「キールキルキルKILL!! サムライセイバー! お前の命もここまでだKILL~!」
「くそっ……ここまでか!」

キリング忍者キリキリ切腹丸の持つ鎖鎌がサムライセイバーに襲いかかる!
その魔の刃がサムライセイバーの首元を狩りとった――
誰もがそう思った瞬間、キリキリ切腹丸の鎖鎌が砕け散る!

「……なにィ~~!? 俺様の魔鎌・チャラチャラデスサイズカスタムがぁ~~!?」
「バカめ! これまでの打ち合いは、お前を狙った物ではない! お前の武器を狙っていたんだ!」
「ギィィ~~!! サムライセイバーめ、生意気なぁ~!! だが俺様にはまだ鎖鎌の鎖部分があるのだ~!! これはパラレルトランスレーション技術によって編み込まれた単分子ワイヤーの鎖! 必ずや貴様の首を刈り取ってやるぅ~!!」

ヒュンヒュンと鎖を振り回すキリング忍者!
しかし既にサムライセイバーはその懐に踏み込んでいた!

「ヤギュウスタイル……スチームエクスプロージョン!!!」
「何っ!?」

気がついた時にはもう遅い!
サムライセイバーの持ったエネルギブレードがその形態を変化させ、眩しい光が漏れ出る!

「ギエェェェ~~!?」

ビームサーベルの先端に激しい水蒸気爆発が起こったかと思うと、その衝撃でキリキリ切腹丸は崩れたビルの瓦礫へと叩きつけられた。

「ク、クソ……! ヤギュウスタイルめ……! なんて力だ……!」

高出力エネルギーを叩きつけられた切腹丸は既に満身創痍。
同じく戦いによる疲弊を見せつつも、今ので勝利は決したと判断したのかサムライセイバーは怪人の前へと立つ。
そして懐から小刀を取り出して、切腹丸の眼前へと放り投げた。

「……お前の負けだ。お前にも悪の矜持があるだろう。望むなら、その名通りに切腹する権利をやろう」
「グ、ググ……!!」

切腹丸は屈辱に顔を歪める。
怒りに震える手で、放り出された小刀を拾って握りしめた。

「……ヒヒヒ! このバカがぁぁ~~! 太郎と名付けられたら人間は太ましく朗らかに生きるとでも思っているのか~~!? 切腹などするかぁ~~!」
「何っ!?」
「俺様は生き汚いのだ~~! 俺のする『人斬り』とは、怪人として……ミュータントとして……ホムンクルスとして作られた、俺様の”生”を確認する為の行為!! だから……!!」

切腹丸はサムライセイバーに向かって飛びかかる!

「俺の”生”は何人たりとも、邪魔させねぇえ~~~~!!!」

……『スーパーカット大切断(Die・Set・Done)』。
それは手に持った武器の切れ味がいかようなものであれ、切腹丸が認識した対象を切断する恐ろしい必殺技!
その必殺の刃が切り飛ばした肉片が、地面へと落ちる。

「……バカな……こんな……!」

サムライセイバーは、その場に崩れ落ちた。
地面に落ちたのは……その胸を突き破るようにして生えた、肉の槍。
切腹丸は、返す刀でもう一度斬りつける。

「俺の神聖な人斬りを……サムライセイバーとの決着を、邪魔するなぁあ~~~!」

サムライセイバーの後ろから迫っていた、肉塊としか言えない蠢く触手の固まりに向かって再び不可視の刃が襲いかかる!
だがその異形も同時に切腹丸へと反撃する。
触手の肉塊は無数に切り刻まれながらも、何本もの触手を切腹丸への肉体へと突き刺した。

「ギェアっ!?」

いくつもの触手に体を貫かれ、切腹丸もまたその場へと倒れる。
バラバラになった触手はそれで力を使い果たしたのか、地面の上でしばらくのたうち回ったのちに動かなくなった。

その場には3つの者が横たわっていた。
静かになった肉塊だったもの。
胸に穴を開けて倒れたサムライセイバー。
そして手足や胴を貫かれて同じく倒れる切腹丸。

そんな中で静寂を打ち破ったのは、全身を貫かれたまま血を流す切腹丸だった。
触手の槍が迫る直前、身を捻ったことで奇跡的に致命傷をさけることができていた。

しかし、その傷ではもう長くは持たない。
切腹丸は血反吐を吐きながら悪態をつく。

「チィィ……!! なんなんだこいつはよぉ……! プロフェッサーが役立たずを始末する為によこした、新しい怪人かぁ!?」
「……違う」

切腹丸の問いに答えたのは、息も絶え絶えとなったサムライセイバーだった。

「こいつらは……最近巷を賑わす……地球の外からの侵略者の尖兵……エイリアン・パラサイトだ」
「エイリアン・パラサイト!?」

聞き慣れない言葉に思わず復唱する切腹丸に、サムライセイバーは言葉を続ける。

「サムライツメショに報告があった……今、この星はこいつらの親玉に狙われている……! こいつらをこの星から駆逐せねば……この星は、破滅する!!」

そして、サムライセイバーは最後の力を振り絞って切腹丸の腕を掴む。

「誰かが……守らねばならないのだ……! この星を……! そこには……善も悪もない……!」

サムライセイバーの手から光が漏れ出る。

「ただ……”生”の為に!! お前は生きろ!!」

その手から溢れるのは、正義の心が生み出すサムライヒーローパワー!

「何するつもりだ、てめぇ!!」
「お前が……サムライになってこの星を救うのだ!! 切腹丸!!」
「なんだと!? そんなこと……ギェぇぇ~~~!?」

轟音!
サムライセイバーの司る正義の力、水蒸気爆発が辺りを包む!

……そしてしばらくした後、霧が晴れたその場には一つの影が立っていた。

「……キーリキリキリKILLING YOU! まったくもってバカだぜサムライセイバー! 悪の怪人を助ける為に自らの命を燃やすだなんてな~!! この溢れる力、生まれ変わったような気分だぜ~~~~!!!」

サムライセイバーの亡骸はこの世のどこにもない!
切腹丸はその力全てを跡形もなく吸収したのだ!
そして切腹丸はひとしきり高笑いをした後、ため息をつく。

「……まったくバカだぜ本当にバカだ、こんな所で終わるヤツが俺様の目標であっていいわけがねー、ああムカつくぜすげぇムカつく、勝ち逃げだぁ? 許されるかよ、俺はまだアイツを切り刻んでねぇ、俺の存在証明ができてねぇ、人斬りの為だけに生まれたこの俺が、その”生”を否定されたままで黙ってなんていられるか……!」

キリング忍者キリキリ切腹丸は怒りの形相を浮かべたかと思うと、天空を睨みつけた。

「エイリアンだかパラサイトだか知らねぇが、全部全部全部この俺様が切り刻んでやる! 世界の全てを切り刻み、この世の理すらも切り刻み、必ずやお前を切り刻んでみせるぜサムライセイバー……!」

サムライセイバーの残したビームセイバーを手にとって、天へ掲げる。

「お前を直接切ることがもうできないなら……お前というヒーローがこの世に存在した痕跡を切り刻む。お前はもう世界一のヒーローなんかじゃあない。その名声は、俺様が切り刻む」

そうして切腹丸はその場に背を向け、闇に消える。

「お前はもう、ただの名もなき一般ヒーローその一だ。歴史に残る最強の座は……俺様がもらう」

切腹丸が目指すはサムライセイバーという概念の解体。
そのヒーローが存在したという痕跡全てを切り刻む為……そしてあらゆる全ての物を切り刻む為に。

切腹丸は、戦場へと向かう――。
最終更新:2024年05月18日 20:49