キャンペーンを総括するSSとして、キリキリ切腹丸に手向ける物語として、オムニボアというキャラクターの結末として、素晴らしい最高の作品でした。切腹丸を相手を取り込んでゆく器として描き、それゆえ本来の大切断が弱まってゆく欠点を指摘しつつも、切腹丸が得た力ゆえに為し得た一撃でオムニボアの本質を切断する最期の攻撃が完璧です。一点、惜しかったのが、マー君が迎えるエンディングとしては柘榴女の存在が希薄であったことです。三日目でオムニボアは当初のキャラクターから一歩踏み出して「柘榴女の息子」となったにもかかわらず、四日目には今まで通りの「対面の物語を解体する者」として振る舞っていました。個人的にはマー君の行く末に強く期待していたので、それがプロローグ時点で提示されたオムニボアの姿を大きく逸脱していなかったのは物足りないと感じました。
めちゃくちゃ正直な気持ちを言うと、少し無難すぎるよね、という感想になります。
殺人鬼としてのオムニボアは死にました。だからこれからは別の方向性で前向きに生きます。で話が終わって良いわけないよね、といいますか。
アレです、私が求めてたのはもっと暗黒なやつであって……!人を殺すような外道が魔人能力無くしただけで幸せになって良いわけ無いじゃないですか!!そもそもアレで魔人能力無くなるのか?という疑問は置いといてさ……!
これは私の偏った意見かもしれないけど、あの直後に名無しのモブに刺されて死ぬくらいの人情のなさでも私は大喜びしていた!または反省したオムニボアが自主するとかさ、前回で裁判やったわけだし。
なんか、こう……!話としては上手いと思う……!でも欲しかった奴じゃないから、点数はかなり低めにしました。
あと単純に切腹丸SSの熱量にも負けてるよねって思ってしまった、ごめん!
面白かったです!
面白かったのですが、最後まで
「オムニボアは参加する必要あったのかな?」という点がスッキリしなかったことと
「マー君、柘榴女の息子だという大ネタがあまり機能してなかったな?」という点が気になり相対評価で少しだけ下げました。
切腹丸の在り方とかめちゃ好みです!
これまで対戦してきた相手の要素を拾いながらのバトルは、最終日にふさわしい内容だったと思います。
戦いを始める前のウィットに富んだ会話なども良い感じです。
一方でガイア理論うんぬんの設定は、好みではありません。
なんというか、自分で増やした問題を自分で解決しているマッチポンプ感があります。
オムニボアの脅威性を高めた上でキリキリ切腹丸が『エリアンVSヒーロー』から『殺人鬼VS殺人鬼』へと思考を切り替える流れ自体は高評価なのですが、SS全体で設定パートが占める割合が多いと感じました。
インタビュー形式で設定を開示する章に前後の章と強いつながりがなく、設定の羅列が挿入されているという印象を受けたことも気になった点です。
キリキリ切腹丸が「人であることへの諦め」を斬るというクライマックスに持っていくなら、バトルの中でキリキリ切腹丸がオムニボアという存在を理解あるいは解釈していく流れの方が個人的には好みです。
まあ基本的に能力バトル描写が好きな身なので、直接戦闘のパートが少ないことを不満に感じているところはあるかもしれません。
また、個人的な不満点として《ソーマの幻灯》の「オムニボアが何かを殺したときに発動する。」という部分が条件制約としてしか機能していない、という点があります。
「死者の走馬燈を観る」ではなく「殺した相手の走馬燈を観る」という能力である以上、殺すという行為そのものにもオムニボアのアイデンティティとなる部分があるはずで、その点も内包する形でラストに繋げてほしかったところです。
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