パパとママが死んだ。そして、ボク達だけになった。
星々にある『夢の泉』。ボク達のパパとママは、その泉の水の流れを見守る、水脈の番人をしていた。
夢の泉はその星その星、バラバラにあるように見えて、繋がっている。だから、例えば、どこかで水が澱んだり、変な物が入ってしまうと、他の場所にも影響が出る。だから、いつも水の流れに気をつけないといけない。――パパとママは、いつもそう言っていた。
どこかでひっかかったり、遅くなったり、速くなったりしないように、滞りなく。それが、番人の掟だった。
ボクとメア……メアは双子のお姉ちゃんだ……は、いつもそういう風に仕事をするパパ達を見ていたし、次はボク達が番人になると思ってはいたけど、それはずっと先だと思っていた。
夢の泉はその星その星、バラバラにあるように見えて、繋がっている。だから、例えば、どこかで水が澱んだり、変な物が入ってしまうと、他の場所にも影響が出る。だから、いつも水の流れに気をつけないといけない。――パパとママは、いつもそう言っていた。
どこかでひっかかったり、遅くなったり、速くなったりしないように、滞りなく。それが、番人の掟だった。
ボクとメア……メアは双子のお姉ちゃんだ……は、いつもそういう風に仕事をするパパ達を見ていたし、次はボク達が番人になると思ってはいたけど、それはずっと先だと思っていた。
だからパパ達が死んで、ボク達はちゃんとしたやり方もわからないまま、番人を引き継ぐ事になってしまった。
パパ達が死んで、1ヶ月後。ボク達は悲しい気持ちのまま、何とか頑張ろうとしていた。
だけど、ある日――
だけど、ある日――
「パパ達の死んだ原因がわかった、ですって……!?」
目の前の男の人の言葉に、メアが叫んだ。
「それって……ねえ、どういう意味なの!?」
「……ッ」
ボクはビックリしすぎたせいで、声も出なかった。
目の前の男の人の言葉に、メアが叫んだ。
「それって……ねえ、どういう意味なの!?」
「……ッ」
ボクはビックリしすぎたせいで、声も出なかった。
「言葉のとおりでございます。メア様、レム様。お父様とお母様が、なにゆえ亡くなられたのか、その原因を掴んだのでございます」
ボク達にそう報告したのは、マントと仮面を身につけた、背の高い男の人だった。
男の人の名前は、ミッドナイトと言った。
ミッドナイトは、ボク達がまだ赤ちゃんだったころに、この番人の星にやってきたらしい。
記憶を無くしてこの星に流れ着いたミッドナイトは、パパ達に助けられて、以来、パパたちの仕事が忙しい時にボク達と遊んでくれたり、時にはパパ達の手伝いをしたりして暮らしていた。
ボク達二人がこの1ヶ月、パパ達がいなくても暮らしていけたのは、間違いなくこの人のお陰だ。
……でも。ボクは何故か、この人が、好きになれなかった。メアはこの人の事が大好きなのに。この人は、ボク達の親も同然なのに……
ミッドナイトは、ボク達がまだ赤ちゃんだったころに、この番人の星にやってきたらしい。
記憶を無くしてこの星に流れ着いたミッドナイトは、パパ達に助けられて、以来、パパたちの仕事が忙しい時にボク達と遊んでくれたり、時にはパパ達の手伝いをしたりして暮らしていた。
ボク達二人がこの1ヶ月、パパ達がいなくても暮らしていけたのは、間違いなくこの人のお陰だ。
……でも。ボクは何故か、この人が、好きになれなかった。メアはこの人の事が大好きなのに。この人は、ボク達の親も同然なのに……
「一体何があったの!? どうしてパパとママが!?」
「ああ、メア様。どうかお気を確かに……ただいま説明いたします故、どうぞ、こちらに……」
ミッドナイトがそう言って示したのは、きらきら光る星の地図――今どんな風に水が流れているかを示す、番人の仕事道具だった。
星の間と間を、星屑の絵がきらきらと流れていっている。
ボク達は身を乗り出すと、その地図を見た。
「……この地図が何なの?」
メアの言葉に、ミッドナイトは頷いて、
「はい、こちらに犯人が記されているのでございます。お二方のご両親の命を奪った犯人の……」
と、言った。
「……それって、どういうこと……?」
ボクも、思わず聞き返してしまった。この地図に、犯人が……?
「ああ、メア様。どうかお気を確かに……ただいま説明いたします故、どうぞ、こちらに……」
ミッドナイトがそう言って示したのは、きらきら光る星の地図――今どんな風に水が流れているかを示す、番人の仕事道具だった。
星の間と間を、星屑の絵がきらきらと流れていっている。
ボク達は身を乗り出すと、その地図を見た。
「……この地図が何なの?」
メアの言葉に、ミッドナイトは頷いて、
「はい、こちらに犯人が記されているのでございます。お二方のご両親の命を奪った犯人の……」
と、言った。
「……それって、どういうこと……?」
ボクも、思わず聞き返してしまった。この地図に、犯人が……?
「夢の泉の、水流……それを乱したものこそが、ご両親を殺めたもの。ご両親は、積もり積もった澱みや歪みに、その心と体を食い尽くされ、亡くなったのです。誰のお陰でいい夢を見られるのかもわからず、各々が勝手に水の流れを塞き止め、一気に流れさせ、そのバランスを欠いてしまったのでしょう……」
つまり。夢の泉のそばにいる人たち皆が、犯人。……ミッドナイトは、そう言いたいようだった。そしてパパ達は、その澱みを直すのに疲れて……
「あなた方やご両親が、どれほど皆に良い夢を流していくのに心を砕いていたか、知る者は誰もいない。自分たちの我儘で孤児を生んだというのに、その事にも気づかない。誰もかれも、夢の番人に感謝すらしない!!」
ミッドナイトの大きくて朗々とした声が、びりびりと鼓膜を震わせた。
「……おかしいとは思いませんか? メア様、レム様。あなた方はこんなに苦労して、頑張っていらっしゃる。しかしそれを褒めるものはいない。誰もあなた方のご両親が亡くなられた事も、そのせいでどれほど心を傷められたのかも知らない。不公平だとは思いませんか?」
「…………やるべき事は、決まっていますね?」
「――ええ、復讐ですよ。下流に住み、のうのうと夢を貪り我儘でヒトを殺めるような連中に、復讐してやるんですよ」
「なあに、簡単な事です。……水の流れを、ほんの少しだけ、歪めるだけでいい。さすれば澱みが生まれ、下流の者達は悪夢に犯されるでしょう」
「……大丈夫、ほんの少しですよ。別に命まで奪われる、ということはありませんし。そのあたりは、優秀な番人のご子息であるあなた方が、一番よくご存知でしょうから」
「さあ……参りましょうか。誰のおかげで良い夢を見ることが出来ているのか、それを示す為に……!」
この時既に。ボクとメアは、ミッドナイトに飲み込まれかけていた。……特に、メアは。
でも、ボクはずっと、まるで胸にトゲが刺さったみたいに、チクチクして……とても、痛かった。