったが装弾数の増減に弱いことやクレー射撃方面での需要低迷に伴い、90年代にフジ精器の整理解散に伴いブランドごと消滅した。
ゴールデンベア
戦後初の大口径ボルトアクションライフル。サコーのフィンベアを参考にしているとされる。
ウェザビー・バンガードとして海外でも流通した。
警察でもハイジャック対策などの面で採用され、瀬戸内シージャック事件(1970年)では本銃で犯人を狙撃して制圧している。
M1500に移行し現在では生産終了。
M1500
ゴールデンベアのフルチェンジモデル。ウェザビー・マークVを参考にしているとされる。
多数の銃弾に対応しており、7.62x51mm弾以下対応のショートアクション、それ以上に対応するロングアクション、7.62x39mm弾に対応するミニアクションモデルが存在。
2011年以降はHACT(Howa Actuator Controlled Trigger)システムが採用されている。
派生型として.22LR弾近辺に対応するM1100リムファイアがある。
海外ではウェザビー・バンガードなどとしてOEM供給されている。HCR(Howa Chassis Rifle)などの現代的なものも存在。
警察でも特殊銃I型として採用している。
64式7.62mm小銃
64年~89年頃まで生産されていた7.62x51mmNATO弾互換の
突撃銃。フルオート射撃を意識しており防御用軽機関銃といった側面が強い。
性能
全長:990mm
銃身長:450mm
乾燥重量:4300g
使用弾:7.62mmNATO弾(25%減装弾で機構に合わせて雷管が鈍くなるよう調整されている)
発射速度:500発/分
作動方式:ショートストロークガスピストン ティルトボルト閉鎖 ガスレギュレーター付
歴史
55~57年頃より九九式短小銃や四式自動小銃の開発メンバーによって開発プロジェクトが立ち上がった。米M1ガーランド、M1カービン、M14、BARはもちろんのこと、ソ連のSKSやZB26軽機、セトメライフルを参考になされた。
まず、セトメを参考にしたR1と戦中の試製自動小銃甲(ピターゼン自動小銃をモデルとした没案)に近いR2が制作。
7.62mmNATO弾の入手に手間取ったもののR1の研究は順調。R2のトリガーメカ取り入れや銃身の厚みなどを改善し59年にR3が完成した。しかし一月後の展示射撃でレシーバーが破損して動作不能となってしまい、さらなる改良を経てR5(R4はない)、R6Aへと発展した。
R3での早すぎる連射速度を抑えるために撃針の動作タイミングを遅らせるような機構とSKSやZB26軽機に近いレシーバーへの改良が加えれれている。
R6A、B-1~3、C(官I型)、D(官II型)と経て改修された後、撃針の機構を簡素化したR6K(簡素化改修を行った岩下賢蔵のKから)→R6E(官II型改)が完成。R3の頃からでていたM14の採用案を展示射撃にて一蹴した。
重量を抑えて微改修を行ったR6E改(官III型)のうち2型が64式小銃として採用された。
構造
動作機構は70年代以前の標準的な突撃銃(FN FALなど)としての構造を有している。ストライカー式に近い撃鉄を備えており、引き金を引いてから発射までのラグが大きい代わりに連射速度を落としている。消炎制退器、直銃床のデザイン、同時に採用された減装弾とあわせてフルオート射撃の集弾性を向上させている。
銃身は内部のクロムメッキと厚みのある薬室により耐久性が高く、寿命が37000発以上とレシーバーよりも倍近く長い。
龍頭のように動かすセレクター、分解に工具が必要、組み間違えても組み上げが可能となってしまう部品がある(ピストン稈止)、自衛隊の体質が主因である部品脱落の多さ などの弱点はあれど7.62x51mm突撃銃として堅実な出来といえる。
運用
23万丁が生産され、陸海空の自衛隊と海上保安庁、SAP(SATの前身)にて配備された。後継の89式が少数ずつの置き換えとなっていたことから2000年代までは主力を張っていたが陸自では退役済。防衛向きで遠距離射撃にも対応可能な点から現在でも海空で基地防衛用として用いられている。
余談
- スイスのSIG SG510とは運用など似通った面があるが、開発次期などの面であまり参考にはされていない。
- R1、R2はアーマライトAR-10に、R3はM14に近い外見となっており、諸外国からの守破離を感じられる。
- M14との弾倉の互換性はない。
- 銃器紹介などで有名なForgotten Weaponsでは89式とともに分解写真が掲載されている。ラリーヴィッカース氏らが2007年にインストラクターとして来日した際に撮影したといわれる。
89式5.56mm小銃
20式5.56mm小銃
2020年より生産されている5.56mmNATO弾を使用する突撃銃。
性能
全長:851mm
銃身長:330mm
乾燥重量:3500g
使用弾:5.56mmNATO弾(89式5.56mm普通弾/J3高威力弾)
発射速度:650~850発/分
作動方式:ガスピストン ターンロックボルト ガスレギュレーター付
歴史
2014年頃から開発が開始され、H&K G36、HK416、ステアーAUG、FN SCARらを参考にしつつ試作小銃を作成。
2015年には防衛省による試験のため上記小銃5丁ずつと試作小銃1丁が調達された。同時に豊和により意匠も登録されている。
2018年にはほぼ開発が完了したと思われ、「HOWA 5.56」と名付けられた。防衛省による競合のためHK416、FN SCAR-L各8丁ずつを調達。
性能面での第一評価は3種とも合格し、兵站とコスト面での第二評価でHOWA 5.56が合格し20式小銃として制式採用された。
量産単価は28万円。高性能化が進んだこと、欧州各国がHK416を全軍採用していたりすることを鑑みれば高くはないといえる。
構造
現状ピストンの構造は明らかになっていないが、ショートストロークガスピストンであるという説が一般的。
ステンレス、アルミ、樹脂を使用。防蝕コーティングにより耐腐食性と軽量化を両立している。
現在の諸外国の動向やドクトリンの変化に対応した以下の点が特徴。
- M4カービンよりも短い330mm(13インチ)銃身。ゆるくテーパーがかかっており発射圧を高めるようになっている。J3弾は米軍のM855A1やMk318SOST弾に近いものと思われ、ボディアーマーへの性能が向上している。
- スイッチングや左利きを意識した左右対称のストックに左右入れ替え可能なコッキングハンドル、アンビで角度を狭めたセレクターと同じくアンビのボルトキャッチとマグキャッチ、薬莢を前に飛ばすケースデフレクターを搭載。
- 上面以外のはM-LOKに対応しておりカスタマイズに対応。上面はフルフラットで、アイアンサイトもマグプルMUBSに近い取り外し可能な折りたたみ式。
- B&T社製グリップポッド((フォアグリップと2脚を合体させたもの))、ベレッタGLX160アンダーバレルグレネードランチャー、マグプルPMAGなど海外製の信頼性のある周辺機器を取り入れており互換性と低コスト化を実現(COTS/商用オフザシェルフ)。
- 伸縮とチークピース調整ができるストック。もとから十分に短いことやFN SCARでの折りたたみ部破損事例を鑑みてか折りたたみ機構は搭載されていない。
- 89式当時に存在した3点バースト機構がトレンドとして薄れたことから廃止され、64式以来のア・タ・レの順のセレクターとなった(89式はア・レ・3・タ)。
形状からFN SCARやCz805ブレン、H&K HK433、SIG SG516/MCX、ARX-160などとの類似点を指摘されることが多いが、冷戦終結後は各国似た形状の兵器を開発配備することが多く、本銃もそれに準じたと推測される。
運用
2020年から配備と89式からの更新が進んでおり、水陸起動団や教導隊での配備が確認されている。海空でも64式から直接更新されるとされる。
89式同様3000丁ずつ分割で納入されるものと思われたが、軍事予算が向上されたことにより1万丁/年ほどのペースに向上している。
2024年末より光学機器について正規の付属品を定められた形で装着するように規定されており、AimpointのComp M5やディオン光学技研のMarchショートスコープが配備されている。
余談
- FN SCARと同じくレシーバー上部にレシプロのコッキングハンドルが突き出ている。SCARでは左手でマグウェルを保持して親指を立てるスタイルを取って射撃し負傷する事例があり、本銃でもその可能性がある。教育により防止していると思われるが、将来的には手動操作時のみ連動するなどの改修がなされる可能性も否定できない。
- 豊和工業のHPでは20式の改良に取り組む女性社員のインタビューが掲載されている。64式や89式の時代とはまた違った柔軟な企業姿勢が感じられる。
製品のフィクションでの活躍
64式7.62mm小銃
異世界へのゲートが開いた先での自衛隊の活動を描くライトノベル。特地向けとして使用されている。
松本零士氏による漫画シリーズ。砂漠での7.62x51mm弾の有用性としての64式小銃のエピソードが存在。
89式5.56mm小銃
20式5.56mm小銃
遊戯銃としては商標の点などのせいか未だ商品化はされていない。SCARなどからスクラッチビルドするしかない状況が続いている。
チャプター1にて自衛隊員が装備。
追記・修正よろしくお願いします
- 陸自崩れの友人が64式をボロクソにこき下ろしていたな。部品点数の多さや脱落多発には相当ムカついていたらしい -- 名無しさん (2025-07-29 22:50:02)
- 「アニヲタ的に関心のある火器事業を紹介するけどあくまで数ある事業の一部である」ということはもう少し強調して書いてもいいかも -- 名無しさん (2025-07-30 21:30:05)
最終更新:2025年07月30日 21:30