インデックスの乱入もといモーニングコールにより、慌ただしい朝が始まった。
「まったくとうまは。気を利かせて一晩帰らなかったらこれなんだよ」
「上条さんが悪いんですかね?」
インデックスはぷんぷんと頬を膨らませながらお茶を飲んでいる。
上条は朝ごはんの準備としてキッチンで仕事をしており、美琴はインデックスの横で未だにぽーっとしていた。
「みこともみことなんだよ。とうまと仲良くするのはいいけど、私の前であれはあんまりかも」
「っ!?わたた私も、そんなつもりはなかったって言うか、事故って言うか……」
「いいわけするんだね?」
「ごめんなさい」
美琴が諦めたように頭を下げるのを見て、インデックスは溜息をつく。
「で、とうま。今日はどうする予定なの?」
「どうって、飯食ったら空港行ってお前ら見送るんじゃねぇか」
上条はテキパキと手を動かして卵焼きを焼いている。
「その後なんだよ。みこととデートするんじゃないの?」
「デート、っつってもなんも考えてねぇ」
「ノープランなんだね」
昨日の夜に決まったところだからな、と上条は言いながら味噌汁を注いでいる。
「美琴、どっか行きたいところとかあるか?」
「んな、私にふるの?そこは男がエスコートするもんでしょうが」
美琴はビリビリと頭の周りに飛ばしながら叫ぶ。顔を赤くしていたり上条にも分かるくらいに照れていた。
「行きたいところっつてもなぁ……思いつかんのですよ」
「アンタが……ど………いっん」
「はぁ?そんな小せぇ声じゃ聞こえねぇよ」
「アンタが……当麻が行きたい所なら、どこでも、いい」
美琴は上条に背を向けると、ぶつぶつと何かを呟いてる。隣にいるインデックスは勝手にしてくれとでも言いたげな顔だ。
「………んー。と言われましても、上条さんは寧ろ家でゆっくりしていたいと言いますか何と言いますか…」
上条が卵焼きの乗った皿を運んで行くと、美琴は肩を落としてブルーになっており、インデックスはその肩をぽんぽんと叩いている。
「あれ、美琴?インデックス?どうした?」
どうしてそんなにブルーなんですか、と上条が言うと2人は大きく溜息をつく。インデックスにいたってはやれやれと首をふっている。
「これからも苦労しそうだね、みこと」
「私、選ぶ相手間違ったかな………」
「悩みができたらいつでもで連絡していいから」
「ありがとう、インデックス」
2人はひしっと抱き合う。上条はガラステーブルに朝ごはんを用意して固まっていた。
「お前ら、本当に仲良くなったよな。つか、そもそもどうやって仲良くなったんだよ?」
「ん?それは、ね」
そう言うと、インデックスはぽつぽつと語り始めた。
「まったくとうまは。気を利かせて一晩帰らなかったらこれなんだよ」
「上条さんが悪いんですかね?」
インデックスはぷんぷんと頬を膨らませながらお茶を飲んでいる。
上条は朝ごはんの準備としてキッチンで仕事をしており、美琴はインデックスの横で未だにぽーっとしていた。
「みこともみことなんだよ。とうまと仲良くするのはいいけど、私の前であれはあんまりかも」
「っ!?わたた私も、そんなつもりはなかったって言うか、事故って言うか……」
「いいわけするんだね?」
「ごめんなさい」
美琴が諦めたように頭を下げるのを見て、インデックスは溜息をつく。
「で、とうま。今日はどうする予定なの?」
「どうって、飯食ったら空港行ってお前ら見送るんじゃねぇか」
上条はテキパキと手を動かして卵焼きを焼いている。
「その後なんだよ。みこととデートするんじゃないの?」
「デート、っつってもなんも考えてねぇ」
「ノープランなんだね」
昨日の夜に決まったところだからな、と上条は言いながら味噌汁を注いでいる。
「美琴、どっか行きたいところとかあるか?」
「んな、私にふるの?そこは男がエスコートするもんでしょうが」
美琴はビリビリと頭の周りに飛ばしながら叫ぶ。顔を赤くしていたり上条にも分かるくらいに照れていた。
「行きたいところっつてもなぁ……思いつかんのですよ」
「アンタが……ど………いっん」
「はぁ?そんな小せぇ声じゃ聞こえねぇよ」
「アンタが……当麻が行きたい所なら、どこでも、いい」
美琴は上条に背を向けると、ぶつぶつと何かを呟いてる。隣にいるインデックスは勝手にしてくれとでも言いたげな顔だ。
「………んー。と言われましても、上条さんは寧ろ家でゆっくりしていたいと言いますか何と言いますか…」
上条が卵焼きの乗った皿を運んで行くと、美琴は肩を落としてブルーになっており、インデックスはその肩をぽんぽんと叩いている。
「あれ、美琴?インデックス?どうした?」
どうしてそんなにブルーなんですか、と上条が言うと2人は大きく溜息をつく。インデックスにいたってはやれやれと首をふっている。
「これからも苦労しそうだね、みこと」
「私、選ぶ相手間違ったかな………」
「悩みができたらいつでもで連絡していいから」
「ありがとう、インデックス」
2人はひしっと抱き合う。上条はガラステーブルに朝ごはんを用意して固まっていた。
「お前ら、本当に仲良くなったよな。つか、そもそもどうやって仲良くなったんだよ?」
「ん?それは、ね」
そう言うと、インデックスはぽつぽつと語り始めた。
2人の馴れ初めは、美琴が上条宅に通う事になった2回目の月曜日である。
女同士で話があると言って上条を部屋から追い出し、ガラステーブルで向き合って話し合ったのだったのだ。
「ねぇ、短髪。短髪ととうまはどういう関係なの?」
「それはコッチのセリフよ。アンタこそあの馬鹿とどういう関係なのよ?」
「私はとうまに助けてもらって、それからここで住ませてもらってるんだよ」
「なんだ、アンタも助けてもらったってやつか」
美琴は上条の相変わらずの部分に呆れて肩をすくめる。美琴の言葉にインデックスも察したようで同じような顔をしていた。
「そういう短髪もとうまに助けてもらった人?」
「そうなるわね。頼んでもないのに首を突っ込んできて一方的に助けてもらった感じかな」
「むぅ。やっぱりとうまはとうまなんだね」
「そ、アイツは誰にでもあんな奴なのよ」
2人はさっき外に追い出した上条の性格を思い出し、もう一度溜息をつく。全く同じタイミングに出た溜息に2人は見つめあう。
「ぷっ、はははっ……アンタも大変よね」
「あはははっ……短髪も苦労してるんだね」
あの馬鹿のせいよね、と言いながら2人は笑いあう。同じ苦労を知る者として通じる部分があったのだろう。
「で、さ……1つ聞いてもいい?」
「なにかな、短髪」
「アンタも、その………なんていうかな……」
美琴は目線を合わせないまでも、チラチラとインデックスを見る。
「短髪、言いたいことはハッキリ言わないと分からないんだよ」
「そうね………」
美琴は大きく深呼吸をすると、両頬を手で叩く。
「アンタも、アイツの事、好きなの?」
「………うん」
「そっか………」
「短髪も?」
「………うん」
最初のトゲトゲした空気から一転、恋する乙女2人によるむず痒い空気が部屋に広がっていた。
「私たちは、ライバルってやつなんだね」
「そうね、恋敵ともいうわね」
「負けないんだよ」
「もちろん。私だってそう簡単に譲るつもりはないわ」
インデックスは小さな両手をぐっと握りしめ、美琴は両腕を組むとふんっと鼻を鳴らす。
「じゃぁ、仲良くしないとだね」
「はぁ?」
インデックスは右手をスッと出すと美琴を見る。握手を求めているようだ。
「……ライバルじゃないの?」
「ライバルは友達になるもんなんだよ」
インデックスは可愛らしく笑うと、無理矢理に美琴の手を取って握手をする。
「アンタに教えられるとはね。私もまだまだだわ……………でも、友達でも容赦はしないわよ?」
「望むところなんだよ。恨みっこはなしだからね」
美琴はインデックスの手を握り返すと、目の前で微笑むシスターに笑い返す。
「じゃぁ、まずは名前で呼んでよ。短髪じゃなくてさ………美琴、って」
「わかったよ、みこと。私の事もインデックスって呼ぶんだよ」
「んっ、よろしくね、インデックス!」
「こちらこそなんだよ」
女同士で話があると言って上条を部屋から追い出し、ガラステーブルで向き合って話し合ったのだったのだ。
「ねぇ、短髪。短髪ととうまはどういう関係なの?」
「それはコッチのセリフよ。アンタこそあの馬鹿とどういう関係なのよ?」
「私はとうまに助けてもらって、それからここで住ませてもらってるんだよ」
「なんだ、アンタも助けてもらったってやつか」
美琴は上条の相変わらずの部分に呆れて肩をすくめる。美琴の言葉にインデックスも察したようで同じような顔をしていた。
「そういう短髪もとうまに助けてもらった人?」
「そうなるわね。頼んでもないのに首を突っ込んできて一方的に助けてもらった感じかな」
「むぅ。やっぱりとうまはとうまなんだね」
「そ、アイツは誰にでもあんな奴なのよ」
2人はさっき外に追い出した上条の性格を思い出し、もう一度溜息をつく。全く同じタイミングに出た溜息に2人は見つめあう。
「ぷっ、はははっ……アンタも大変よね」
「あはははっ……短髪も苦労してるんだね」
あの馬鹿のせいよね、と言いながら2人は笑いあう。同じ苦労を知る者として通じる部分があったのだろう。
「で、さ……1つ聞いてもいい?」
「なにかな、短髪」
「アンタも、その………なんていうかな……」
美琴は目線を合わせないまでも、チラチラとインデックスを見る。
「短髪、言いたいことはハッキリ言わないと分からないんだよ」
「そうね………」
美琴は大きく深呼吸をすると、両頬を手で叩く。
「アンタも、アイツの事、好きなの?」
「………うん」
「そっか………」
「短髪も?」
「………うん」
最初のトゲトゲした空気から一転、恋する乙女2人によるむず痒い空気が部屋に広がっていた。
「私たちは、ライバルってやつなんだね」
「そうね、恋敵ともいうわね」
「負けないんだよ」
「もちろん。私だってそう簡単に譲るつもりはないわ」
インデックスは小さな両手をぐっと握りしめ、美琴は両腕を組むとふんっと鼻を鳴らす。
「じゃぁ、仲良くしないとだね」
「はぁ?」
インデックスは右手をスッと出すと美琴を見る。握手を求めているようだ。
「……ライバルじゃないの?」
「ライバルは友達になるもんなんだよ」
インデックスは可愛らしく笑うと、無理矢理に美琴の手を取って握手をする。
「アンタに教えられるとはね。私もまだまだだわ……………でも、友達でも容赦はしないわよ?」
「望むところなんだよ。恨みっこはなしだからね」
美琴はインデックスの手を握り返すと、目の前で微笑むシスターに笑い返す。
「じゃぁ、まずは名前で呼んでよ。短髪じゃなくてさ………美琴、って」
「わかったよ、みこと。私の事もインデックスって呼ぶんだよ」
「んっ、よろしくね、インデックス!」
「こちらこそなんだよ」
「なるほど、そんなことがあったんですね」
「結局、私は負けちゃったけどね。だから、とうま、みことを泣かせたら許さないんだよ」
「はいはい、わかってますよー。上条さんは、すでに1万人近くと同じ約束してます」
3人は上条の用意した朝食を食べ終えて空港に向かう準備をしている。インデックスの持ち物はあまりないため、それほどバタバタすることもない。
「みこと、元気ないね。どうしたの?」
「んー、アンタと仲良くなれてあんまり経ってないのにもうお別れか、と思ってさ」
「むむむ。そう言われるとなんか急に寂しくなってきたんだよ」
インデックスは荷造りの手を休めてぺたんと座りこむ。
「このベランダでとうまと出会ってから……まだ半年くらいなんだよね」
色んな事があったからもっと長く感じるんだよ、と振り返る。本当に色んなことがありすぎた。
「毎回毎回、とうまは無茶するし、私を頼ってくれないし。心配もいっぱいしたんだよ!」
「それに関しては言い訳のしようもねぇ……」
インデックスに睨まれ、上条は頭を掻く。美琴はそんな2人を見ると微笑ましいような、羨ましいような不思議な気分になった。
「ほんと、アンタら仲いいわね。ちょっと妬けるわ」
「むー。それは私へのあてつけかもしれないんだよ」
インデックスは頬を膨らませながら美琴の背中をぽかぽかと叩く。
「ごめんごめんっ、そんなつもりじゃないって」
いたいいたい。もんどうむようなんだよ。と仲良し姉妹のようにじゃれあう2人を見て、上条は頬を緩ませた。
「なんかさ、俺は家族で過ごした記憶ってのが無いわけだけど……」
上条は呟く。『竜王の殺息』によって失った、家族との記憶。それは上条にとって想像すらできない。
「こんな感じなんかな、って思うんだよな。お前らを見てると仲良しの妹2人を見る兄貴みたいな気分だ」
微笑ましいものを見る目をしている上条に、じゃれあっていた2人は白い目を送る。
「な、なんだよ、その目は」
「………アンタが兄貴ってのもなんだわね」
「ちょっと頼りないかも」
「あ、あんまりだ………」
上条はずーんと肩を落とし、いじいじと床にのの字を書く。
(ちょっと良い事言ったつもりだったのに………不幸だ)
「ねぇ、とうま。私にも家族っていうのがどんなのか分からないけどね」
インデックスは上条の隣まで来ると、ちょこんと座る。
「それでも、とうまのことは家族だと思ってるよ。お兄ちゃんとは呼べないけどね」
インデックスは悪戯っぽく舌を出すと、荷造りに戻っていった。
「じゃぁ、私とも家族になるわね。インデックス」
美琴は頬を染めつつ、荷造りをするインデックスの背に呼び掛ける。インデックスは『友達じゃなくて?』とかいた顔だけ美琴に向ける。
「そそそ、そりゃ、あれよ………わたっ、私と、当麻が……けけ結婚すればそう、なるでしょうよ」
「…………」
「…………」
顔を真っ赤にしている美琴を、2人の無表情な視線が突き刺さる。美琴の顔はその間もどんどんと赤くなっていく。
「み、美琴?今のはプロポーズでせうか?」
「こんなに惚気るなんて、とうまよりもみことの方が厄介かもしれないんだよ」
「だぁぁぁぁっ!!今のは忘れなさい!!」
顔を真っ赤にした美琴が帯電を始める。上条はその頭に右手を置き、インデックスに荷造りが済んだことを確認する。
「あとはスフィンクスを持つだけだよ」
「じゃぁ、そろそろ行きますか。美琴、ビリビリしてねぇでキャリーバック持ってくれ。」
上条は腰を上げると、インデックスの荷物を持ち玄関に向かう。顔を赤くしたままの美琴が持っているネコ用キャリーバックの主であるスフィンクスはインデックスの手の中だ。
「ここに来るのも最後かな?」
「何言ってんだ、いつでも遊びに帰ってこい」
「そうよ。私もアンタと一緒に遊んでみたいしね」
「うん。ありがとう、とうま、みこと」
3人は玄関を出ると仲良く空港に向かう。本当の家族のように。
「結局、私は負けちゃったけどね。だから、とうま、みことを泣かせたら許さないんだよ」
「はいはい、わかってますよー。上条さんは、すでに1万人近くと同じ約束してます」
3人は上条の用意した朝食を食べ終えて空港に向かう準備をしている。インデックスの持ち物はあまりないため、それほどバタバタすることもない。
「みこと、元気ないね。どうしたの?」
「んー、アンタと仲良くなれてあんまり経ってないのにもうお別れか、と思ってさ」
「むむむ。そう言われるとなんか急に寂しくなってきたんだよ」
インデックスは荷造りの手を休めてぺたんと座りこむ。
「このベランダでとうまと出会ってから……まだ半年くらいなんだよね」
色んな事があったからもっと長く感じるんだよ、と振り返る。本当に色んなことがありすぎた。
「毎回毎回、とうまは無茶するし、私を頼ってくれないし。心配もいっぱいしたんだよ!」
「それに関しては言い訳のしようもねぇ……」
インデックスに睨まれ、上条は頭を掻く。美琴はそんな2人を見ると微笑ましいような、羨ましいような不思議な気分になった。
「ほんと、アンタら仲いいわね。ちょっと妬けるわ」
「むー。それは私へのあてつけかもしれないんだよ」
インデックスは頬を膨らませながら美琴の背中をぽかぽかと叩く。
「ごめんごめんっ、そんなつもりじゃないって」
いたいいたい。もんどうむようなんだよ。と仲良し姉妹のようにじゃれあう2人を見て、上条は頬を緩ませた。
「なんかさ、俺は家族で過ごした記憶ってのが無いわけだけど……」
上条は呟く。『竜王の殺息』によって失った、家族との記憶。それは上条にとって想像すらできない。
「こんな感じなんかな、って思うんだよな。お前らを見てると仲良しの妹2人を見る兄貴みたいな気分だ」
微笑ましいものを見る目をしている上条に、じゃれあっていた2人は白い目を送る。
「な、なんだよ、その目は」
「………アンタが兄貴ってのもなんだわね」
「ちょっと頼りないかも」
「あ、あんまりだ………」
上条はずーんと肩を落とし、いじいじと床にのの字を書く。
(ちょっと良い事言ったつもりだったのに………不幸だ)
「ねぇ、とうま。私にも家族っていうのがどんなのか分からないけどね」
インデックスは上条の隣まで来ると、ちょこんと座る。
「それでも、とうまのことは家族だと思ってるよ。お兄ちゃんとは呼べないけどね」
インデックスは悪戯っぽく舌を出すと、荷造りに戻っていった。
「じゃぁ、私とも家族になるわね。インデックス」
美琴は頬を染めつつ、荷造りをするインデックスの背に呼び掛ける。インデックスは『友達じゃなくて?』とかいた顔だけ美琴に向ける。
「そそそ、そりゃ、あれよ………わたっ、私と、当麻が……けけ結婚すればそう、なるでしょうよ」
「…………」
「…………」
顔を真っ赤にしている美琴を、2人の無表情な視線が突き刺さる。美琴の顔はその間もどんどんと赤くなっていく。
「み、美琴?今のはプロポーズでせうか?」
「こんなに惚気るなんて、とうまよりもみことの方が厄介かもしれないんだよ」
「だぁぁぁぁっ!!今のは忘れなさい!!」
顔を真っ赤にした美琴が帯電を始める。上条はその頭に右手を置き、インデックスに荷造りが済んだことを確認する。
「あとはスフィンクスを持つだけだよ」
「じゃぁ、そろそろ行きますか。美琴、ビリビリしてねぇでキャリーバック持ってくれ。」
上条は腰を上げると、インデックスの荷物を持ち玄関に向かう。顔を赤くしたままの美琴が持っているネコ用キャリーバックの主であるスフィンクスはインデックスの手の中だ。
「ここに来るのも最後かな?」
「何言ってんだ、いつでも遊びに帰ってこい」
「そうよ。私もアンタと一緒に遊んでみたいしね」
「うん。ありがとう、とうま、みこと」
3人は玄関を出ると仲良く空港に向かう。本当の家族のように。
第23学区。学園都市の空港がある学区だ。
上条たちはその空港で出発時間まで待っているところだ。
「搭乗手続きも終わったし、あとはのんびり待ってるだけだな」
「そうねー、アンタ、他の人には挨拶しなくていいの?」
飛行機の見える待合室の椅子に上条と美琴は隣り合って座っている。インデックスは神裂らとお土産を物色中だ。
「挨拶って言ってもな……ずっと一緒だったインデックスは別として、他の奴らは有事でしかあってねぇし」
「ふーん。アンタのことだから仲の良い女の子だらけかと思ってたけど」
「上条さんをどんな人間だと思ってるんですか?」
「別に、なんでもないわ」
美琴は上条の鈍感さに呆れ、なんとなく目線を背ける。いつか見た二重まぶたの少女がこっちを見ている。
「ねぇ、当麻。あの子、ほっといていいの?」
「あん?…………五和か、どうしたんだろ」
こっちきたらいいのに、と呟く上条に、美琴はもう何度目かわからない溜息をつく。
(この鈍感さは、もはや罪ね。苦労しそうだわ)
美琴はもう1度こっちを窺っている少女に目を向ける。ちらちらと上条と美琴に向けている顔には色んな感情が見て取れた。
美琴は上条の手を取って立たせると、キョトンとしている上条の背中をパシンと叩く。
「いってぇな、いきなりなんだってんだよ?」
「行ってあげなさい」
「で、でもよ……お前を置いてくわけは……」
「いいから。行って、話を聞いてあげなさい」
上条はしぶしぶとした顔で五和の方へと歩いて行く。美琴はもう一度溜息をついた。
(なんで私がフォローしなきゃいけないのよ)
美琴は上条が自分を気にしてくれていた事に喜びながら、何かを話している2人を見る。
頬を染めながら何かを話している少女。その目は明らかに恋する乙女のそれだ。
五和は傍から見ても一発で分かるような初心な反応を示しているのに、上条は気にする様子もない。
美琴が頬杖をつきながら見ていると、走り回っていた子供が上条にぶつかった。子供は特に気にする様子もなく走り去ったが、問題はぶつかられた上条である。
上条の顔が五和の特大オレンジに突っ込んでいた。いつかも見たような光景だ。
(あの、馬鹿っ)
自分でも帯電しているのがわかる。雷撃の槍をぶっ放しそうになるのを必死に堪える。近くにいた人がびっくりしていた。
慌てて離れて謝り倒す上条に、顔を真っ赤にした五和はぶんぶんと首を振っていた。
(あーあ、あんなに鼻の下を伸ばして……やっぱり大きい方がいいのかしら)
美琴は自分の胸を見てボリュームの少なさに落胆する。
(ちょっと癪だけど、聞いてみようかしら)
自分の母のプロポーションを思い出し、相談してみようかと考える。
そんなことをすれば『そんなの上条くんに揉んでもらえばいいのよ。美琴ちゃんがお願いすれば聞いてくれるって』とか言うに決まっている。
(まぁ、私としては……別にアイツに揉まれるのは……って何考えてんのよ)
美琴は妄想で顔を真っ赤にした。実はそんな事件は今日中に起こりうるんじゃないか、とかも思っていたりする。
因みに、この胸のコンプレックスを解消しようと、美琴は色々と努力を積んでいる。
某風紀委員の先輩の飲んでいる牛乳も飲んでみたし、某警備員みたいに肉まんを沢山食べてみたりもした。
半年前と比べたら少しは大きくなった気もしたが、その分体重も増えた。減量を試みると真っ先に胸が犠牲になったりもした。
自分で胸を触ってみる。オレンジみたいな大きさのは触ったことが無いが、自分のみたいに可愛らしい感触ではないだろう。
(あいつも大きいのがいいのかな)
ほぅ、と溜息をつく。そういえば、上条の周りには胸の大きい人が多い気がする。
「お前、なにやってんだ?」
「にょわああああああああぁぁっ!?」
いつの間にか上条が隣に戻ってきていた。美琴は驚きのあまり、さっき我慢した雷撃を打ちこむ。もちろん打ち消されてしまうのだが。
「アアアアアアアアアアンタ、いつのまにぃぃぃ!?」
「いや、戻ってきたら美琴が自分の胸見て溜息ついてたとこで戻ってきたんだけど……見られたらまずい事でもしてたのか?」
目を丸くしたまま困り顔の上条は美琴の隣に座る。美琴は『うわぁぁぁ』とか言いながら頭を抱えている。
そんな様子を見て、上条は首を傾げるしかできなかった。
上条たちはその空港で出発時間まで待っているところだ。
「搭乗手続きも終わったし、あとはのんびり待ってるだけだな」
「そうねー、アンタ、他の人には挨拶しなくていいの?」
飛行機の見える待合室の椅子に上条と美琴は隣り合って座っている。インデックスは神裂らとお土産を物色中だ。
「挨拶って言ってもな……ずっと一緒だったインデックスは別として、他の奴らは有事でしかあってねぇし」
「ふーん。アンタのことだから仲の良い女の子だらけかと思ってたけど」
「上条さんをどんな人間だと思ってるんですか?」
「別に、なんでもないわ」
美琴は上条の鈍感さに呆れ、なんとなく目線を背ける。いつか見た二重まぶたの少女がこっちを見ている。
「ねぇ、当麻。あの子、ほっといていいの?」
「あん?…………五和か、どうしたんだろ」
こっちきたらいいのに、と呟く上条に、美琴はもう何度目かわからない溜息をつく。
(この鈍感さは、もはや罪ね。苦労しそうだわ)
美琴はもう1度こっちを窺っている少女に目を向ける。ちらちらと上条と美琴に向けている顔には色んな感情が見て取れた。
美琴は上条の手を取って立たせると、キョトンとしている上条の背中をパシンと叩く。
「いってぇな、いきなりなんだってんだよ?」
「行ってあげなさい」
「で、でもよ……お前を置いてくわけは……」
「いいから。行って、話を聞いてあげなさい」
上条はしぶしぶとした顔で五和の方へと歩いて行く。美琴はもう一度溜息をついた。
(なんで私がフォローしなきゃいけないのよ)
美琴は上条が自分を気にしてくれていた事に喜びながら、何かを話している2人を見る。
頬を染めながら何かを話している少女。その目は明らかに恋する乙女のそれだ。
五和は傍から見ても一発で分かるような初心な反応を示しているのに、上条は気にする様子もない。
美琴が頬杖をつきながら見ていると、走り回っていた子供が上条にぶつかった。子供は特に気にする様子もなく走り去ったが、問題はぶつかられた上条である。
上条の顔が五和の特大オレンジに突っ込んでいた。いつかも見たような光景だ。
(あの、馬鹿っ)
自分でも帯電しているのがわかる。雷撃の槍をぶっ放しそうになるのを必死に堪える。近くにいた人がびっくりしていた。
慌てて離れて謝り倒す上条に、顔を真っ赤にした五和はぶんぶんと首を振っていた。
(あーあ、あんなに鼻の下を伸ばして……やっぱり大きい方がいいのかしら)
美琴は自分の胸を見てボリュームの少なさに落胆する。
(ちょっと癪だけど、聞いてみようかしら)
自分の母のプロポーションを思い出し、相談してみようかと考える。
そんなことをすれば『そんなの上条くんに揉んでもらえばいいのよ。美琴ちゃんがお願いすれば聞いてくれるって』とか言うに決まっている。
(まぁ、私としては……別にアイツに揉まれるのは……って何考えてんのよ)
美琴は妄想で顔を真っ赤にした。実はそんな事件は今日中に起こりうるんじゃないか、とかも思っていたりする。
因みに、この胸のコンプレックスを解消しようと、美琴は色々と努力を積んでいる。
某風紀委員の先輩の飲んでいる牛乳も飲んでみたし、某警備員みたいに肉まんを沢山食べてみたりもした。
半年前と比べたら少しは大きくなった気もしたが、その分体重も増えた。減量を試みると真っ先に胸が犠牲になったりもした。
自分で胸を触ってみる。オレンジみたいな大きさのは触ったことが無いが、自分のみたいに可愛らしい感触ではないだろう。
(あいつも大きいのがいいのかな)
ほぅ、と溜息をつく。そういえば、上条の周りには胸の大きい人が多い気がする。
「お前、なにやってんだ?」
「にょわああああああああぁぁっ!?」
いつの間にか上条が隣に戻ってきていた。美琴は驚きのあまり、さっき我慢した雷撃を打ちこむ。もちろん打ち消されてしまうのだが。
「アアアアアアアアアアンタ、いつのまにぃぃぃ!?」
「いや、戻ってきたら美琴が自分の胸見て溜息ついてたとこで戻ってきたんだけど……見られたらまずい事でもしてたのか?」
目を丸くしたまま困り顔の上条は美琴の隣に座る。美琴は『うわぁぁぁ』とか言いながら頭を抱えている。
そんな様子を見て、上条は首を傾げるしかできなかった。
「あー、美琴さん?大丈夫でせうか?」
「…………」
「美琴さん?」
美琴は頭を抱えたまま固まっている。上条はどうしたもんか、腕を組んで悩む。
「………………ねぇ、当麻。1つ、聞いていい?」
「なんだよ?」
「当麻は、胸が大きい方が好き?」
上条はぶぅっ、と吹き出し一気に顔を赤くする。お茶を飲んでいなくて良かった、と上条は思った。
「んなっ、いきなりなんだ?どっから沸いた疑問だ、そりゃ?」
「…………」
美琴は答えない。答えられない、と言った方が正しいのか、きゅっと口を閉めて上条を見ている。
「………美琴?」
「……………」
何も答えない美琴の両頬に手をやり、上条はむにぃと引っ張る。
「っ!?にゃにふんにょよ」
「くっだらねぇ事で悩んでんじゃねぇよ」
上条は両手を離すと、今度は右手で美琴の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「俺は御坂美琴が大好きだって言ったじゃねぇか。それじゃダメなんかよ?」
「………」
「そりゃ、あれですよ。上条さんも年頃の男の子ですから女の子のそういう部分に興味が無いわけではないです。むしろアリアリですけどね」
「………」
「でも、そんなもん全部無視して、俺は美琴が好きなんだよ。むしろ、美琴の胸が好きっ!?」
全てを言いきる前に、美琴の拳が上条の胸に突き刺さる。上条はいってぇと言いながら微笑んでいた。
「元気でたかよ?」
「………ばか」
美琴は頭を撫でられながら、どこか満足そうに微笑み返す。
上条はそんな美琴から手を離すと腕を組んでニヤニヤとした顔で美琴を見る。
「ったく、美琴せんせーもそんなこと気にするんですねぇ」
上条の手が離れて少し名残惜しそうな美琴はほんのりと涙を浮かべている。ぷぅと膨れている表情も可愛くて仕方がない。
「アンタが悪いのよ」
「俺が?」
「アンタがあの子の胸に飛び込んでニヤニヤしてるから悪いんでしょーがっ!!」
ビリビリィ、と至近距離で電撃を飛ばされ、上条は慌てて右手をかざす。
「いきなりはやめてくれ、ほんと。間に合わなかったら痺れるんですよ?」
「ふんっ、アンタの行い次第ね。で、さっきの話はなんだったのよ?」
美琴はプイと顔を背ける。相変わらず素直になれない美琴であるが、実のところ上条が五和と何を話していたのか気になって仕方なかったのだ。
「別に大した話はしてねぇよ」
「嘘ね。どうせまた告白でもされたんでしょ?」
「な、なんでわかったでせうか?」
上条は『なんだってぇぇっ』くらいに大げさに驚く。
(ほんと、なんでここまで鈍感なのかしら。見てたら誰でもわかるでしょ)
ネタでやってるんじゃないかと思うくらいの鈍感さに呆れを通り越して物も言えない。
「で、なんて答えたのよ?」
「言わなきゃいけませんか?」
美琴は何も言わずにじっと睨みつける。上条は暫く悩んだ後、諦めたように口を開く。
「まず初めに『あの人とはどのような関係ですか?』って聞かれてな。恋人だ、って答えた」
「うん」
「で、『それでも私があなたを好きなのは変わりません』って言われちまってよ」
「そんで鼻の下伸ばしてたの?」
「馬鹿野郎、んなわけねぇだろ。気持ちは嬉しいけど、俺は美琴のことしか想えねぇって言ったよ、ハッキリな」
上条は顔を背ける。珍しく耳まで赤くなっている。
(本人前にして言う様なセリフじゃねぇぞ)
本人を前にしなくても十二分に恥ずかしいセリフなのだが、美琴中毒気味の上条は気付きもしない。
「ふ、ふ」
「ふ?」
「ふにゃぁぁぁ」
「またこの展開か、こんにゃろぉぉぉぉぉっ!!」
「…………」
「美琴さん?」
美琴は頭を抱えたまま固まっている。上条はどうしたもんか、腕を組んで悩む。
「………………ねぇ、当麻。1つ、聞いていい?」
「なんだよ?」
「当麻は、胸が大きい方が好き?」
上条はぶぅっ、と吹き出し一気に顔を赤くする。お茶を飲んでいなくて良かった、と上条は思った。
「んなっ、いきなりなんだ?どっから沸いた疑問だ、そりゃ?」
「…………」
美琴は答えない。答えられない、と言った方が正しいのか、きゅっと口を閉めて上条を見ている。
「………美琴?」
「……………」
何も答えない美琴の両頬に手をやり、上条はむにぃと引っ張る。
「っ!?にゃにふんにょよ」
「くっだらねぇ事で悩んでんじゃねぇよ」
上条は両手を離すと、今度は右手で美琴の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「俺は御坂美琴が大好きだって言ったじゃねぇか。それじゃダメなんかよ?」
「………」
「そりゃ、あれですよ。上条さんも年頃の男の子ですから女の子のそういう部分に興味が無いわけではないです。むしろアリアリですけどね」
「………」
「でも、そんなもん全部無視して、俺は美琴が好きなんだよ。むしろ、美琴の胸が好きっ!?」
全てを言いきる前に、美琴の拳が上条の胸に突き刺さる。上条はいってぇと言いながら微笑んでいた。
「元気でたかよ?」
「………ばか」
美琴は頭を撫でられながら、どこか満足そうに微笑み返す。
上条はそんな美琴から手を離すと腕を組んでニヤニヤとした顔で美琴を見る。
「ったく、美琴せんせーもそんなこと気にするんですねぇ」
上条の手が離れて少し名残惜しそうな美琴はほんのりと涙を浮かべている。ぷぅと膨れている表情も可愛くて仕方がない。
「アンタが悪いのよ」
「俺が?」
「アンタがあの子の胸に飛び込んでニヤニヤしてるから悪いんでしょーがっ!!」
ビリビリィ、と至近距離で電撃を飛ばされ、上条は慌てて右手をかざす。
「いきなりはやめてくれ、ほんと。間に合わなかったら痺れるんですよ?」
「ふんっ、アンタの行い次第ね。で、さっきの話はなんだったのよ?」
美琴はプイと顔を背ける。相変わらず素直になれない美琴であるが、実のところ上条が五和と何を話していたのか気になって仕方なかったのだ。
「別に大した話はしてねぇよ」
「嘘ね。どうせまた告白でもされたんでしょ?」
「な、なんでわかったでせうか?」
上条は『なんだってぇぇっ』くらいに大げさに驚く。
(ほんと、なんでここまで鈍感なのかしら。見てたら誰でもわかるでしょ)
ネタでやってるんじゃないかと思うくらいの鈍感さに呆れを通り越して物も言えない。
「で、なんて答えたのよ?」
「言わなきゃいけませんか?」
美琴は何も言わずにじっと睨みつける。上条は暫く悩んだ後、諦めたように口を開く。
「まず初めに『あの人とはどのような関係ですか?』って聞かれてな。恋人だ、って答えた」
「うん」
「で、『それでも私があなたを好きなのは変わりません』って言われちまってよ」
「そんで鼻の下伸ばしてたの?」
「馬鹿野郎、んなわけねぇだろ。気持ちは嬉しいけど、俺は美琴のことしか想えねぇって言ったよ、ハッキリな」
上条は顔を背ける。珍しく耳まで赤くなっている。
(本人前にして言う様なセリフじゃねぇぞ)
本人を前にしなくても十二分に恥ずかしいセリフなのだが、美琴中毒気味の上条は気付きもしない。
「ふ、ふ」
「ふ?」
「ふにゃぁぁぁ」
「またこの展開か、こんにゃろぉぉぉぉぉっ!!」
ぴんぽんぱんぽーん、と小気味いい音が館内に響く。
『11時45分発、イギリス行きの搭乗時刻となりました。お忘れ物の内容にご搭乗お願いします』
アナウンスが流れる。とうとう時間となった。
「とうま、みこと、それじゃぁ一旦お別れなんだよ」
「あぁ、あんまし迷惑かけんじゃねぇぞ」
「イギリスに行っても元気でね」
搭乗ゲートの前で上条はインデックスに荷物を渡す。
「インデックス、私が持ちましょうか?」
「ううん、自分で持つよ。ありがとうね、かおり」
そうですか、と神裂は自分の荷物を抱える。相変わらずの格好であるが、『七天七刀』を袋に入れてあるだけマシだろうか。
「神裂も元気でな。あんまりエロい格好で出歩くなよ、お前なら襲われても負けねぇとは思うが……」
「んなっ!?べ、別にエロい格好などしていません!最後に言うのがそれというのはあんまりではないですか、上条当麻」
「はははっ、気にすんなよ。俺としては最後ってつもりもねぇし。会えなくなるわけじゃねぇだろう?」
それはそうですが、と歯切れの悪い神裂に後ろから建宮がボソボソと何かを言っている。
みるみる内に神裂が赤くなり、聖人の力をフルに利用した拳が建宮の顔面に突き刺さる。ものすごい勢いでゲートをくぐり、搭乗タラップに飛んで行った。
「ねぇ、インデックス、あの人大丈夫なの?」
「いつものことだから気にしなくてもいいんだよ。むしろ、かおりの力に驚かないみことが凄いと思う」
「ツッコミどころが多すぎるわ、アンタら」
世界は広いわね、と美琴は目を丸くしてぷんぷんとゲートをくぐっていく神裂を見ていた。
天草式のメンバーもゲートをくぐり終え、残るはインデックスとステイルのみである。
「ステイル、インデックスの世話、しっかり頼むぜ」
「まったく君はこの子を馬鹿にしすぎじゃないかな?1人でも色々と出来るようになったんだろう?」
「そうだよ。掃除もご飯もだいぶ出来るようになったよ」
あとは洗濯だけだもん、とインデックスが膨れる。
「そうだな、悪い。インデックス、ステイルの世話、しっかり頼むぜ」
「任せるんだよ!」
「っ!インデックス、君まで僕を馬鹿にするのか?」
ステイルは生活能力が無いと馬鹿にされた事を憤る。まさかインデックスにまで馬鹿にされるとは思わなかったのであろう、心なしか悲しそうだ。
「ステイル、全部私が教えてあげるんだよ。洗濯は修業しなきゃだけどね」
「……むむむ」
インデックスににっこりと笑いかけられ、ステイルは何も言い返せずに搭乗ゲートをくぐって行った。
「もう、お別れだね」
「インデックス、いつでも帰ってきなさいよ」
美琴はインデックスの手を握るとぶんぶんと振る。強がった口調とは裏腹に2人の目には涙が浮かんでいる。
「さっきも神裂に言ったけどよ、会えなくなるわけじゃねぇんだし。お前が困った時はいつでも飛んで行ってやるからよ」
学園都市の超音速旅客機に乗れば一瞬だしな、と上条は続ける。
「そんときは私も駆けつけてあげるから」
うん、とインデックスは頷く。搭乗タラップから神裂の『もう時間ですよ』という声が聞こえてくる。
「じゃあね、とうま、みこと。バイバイ」
「うん。バイバイ、インデックス」
「………違う」
「とうま?」
「どしたの、当麻?」
インデックスと美琴は心配そうに上条の顔を覗き込む。
「違うぞ、インデックス。ここは『行ってきます』って言うところだろ」
家族が出かけるんだからな、と上条は言う。キョトンとしたインデックスの横で美琴はくすっと笑うと、上条の言葉に続ける。
「そうね。アンタはちょっとお出かけするだけなんだから、私も言い直さないとね。行ってらっしゃい、インデックス」
「……今度帰ってきたら、『ただいま』って言うんだぞ!行ってらっしゃい、インデックス」
上条と美琴は、涙を浮かべながらインデックスの手を握る。インデックスはそれに応じるかのように微笑んだ。
「うん。行ってきます、みこと、とうま。結婚式には呼んでくれないと怒るんだよ!」
ぎゅっと手を握り返すと、インデックスは搭乗口に駆けて行った。
『11時45分発、イギリス行きの搭乗時刻となりました。お忘れ物の内容にご搭乗お願いします』
アナウンスが流れる。とうとう時間となった。
「とうま、みこと、それじゃぁ一旦お別れなんだよ」
「あぁ、あんまし迷惑かけんじゃねぇぞ」
「イギリスに行っても元気でね」
搭乗ゲートの前で上条はインデックスに荷物を渡す。
「インデックス、私が持ちましょうか?」
「ううん、自分で持つよ。ありがとうね、かおり」
そうですか、と神裂は自分の荷物を抱える。相変わらずの格好であるが、『七天七刀』を袋に入れてあるだけマシだろうか。
「神裂も元気でな。あんまりエロい格好で出歩くなよ、お前なら襲われても負けねぇとは思うが……」
「んなっ!?べ、別にエロい格好などしていません!最後に言うのがそれというのはあんまりではないですか、上条当麻」
「はははっ、気にすんなよ。俺としては最後ってつもりもねぇし。会えなくなるわけじゃねぇだろう?」
それはそうですが、と歯切れの悪い神裂に後ろから建宮がボソボソと何かを言っている。
みるみる内に神裂が赤くなり、聖人の力をフルに利用した拳が建宮の顔面に突き刺さる。ものすごい勢いでゲートをくぐり、搭乗タラップに飛んで行った。
「ねぇ、インデックス、あの人大丈夫なの?」
「いつものことだから気にしなくてもいいんだよ。むしろ、かおりの力に驚かないみことが凄いと思う」
「ツッコミどころが多すぎるわ、アンタら」
世界は広いわね、と美琴は目を丸くしてぷんぷんとゲートをくぐっていく神裂を見ていた。
天草式のメンバーもゲートをくぐり終え、残るはインデックスとステイルのみである。
「ステイル、インデックスの世話、しっかり頼むぜ」
「まったく君はこの子を馬鹿にしすぎじゃないかな?1人でも色々と出来るようになったんだろう?」
「そうだよ。掃除もご飯もだいぶ出来るようになったよ」
あとは洗濯だけだもん、とインデックスが膨れる。
「そうだな、悪い。インデックス、ステイルの世話、しっかり頼むぜ」
「任せるんだよ!」
「っ!インデックス、君まで僕を馬鹿にするのか?」
ステイルは生活能力が無いと馬鹿にされた事を憤る。まさかインデックスにまで馬鹿にされるとは思わなかったのであろう、心なしか悲しそうだ。
「ステイル、全部私が教えてあげるんだよ。洗濯は修業しなきゃだけどね」
「……むむむ」
インデックスににっこりと笑いかけられ、ステイルは何も言い返せずに搭乗ゲートをくぐって行った。
「もう、お別れだね」
「インデックス、いつでも帰ってきなさいよ」
美琴はインデックスの手を握るとぶんぶんと振る。強がった口調とは裏腹に2人の目には涙が浮かんでいる。
「さっきも神裂に言ったけどよ、会えなくなるわけじゃねぇんだし。お前が困った時はいつでも飛んで行ってやるからよ」
学園都市の超音速旅客機に乗れば一瞬だしな、と上条は続ける。
「そんときは私も駆けつけてあげるから」
うん、とインデックスは頷く。搭乗タラップから神裂の『もう時間ですよ』という声が聞こえてくる。
「じゃあね、とうま、みこと。バイバイ」
「うん。バイバイ、インデックス」
「………違う」
「とうま?」
「どしたの、当麻?」
インデックスと美琴は心配そうに上条の顔を覗き込む。
「違うぞ、インデックス。ここは『行ってきます』って言うところだろ」
家族が出かけるんだからな、と上条は言う。キョトンとしたインデックスの横で美琴はくすっと笑うと、上条の言葉に続ける。
「そうね。アンタはちょっとお出かけするだけなんだから、私も言い直さないとね。行ってらっしゃい、インデックス」
「……今度帰ってきたら、『ただいま』って言うんだぞ!行ってらっしゃい、インデックス」
上条と美琴は、涙を浮かべながらインデックスの手を握る。インデックスはそれに応じるかのように微笑んだ。
「うん。行ってきます、みこと、とうま。結婚式には呼んでくれないと怒るんだよ!」
ぎゅっと手を握り返すと、インデックスは搭乗口に駆けて行った。
上条と美琴は空港の展望ブリッジにいる。インデックス達を乗せた旅客機はその高度をあげ、どんどんと小さくなっていく。
「行っちゃった、ね」
「あぁ」
美琴と上条は小さくなる機影を眺めている。さっきまで目の前にあった旅客機は既に豆粒のサイズになっている。
「寂しくなるわね」
「そうだな」
機影が完全に見えなくなり、青い空には雲だけが浮かんでいる。
「さ、美琴せんせー。しんみりとした空気もここまでだ!デート行くぞ―」
「ちょっと、アンタ!そんな大声で言わないでよ」
行くぞ―、と上条は美琴の腕を掴むとずんずんと歩いて行く。
美琴はそんな積極的というか、自暴自棄にも見える上条の隣まで追いつくと、その腕に思いっきり抱きつく。
「っっ!?」
「あらぁ?そんなに驚いてどうしたのかなぁ?」
美琴は流し目で上条を見る。上条としては腕にあたる柔らかい感触にドギマギしているところだ。
「みみみ、美琴さん?色々と当たってるんですど?」
「当麻は大好きなんでしょ?私の胸」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。上条はちくしょう、と歯噛みしなるべく腕を意識しないように歩く。
傍から見れば初々しいバカップルにしか見えず、クリスマスでもなければ呪い殺されそうだ。
「で、結局、何処に行くのよ?」
「あー、どうすっかなぁ……」
上条は何気なく観光案内の掲示板を見る。外部からやってきた人用に掲示されている物だが、中の人が見ても困ることはない。
むしろ、行き先に困っている上条達にはおあつらえ向きと言ったところか。
「んー、どうせならクリスマス限定、みたいなところがいいよな」
「そうね……夕食も美味しいとこ予約は、間に合わないかなぁ」
「電話するだけしてみりゃいいだろ」
上条はレストランリストの紙を取ると美琴に手渡す。迷うには十分の量がリストアップされていた。
「んー、よし。こことかいい感じだな」
上条は掲示されたポスターを見ながらデートプランを考えると、レストランリストに目を通している美琴を促し空港を出る。
「取りあえず、夜まではその辺を歩くか。クリスマスプレゼントも用意してねぇし、見に行くか」
そうね、と言い美琴は上条の右腕に抱きつく。
「でも、行くとこ決まったんじゃないの?」
「夜中のイベントなんですよー。晩飯食ってからだな」
「私には門限あること忘れてない?」
「守る気もねぇんだろ?」
上条は美琴が見ていたリストを眺めながら駅を目指す。別の学区に移動しなければ、23学区には空港くらいしかない。
「あーあ、優秀な美琴ちゃんが当麻のせいで悪い子になりますよー」
「じゃぁ、デートはやめて帰るか?送ってくぞ?」
なんなら一緒に寮監さんに謝ってやる、と上条が言うのを聞き流し、美琴は上条に身体を寄せる。
「ううん。言ったでしょ、インデックスが羨むくらい思いっきり楽しんであげましょ」
美琴は満面の笑みを浮かべると、上条の腕を引くように駅へと向かった。
「行っちゃった、ね」
「あぁ」
美琴と上条は小さくなる機影を眺めている。さっきまで目の前にあった旅客機は既に豆粒のサイズになっている。
「寂しくなるわね」
「そうだな」
機影が完全に見えなくなり、青い空には雲だけが浮かんでいる。
「さ、美琴せんせー。しんみりとした空気もここまでだ!デート行くぞ―」
「ちょっと、アンタ!そんな大声で言わないでよ」
行くぞ―、と上条は美琴の腕を掴むとずんずんと歩いて行く。
美琴はそんな積極的というか、自暴自棄にも見える上条の隣まで追いつくと、その腕に思いっきり抱きつく。
「っっ!?」
「あらぁ?そんなに驚いてどうしたのかなぁ?」
美琴は流し目で上条を見る。上条としては腕にあたる柔らかい感触にドギマギしているところだ。
「みみみ、美琴さん?色々と当たってるんですど?」
「当麻は大好きなんでしょ?私の胸」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。上条はちくしょう、と歯噛みしなるべく腕を意識しないように歩く。
傍から見れば初々しいバカップルにしか見えず、クリスマスでもなければ呪い殺されそうだ。
「で、結局、何処に行くのよ?」
「あー、どうすっかなぁ……」
上条は何気なく観光案内の掲示板を見る。外部からやってきた人用に掲示されている物だが、中の人が見ても困ることはない。
むしろ、行き先に困っている上条達にはおあつらえ向きと言ったところか。
「んー、どうせならクリスマス限定、みたいなところがいいよな」
「そうね……夕食も美味しいとこ予約は、間に合わないかなぁ」
「電話するだけしてみりゃいいだろ」
上条はレストランリストの紙を取ると美琴に手渡す。迷うには十分の量がリストアップされていた。
「んー、よし。こことかいい感じだな」
上条は掲示されたポスターを見ながらデートプランを考えると、レストランリストに目を通している美琴を促し空港を出る。
「取りあえず、夜まではその辺を歩くか。クリスマスプレゼントも用意してねぇし、見に行くか」
そうね、と言い美琴は上条の右腕に抱きつく。
「でも、行くとこ決まったんじゃないの?」
「夜中のイベントなんですよー。晩飯食ってからだな」
「私には門限あること忘れてない?」
「守る気もねぇんだろ?」
上条は美琴が見ていたリストを眺めながら駅を目指す。別の学区に移動しなければ、23学区には空港くらいしかない。
「あーあ、優秀な美琴ちゃんが当麻のせいで悪い子になりますよー」
「じゃぁ、デートはやめて帰るか?送ってくぞ?」
なんなら一緒に寮監さんに謝ってやる、と上条が言うのを聞き流し、美琴は上条に身体を寄せる。
「ううん。言ったでしょ、インデックスが羨むくらい思いっきり楽しんであげましょ」
美琴は満面の笑みを浮かべると、上条の腕を引くように駅へと向かった。