とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ ありがとう



――『ありがとう』

「おーい!御坂ー!」
 背後から聞き覚えのある声がする、美琴は背中に走るビリビリを感じながらそっと振り向く。
「ちょっとアンタ、どうしたの? 随分と疲れてるみたいだけど…?」
「……ちょっと助けてくれ」
 彼の息は乱れており、顔色も悪い……。事態の重大さを美琴は一瞬で理解した。
「私なら力になるから、何があったのか説明してちょうだい!」
「いいから来てくれ!」
 ツンツン頭の少年は美琴の手を掴み、走り出した。
「ちょ、どこ掴んでんのよ!」
「…手だけど」
「そ、そんなの分かってるわよ…」
「マズイなら離してもいいんだけどー?」
「ど、どうせならもっと強く掴みなさいよ、ハグれちゃったらどうする気…?」
 もっとも一晩中追いかけっこ出来る人間が手を離したくらいでハグれる事はないだろう。
 だけどもこの言葉は少年の心に響いた、そして手を更にギュッと握り締める。
「痛くないかー?」
「…う、うん」
 『強く握りすぎ…』なんて言えるわけがなかった。
 そう…走っている目的を忘れそうになるくらい……『嬉しかった』

「ここだ、ここ……」
 5分くらい走った先に、街を通る小さい水路にたどり着いた。
 少年が指差す先はその下……そこには白い紙袋が引っ掛かっていた。
「……アンタ、まさかこれの為だけにここまで連れてきたワケじゃないわよね?」
「仕方ねぇだろ! 他の奴に任せられるようなモノじゃねぇんだから……」
 その言葉の意味が分からなかった美琴だったが、折角頼られたんだから応えてあげよう…という考えで了承した。
「で? 私は何をどうすれば良いのよ」
「……考えてなかった」
「はぃい!? なによそれ…」
「いや…気付いたら走っててお前を探してたというか…」
「ま、まあ…アンタだから良いわよ…」
 連絡取れるんだからしなさいよ…と思いつつ『どうやって取るのか考えましょ』と続ける。
「俺でも届かなかったのに御坂が届くわけねぇしなぁ……」
「…中には何が入ってるの?」
「そ、そんなの言えるワケねぇだろ!」
「具体的に答えなくて良いわよ、磁石に反応するモノが入ってる?って事を聞きたかったの」
 少年は数秒間思考した後に『ま、まあ…そうだな』と答えた。
「なら簡単じゃない、ちょっと外の袋は焦げるかもしれないけど…」
 と美琴は少年に言い放ち、紙袋を引き寄せるように何かを念じている。ように少年には見えた。
 実際は電磁石と同じような事をやっているらしい。どういう能力なのかは本人しか分からない。
「…御坂さんは念力も使えたんですね」
「ちょっと黙ってて! 力の加減が相当難しいんだからっ!」
「……はい」

 数分後、壁を伝ってどうにか手の届く位置まで目的の紙袋が到着
 少年は右手を伸ばし、手のひらサイズの紙袋をしっかりと掴んだ。
「ま、この美琴センセー以外取れる人は居なかったでしょうね」
 腰に手を当て得意げな顔をして少年の方を向く。
「良かった…本当に良かった」
「うんうん、じゃ私は行くから。どんな事でも困った事があったらいつでも言いなさいよね!」
「……ちょっと待ってくれ!」
「ん?まだ何かあるワケ? あ、でも暇だから付き合ってあげない事もないわよ」
「御坂…ありがとう」
 少年は微笑みながら礼を言う。
「な!? そ、そんなお礼言われるような事した覚えなんかないわよ!」
「…顔赤くなってるけど?」
 美琴は自分の頬をポンポンと二度叩き
「うっさいわね! あの能力使うと少し熱が出るんだから!」
「わかったわかった」
「なによ、呼び止めておいて…馬鹿」
「ワリィワリィ、今回のお礼ってワケじゃねぇんだけど…これ」
 少年は手に持っていた紙袋を美琴の方に差し出していた。
「どういう事…? アンタ、これ大事な物なんでしょ?」
「物凄く大事、だからお前を呼んだって言っただろ?」
「じゃ私にあげちゃマズイんじゃないの?」
「あーもう、御坂さんは鈍感ですかー? これはお前にやる為に買ったんだよ」
 『アンタが言うか!?』と突っ込む前に言葉を止められた、いや止まった。
「……」
「と、とりあえず…手、出せよ」
 美琴は言われるがまま、無意識に左手を差し出した。
「…っしょ、これでよし!」
 ボーッとしている美琴が左手を見ると、薬指に指輪が……。
「ふ、ふ、ふ………」
 少年もアレっ?と言った感じ……何やら不発に終わったらしい。
「こ、こ、こ、こゆーとき…どーゆー顔したら良いかわっかんないのよね」
「そんなの俺も知らねぇよ……」
「と、と、とりあえず…責任は取りなさいよね」
「え?」
「じゃ、じゃー私忙しいから…」
 少年は敢えて突っ込まずに自分の心に尋ねた『どうしてこうなった』のか
 しかし心が返した答えは極簡単な物だった……。感情の正体をようやく掴めた少年は美琴を追いかける。

そう…この時を最後に御坂美琴の片想いは終わった―――終了


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