とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 御坂美琴の好感度を上げてみた? 1



――御坂 自室にて

思い返してみれば、今日のあいつの様子はなんだか最初から変だったな。

 と、消灯時間の過ぎた寮の自室のベットの中で、頭から毛布をかぶった御坂美琴はそう独りごちた。

 まあ、始まりというか、御坂があいつこと帰宅途中と思しき上条当麻に声をかけたところまではいつも通りの展開だった。

 そのままの流れで行くと、嫌な顔をしながらげっビリビリとか言われたり、急いでるからまたな~とスルーされたり、

 不幸だー!!と叫ばれたりと、すげない扱いをされることが常なのだが、今日に限って、

「丁度良かった。お前のこと捜してたんだ。御坂」

 なんて台詞を笑顔とともに言われたのだ。

 余りに予想外すぎる対応のせいで、一瞬動きを止めた美琴だったが、その意味を理解したと同時に頬を赤く染めて、完全に動きを止めてしまった。

「な、え、えっと、その、さ、捜してたって…その、わ、私のこと?」

 どもり、つっかえ、ようやく口にできたのはそんな確認の台詞だけ。

 そんな美琴の態度など気に留める様子もなく、ごそごそと鞄を漁っていた当麻はそこからひょいと緑色の物体を取り出した。

 ほいっと渡されたそれを受け取ってよく見てみれば、それは美琴が収集しているカエルのマスコット、ゲコ太の人形だった。

 美琴の目の色が変わった。テンションが先ほどとは違う方向に急上昇していく。

「え、ええ! これ、ゲコ太!? なんで、どうしてアンタがこんなの持ってるの!? っていうかくれるの!? い、一体何が目的よ。
ゲコ太の身柄引渡しの条件に、私に何を要求しようっての!?」

「落ち着け御坂。上条さん犯罪行為なんてしてませんよ。ゲーセンに行った時、景品になってるのを見かけたんで取ってきたんだよ。お前、これ集めてるんだろ?」

「ま、まあそうなんだけど…ってちょっと待って。アンタ、わざわざ取ってきたの?」

「まぁな。あれ、もしかしてもう、持ってたか?」

「う、ううん。持ってない。っていうか、その、わたしが聞きたいのそっちじゃなくて…」

 赤らめた顔を伏せ、もごもごと口ごもりながら、美琴はチラリと当麻へ視線を向けた。胸の鼓動が早くなっていくのがわかる、どうしよう。どう返事しよう。ええい、これしきのことで取り乱すな。御坂美琴!

 俯いたままぶんぶんと首を横に振った美琴は、ぐわっという効果音が付きそうな勢いで顔を上げた。

「ああもう! 何でもないわよ。と、とにかく、ありがと。貰って置くわ。で、アンタの用事ってこれだけ? な、ならあたしもう帰るわよ。こう見えても常盤台のお嬢様は忙しいんだから」

 嘘である。つい先ほどまで暇を持て余していたのだが、そんなことは言えない。憎まれ口を叩きつつ、プイッと横を向けた顔は、林檎のように赤くなっていたがそんなことは全力でスルーした。

「今日のところはな、お、そうだ御坂、今度暇なら一緒に行ってみるか? これ以外にも色々あったぞ」

「ふえっ!? ほ、他にもあるの? い、行く。今度じゃなくて今から行く。ほら、早く案内しなさいよ!」

「って、おいおい、お前、今日は忙しいんだろ? 俺もスーパーの特売に行かなきゃならないしまた今度な。都合のいいとき電話しろよ。じゃな~」

「あっ、ちょっと待ちなさいってば! こらー!」

 走り去る背中に声をかけるも、振り返ることもなく、ひらひらと手を振りながら当麻は駆けていってしまった。

 ああ、忙しいなんて出任せ言わなければ良かったな。と、後悔していた美琴が、当麻と一緒に遊びに行く約束を取り付けられたのだと言うことに気付いたのは、それからたっぷり五分は経ってからのことだった。

 と、そんな今日一日の事を思い返しながら、美琴はパカパカと携帯を開け閉めする。

 あの時、当麻は都合の付く時間を連絡しろと言っていた。つまりこちらから、日時は連絡しないといけないわけなのだが、

(ああ、もう、何でそれだけのことなのに、電話もメールも出せないのよ~)

 胸にひしと掻き抱くゲコ太人形を見つめながら、美琴はイヤイヤと駄々をこねるように首を振る。既に携帯の画面には上条当麻の電話番号が表示されており、後は通話ボタンを押すだけで、繋がると言うのに。

 だというのに、指が震える。押せない。どうしても押せない。どうしてなんだろう、理由がわからない。こんな簡単なことなのに。

 胸のうちに名前のわからない感情が渦巻いている。その何かを抑えるように、美琴はより一層強くゲコ太人形を抱きしめる。

 黒子がジャッジメントの仕事で駆り出されているのが幸いした。こんな姿、後輩にはとても見せられない。

 深く深く溜め息をつく。明かりの消えた自室で、美琴は一人煩悶し続けるのだった。

――そのころの上条

「だぁ~はっはっはっはっ。作戦成功だ。この上条当麻の頭脳をもってすれば、この程度のミッション遂行など朝飯前!」

「えらい上機嫌だにゃ~上やん。スーパーの特売品まとめ買いでもできたんかにゃ?」

 寮の自室にて上機嫌で高笑いする上条当麻に、部屋に上がりこんでいた土御門元春は興味深げに問いかけた。

「ああ、聞いてくれ土御門。俺は常々思っていた。回避することが困難な不幸から身を守るにはどうすればいいか、と。逃げようとしても逃げ切れないそんな不幸に対処するにはどうすればいいのか、と」

 自らの歩んできた苦難の道のりを思い返すように、拳を握り締めて語り始めた当麻はそこでガバリと顔を上げた。

「答えは簡単だ。避けられないと言うのなら、避けなきゃいい。虎穴に入らずんば虎児を得ず。引いて駄目なら押してみろ。相手の懐に飛び込んで被害を軽減すればいいんだ」

「あ~、つまりどういうことだにゃ~?」

 方針については理解できたが、具体的に何をしたのかがわからない。

「つまり、いつも逃げるからビリビリに追い回されるわけで、逆に上手く付き合って相手してやれば俺の被害は最小限に抑えられる!つまりそれこそが…」

「上条ハーレム構築の第一歩ってわけかにゃー!!ふざけんじゃねぇ!例え天が許してもこのオレの目が黒い限りはそんな暴挙は許さないぜよー!」

 話を最後まで聞くこともなく、土御門が飛び掛ってきた。

「ばっ、何言ってんですか! 大体いつ俺がハーレムなんて築いたんだこの野郎! 駄フラグメイカー上条さんをなめんなよ!」

「常盤台のお嬢様篭絡しといてどの口で言ってやがるテメェ! 不幸に立ち向かうとか見せかけて実質口説きじゃねぇかコラ!」

 深夜の学生寮で突如として始まった大喧嘩。譲れぬ主張をぶつけ合う、熱き男達の戦いは「うるさくて眠れないんだよ!」と言う叫びと共に飛び掛ってきた一人のシスターの仲裁(かみつき)によってようやく幕を閉じたのだった。


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