SOS団恒例の不思議探索が行われたある休日の夕方、駅前でほかのメンバーと別れ、ハルヒに引っ張りまわさ
れて疲れきった体で駐輪場から自転車を引っ張り出していた俺の背中に、いきなり声がかけられた。
「こんにちわ」
「うわっと」
一瞬、また佐々木か?と振り返った俺の目に飛び込んできたのは、小柄なツインテールの女。
「橘…京子!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「何を言うか。お前が出てきて平穏だったためしが無いだろうが」
言いながら、橘京子の肩越しに佐々木他裏SOS団の連中の姿が無いか確かめる。
「今日はあたしひとりですよ。駅から出て来たらあなたの姿が見えたから走って来たの」
そう言う橘京子は、確かに少し息が荒い。わざわざ追いかけて来られてもお前の側につく確立なんぞ、佐々木が
世界を作り変えるよりありえないぜ。
「今日はその話はナシです、ナシ。……今日も涼宮さん?」
ハルヒ……じゃなくてSOS団な。
「そっかぁ、大変ね」
まあな、……じゃなくて!休日の過ごし方のひとつだよ。別に大変って訳じゃない。
「うふふ、そういうことにしておくわ」
結局何しに来たんだコイツは。クラスメイトとばったり出会ったかのように、にこやかに話しかけてくる少女を
見てるとついつい調子を合わせてしまいそうになる。まずい。ここはとっとと退散するに限る。
「じゃあな」
「あっ、待って」
会話を適当に切り上げて、自転車を押して駐輪場の出口へ向かった俺の後ろを、橘京子はついて来た。
れて疲れきった体で駐輪場から自転車を引っ張り出していた俺の背中に、いきなり声がかけられた。
「こんにちわ」
「うわっと」
一瞬、また佐々木か?と振り返った俺の目に飛び込んできたのは、小柄なツインテールの女。
「橘…京子!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「何を言うか。お前が出てきて平穏だったためしが無いだろうが」
言いながら、橘京子の肩越しに佐々木他裏SOS団の連中の姿が無いか確かめる。
「今日はあたしひとりですよ。駅から出て来たらあなたの姿が見えたから走って来たの」
そう言う橘京子は、確かに少し息が荒い。わざわざ追いかけて来られてもお前の側につく確立なんぞ、佐々木が
世界を作り変えるよりありえないぜ。
「今日はその話はナシです、ナシ。……今日も涼宮さん?」
ハルヒ……じゃなくてSOS団な。
「そっかぁ、大変ね」
まあな、……じゃなくて!休日の過ごし方のひとつだよ。別に大変って訳じゃない。
「うふふ、そういうことにしておくわ」
結局何しに来たんだコイツは。クラスメイトとばったり出会ったかのように、にこやかに話しかけてくる少女を
見てるとついつい調子を合わせてしまいそうになる。まずい。ここはとっとと退散するに限る。
「じゃあな」
「あっ、待って」
会話を適当に切り上げて、自転車を押して駐輪場の出口へ向かった俺の後ろを、橘京子はついて来た。
駐輪場から出ると空が薄暗い。一雨来そうだな、こりゃ。なんか遠くで雷鳴も聞こえるし。
「ねぇ、ちょっとお話しませんか?」
自転車に跨ろうとした俺に声をかけるキャッチの女、ではなく橘京子。
「いや、雨が降りそうだし」
「歩きながらでいいですから!雨が降り出すまででもいいですから!」
迷子の子供みたいな目で訴えかけてくる橘京子を無視して帰ってしまう事になぜか罪悪感を感じた俺は、自転車
に乗る事をあきらめ嫌々ながらも歩き出す。
「話しするんじゃなかったのか?」
俺が頼みを聞いてくれると思ってなかったのか、ボーッと立ち止まっている橘京子に振り返りながら声を掛ける
と、慌てて嬉しそうな顔で駆け寄って来た。
「涼宮さんの事、聞いてもいいですか?」
そう言われてもな、俺はハルヒのマネージャーじゃ無いんだが。
「学校でどんな感じなのかとか、今日はどんなことしてたのかとか」
そんな事俺に聞かなくても、お前の機関の連中が調べ上げてるんじゃないのか。
「キョンさんから見た涼宮さんがどんな感じか知りたいんです」
やれやれ。ハルヒの事を話してやったところで佐々木を神格化するのを止めたりはしないだろうが、敵(?)を
知るのはお互いの為にいい事かも知れん。俺は橘京子と並んで歩きながらハルヒについて話してやった。
「ねぇ、ちょっとお話しませんか?」
自転車に跨ろうとした俺に声をかけるキャッチの女、ではなく橘京子。
「いや、雨が降りそうだし」
「歩きながらでいいですから!雨が降り出すまででもいいですから!」
迷子の子供みたいな目で訴えかけてくる橘京子を無視して帰ってしまう事になぜか罪悪感を感じた俺は、自転車
に乗る事をあきらめ嫌々ながらも歩き出す。
「話しするんじゃなかったのか?」
俺が頼みを聞いてくれると思ってなかったのか、ボーッと立ち止まっている橘京子に振り返りながら声を掛ける
と、慌てて嬉しそうな顔で駆け寄って来た。
「涼宮さんの事、聞いてもいいですか?」
そう言われてもな、俺はハルヒのマネージャーじゃ無いんだが。
「学校でどんな感じなのかとか、今日はどんなことしてたのかとか」
そんな事俺に聞かなくても、お前の機関の連中が調べ上げてるんじゃないのか。
「キョンさんから見た涼宮さんがどんな感じか知りたいんです」
やれやれ。ハルヒの事を話してやったところで佐々木を神格化するのを止めたりはしないだろうが、敵(?)を
知るのはお互いの為にいい事かも知れん。俺は橘京子と並んで歩きながらハルヒについて話してやった。
「キョンさんってやっぱり……、涼宮さんの事が好きなの?」
二人でしばらく話しながら歩いていると、隣の娘が訳の解らん事を言い出した。おいおいまてまてなにをいいだ
すんだコイツは。どこでそんなふうに勘違いしたのか知らんが、ここは全力で間違いを正さなければならんと思
い立った時、
「あ、雨……」
悲しそうな顔で橘京子が空を見上げた。確かに俺の鼻先にも冷たい感触を感じる。その時、空一面が真っ白に光
った。
「きゃっ」
遅れてドーンという雷の音。2秒ぐらいだから700m程度か。雨も一気に強くなってきたのでとりあえず
「あそこに入ろう」
二人で駆け込んだのは酒屋の店先。シャッターは閉まっているが自動販売機が並び、トラックが置かれている所
には屋根もあったので、ここで雨宿りさせてもらうことにする。結局、雨が降り出したら帰れんな。
「ごめんなさい……」
別に構わねえよ。夕立みたいだからそのうち止むだろう。雨のせいで少し冷えてきたので、せめて明るいうちに
家にたどりつきたいが。ポケットに手を突っ込むと、冷たい金属の感触。
「なにか飲むか?」
俺はポケットの中の小銭を取り出し、隣でしゃがんでいる橘京子に聞いた。
「いえ!いいです!私が出します!!」
慌てて立ち上がり財布を取り出す。橘京子の財布には俺のもとから出かけてなかなか帰ってこない諭吉さんまで
いらっしゃるじゃねえか。ここは遠慮なくおごって貰おうか?
「あ……」
……やっぱりどうやら俺がおごる事になりそうだ。財布を覗きこみながら肩を落とす様子から察するに、小銭が
無く、札も万札しか無いってとこだろう。コンビニじゃないから万札は使えない。
「どれかいい?」
「あ、あの、アップルティー」
「ほらよ」
アップルティーの小さなペットボトルを自販機から取り出し、橘京子に渡す。俺はホットコーヒーを買い、並ん
でその場にしゃがみ込んだ。まだ雨の勢いは衰えず、雷が鳴り響いている。
「なんだか秘密基地とか隠れ家とか、そんな感じですね」
橘京子はペットボトルを両手で転がしながら、昔を懐かしむかのように言った。確かに。自販機に囲まれた小さ
な空間。子供だったら遊び場にしていたかも知れんな。
「……キョンさんの夢ってなんですか?」
夢?さあな。小さな頃はなにかしらの夢があったと思うが、今はどうだろ。ポケットの小銭をもてあそびながら
夢について思いを巡らせる。そう言うお前の夢はやっぱり佐々木を神様にする事か?
「それは夢じゃなくて義務なのです!あなたと佐々木さんが協力してくれたら、」
ああもうわかったわかった。佐々木の事は置いといて、お前の夢は何だ?
「えっ?」
橘京子は小さく声を上げると急に赤くなってうつむいてしまった。なんだ?その反応は。
「内緒……、です」
二人でしばらく話しながら歩いていると、隣の娘が訳の解らん事を言い出した。おいおいまてまてなにをいいだ
すんだコイツは。どこでそんなふうに勘違いしたのか知らんが、ここは全力で間違いを正さなければならんと思
い立った時、
「あ、雨……」
悲しそうな顔で橘京子が空を見上げた。確かに俺の鼻先にも冷たい感触を感じる。その時、空一面が真っ白に光
った。
「きゃっ」
遅れてドーンという雷の音。2秒ぐらいだから700m程度か。雨も一気に強くなってきたのでとりあえず
「あそこに入ろう」
二人で駆け込んだのは酒屋の店先。シャッターは閉まっているが自動販売機が並び、トラックが置かれている所
には屋根もあったので、ここで雨宿りさせてもらうことにする。結局、雨が降り出したら帰れんな。
「ごめんなさい……」
別に構わねえよ。夕立みたいだからそのうち止むだろう。雨のせいで少し冷えてきたので、せめて明るいうちに
家にたどりつきたいが。ポケットに手を突っ込むと、冷たい金属の感触。
「なにか飲むか?」
俺はポケットの中の小銭を取り出し、隣でしゃがんでいる橘京子に聞いた。
「いえ!いいです!私が出します!!」
慌てて立ち上がり財布を取り出す。橘京子の財布には俺のもとから出かけてなかなか帰ってこない諭吉さんまで
いらっしゃるじゃねえか。ここは遠慮なくおごって貰おうか?
「あ……」
……やっぱりどうやら俺がおごる事になりそうだ。財布を覗きこみながら肩を落とす様子から察するに、小銭が
無く、札も万札しか無いってとこだろう。コンビニじゃないから万札は使えない。
「どれかいい?」
「あ、あの、アップルティー」
「ほらよ」
アップルティーの小さなペットボトルを自販機から取り出し、橘京子に渡す。俺はホットコーヒーを買い、並ん
でその場にしゃがみ込んだ。まだ雨の勢いは衰えず、雷が鳴り響いている。
「なんだか秘密基地とか隠れ家とか、そんな感じですね」
橘京子はペットボトルを両手で転がしながら、昔を懐かしむかのように言った。確かに。自販機に囲まれた小さ
な空間。子供だったら遊び場にしていたかも知れんな。
「……キョンさんの夢ってなんですか?」
夢?さあな。小さな頃はなにかしらの夢があったと思うが、今はどうだろ。ポケットの小銭をもてあそびながら
夢について思いを巡らせる。そう言うお前の夢はやっぱり佐々木を神様にする事か?
「それは夢じゃなくて義務なのです!あなたと佐々木さんが協力してくれたら、」
ああもうわかったわかった。佐々木の事は置いといて、お前の夢は何だ?
「えっ?」
橘京子は小さく声を上げると急に赤くなってうつむいてしまった。なんだ?その反応は。
「内緒……、です」
夕焼けで赤く染まった道を二人で歩いていた。あれから俺たちの間には会話が無く、雨が上がっても橘京子は帰
ろうとせず、俺も特に帰れとは言わなかった。
「………」
橘京子はなにやら鼻歌を歌っている。俺も聞いた事のあるそのメロディーは、今の状況によく似合っているよう
な気がした。
そのうちに俺の家の前へとたどり着いた。
「じゃあな」
「あっ、待って!」
自転車を庭先に突っ込もうとした俺を呼びとめる橘京子。振り返ると真剣な眼差しで俺を見つめている。なんだ?
「手を出してください」
今から閉鎖空間に行くつもりか?
「違いますよ。いいから出して」
仕方なく右手を差し出す。
「目を閉じて」
おいおい、本当に閉鎖空間じゃ無いんだろうな?
「大丈夫。今度は中腰に」
何だそりゃ?
「いいから中腰になって!」
へいへい。言われるがままに膝を少し折る。
「もうちょっと。……そう、それぐらい」
いったい何なんだ。目を閉じながら橘京子の意図がわからず首を傾げていると、突然、柔らかい感触が俺の唇を
襲った。
「!!!」
目を開くと、目の前には自分の唇を俺の唇に押し当てている橘京子の姿が。
「な、な、なにしやがる!」
慌てて飛び退き橘京子と距離を取る。
「うふふ、今日はママの顔を見れないかもしれない。じゃあね」
そう言って俺を騙し討ちにした少女は、駅の方へと走り去っていった。
ろうとせず、俺も特に帰れとは言わなかった。
「………」
橘京子はなにやら鼻歌を歌っている。俺も聞いた事のあるそのメロディーは、今の状況によく似合っているよう
な気がした。
そのうちに俺の家の前へとたどり着いた。
「じゃあな」
「あっ、待って!」
自転車を庭先に突っ込もうとした俺を呼びとめる橘京子。振り返ると真剣な眼差しで俺を見つめている。なんだ?
「手を出してください」
今から閉鎖空間に行くつもりか?
「違いますよ。いいから出して」
仕方なく右手を差し出す。
「目を閉じて」
おいおい、本当に閉鎖空間じゃ無いんだろうな?
「大丈夫。今度は中腰に」
何だそりゃ?
「いいから中腰になって!」
へいへい。言われるがままに膝を少し折る。
「もうちょっと。……そう、それぐらい」
いったい何なんだ。目を閉じながら橘京子の意図がわからず首を傾げていると、突然、柔らかい感触が俺の唇を
襲った。
「!!!」
目を開くと、目の前には自分の唇を俺の唇に押し当てている橘京子の姿が。
「な、な、なにしやがる!」
慌てて飛び退き橘京子と距離を取る。
「うふふ、今日はママの顔を見れないかもしれない。じゃあね」
そう言って俺を騙し討ちにした少女は、駅の方へと走り去っていった。
おわり