とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04-1

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8月17日 真実はロンドンにあり


 イギリス時間で15:00を回ったところ。夏はいつも霧が立ち込めるロンドンでは珍しく快晴の日である。とある教会でうとうとしているシスターがひとり。
その隣でたばこを吸いながらその寝顔を拝む16歳は長い戦から帰ってきた戦士がみせる安堵の表情をしている。最近は神裂の勧めでたばこの本数を減らしてきている。
もともとの髪の色は金色であるが赤色に染めたその髪は相変わらず長い。彼のマイブームは赤く染めた髪の中に金色のラインをあしらうことだ。前よりも不良のいでたちをしている。
おおよそ半日空で揺られていたため、疲れが出ているようだ。その分さらにその顔に暗さが増す。

「・・・僕は、この子のために生きると誓ったんだ。あの日から・・・」
「ええ。私も」
「・・・あ、あなたもいたのか。神裂火織・・・女教皇(プリエステス)・・・」
「ええ。お帰りなさい。ステイル。」
「どうでしたか?上条当麻は」
「相変わらず嫌な奴だったよ。まだ、あなたもあの人間に魅かれているのですか?」
「・・・何でしょうね。彼はいままで在ってきた人間の中でも特別なのです。私にとって」
「それなら、あってくればいいんじゃないですかね。あなただって聖人である前にひとりの人間だ」
「私にはこの地でやらなければならないことがあるので、それはできません」
「それじゃ、好きになさってください。俺はあの子のためにも、あの男と誓ったことをやらなければならない・・・でも、彼は今頃大変なことになっているだろうね。」
「まさか・・・でも、あの子の前ではこのことは言わないようにしていただけませんか?」

静かな教会に差し込む光はとても夏場のロンドンではありえない光景である。なぜなら、ロンドンは夏の間、霧の街といわれるほど濃い霧がかかったり雨が降ったりする。
その中にいる3人はそれぞれがそれぞれの想いを抱いている。ひとりは生まれながら持つ苦悩に対して、もう一人は守ると決めた人の気持ちに対して、もう一人は寝ながらもよだれを垂らしている。

――――――――――――――――――――――

「なんか用かにゃー。最大主教(アークビショップ)」
「なんの陽もなくこちらも呼ばぬのよー」
「はぁ・・・本当にあんたも懲りないんだにゃー。あの男はちょっとやそっとでリアクションはしないぜよ。」
「ところで、貴様を呼びけることは何ゆえかわかるか」
「あのバカのことか・・・また、あの男に何をした。」
「まあまあ、いいじゃないの。お楽しみはここからよ?フフッ」
「んま、おまえの考えてることはよくわからんがあの男に何かしら起こってしまう・・・または、起こってしまったんだな」

  2年前より上達した日本語を自信満々に使う最大主教、ローラ=スチュアート。彼女は日本語に不自由していることに若干の不満をもっていたためにたまに勉強していたのである。
ただ、彼女にとって有益であるかはわからなかったが、それでもやっていたりする。そのため、今はステイル達にバカ口調と言われなくなっていた。
ローラのところから戻るところの土御門は駐車場に向かう。彼は、ちょうど半年前に2輪の免許を取っているため、今では愛車に乗ってロンドンじゅうを駆け回っている。趣味になっている。
土御門が愛車にまたぎ、スロットルを回す。そして、晴天のロンドンの街へ走る。西に吹く風が気持ちよい道を走る。土御門はいろいろなことを考えている。

(もしかして、かみやんが・・・それならもしかすると)

土御門は教会に戻る前にカフェに入る。そして、おもむろに煙草を取り出して火をつける。心の準備ができたのか、アロハシャツの胸ポケットから携帯電話を取り出した。そして、ある人間に電話をかける。
現在、16:30を回ったところだ。日本時間では朝の7:30を過ぎたところであった。

「・・・・・・あ、かみやん?げんきかにゃー?」
「それどころじゃないって?・・・ん?もしかして、かみやん。お前、今変なことに巻き込まれていないか?声が少しガキくせーぜよ?」
「いつものこと・・・か。確かにな。・・・って、そうかそうか」
「それで、本題に入るぞ。かみやん。最近、自分の身体に異変が起きてないか」
「あぁ。・・・そうか。もしかして、部屋の4隅にそれを置かなかったか?」
「やっちまったにゃー。・・・それは、効力が3日間で下手したら死んでしまうぞ。」
「あぁ。大丈夫だ。それはかなり軽いほうの魔術なんでね。影響はないと思うが…せいぜい今までのフラグの多さを反省するにゃー!」

 いつもの調子で上条に電話をかけた土御門。結局からかったと思われてお叱りを受けた。長々しいお説教ではなく、あきれた感じで。
だが、自分のさりげない言葉に焦った雰囲気を醸しているのは確かだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

日本、東京西部・学園都市。現在時刻7:43

 上条はいま、下條真登としている。その彼は、ベッドの中にいた。なぜ朝からデルタフォースのシスコン野郎と電話をしなければならないんだと思ったが、嫌な奴でも親友には変わりない。
心的に楽になり、土御門に今ある現状についてヒントを貰った。上条は自分が小さくなってしまった原因を突き止めるのを加速させようとその時だった。

 「―――――ッ!!」
 右手に、電撃が走ったような強い痛みが襲う。携帯電話を持っていたその手はだらしなく伸びている。
その身をさらに小さくしている。二つ並んだベッドの片方には彼に恋する少女・御坂美琴がいる。最強の電撃姫はある男の前では無力になってしまう。
その彼が不幸体質であるから、自分が世話を焼いておかないと落ち着かなくなる。しかし、以外にも恥ずかしがり屋な彼女はその彼に「不幸だ」といわせてしまう。
その彼女に見せたくない姿をさらけ出している。下條は苦しくなった。彼女の笑顔を絶やさない方法を考えて、考えて、考えて。
その期待は簡単に裏切られてしまった。それは、美琴が下條のベッドの中に入って寝てしまったために下條の行動一つ一つが彼女を目覚めさせる手段として成り立っていた。
すでに、土御門との電話の際に目を覚ましていた。だからすぐに下條の変化に気付いた。下條は何度でも言う。「大丈夫だ」と。

「そんなの信じられるわけないでしょーがぁ。ちょっくら見せてみなさいよ」
「あ。・・・あぁ・・・」
「あんたの腕って意外と細いというか、あったかい」
「なんだそりゃ・・・こっちはしびれて何も感じないんですよ。下條さんは悲しくなってきましたよ?えぇ。」
「 りあえず、久々にあれでもやってあげようか?」
「え?あれってなんでしょうか。下條さんにはとても不幸なことが起こりそうで怖いんですが」
「それって、これのこと?」

 美琴が右手の人差指立てて青白い光をバチバチ言わせている。その光景は、怖い。朝から見るものじゃないと下條は思った。それは冗談だと美琴は笑って返す。
その顔が直視できないくらいかわいかったため顔を赤くしてしまってそっぽを向いてしまった。顔はそっぽを向いているが、手は美琴に預けたままだ。
美琴は、優しく右腕を持った。そして、低電圧をかけて右腕を撫でてゆく。たまに美琴が寄ってくるため、その身体から漂ういい匂いにさらに緊張してしまう。
それがわかったらしく美琴は言う。

「あ、あんたさ、そんなに緊張してたら楽になるものも楽にならないわよ?」
「しょうがねえじゃねーか。絵的にはとてもうれしいのに。」
「え?・・・そうなの?(やった・・・でも、絵的にはって何よ?絵的にはって!・・・うれしい)」
「かなり下条さんは、理性を失いそうなのですが」
「あんたは鉄壁の理性持ってるんでしょ?」
「そうなんですが、今はだめみたいです」

 そして、下條は最悪な腕のしびれと痛みは取れた。奇跡的な回復力を見せた。今では、腕をブンブン振り回せるほどである。それには美琴も驚いている。
現在午前8:07を回る。二人はベッドから身を起こし、朝ごはんのためにレストランに行く。上条は、右手の感覚を確かめるように美琴の手を握る。
しかし、いきなり来ることを予想していない美琴は、すばやく手を離してしまった。下條が不安だ。と小さくこぼしたのを聞いて、
「あんたは不幸だとか不安だとかしかないわけ?」といつものように下條をバカにした口調を向ける。朝からお姉さんスイッチが入ってしまった。

「もぉー。しょうがないわね。ほら、手ぇ貸しなさい」
「ん・・・」
(やばっ、ちっちゃくなってもあいつはあいつよね。どうしよ・・・緊張してきた。)
(なんか、痛いんですけど。み、御坂さん?手、強くにぎりすぎじゃないですか?)
「痛っ!!」
「ん?あっ!ごっ!ごめん」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1年前、秋、とある公園にて。

「もぉ・・・まだかな・・・とっくの間に待ち合わせの時間過ぎてるのに。暇だからなんか飲み物でもっと」

 ・・・ちぇいさぁぁぁ!!という掛け声とともに自販機は鈍い音を上げて缶ジュースを出す。そんなときに後ろから聞きなれた声がする。

「相変わらずだな。お前は。もうちょっと女の子らしくできねーのか?」
「・・・ってアンタいつからいたのよ」
「んーーと、そうだな。おまえがちぇいさーとかいって自販機に蹴りかますところからだな」
「そこからいるんだったらさっさときなさいよ!ったく!」

 上条は、そのツンツン頭を掻きながらあきれたように言う。
「しょうがねえだろ?(器物損壊の)共犯だって思われたくねーし」
「人がいたらやらないわよ、あんたは別ね」
「上条さんもいい加減一般人扱いしてくださいよ」
「いいじゃない。私が勝てないんだから。それぐらい」
「それぐらいってなぁ…。お前みたいのがそんなのやってるの見たら子どもが真似するぞ」
「やめるわよ。それくらい簡単よ。あんたがこの条件を守ってくれるならね」
「そんなんでやめてもらってもね。と上条さんは美琴タンの将来を気にしてみたりします」

 美琴の言葉に妹達の口調で答える上条の言葉に恥ずかしくなってしまった。それをごまかすように怒鳴る。
八つ当たる。自分の本心とは逆に。

「あ・ん・た・はぁぁぁぁぁぁ!」
「おいおいおいおいおい!こんなところで止めろよ。ったく。ビリビリは中2で卒業じゃなかったのかよ!?」

 上条はため息をつきながら美琴の頭に右手を乗っける。その瞬間、美琴はふにゃとかいって気絶してバサッとその場に倒れてしまった。
心の中で不幸だ。と呟いて、美琴を肩にかついでベンチのほうへ向かう。彼女の体はとても華奢であった。
黙っていればかわいい女の子を開放することは上条にとって生き地獄のようなものだった。目撃者がいれば処刑執行なのであるから。
幸運にも、人はいなかった。ベンチに座る前に美琴をその上に寝かせる。その頭のそばに腰を下ろす。ため息交じりの声でつぶやく。

(・・・なんで俺みたいな人間に構ってくれるのかね。俺と一緒にいたら不幸体質が伝染っちまうかもしれねーのにな。
なんか、こいつって最初は調子に乗ったやつだと思ってたけど意外なところもあるよな。完全超人かと思ったらひとりの女の子になってたり、
表情は良く変わるし、こっちにビリビリ寄こしてくるとおもったら顔赤くしてるし、よくわからねえんだよな。こいつが何考えてるんだか。
でも、なんだかんだ言って優しいんだよな。恥ずかしがり屋でさ、ふつーなことに憧れているひとりのおんなのこなんだよな。・・・)

 さっきまで意識がなかった少女が目覚めた。上条はその仕草一つ一つを目に焼き付けた。いつも見ている彼女とは遠くかけ離れた様子を。
まるで猫のように小さく伸びて目をこする。そして、上条のほうを向くなり顔が赤くなる。案の定あわててその身を起こす。

「あ。あんたが悪いんだからね。い・・・いきなり頭撫でられたらくやしいんだから」
「え?何がでしょうか。御坂さん?」
「撫でられて嬉しくなっちゃう自分がくやしいの!!」
「ふーん。そうか・・・」
「ふーんってなによ。ふーんって・・・」
「そんじゃ、こんなのはくやしいんだろ?」
「ふぇ?・・・// カァァ」

 上条は優しく頭の上に右手を遣ると、美琴はきれいにゆであがったタコのようになり、ボンっという音とともに頭から湯気が立ち始める。
美琴は完全にKOされてしまった。上条の執拗なまでの頭なでなで攻撃に。しかし漏電はなく、ただ美琴が顔を赤くするだけ。
口がパクパク動いているが何を言っているか聞き取れない。上条は美琴の聞こえるように、パニクッてる美琴タン萌えーと言い放った。
 美琴は急にもじもじし始めて上条を上目遣いでたまにちらちら見てくる。このあと起こることによって鉄壁な理性が崩壊し始める音を聞かなければならなくなった。
上条はパラパラ変わる彼女の表情に見入っている。隣の彼女が決心したようで、上条をもう一度目線のど真ん中でとらえた。

「あ、あn、アンタに言いたいことがあったわ。」
「ん?なんだ。ゲコ太買いに付き合えってか?それならいいぜ?いつでもな」
「そうじゃないの!!」
「そうじゃないのか・・・そしたら何だよ?」
「そうじゃなくてそうじゃなくて、だからっ!」

「―――ッ!」上条の心に電撃が走る。そして、上条はふぅー。と息を吐いて優しく言った。

「そんなことだったのか。それは1年前にも言ったはずだぞ?今年が終わればちゃんと言ってやるよ。この俺が!だからさ、御坂!もう少しお前のこと知りたいんだ。いいか?」

小さくコクッと頷き、美琴の右頬には光るものが流れていた。上条はそっと抱いた。



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