アットウィキロゴ

「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-09

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

【不思議少女シルバームーン~第六話 第一章「少年と魔女」~】

「今度二人で食事でもいかがですか?」
「良いわよ。貴方には世話になってるしね。」
「えっ」
「今度私の行きつけの店で二人でゆっくりお話しましょう。」
「私の娘、朔夜の母が今度帰ってくるのよ。
たまには親子水入らずにしてあげたいじゃない。」

切欠はそんな会話だった。
春休みに入ってすぐの水族館からの事件の数日後。
度重なるデートの誘いが功を奏したのかヨツバさんがついに僕とデートをしてくれることになったのだ。
今の僕は彼女に連れられて映画を見た後とりあえず高そうなレストランでディナーを食べている。
男として非常に情けないのだが費用は全部彼女もちである。
これでは僕がタダ飯集ってるだけのダメ人間みたいだ。

「あらどうしたの?食事中にそんな難しい顔して。」
「いえ、なんでも……」
「あらあら、口にソースがついているわ。」

ヨツバさんの手が僕の口元まで伸びる。
顔が近づく、シワもシミも無い雪のように白い肌。
二十代後半といっても通じるだろう。
主張しすぎないデザインのメガネが逆に彼女の顔そのものの美しさを引き立たせる。

「あ、すいません……。」
「うふふ、良いのよ。」

話題が見つからない。
いや、見つからないわけではないのだ。
ただ……ただ切り出しづらいだけで。

「あの……。」
「少し待って、あなたのしたい話なら解っているわ。
私にリードさせて頂戴な。」

ヨツバさんがステーキの最後の一切れを口に運ぶ。
肉片を咀嚼し、喉からゆっくりと胃袋に送り込む。
喉の細かな動きでさえ綺麗だ。
普段とは違い服装もどこか若々しい彼女はなんていうかとても魅力的だった。

「ああ、美味しかったわ。
……さて、夜は長いしゆっくりお話しましょう。」

眼鏡の奥の瞳が妖しげに輝く。
蛇のように、猫のように、いいや違うか、正しく魔女だ。

「はい、まず聞きたいんですが……朔夜は何がどうしてあんな状態に?」
「あらあら、聞いてなかったの?」
「聞けませんよ。」
「中々気を遣えるのね。そういう男の子は好きよ。」

ワインを静かに飲み干すヨツバさん。
ふ、とため息がこぼれる姿さえ美しい。
ああ、僕は未成年なのでオレンジジュースだ。

「そうね……まず何処から話したものか。」
「どういうことです?」
「色々複雑な事情があるのよ今回の事件。」
「できれば朔夜の友達として聞けるところまで聞かせてください。」
「そうね、でも……。」

ヨツバさんの手が僕の頬に触れる。
冷たくて、恐ろしくなるのに、何も出来ないでいる。
あの瞳が僕を見つめて離さない。

「できれば今は私の大事な若いお友達としても聞いておいてほしいわ。」
「は、はい……。」
「もう一度、お願いしますって言ってもらえる?」
「お願いします。」
「ああ、良いわぁ…………。」

心臓が早鐘を打っている。

「それじゃあお姉さんがひとつひとつ丁寧に教えてア・ゲ・ル。」

クスクスとヨツバさんは笑う。

「朔夜が正義の味方になりがっているのを私はよく思っていない。
それは知っているわね?」
「え、えぇ…………。」
「でもね、彼女が正義の味方になる切欠を作ったのは私なの。」
「どういうことです?」
「私が彼女にセーラームーンとか二人はプリキュアとか見せてたのよ。
ミンキーモモは無論却下よ。」

なんですと。

「目的はシンプルよ。あの子が積極的に魔法の力を使うように仕向けたかったの。」

魔法を使うのは魔女の家系なら当たり前ではないのか?

「魔女の家系と言っても私たちは半分くらいは人間。
自分の力を厭う娘だってたくさん居たわ。
私の娘もそうだった。」
「朔夜がそうならないで“魔女”としての能力を積極的に伸ばすように仕向けていたんですね。」
「ええ、とはいえまあ、さすが私と龍之介さんの娘というべきかしらね。
私の娘もまあ母体としてはかなり優秀だったわ。
だから私は娘の教育は早々に諦めて朔夜を育てるために色々と準備をしていたの。」
「龍之介さんというのは?」
「私の昔の男よ、十年以上前に死んだわ。その話はまたあとでしてあげる。
まあ魔女の素質そのものは母親が魔女でさえあれば十分だからね。
都市伝説に対する親和性が高い男の人を子供をつくるためだけに迎えていたのよ。」
「……魔女の家系というのはそういうことをずっと続けているんですか?」
「ええ、まあそうね。一代限りの特異体質者や契約者とは違うもの。
代を重ねるごとにより強い魔力と深い知識を継承するためよ。
その為には家に男性の存在が邪魔なの。」
「なるほど……。」
「私の母もそのまた母も、ずっとそうやってきたわ。」

ヨツバさんがワインを再び口に運ぶ。

「なかなか出来のいいワインね。貴方も飲んでみる?」
「い、いえ遠慮させていただきます……。」
「あらそう、ちょっと残念。
どこまで話したっけ?」
「えっと、魔女の家系云々の話ですね。」
「ああそうそう、年をとると物忘れが激しくて嫌だわ。
それでね、朔夜はそういう慣習の中で生まれた本物の魔女ってわけ。」
「契約者とは違うんですか?」
「ええ、私たちは都市伝説であり人間である存在なの。
人間でしか居られない契約者達とは格が違うわ。」
「ほう……。」
「人間とも契約できるしね。」
「え!?」
「してみる?私と。」
「えと……。」
「冗談よ、本当にやろうとしたら私が捕まっちゃうわ。
でまあ朔夜のお父さん、これが今回の事件の実行犯っていうかなんていうか。」

やろうとした捕まる……?
バイオレンスなのか、それともエロエロなのか!
エロエロならむしろ望むところだ!
むしろ土下座してでも契約させていただきたい!
なんて本音を隠して会話を続ける。

「朔夜をあんな状態にした犯人ですか?」
「ええ。」
「……ろくでもない父親だったのか。」
「とても良い人よ。」
「え?」
「出てたわよ、本音。」
「ああすいません…………。」
「人格は冷徹、頭脳は明晰、腕っ節も強くて、何より都市伝説との親和性が高かった。」
「ああ、遺伝子的に良い人って意味ですか。」
「あら知らないの?冷徹っていうのは味方への優しさの裏返しなのよ?」
「紛らわしい言い方しないでくださいよ。」
「うふふ、ごめんなさいね。
まあぶっちゃけどれくらい強いかっていうとあれね。
若い頃の龍之介さんに並ぶわ。正しく死神。」
「龍之介さんを知らないからなんとも言えませんよ。」
「完全に警戒状態のこの国の総理官邸をまっすぐ突っ切っていけるくらいかな。」
「へぇ……。」
「流石に皇居とかアメリカのホワイトハウスは無理だけど。」
「大体理解しました。」
「そういえば貴方昔少年兵だったらしいものね。」
「好き好んでじゃあないですけどね。」
「じゃあ朔夜の掲げる正義の脆さも、彼女の意思の未熟さも解ってるわね?」
「勿論。」

そうだ、確かにあいつの正義は幼い。
そして精神も脆い。
だがそれはあの年では当たり前で……

「そういえばだけどこれから先の話をする前に約束してくれる?」
「なんです?」
「この先の話を聞いても私を嫌いにならないで。」
「…………。」
「呆れちゃうでしょう?この大魔女朝月ヨツバ様が貴方みたいな少年の前でこんなこと言うなんて。
まるで生娘みたいだわ。笑えちゃう。」
「…………。」
「浅ましいでしょう、浅ましいわ。
でもね、私は貴方に嫌われるのが嫌なの。」
「…………解りました。」
「ありがとう。
実はね、さっき彼女の父が実行犯と言ったでしょう?
今回の事件の主犯、実は私なのよ。」
「やっぱりか。」
「解ってた?」
「ええ、朔夜がバットンも僕も連れずに一人で事件に向かうなんておかしいと思ってました。」
「でも言わないでいてくれたのね。」
「……はい。」
「ああ、優しい人ね。龍之介を思い出すわ。」
「僕は天野スバルです。」

龍之介という男の名前を呟く時の彼女の顔は本当に美しかった。
それが僕には少し許せない。

「悪かったわね、デリカシーが無かったかしら。」
「いえ別に……。」
「ふふふ、彼女を彼女の父の所に最悪のタイミングで送り込んだのは私。
彼女が彼女の父をそれと知らずに倒そうとするようなタイミングにね。」
「ヨツバさんは親子が戦うように仕向けたんですね。」
「あら、戦いにはならなかったわ。」
「どういうことです?」
「だってあの子、弱すぎるもの。
本当に笛吹さんの種なのかしらってくらい。」
「いやいやいやあいつで弱すぎるってどんなマッチョメンですか。」
「マッチョって程じゃないわ。ただサイヤ人みたいな人ってだけで。」
「怒ると髪金色になるんですか?」
「なるんじゃない?」

なんじゃそりゃあ……。
日本にも戦闘民族って居たんだ。

「朔夜のお父さんはちょっと女癖の悪い人でね。
朔夜のお友達の一人とすこしいちゃついているところにあの子を送り込んだの。
そしたらもうあの子ったら暴走しちゃってね。
事情も聞かずに自分の父親に襲いかかったのよ。」
「その朔夜の友達って幾つですか?」
「あら、貴方も知ってる子よ。あのおっぱいが大きい子。」

…………え。
僕と朔夜の共通の知り合いで巨乳といったら……。

「霧雲霙だったかしら?」

ああ、そうか
彼女の胸はその男に揉まれて大きくなっていたのか。
揉んでいたのはその男だったのか……!
純情な男子小学生達の夢を弄びやがってええええええええええええ!
ゆるさねえ!その男だけは絶対にゆるさねえ!
くそが!ぶっころしてやるらあああ!

「なに修羅みたいな形相してるのよ。」
「え、あ、いや……。」
「スバルくんって気が多いのね。お姉さんがっかり。」
「いやそれはそのえっと……。」
「からかっただけよ。」
「からかわないでくださいよぉ……」
「ごめんなさいね、まあとにかく一瞬で倒されて心折られた彼女はその傷を嫌せぬまま今に至ると。」
「なるほど、それは朔夜のお父さんと打ち合わせてやったんですか?」
「いいえ、ノンアポ。」
「えっ」
「あの人子育てに参加できないのを負い目に感じていたのかしらね。
一瞬で私の意図を全部把握して、全て解った上で汚れ役を引き受けたのよ。
誰にも言わずに黙って、たった一人で愛する娘と愛する女性から恨まれて。
己のエゴを通す振りして身を削ったのよ。」
「…………ろくでもない、は訂正させてもらいます。
でも気になるんですが……それでもわざわざあそこまでする必要は……。」
「いいえ、今ああやって痛い目に会わせないとね。
何時か本当にどうしようもない敵が本当に敵として現れた時に心が折れてそのまま死ぬわ。
私としてはここで正義を諦めるならそれもよし。
より強い心を得て“本物の正義”に目覚めるならそれもよし。
どちらに転んでも損は無かったわ。」
「朔夜が正義の味方になるのはいやなんじゃないですか?」
「これで折れないなら貫かせてやらなきゃ親じゃないわ。
孫相手にここまでやった私なりの決断よ。
正義に向かうならもっと力を求めてもっと修行するだろうしね。」
「なるほど……。」
「実際、ネバーランドだっけ?
あそこのメンバーの子達の話を聞いたら今までのあの子じゃ戦えなくなるんじゃない?」
「まあ……少なくともジャックの過去を知ればあいつは怯みますね。
戦えなくはなるでしょう。」

ヒドイ話だ。
ヒドイ話だが納得できないではない。

「ああ、あと朔夜が魔法使えなくなってるのってあれどうしてですか?
危うく死にかけたんですけど……。」
「ああ、あれはね。
私たち魔女が本格的に大人になる前触れなの。
私も半年くらい魔法使えなくなったわ。
ただこの期間も修行を地道に続けた魔女は伸びるわねぇ。」
「魔女の生態が分からない。」
「今夜、少し調べてみたら?」
「え?」
「目の前にこんな良い魔女がいるのに調べてみないの?」
「からかってます?」
「いいえ、年寄りの長話につきあってくれたお礼よ。」

ヨツバさんはそう言ってウインクをしてみせた。
どうする俺、どうする!
どうする!

「ああそうそうその前に。」

ヨツバさんが携帯電話を僕に渡す。

「これ、もし朔夜と一緒に居てまた何か有ったならこれを使いなさい。」
「これは……?」
「私の使い魔よ、あなたの力になってくれるわ。」

とりあえずしゃかしゃかと振ってみる。

「バットンと違って喋らないわよ。」
「なんだ。」
「都市伝説の召喚器になっているわ。
適当にボタン押してコールすれば護身用には十分すぎるのが出てくるから。」
「わ、わかりました……。」
「あなたの昔の友だちが何かしているみたいだけど……」
「ああ、付きまとわれて困ってます。」
「使い方さえ間違えなきゃ、そして『貴方』なら、多分彼ら程度ならなんとかなるわ。」
「へぇ……ありがとうございます。」
「いつも朔夜に良くしてくれるお礼と私からの好意よ。
さ、難しい話はここまでにして次行くわよ次!」
「え?」
「あら、お父さんには友達の家に泊まるって言っているんでしょ?」
「はい……。」
「じゃあ大丈夫、夜は長いわよー!」

そう言って彼女は僕の手を引いて店を出た。
その姿は本当に僕と変わらない年頃の子供のようにはしゃいでいて、綺麗だった。
色々面倒な問題は山積みだが、僕も彼女に合わせて今日くらいはゆっくり楽しもう。

【不思議少女シルバームーン~第六話 第一章「少年と魔女」~】
 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー