12:50
御坂美琴は自販機の前にいた。
その姿はいつもの制服姿である。
私服にしようかと散々迷ったのだが、私服を見てもしセンスが悪いなどと言われたら立ち直ることができなくなりそうだったのでやめておいた。
上条がそんなこと言わないことはわかっていたが、言わないだけで思われる可能性もあったからだ。
その姿はいつもの制服姿である。
私服にしようかと散々迷ったのだが、私服を見てもしセンスが悪いなどと言われたら立ち直ることができなくなりそうだったのでやめておいた。
上条がそんなこと言わないことはわかっていたが、言わないだけで思われる可能性もあったからだ。
(や、やっぱり初春さん達に相談しておくべきだったかな………)
美琴は服装の事に関しては相談していなかった。
いや、実際には初春達は聞いてきたのだが、それを断ったのだった。
ちなみに何故自販機の前なのかというと、(記憶喪失後の)上条が美琴に初めて会った場所だからである。
いや、実際には初春達は聞いてきたのだが、それを断ったのだった。
ちなみに何故自販機の前なのかというと、(記憶喪失後の)上条が美琴に初めて会った場所だからである。
(遊園地に行くのはいいんだけど、どうしよう……?)
実をいうと無計画だった。
素直になる努力をしていたせいで、計画なんてたてていなかった。
それに、その努力も完全か?と聞かれたらいいえと答えるしかない。
とにかく、全てが行き当たりばったりなのだった。
美琴がどうしようかと悩んでいると、ツンツン頭の少年が学ランでやってきているのが見えた。
上条の場合は、不幸なことに私服がなかったからである。
上条は美琴の姿を見つけると手を軽くあげながら小走りで近づきながら言う。
素直になる努力をしていたせいで、計画なんてたてていなかった。
それに、その努力も完全か?と聞かれたらいいえと答えるしかない。
とにかく、全てが行き当たりばったりなのだった。
美琴がどうしようかと悩んでいると、ツンツン頭の少年が学ランでやってきているのが見えた。
上条の場合は、不幸なことに私服がなかったからである。
上条は美琴の姿を見つけると手を軽くあげながら小走りで近づきながら言う。
「あ、御坂。もしかして待たせたか?」
「う、ううん。全然待ってない」
「う、ううん。全然待ってない」
以外と努力は成功しているのかも知れない。
罵声を浴びせるわけでもなく言えている。
むしろその言葉を聞いた上条の動きが止まるぐらいだった。
少しして自分を取り戻した上条は恐る恐る尋ねる。
罵声を浴びせるわけでもなく言えている。
むしろその言葉を聞いた上条の動きが止まるぐらいだった。
少しして自分を取り戻した上条は恐る恐る尋ねる。
「ぇ、ええと、御坂さん?」
「ん、何?」
「あまりにもいつもと違いすぎて何か罠があるんじゃないかと思ったんですが、いかがでございませう?」
「そんなのないわよ」
「そ、そうですか」
「ん、何?」
「あまりにもいつもと違いすぎて何か罠があるんじゃないかと思ったんですが、いかがでございませう?」
「そんなのないわよ」
「そ、そうですか」
実を言うと上条は最初のあの反応でドキリともしてしまったのだが、上手く隠せたらしい。
美琴は少し緊張しながら本題を出す。
美琴は少し緊張しながら本題を出す。
「えっと、今日なんで呼んだかというと、……ここに行きたいからよ」
そう言いながらチケットを取り出して上条に見せる。
さすがに美琴は素直にデートしたいとは言えなかった。
ただ、ツンとした所がかなりないので努力の成果がないというわけではないが。
さすがに美琴は素直にデートしたいとは言えなかった。
ただ、ツンとした所がかなりないので努力の成果がないというわけではないが。
「遊園地? なんでまた俺に?」
「ぅ……ぇ、と。い、いいから行くわよ!!」
「ぅ……ぇ、と。い、いいから行くわよ!!」
さすがに好きだからなんて言えないし、他の理由は思いつかなかったし、他の理由を適当に作ると上条は信じてしまうと思ったので、強引にごまかすことにした。
美琴は上条の手を掴んでさっさと歩き始めてしまう。
実は上条は上条で先程の質問でどこか期待している自分に気づいて脳内で混乱が発生していた。
そしてさらに手を掴まれているという事実に気づいて、それが妙に心地良いと思っている自分に気がついてさらに混乱していた。
美琴は上条の手を掴んでさっさと歩き始めてしまう。
実は上条は上条で先程の質問でどこか期待している自分に気づいて脳内で混乱が発生していた。
そしてさらに手を掴まれているという事実に気づいて、それが妙に心地良いと思っている自分に気がついてさらに混乱していた。
(うがーっ!! なんで期待したりとか心地良いとか思ってんの俺はーっ!!??)
美琴は前を歩いていて、ごまかすことに必死だったせいか、手を繋いでいる状態であることも、上条が混乱していることにも、幸か不幸か気づかなかった。
13:35
二人は遊園地にやって来た。
つい先程入場を終えたところだ。
ちなみにその時まで手を繋ぎっぱなしであることに気づいていなかった美琴は今は慌てて外して顔を赤くさせていた。
つい先程入場を終えたところだ。
ちなみにその時まで手を繋ぎっぱなしであることに気づいていなかった美琴は今は慌てて外して顔を赤くさせていた。
(だっ、だからなんで俺は残念だなぁとか思ってんのーっ!!??)
上条は心の中で叫びながら、気まずい空気になりつつあるのを防ぐためにきく。
「えっと、まずはどこに行くんだ?」
「え? ぇ、ぇっと………」
「ん? もしかして考えてn―――――」
「かっ、考えてあるわよ! っそ、そうだ。アレに乗りましょアレに!」
「え? ぇ、ぇっと………」
「ん? もしかして考えてn―――――」
「かっ、考えてあるわよ! っそ、そうだ。アレに乗りましょアレに!」
美琴が指差した方を見て、上条は言う。
「……観覧車?」
「なんでそっちになるのよ!? その下のジェットコースターよ!!」
「あー。さいですか」
「ん? アンタもしかして絶叫系苦手?」
「……いや。そんなことはないけど」
「なんでそっちになるのよ!? その下のジェットコースターよ!!」
「あー。さいですか」
「ん? アンタもしかして絶叫系苦手?」
「……いや。そんなことはないけど」
初めてだ、とは言えなかった。
美琴は上条の言葉に違和感を感じた。
どこかはわからなかったが。
美琴は上条の言葉に違和感を感じた。
どこかはわからなかったが。
「なら行くわよ」
二人はジェットコースターの方へと向かって行く。
上条は何故か悩んでいた。
上条は何故か悩んでいた。
「ん~。あれってなんかで見たような……?」
「? あのジェットコースターってなんかあんの?」
「…あった、気がする」
「? あのジェットコースターってなんかあんの?」
「…あった、気がする」
近づくにつれて、入口前に人が結構並んでいるのが見えてくる。
同時に、入口の横に大きな看板があるのが見えてきた。
そこには、こう書かれていた。
同時に、入口の横に大きな看板があるのが見えてきた。
そこには、こう書かれていた。
『このジェットコースターは電気に滅法弱い作りとなっておりますので、レベル4以上の発電系能力者の方のご利用はお控え下さい』
それを読んだ美琴の表情は固まった。
よく見ると、入口のところにはゲートがあり、恐らくそれで発電系能力者をチェックしているのだろう。
よく見ると、入口のところにはゲートがあり、恐らくそれで発電系能力者をチェックしているのだろう。
「ああ。思い出した。そうそう、あの看板のことだ」
上条は悩みの種が解消されて少しすっきりしている。
美琴は少し俯きながらポツリと呟いた。
美琴は少し俯きながらポツリと呟いた。
「……乗りたかったのに」
「え? あ~………んじゃあ、こうするか」
「ぇ? うええええ!?」
「え? あ~………んじゃあ、こうするか」
「ぇ? うええええ!?」
上条は少し悩んだあと、美琴の左手を掴んだ。
突然掴まれたことに驚いて美琴は思わず一歩離れようとするが、離れすぎて手と手が引っ張りあってしまい、結局上条に近づくことになる。
上条は結果近づいてきた美琴にドキリとする。
美琴はされたことを理解して、顔を赤くさせた。
突然掴まれたことに驚いて美琴は思わず一歩離れようとするが、離れすぎて手と手が引っ張りあってしまい、結局上条に近づくことになる。
上条は結果近づいてきた美琴にドキリとする。
美琴はされたことを理解して、顔を赤くさせた。
(お、俺はいきなり何やってんですかーっ!!?? や、ヤバイビリビリ確定ーっ!!??)
上条も顔が赤くなっていたが、美琴は気づけない。
ただ、上条の手の感触がどこか心地良くて心臓がバクバクといっているだけだった。
上条は電撃がこないことに疑問を抱くが、右手で美琴の左手を握っていることを思い出して少し安堵する。
ただ、上条の手の感触がどこか心地良くて心臓がバクバクといっているだけだった。
上条は電撃がこないことに疑問を抱くが、右手で美琴の左手を握っていることを思い出して少し安堵する。
(や、ヤバイ。今手を離したらビリビリが飛んでくるだろうから手を離せない!! というか離したくな―――って何を考えているんだ俺はーっ!!!! こ、ここはとりあえず手を離して謝るべきだっ!!)
上条は手を離せと命令を送る。
だけど、右手は離すどころか握る力を僅かに強めた。
上条は謝れと口へ命令を送る。
だけど、口から出たのは全く違う言葉だった。
だけど、右手は離すどころか握る力を僅かに強めた。
上条は謝れと口へ命令を送る。
だけど、口から出たのは全く違う言葉だった。
「し、仕方ないだろ。お前がジェットコースター乗るためにはこうするしかないんだから」
「ぇ、ぅ、ぅん……。そう、よね。仕方ない、わよね」
「ぇ、ぅ、ぅん……。そう、よね。仕方ない、わよね」
どこか上条に期待していた美琴は今の言葉を聞いて少し落胆する。
上条の顔はみていない。
見れば自分の顔が赤いことがバレるから。
2人は繋がれた手を意識しすぎてこれ以上話すことができなかった。
そうこうしている内に2人の番がやってきた。
上条の顔はみていない。
見れば自分の顔が赤いことがバレるから。
2人は繋がれた手を意識しすぎてこれ以上話すことができなかった。
そうこうしている内に2人の番がやってきた。
14:14
「た、楽しかったー」
「そ、そうだなー」
「そ、そうだなー」
ジェットコースターを乗り終えた2人は次の目的地を探していた。
さすがに今は手を繋いではいない。
2人は乗っている最中は手の方に意識が集中してしまい実はそんなに楽しめなかったのだが、そのことはお互い言えない。
さすがに今は手を繋いではいない。
2人は乗っている最中は手の方に意識が集中してしまい実はそんなに楽しめなかったのだが、そのことはお互い言えない。
「よ、よーし! 次はここへ行くわよーっ」
「ん? ああ、ここか。じゃあ行くか」
「ん? ああ、ここか。じゃあ行くか」
美琴は行き先を決めた。
それは、自動で移動しながら射的をするようなアトラクションだった。
並んだが、すぐに2人の番が回ってきた。
それは、自動で移動しながら射的をするようなアトラクションだった。
並んだが、すぐに2人の番が回ってきた。
「……なんか、狭くないか?」
「……狭いわね」
「……狭いわね」
2人1組で乗って行くものなのだが、なんとか2人が乗れる程度のスペースしかなかった。
乗ればどこかが触れ合うだろう。
乗ればどこかが触れ合うだろう。
「…仕方ない。乗るぞ」
「…そ、そうね」
「…そ、そうね」
2人は諦めて乗る。
やっぱり、肩とかが触れ合ってしまう。
触れ合う箇所を気にしながらも、2人は銃を構えた。
銃といっても、本物ではなく、プラスチックでできた軽いものだ。
赤外線を的に当てて、得点が加算されるタイプのもので、お互いの得点は分けて表示されるので対戦することもできる。
ただ、最終的には合計得点でこのアトラクション内で順位づけがされる。
だが、今の2人には得点がどうだとか言ってられる状況ではなかったりする。
やっぱり、肩とかが触れ合ってしまう。
触れ合う箇所を気にしながらも、2人は銃を構えた。
銃といっても、本物ではなく、プラスチックでできた軽いものだ。
赤外線を的に当てて、得点が加算されるタイプのもので、お互いの得点は分けて表示されるので対戦することもできる。
ただ、最終的には合計得点でこのアトラクション内で順位づけがされる。
だが、今の2人には得点がどうだとか言ってられる状況ではなかったりする。
「ひゃっ!? ど、どこ触ってんのよ!!??」
「うおっ!? ううう動くないろんなとこが当たるだろーっ!!」
「うおっ!? ううう動くないろんなとこが当たるだろーっ!!」
的を見やすくするために、2人が乗っている場所は暗くなっていてよく見えない。
その暗さのおかげか、2人の顔が赤かったのはお互い見られることはなかった。(というか近すぎて顔を見ようと思えなかった)
ちなみに今のは偶然上条の肘が美琴の腰にあたってしまい、美琴がそのことで上条の方を向こうとしたら肩とかが余計に当たったというだけである。
だが、暗いので美琴は腰に手で触られたと思ってしまったのだ。
ちなみに、背中合わせになればこの危機はほぼ回避できるのだが(というかそういう風に作られた)2人はそこまで頭が回らない。
結局、アトラクションが終わるまでずぅっと肩とかが触れ合った状態のままだった。
当然、得点は散々な結果だった。
その暗さのおかげか、2人の顔が赤かったのはお互い見られることはなかった。(というか近すぎて顔を見ようと思えなかった)
ちなみに今のは偶然上条の肘が美琴の腰にあたってしまい、美琴がそのことで上条の方を向こうとしたら肩とかが余計に当たったというだけである。
だが、暗いので美琴は腰に手で触られたと思ってしまったのだ。
ちなみに、背中合わせになればこの危機はほぼ回避できるのだが(というかそういう風に作られた)2人はそこまで頭が回らない。
結局、アトラクションが終わるまでずぅっと肩とかが触れ合った状態のままだった。
当然、得点は散々な結果だった。
14:46
「ぅ……なんだか疲れたわ……」
「同じく……。どっかで休憩するか?」
「そうね、そうしよっか」
「同じく……。どっかで休憩するか?」
「そうね、そうしよっか」
アトラクションが終わったとき、係の人から『背中合わせにならなかったんですか?』と聞かれたので2人は顔を真っ赤にしながら逃げてきた。
体力的にではなく精神的にいろいろと疲れた2人はちょうど近くに置いてあったベンチに腰掛けることにした。
2人の間は、15cm程度。
体力的にではなく精神的にいろいろと疲れた2人はちょうど近くに置いてあったベンチに腰掛けることにした。
2人の間は、15cm程度。
(あれ? この前よりも近い? …………もっと近づこうかな)
美琴は少しだけ上条の方へ近づく。
間は12cm程度に縮まった。
上条は気づいてないみたいだった。
間は12cm程度に縮まった。
上条は気づいてないみたいだった。
(……もう少し近づいても大丈夫かな)
美琴はもう少し近づこうとした時、上条は不意に立ち上がった。
「あ、俺なんか飲み物買ってくる。御坂は何かいるか?」
「ぁ、そ、そうね。なんか適当に買ってきて」
「あいよ」
「ぁ、そ、そうね。なんか適当に買ってきて」
「あいよ」
上条は少し周りを見回した後、目当ての場所を見つけて向かっていった。
(いつもよりかは素直になれてるかな……?)
美琴が今までの自分の行動を振り返っているとすぐに上条は戻ってきた。
「ほい、買ってきたぞ」
「あ、うん。ありがと」
「あ、うん。ありがと」
素直にドリンクを受けとる。
上条はベンチに座って自分の分を飲み始めた。
特に意識せず座ったのか、2人の間は5cmくらいしかなかった。
上条はベンチに座って自分の分を飲み始めた。
特に意識せず座ったのか、2人の間は5cmくらいしかなかった。
(え!? ち、近い!! 近づこうとは思ってたけど、い、いきなりすぎてなんかいろいろと心の準備がーっ!!??)
美琴の脳内はパニックに陥る。
同時に顔が赤くなっていく。
それを見た上条は美琴の顔を覗き込んで額に右手をあてた。
同時に顔が赤くなっていく。
それを見た上条は美琴の顔を覗き込んで額に右手をあてた。
「どうしたんだ、美琴? 風邪か?」
(って、俺は一体何をやってるんですかーっ!!?? なんか名前で呼んじゃってるしーっ!!!!)
(って、俺は一体何をやってるんですかーっ!!?? なんか名前で呼んじゃってるしーっ!!!!)
自分の言動を何故だか全然制御できていない上条も脳内でパニックに陥った。
ただ、額に手をあてられた美琴はそれどころではなかった。
ただ、額に手をあてられた美琴はそれどころではなかった。
「ふぇえ!!?? だっ、だだだ大丈夫よ!!」
(ぎゃああああ!!?? ま、またおでこに手がーっ!!??)
(ぎゃああああ!!?? ま、またおでこに手がーっ!!??)
美琴の顔は更に赤くなっていく。
突然額に手をあてられたせいか、名前で呼ばれたことには気づかなかった。
突然額に手をあてられたせいか、名前で呼ばれたことには気づかなかった。
「そうか? なんか、さっきよりも顔が赤いぞ?」
(だ、大丈夫って言ってんだから手を離せばいいのに何故離そうとしないんだ俺はーっ!!!!)
(だ、大丈夫って言ってんだから手を離せばいいのに何故離そうとしないんだ俺はーっ!!!!)
美琴はもう応えることもできない。
なんだか目が虚ろになって来ていた。
そして、ポツリと。
なんだか目が虚ろになって来ていた。
そして、ポツリと。
「ふ」
「…ふ?」
「ふにゃー」
「へ? お、おい!? 美琴!?」
「…ふ?」
「ふにゃー」
「へ? お、おい!? 美琴!?」
美琴は気を失った。
右手で額を触っていたおかげで漏電することはなかったのが幸いか。
右手で額を触っていたおかげで漏電することはなかったのが幸いか。
15:38
「ぅ……ん?」
「お。目、覚めたか」
「ぁ、ぅん……」
「お。目、覚めたか」
「ぁ、ぅん……」
美琴は目を覚まして最初に視界に入ったのは、上条の顔だった。
その後ろには空が見える。
触覚が戻ってきたのか、後頭部が柔らかいことがわかった。
ん? やわらかい??
その後ろには空が見える。
触覚が戻ってきたのか、後頭部が柔らかいことがわかった。
ん? やわらかい??
「ぎゃあああああ!!??」
美琴はとても常盤台中学に通うお嬢様が言うとは思えない言葉で跳ね起きた。
どうやら膝枕をされていたらしい。
膝枕をされていたという衝撃が強かったからか、顔が近かったことなどすっかり忘れていた。
少し顔も赤くなる。
上条は美琴の突然の行動に驚きながらもきく。
どうやら膝枕をされていたらしい。
膝枕をされていたという衝撃が強かったからか、顔が近かったことなどすっかり忘れていた。
少し顔も赤くなる。
上条は美琴の突然の行動に驚きながらもきく。
「ぇ、えっと、もう大丈夫なのか?」
「あ、うん。もう大丈夫」
「あ、うん。もう大丈夫」
美琴は残っていたドリンクを飲む。
上条も残っていたのでドリンクを飲んで、聞く。
上条も残っていたのでドリンクを飲んで、聞く。
「それで? 大丈夫なら次はどこに行くんだ?」
「ん………空中ブランコ」
「あ~、アレね。じゃあ、もう少ししたら行きますかね」
「ん………空中ブランコ」
「あ~、アレね。じゃあ、もう少ししたら行きますかね」
少しして、2人は空中ブランコの列に並ぶ。
看板などは置いてなかったので、能力のことで気にすることはない。
空中ブランコはそれなりに人気が高いのか結構な人が並んでいた。
看板などは置いてなかったので、能力のことで気にすることはない。
空中ブランコはそれなりに人気が高いのか結構な人が並んでいた。
「ぇ、えっとさ」
「ん?」
「ん?」
美琴は顔を赤らめて少し逡巡してから続きを言った。
「また、手、繋いでくれない?」
「……へ?」
「あ、いや、ほら! 万が一私の能力で壊しちゃったりしたらいけないからというだけで………別に深い意味は………」
「……へ?」
「あ、いや、ほら! 万が一私の能力で壊しちゃったりしたらいけないからというだけで………別に深い意味は………」
終わりのほうは小声になって少し聞き取りにくくなっていた。
気絶して膝枕というコンボのせいか、素直さはどこかへいってしまったのかもしれない。
上条は美琴の言葉で僅かに落胆する。
さすがに断っておこうと、上条は口を開く。
気絶して膝枕というコンボのせいか、素直さはどこかへいってしまったのかもしれない。
上条は美琴の言葉で僅かに落胆する。
さすがに断っておこうと、上条は口を開く。
「あ、ああ。いいぞ」
(ってだからなんで俺は思考と行動がさっきから真逆なんですかーっ!!!!!!)
(ってだからなんで俺は思考と行動がさっきから真逆なんですかーっ!!!!!!)
上条は心の中で叫ぶが、既に上条の右手は美琴の左手を握っていた。
まさかOKが来るとは思っていなかった美琴は握られたことで驚きながらも顔を赤くする。
上条は心の中で叫びを上げまくりつつ、美琴の手の感触でドキドキしてしまい顔が赤くなる。
周りからしてみたら、『なんか初々しいカップルだなあいつら』という感じである。
というか、まだ回ってくるまで20分はあった。
その間、2人はドキドキしながらも喋ることも目線を合わすこともお互いの顔を見ることもなかった。
20分程度が経過して、2人は列の先頭に立つ。
本当は1つ前に後1人は乗れたのだが、手を繋いでいるのをみてやめておいたという、係員のささやかな心遣いがあったりしたが、そのことを2人は知らない。
まさかOKが来るとは思っていなかった美琴は握られたことで驚きながらも顔を赤くする。
上条は心の中で叫びを上げまくりつつ、美琴の手の感触でドキドキしてしまい顔が赤くなる。
周りからしてみたら、『なんか初々しいカップルだなあいつら』という感じである。
というか、まだ回ってくるまで20分はあった。
その間、2人はドキドキしながらも喋ることも目線を合わすこともお互いの顔を見ることもなかった。
20分程度が経過して、2人は列の先頭に立つ。
本当は1つ前に後1人は乗れたのだが、手を繋いでいるのをみてやめておいたという、係員のささやかな心遣いがあったりしたが、そのことを2人は知らない。
17:39
「つ、次はどこに行くんだ?」
「そ、そうね~………」
「そ、そうね~………」
結局、2人は手の方ばかり意識が集中してしまい楽しむことなどできなかった。
それに、あの後再びジェットコースターにも乗ったのだが、やはり手に意識が集中して楽しめなかった。
まだ顔が赤いのがなくならないのか、2人は顔を見れない。
それに、あの後再びジェットコースターにも乗ったのだが、やはり手に意識が集中して楽しめなかった。
まだ顔が赤いのがなくならないのか、2人は顔を見れない。
「お化け屋敷、とか?」
「ん。わかった。っと、そういや今何時だ?」
「ん。わかった。っと、そういや今何時だ?」
上条は周りを見回すが、時計が見当たらない。
諦めて携帯を取り出して開く。
諦めて携帯を取り出して開く。
「あー。大体よぶごあぁ!!??」
突然上条が吹っ飛んだ。
上条は綺麗に頭から滑っていき、少し進んだ所で止まった。
上条の手から離れた携帯が地面に落ちる前に美琴はなんとか手でキャッチして、上条が吹っ飛んだのとは逆の方向をみる。
上条は綺麗に頭から滑っていき、少し進んだ所で止まった。
上条の手から離れた携帯が地面に落ちる前に美琴はなんとか手でキャッチして、上条が吹っ飛んだのとは逆の方向をみる。
「く、黒子!!??」
「お、お姉様!! こんなところでこの殿方と何をしていらしたんですの!? ま、まさかデート!!?? おのれ類人猿わたくしを差し置いてお姉様とデートするだなんて許しませんわよーっ!!!!」
「ええい、やめんかぁ!!!!」
「お、お姉様!! こんなところでこの殿方と何をしていらしたんですの!? ま、まさかデート!!?? おのれ類人猿わたくしを差し置いてお姉様とデートするだなんて許しませんわよーっ!!!!」
「ええい、やめんかぁ!!!!」
どうやら上条をドロップキックで吹っ飛ばしたのは白井らしい。
ジャッジメントの腕章をつけているので巡回か何かだろう。
美琴はダンッ!と地面に足をたたきつけることで白井のテレポートを妨害する。
同時に、上条の携帯を持ったままということに気づいたので、ブレザーのポケットに放り込んだ。
デートという単語には触れないでおく。
上条はどうやら最初のドロップキックで気絶してしまったらしい。
ジャッジメントの腕章をつけているので巡回か何かだろう。
美琴はダンッ!と地面に足をたたきつけることで白井のテレポートを妨害する。
同時に、上条の携帯を持ったままということに気づいたので、ブレザーのポケットに放り込んだ。
デートという単語には触れないでおく。
上条はどうやら最初のドロップキックで気絶してしまったらしい。
「さすがお姉様。わたくしの行動パターンを完全に把握しておられますわね。……おや? そ、そそそ、その猫はっ!!!!」
「え? ああっ!!」
「え? ああっ!!」
ブレザーのポケットから猫のストラップが顔を覗かせていた。
どうやら入りそびれたらしい。
美琴はそのことに気づくと慌ててポケットの中へと入れる。
だが、その行動は白井にある確信を抱かせた。
どうやら入りそびれたらしい。
美琴はそのことに気づくと慌ててポケットの中へと入れる。
だが、その行動は白井にある確信を抱かせた。
「お姉様が最近毎日抱きしめて寝ている猫のぬいぐるみと同じ!? それに今のお姉様の慌て様………。おのれあの腐れ類人猿がァァァァァァァァ!!!!」
「ちょっ!!?? 黒子待ちなさい!!!!」
「ちょっ!!?? 黒子待ちなさい!!!!」
白井は携帯まで見えてはいなかったので、美琴がプレゼントされたと思い込んだようだ。
美琴は白井が駆け出す前に腕を掴むと、すぐに近づいて白井のこめかみに握り拳をおいてグリグリし始めた。
美琴は白井が駆け出す前に腕を掴むと、すぐに近づいて白井のこめかみに握り拳をおいてグリグリし始めた。
「い、いたいいたいいたいですの!! はっ、これに耐えることがわたくしへの今回の課題なのでいだだだっ!!!!」
「アンタのその変態ぶりはどうにかならないのかしらぁ?」
「あいだだだだ!! しゃ、シャレにならない痛さになってきてますわよお姉様! このままでは黒子は新たな境地を開はーーーおうぅっ!!??」
「アンタのその変態ぶりはどうにかならないのかしらぁ?」
「あいだだだだ!! しゃ、シャレにならない痛さになってきてますわよお姉様! このままでは黒子は新たな境地を開はーーーおうぅっ!!??」
美琴は白井が変な境地へ達する前に電撃で意識を落とすことに成功した。
もしかしたら、新たな可能性が生まれてしまったかもしれないが。
もしかしたら、新たな可能性が生まれてしまったかもしれないが。
18:02
上条当麻は目を覚ます。
最初に視界に入ったのは、見知らぬ天井だった。
次に何があったのかを思い出して、ここが救護室か何かなのだと判断する。
最初に視界に入ったのは、見知らぬ天井だった。
次に何があったのかを思い出して、ここが救護室か何かなのだと判断する。
(気、失ってたのか)
「あ、気づいた? もう大丈夫?」
美琴が上条が起きたことに気づいて話し掛けてきた。
「ああ、大丈夫。というか、誰がやったのか知らないんですが」
「あー。アレね、黒子がドロップキックしたの」
「白井か……なるほど」
「今隣で寝てるけどね」
「え?」
「あー。アレね、黒子がドロップキックしたの」
「白井か……なるほど」
「今隣で寝てるけどね」
「え?」
よくよく見てみると隣にもベッドがあり、そこには白井黒子が寝ていた。
なんとなく、理由を把握する。
なんとなく、理由を把握する。
「……一応聞きますが、なんで?」
「私の電撃でちょっと寝てもらったの」
「罪悪感もなしでさらっと言われると上条さんは戦慄を隠しきれません」
「あははー、いつものことだし。…で、もう大丈夫なら行きたいところがあるんだけど」
「白井はいいのか? ほっといても」
「大丈夫よ。他のジャッジメントの人が引き取るから」
「私の電撃でちょっと寝てもらったの」
「罪悪感もなしでさらっと言われると上条さんは戦慄を隠しきれません」
「あははー、いつものことだし。…で、もう大丈夫なら行きたいところがあるんだけど」
「白井はいいのか? ほっといても」
「大丈夫よ。他のジャッジメントの人が引き取るから」
いつものことというのが凄まじく気になったが触れてはいけないことのような気がするので触れないでおく。
上条の半分はやさしさでできているのだ。
とりあえずもう体は大丈夫なので、美琴が行きたいという場所に行くことに決めて、救護室から2人は出た。
上条の半分はやさしさでできているのだ。
とりあえずもう体は大丈夫なので、美琴が行きたいという場所に行くことに決めて、救護室から2人は出た。
「それで? 行きたいとこってのはどこなんだ?」
「アレよ」
「アレよ」
美琴がビシッと指を指した方を見て、上条はいう。
「………ジェットコースター? もうこれで3度目じゃねえか」
「そっちじゃない! その上よ上! 観覧車!!」
「あー。そうですか」
「ん? アンタもしかして高いところ苦手?」
「いや。全然」
「そっちじゃない! その上よ上! 観覧車!!」
「あー。そうですか」
「ん? アンタもしかして高いところ苦手?」
「いや。全然」
かつて観覧車よりも高いところから金髪グラサンに突き落とされたとは言えない。
ついでに初めてだとも言えない。
微妙にこの会話にデジャヴを感じつつ、2人は観覧車へと向かった。
ついでに初めてだとも言えない。
微妙にこの会話にデジャヴを感じつつ、2人は観覧車へと向かった。
並んでから30分かけてようやく列の真ん中ぐらいにきた。
やはりというべきか、並んでいるのはカップルが多い。
やはりというべきか、並んでいるのはカップルが多い。
「あ。アンタの携帯持ってたの忘れてた。返すわよ」
「ん、おお。サンキュな」
「ん、おお。サンキュな」
美琴はブレザーのポケットから携帯を出すと上条に手渡す。
その際に僅かに手が触れ合ってしまい、お互い少し顔が赤くなった。
その際に僅かに手が触れ合ってしまい、お互い少し顔が赤くなった。
「そ、それにしても……カップルが多いよな。いいのか御坂、俺で?」
「だ、大丈夫よ。わ、私はただ景色がいいらしいから見るってだけで、他に意味なんてないんだから……」
「ん。そっか」
(だーかーらーっ!!!! なんで俺はスゲェ残念だとか思ってんだって!!!! 別に関係な………いだろーがー!!!!)
「だ、大丈夫よ。わ、私はただ景色がいいらしいから見るってだけで、他に意味なんてないんだから……」
「ん。そっか」
(だーかーらーっ!!!! なんで俺はスゲェ残念だとか思ってんだって!!!! 別に関係な………いだろーがー!!!!)
上条は心の中で叫び声を上げて否定する。
最後の方で一度やめかけた自分の気持ちに少し疑問を覚えたが、気にしない。
美琴は美琴で素直になれない自分を心の中で叱っていた。
最後の方で一度やめかけた自分の気持ちに少し疑問を覚えたが、気にしない。
美琴は美琴で素直になれない自分を心の中で叱っていた。
(なんで私はここで素直になれないのよーっ!!?? これじゃあ何のために遊園地にきて、何のために観覧車に乗るのかわかんないじゃない!!!!)
そんなことを2人はずっとしていたから、観覧車に乗るまで結局会話はこれ以降なかった。
18:32
ようやく観覧車は2人を乗せて動きはじめた。
ただ、今度は2人きりという状況に緊張して二人は全然喋ることができない。
結局、喋らないままにてっぺんまでやってきてしまった。
美琴はそこから見える景色に身を乗り出しながら言う。
ただ、今度は2人きりという状況に緊張して二人は全然喋ることができない。
結局、喋らないままにてっぺんまでやってきてしまった。
美琴はそこから見える景色に身を乗り出しながら言う。
「わあ……綺麗」
「………ああ。綺麗だな」
「………ああ。綺麗だな」
上条は思わず美琴に見とれてつい言ってしまっていた。
美琴が声の向けられた方向に少し疑問を持って上条の方を向く。
だが、その前に上条は外の景色の方へと音速で顔を向けたので美琴は気づけなかった。
むしろ、それどころではなかった。
美琴が声の向けられた方向に少し疑問を持って上条の方を向く。
だが、その前に上条は外の景色の方へと音速で顔を向けたので美琴は気づけなかった。
むしろ、それどころではなかった。
(今なら、言えるかも。私の気持ち)
美琴は、この雰囲気と、気持ちの高揚に身を任せて言ってみようと思った。
言えば、もう後戻りはできなくなる。
けれど、言おうと思った。
言えば、もう後戻りはできなくなる。
けれど、言おうと思った。
「あの、さ。話、が、ある、んだけど………」
緊張して、前置きでさえ言いにくかった。
上条は、何も言わないで先を促す。
美琴は大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。
そして、いざ言おうとしたその時。
上条は、何も言わないで先を促す。
美琴は大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。
そして、いざ言おうとしたその時。
美琴の携帯が鳴った。
美琴は突然鳴り響いた音に驚いて心臓が飛び出るかと思ったが、せっかくの雰囲気を見事なまでにぶち壊してくれた電話の主に怒りを覚えて、相手が誰なのかも見ずに携帯にでる。
だがこちらが怒りをぶつけるよりも前に、電話の主の言葉の方が早かった。
だがこちらが怒りをぶつけるよりも前に、電話の主の言葉の方が早かった。
『お姉様!!?? い、今いったいどちらへ行ってらっしゃるんですの!!?? ま、まさかあの類人猿めお姉さ―――ブツッ』
美琴は全てを聞く前に電話を切った。
黒子、後でシメる。と怖いことを考えながら携帯の電源を切っておいた。
黒子、後でシメる。と怖いことを考えながら携帯の電源を切っておいた。
「………話ってのは?」
上条はなんとなく話し掛けにくい雰囲気なのを察知していたが、意を決して聞い
てみることにした。
てみることにした。
「………なんでもない」
雰囲気を壊されても言えるようなことではなかったので、はぐらかす。
それどころか、なんだか変な雰囲気になってしまった。
結局、その変な雰囲気のまま観覧車の時間は終了する。
それどころか、なんだか変な雰囲気になってしまった。
結局、その変な雰囲気のまま観覧車の時間は終了する。
19:46
2人は遊園地を出ていた。
美琴としては、観覧車は最後に乗ることだけは決めていて、それが終わったら遊園地ですることもなくなってしまったからだ。
なので今はどこかで夕飯を食べるために、帰り道で店を探していた。
美琴としては、観覧車は最後に乗ることだけは決めていて、それが終わったら遊園地ですることもなくなってしまったからだ。
なので今はどこかで夕飯を食べるために、帰り道で店を探していた。
「またあの高いレストランはやめてくれな」
「わかってるわよ。それとも、今度は私が全部払ってあげよっか?」
「そんなことされたら上条さんのプライドはズタズタに引き裂かれてしまいます」
「おっ、それならそうしようかしら」
「ひでえ! この人ひでえ!!」
「あはは。冗談よジョーダン。あ、この店ならいいんじゃない?」
「わかってるわよ。それとも、今度は私が全部払ってあげよっか?」
「そんなことされたら上条さんのプライドはズタズタに引き裂かれてしまいます」
「おっ、それならそうしようかしら」
「ひでえ! この人ひでえ!!」
「あはは。冗談よジョーダン。あ、この店ならいいんじゃない?」
美琴がちょうど良さそうな店を見つけたので、2人はその店へと入っていく。
上条としても我慢できる値段で、尚且つおいしいお店だった。
2人は食べ終えて店からでると、寮に向かうことにした。
上条としても我慢できる値段で、尚且つおいしいお店だった。
2人は食べ終えて店からでると、寮に向かうことにした。
「そういや結局、なんで遊園地に俺と来たんだ? なんかはぐらかされちまったけど」
「うっ!!?? じ、自分で考えなさいよ!! 馬鹿!!」
「な、なんで怒られなきゃいけないんだ……理不尽だ」
「う、うるさい!! と、とにかく。きょ、今日は楽しかったの!?」
「あ? 楽しかったに決まってるじゃねえか。何せ初めて―――ぁ」
「ッ!? そ、そっか。そういやそうだったわね」
「うっ!!?? じ、自分で考えなさいよ!! 馬鹿!!」
「な、なんで怒られなきゃいけないんだ……理不尽だ」
「う、うるさい!! と、とにかく。きょ、今日は楽しかったの!?」
「あ? 楽しかったに決まってるじゃねえか。何せ初めて―――ぁ」
「ッ!? そ、そっか。そういやそうだったわね」
美琴は理解する。ジェットコースターの時も、観覧車のときも。
違和感を感じたのは、上条自身が大丈夫なのか『知らない』ことだったから。
そんな時まで相手に気を使う上条に、美琴は少し呆れてしまった。
違和感を感じたのは、上条自身が大丈夫なのか『知らない』ことだったから。
そんな時まで相手に気を使う上条に、美琴は少し呆れてしまった。
「はー。アンタって奴は、それならそうと言えばよかったじゃない。私も大体は知ってるんだし」
「……そうだな」
「……そうだな」
ただ、上条としては言えるわけがなかった。
美琴は、上条の記憶喪失がどの程度のものなのかは知らないはずだからだ。
ある日からある日までなのか、ある日よりも以前なのか。
その記憶喪失のレベルを知らないはずの美琴に、幼い頃の記憶もないなんて勘繰られるわけにはいかなかった。
だがまあ、今のでほとんどバレてしまったも同然なのだが。
美琴は、上条の記憶喪失がどの程度のものなのかは知らないはずだからだ。
ある日からある日までなのか、ある日よりも以前なのか。
その記憶喪失のレベルを知らないはずの美琴に、幼い頃の記憶もないなんて勘繰られるわけにはいかなかった。
だがまあ、今のでほとんどバレてしまったも同然なのだが。
「あ、もうすぐ分かれ道ね」
「おお、そうだな」
「おお、そうだな」
だけど美琴は何も言ってはこなかった。
気づかなかったのかもしれない。
そうとは思えなかったが、そう思うことにした。
気づかなかったのかもしれない。
そうとは思えなかったが、そう思うことにした。
「私も、今日はとても楽しかった。アンタと遊園地に行けて」
「………俺もだ」
「………俺もだ」
上条が同意すると、美琴は驚いた顔をして、すぐにそれを笑顔へと変えて。
「ありがと」
美琴はそういうと、寮の方へ走って行ってしまった。
上条は止めることも、「ありがと」に対しての言葉も言えずに、美琴の後ろ姿を
見送るだけだった。
上条は止めることも、「ありがと」に対しての言葉も言えずに、美琴の後ろ姿を
見送るだけだった。