夜。デデデ城。基本的に朝起きて夜眠る住民が殆どであるこの国では、夜の警備など殆ど意味を成さない。
別に寝首を掻きに来る連中がいるわけでなし、そもそもダイオウってナニソレおいしいの?という国土であるからして、その大王直属の部下……という自覚のあるクールスプークは、自分の役目に少しばかり疑問を感じないでもなかった。
デデデ大王いわく、「最近は物騒だから、明るいお前に夜の警備は任せた」……との事だった。
確かに自分は明るい。あのピンクだまがコピーするのもライトだし。
それに最近はやれ盗賊だの目玉だので色々騒がしいし、警備の強化も重要だろうが。しかし――
ふわふわと空中を飛びながら、クールスプークはため息をついた。
別に寝首を掻きに来る連中がいるわけでなし、そもそもダイオウってナニソレおいしいの?という国土であるからして、その大王直属の部下……という自覚のあるクールスプークは、自分の役目に少しばかり疑問を感じないでもなかった。
デデデ大王いわく、「最近は物騒だから、明るいお前に夜の警備は任せた」……との事だった。
確かに自分は明るい。あのピンクだまがコピーするのもライトだし。
それに最近はやれ盗賊だの目玉だので色々騒がしいし、警備の強化も重要だろうが。しかし――
ふわふわと空中を飛びながら、クールスプークはため息をついた。
しかし。
「……っ!?」
クールスプークは、暗がりに何かを見つけた。――人影だ。
本当に、族が紛れ込んだのか。はやく、大王様に報告を……そう思ったが。
彼の照らす明かりの中で、その素顔がはっきりくっきり見えていることに、その人物は気づいていないようだった。
(……どうしよう、コレ)
クールスクームは二度目のため息をつくと、その人物に、そっと声をかけた。
本当に、族が紛れ込んだのか。はやく、大王様に報告を……そう思ったが。
彼の照らす明かりの中で、その素顔がはっきりくっきり見えていることに、その人物は気づいていないようだった。
(……どうしよう、コレ)
クールスクームは二度目のため息をつくと、その人物に、そっと声をかけた。
「あの、大王様?」
「うわあああっ!?」
暗がりにいた人影……デデデは思いっきり仰け反った上に、べしょっとスッ転んだ。出っ張った腹がぼいんと床で跳ねる。
「…………大王様、大丈夫ですか?」
「っててて……きゅ、急に話しかけるなよ! ビックリするじゃねえか!」
ぶつけた鼻先をガウンで擦りながら、デデデは立ち上がった。
「ビックリしたのはこちらですよ……こんな夜更けにどうしたんですか? しかも、そんな格好で……」
クールスプークの灯りが、デデデの姿を淡く照らし出した。見ればデデデは寝巻きの上にいつものガウン、帽子はナイトキャップ、寝起きからそのままここまで歩いてきた、という風だった。
「…………あーいや、ちょっとな………………」
「こんな時間にお出かけですか?」
「……お、お前こそ、こんな時間に何してんだよ」
「『最近は物騒だから、明るいお前に夜の警備は任せた』……って仰ったの、大王様ですけど
クールスプークの言葉に、デデデは後頭部を掻き、目線を泳がせ、
「……あー……っと…………ま、あ……いい、か」
と、呟いた。
「まあ、見つかっちまったもんはしょうがねえもんな……オマエ、皆にはナイショにしてくれよ? しー、な。しー……」
それじゃあな、とどこかに行こうとする大王。しかし、
「お、お待ちください! どこに行くおつもりですか!」
クールスプークはそう言うと、彼の後に付いて行った。
「…………大王様、大丈夫ですか?」
「っててて……きゅ、急に話しかけるなよ! ビックリするじゃねえか!」
ぶつけた鼻先をガウンで擦りながら、デデデは立ち上がった。
「ビックリしたのはこちらですよ……こんな夜更けにどうしたんですか? しかも、そんな格好で……」
クールスプークの灯りが、デデデの姿を淡く照らし出した。見ればデデデは寝巻きの上にいつものガウン、帽子はナイトキャップ、寝起きからそのままここまで歩いてきた、という風だった。
「…………あーいや、ちょっとな………………」
「こんな時間にお出かけですか?」
「……お、お前こそ、こんな時間に何してんだよ」
「『最近は物騒だから、明るいお前に夜の警備は任せた』……って仰ったの、大王様ですけど
クールスプークの言葉に、デデデは後頭部を掻き、目線を泳がせ、
「……あー……っと…………ま、あ……いい、か」
と、呟いた。
「まあ、見つかっちまったもんはしょうがねえもんな……オマエ、皆にはナイショにしてくれよ? しー、な。しー……」
それじゃあな、とどこかに行こうとする大王。しかし、
「お、お待ちください! どこに行くおつもりですか!」
クールスプークはそう言うと、彼の後に付いて行った。
「夜道は危険ですよ、大王様。おともいたします! 大王様、大王様ー!」
森を抜け、氷の裏道を抜けた先。
デデデとクールスプークは、そこにいた。
「……大王様、ここは」
「……」
クールスプークは、その場所の存在は聞いた事があった。しかし、実際に訪れた事はなかった。
濃紺の空に、淡く光を放つオーロラ。きらきらと瞬く星屑。
そしてそんな空よりもなお美しく、こんこんと水を水を湛え、神々しい光を放つ泉。
夢の泉、と呼ばれる場所が、目の前に広がっていた。
「大王様、ここは」
クールスプークの声にも答えず、デデデはゆっくりと泉に歩み寄った。まるで何かを確かめようとするように。
「……クールスプーク」
「は、はい?」
突然声をかけられ、クールスプークはズレたサングラスを直した。
「い、いかがいたしましたか、大王さ」
「オマエ、何か感じるか?」
一瞬、何を聞かれたのか解らなかった。
「え?」
「何か、ヤな予感がすんだよな……」
デデデはなお泉に近づきながら、そう言った。
「なんか、こう……夢の泉が、ドロドロっていうか、グチャグチャっていうか、ヘンな感じがする……違わねえんだけど違うっていうか、違和感っていうか……」
その言葉に、クールスプークはサングラス内の目を見開いた。
デデデ大王は、カンが鋭い。先の夢の泉事件でも、皆が異変に気づかない中、真っ先に行動したのは、彼だけだった。
「……とにかく、ものすげえイヤな予感がするんだよ」
「……また、悪夢が……ナイトメアが、侵入してきたのでしょうか?」
クールスプークの言葉に、デデデは首をかしげた。
「いや、……どうだろうな。よくわかんねえけど……」
「そうですか……って。だ、大王様! 何してるんですか!?」
「あぁ?」
気づいた時、デデデは噴水にその巨体をのし上げていた。
「いや、見りゃわかんだろ? 何かヤバい事が……起こる前に……その、こいつをだなあ……!」
ぐぐっと体を前のめりにすると、デデデは、なお手を伸ばした。夢の泉、その中央に突きささる礎――スターロッドに。
「もし、前みたなことがあったら……コイツが刺さってると、……ヤバいじゃねえか……!」
「い、いや、そうですけど……!」
そう、以前ナイトメアが現れたとき、対策をとったのは彼だけだった。
そしてその為に、カービィに倒されたのだ。
大王の感じている違和感の正体が、ナイトメアの侵入ならば。その対処療法にスターロッドを引き抜けば、再び何が起こるかは、火を見るより明らかだった。
「大王様、そんな事をしたらまたカービィが」
ぴたり、と一瞬。デデデの動きが止まった。青い双眸の眼差しが、クールスプークを射抜いた。
デデデとクールスプークは、そこにいた。
「……大王様、ここは」
「……」
クールスプークは、その場所の存在は聞いた事があった。しかし、実際に訪れた事はなかった。
濃紺の空に、淡く光を放つオーロラ。きらきらと瞬く星屑。
そしてそんな空よりもなお美しく、こんこんと水を水を湛え、神々しい光を放つ泉。
夢の泉、と呼ばれる場所が、目の前に広がっていた。
「大王様、ここは」
クールスプークの声にも答えず、デデデはゆっくりと泉に歩み寄った。まるで何かを確かめようとするように。
「……クールスプーク」
「は、はい?」
突然声をかけられ、クールスプークはズレたサングラスを直した。
「い、いかがいたしましたか、大王さ」
「オマエ、何か感じるか?」
一瞬、何を聞かれたのか解らなかった。
「え?」
「何か、ヤな予感がすんだよな……」
デデデはなお泉に近づきながら、そう言った。
「なんか、こう……夢の泉が、ドロドロっていうか、グチャグチャっていうか、ヘンな感じがする……違わねえんだけど違うっていうか、違和感っていうか……」
その言葉に、クールスプークはサングラス内の目を見開いた。
デデデ大王は、カンが鋭い。先の夢の泉事件でも、皆が異変に気づかない中、真っ先に行動したのは、彼だけだった。
「……とにかく、ものすげえイヤな予感がするんだよ」
「……また、悪夢が……ナイトメアが、侵入してきたのでしょうか?」
クールスプークの言葉に、デデデは首をかしげた。
「いや、……どうだろうな。よくわかんねえけど……」
「そうですか……って。だ、大王様! 何してるんですか!?」
「あぁ?」
気づいた時、デデデは噴水にその巨体をのし上げていた。
「いや、見りゃわかんだろ? 何かヤバい事が……起こる前に……その、こいつをだなあ……!」
ぐぐっと体を前のめりにすると、デデデは、なお手を伸ばした。夢の泉、その中央に突きささる礎――スターロッドに。
「もし、前みたなことがあったら……コイツが刺さってると、……ヤバいじゃねえか……!」
「い、いや、そうですけど……!」
そう、以前ナイトメアが現れたとき、対策をとったのは彼だけだった。
そしてその為に、カービィに倒されたのだ。
大王の感じている違和感の正体が、ナイトメアの侵入ならば。その対処療法にスターロッドを引き抜けば、再び何が起こるかは、火を見るより明らかだった。
「大王様、そんな事をしたらまたカービィが」
ぴたり、と一瞬。デデデの動きが止まった。青い双眸の眼差しが、クールスプークを射抜いた。
「クールスプーク。オマエ、オレ様を誰だと思ってんだ?」
そうだ。彼は、天下のデデデ大王。ピンクだまにへこたれるタマでも、一度決めた事をあっさり諦めるような男でもない。
自分に真っ直ぐすぎる男なのだ。彼は。根本的に。
自分に真っ直ぐすぎる男なのだ。彼は。根本的に。
クールスプークは息を吐くと、
「……では、終わったらすぐに帰りましょうね。きっと明日になれば、ピンクだまがやってくるでしょうから」
と、ズレたサングラスを再び直しながら、そう言った。
「……では、終わったらすぐに帰りましょうね。きっと明日になれば、ピンクだまがやってくるでしょうから」
と、ズレたサングラスを再び直しながら、そう言った。
デデデは家臣の言葉に、いたずらっこの笑みで答えた。
そして、次の日。
夢の泉から力が失せた事に気づいた勇者は、この暴君から力を奪い返した。それはもう、いつものように。幾度となくなく繰り広げられきた、日常生活のように。
夢の泉から力が失せた事に気づいた勇者は、この暴君から力を奪い返した。それはもう、いつものように。幾度となくなく繰り広げられきた、日常生活のように。
――だが。
再び、夢の泉に走った水脈(みお)を伝い、これ好機とばかりに、どろどろで、ぐちゃぐちゃで、混沌としたナニカが紛れ込んだ事に、勇者はまだ、気づいていなかった。
再び、夢の泉に走った水脈(みお)を伝い、これ好機とばかりに、どろどろで、ぐちゃぐちゃで、混沌としたナニカが紛れ込んだ事に、勇者はまだ、気づいていなかった。