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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-12

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【不思議少女シルバームーン第七話 第一章「血祭りヘイトレッド」】

「この十年間の間に俺の所に集うてくれた同志諸君、ついに一週間後だ。
 ついに一週間後、全ての悲しみが、痛みが、苦しみが終わりを告げる最後の戦争が始まる。
 同志とはいえど世界に絶望した諸君、力を振るいたい諸君、俺の思想に賛同せずに手段にのみ賛成した諸君、様々な人間がここに居る。
 しかしそれでも我々は大戦争を引き起こす目的の下に集った同志である。
 大戦争というたった一つの目的のためにありとあらゆる利害も違いも乗り越えた同志である。
 我々の絆の力を以てすれば今の脆弱な世界に風穴をあけ、天使共にラッパを吹き鳴らさせることも容易いはずだ!
 一騎当千の諸君よ、最後まで一意専心して各々の任務をこなしてくれ、待っているのはいと素晴らしき一心不乱の大戦争だ。
 壊すぞ壊すぞ全部壊すぞ、壊れるものが無くなったら自らさえ壊し尽くしてしまわんばかりに壊すんだ。
 それはそれはきっと楽しいネバーランド、覚めない夢を見続けようじゃないか!」

 熱狂はない。
 静かな拍手がホールに響いている。
 誰も彼もが馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべている。
 そうだ、此処に集う百人ほどの人間は誰もこの少年の演説を聞いてない。
 聞く気さえ無い。
 ここに居る契約者の全員が【手段の為なら志を問わない】あの少年に集められた者なのだから。
 演説を終えたジャックに膝を椅子替わりにされているあの女性もそうだし、
 あそこで薄ら笑いを浮かべてこっちを見ているアラブ風の青年もそうだ。
 皆が皆、ジャックの理想になど一切の興味を持っていない。
 ただ偶然、自分の理想への手段として大戦争を起こすことが便利だったから彼の側にいるだけなのだ。
 そして……

「明尊ちゃん、お皿と本、持っててね。」
「ここでは本名で呼ばないでくれ。」
「じゃあシンクちゃん。」
「ちゃんも付けるな。」
「シンクちゃんはシンクちゃんだよ。」

 目の前に居るこの少女もそうだ。
 ルルというこの少女は全知の魔性【ラプラスの悪魔】の契約者だ。
 にもかかわらず彼女は物事の記憶が一日しか保たれない。
 寝ると彼女は全て忘れてしまうのだ。
 前にジャックは彼女の記憶の限界が三日だと言っていたがそれは違って、彼女が能力で自分の行動を知ることができる限界が三日前までなのだ。
 俺の知り合いにも同じ都市伝説と契約した人間がいるがルルは彼女のように数十年数百年単位で過去に遡れもしないし未来に向かうこともできないらしいし、
 検索をかけるにも数十秒はかかるそうなのだ。
 だから彼女は何時も厚い本を持っている。
 ジャックのことや今まで出会った同志のことについてそれはそれは克明に書いていて、誰にも見せたことは無いそうだ。
 そしてそこに彼女の家族の記述は無い……らしい。

「シンクちゃん、このピラフ美味しいよ!」
「残念だが偉大なるこの俺は両腕が塞がっている。
 そして親にそういう時は犬食いをしても良いという教育をされたことはない。」
「なーんだ。じゃあ良いよ、本は私が持つから。」

 彼女は本を自分の懐にしまうと皿を片手に食べ歩きを始める。

「行儀が悪いぞ。」
「しらなーい。」

 やれやれ、困った奴だ。

「やあ二人とも、楽しそうだね。」
「ジャックちゃん、紅瀬ちゃんといちゃついてるんじゃなかったの?」
「どうしたジャック、何か用か?」
「うん、二人も誘おうと思ってね。」
「何にだ。」
「ジャックちゃんは私たちを研究所の襲撃に誘うんでしょう?」
「あらら、お願いの内容を覗かれちゃったらお願いに来た意味が無いね。」
「トリちゃんとサンタさんと紅瀬ちゃんと私たちの六人で都市伝説と人間の契約について研究しているとある研究所を襲うんでしょう?」
「うん、そうなんだ。大戦争の前の下準備にどうしても必要でね。
 セキュリティーの隙をつくにはどうしても今時期やる必要があったんだ。」
「しかしよりによって今時期……」
「良いよ、私もシンクちゃんも付いて行ってあげる。
 残酷な人体実験で苦しめている金髪のマッドサイエンティストがみえるし。」
「え、俺の都合は……」
「シンクちゃんは私と一緒に出撃、守ってもらわないと私が危ないもん。」

 やれやれ、困った奴だ。

「それは有り難い、じゃあ明日の朝出発だから早めに寝てね。」

 え、ちょ、パーティーは?
 夜はこれからだとばっかり……

「早めに寝てね。」
「料理は……」
「食べ過ぎないでね。」

 やだもう。
 俺は適当に料理を食べてそそくさと自分の部屋に戻ることにした。
 俺がネバーランドで用意してもらった部屋はバリバリの和室で庭には鹿威しまでついている。
 ちなみに枕元には実家から持ち込んだ只の日本刀まで置いてある。
 そう、祖父母の家の俺の部屋と一緒なのだ。
 労働条件良いし、組織やめてこっち落ち着こうかな。
 上司のエーテルさんに怒られちゃうからやめとくか。
 自分用にとっておいてあったお菓子を準備しつつ、緑茶を淹れながら縁側から夜空に浮かぶ月を眺めてみる。

「あーあ、なにやってんだろ、おれ。」

 自分がネバーランドに入った目的を忘れそうになっている。
 実際、今の今まで忘れていた。
 そうだ、俺は元々内偵調査の為にここに入り込んだに過ぎないのだ。
 最初の数日は警戒されていたし監視も厳しかったのだがアットホームな職場なのでなんていうかこう……馴染んでしまった。
 ああ、自分のムダに高い適応能力が憎い。
 俺がジャックに語った【父親が憎い、父親を倒す為にここを利用する】という目的。
 これは嘘偽りではない。
 ジャックの計画を利用しつつそれ自体は本当に実行するつもりだった。
 ジャックの語った【都市伝説の存在を公表】と【子供の王国を建設する】という目的は阻止するつもりだった。
 だが自分の本当にやりたいことはなんなのかどんどん分からなくなっている気がする。
 そもそもなんで父親が憎いのだろうか。
 解っている。
 あの男が女にだらしないのが嫌なのだ。
 どこかで母を蔑ろにしているように見えて。

「――――違うよそれは。」

 縁側の反対側、俺の部屋の入口から声が聞こえる。
 聞き覚えのある声だ。

「明尊ちゃんは自分が放って置かれているような気がして寂しいだけだよ。」
「ノックもせずに部屋に入るな。」
「ロックもせずに部屋に篭るな。なんちって。」

 やれやれやな奴だ。

「無礼は許そう、で、何のようだ。
 それともあれか、また………………鳴り止まないのか」

 背後に茶を置いてみる。
 足音が俺のすぐ後ろまで近づいてきた。

「鳴り止まないのはいつものことだよカチカチカチカチとゼンマイの音色が止まないのは。
 それよりも明尊ちゃんが悶々とした気分を抱えているのが流れこんできたからさ。
 少しお話しようかなって思って。」

 頂きますね、といって彼女はお茶に口をつける。

「話し相手くらいにならなってやるとでも言うのか?」
「私の能力はオンオフがつけられないからね。明尊ちゃんが落ち着いてくれないと煩くてしょうがないのだよ。」
「ふむ……。」
「あれだぜ明尊ちゃん、親がいるのは幸せだと思うぜ。」
「あんなろくでもない親でもか?」
「それは明尊ちゃんが本当に碌でも無い親を知らないから言える台詞だよ。」
「というと?」
「世の中には幼いうちからね、親に殴られても自分が悪いせいだって思い込むことしかできない子も居るんだよ。」
「そんな親は親とは言わん。見つけ次第俺が殴り飛ばしてくれるわ。」
「真っ直ぐだねえ。」
「思えば子供の頃は全く殴られなかったな。」
「殴り合える年齢になるのを待ってたんじゃないかな。」
「いや、向こうから殴りかかってきたことはなかった。」
「…………。」
「何だその目は、『親に殴りかかるとか酷いなあ。』みたいな目で俺を見るな!」
「ソンナコトマッタクオモッテマセンヨ」
「俺の爺さんと親父は良く喧嘩していたというが……。」
「家系だね、親子で戦う家系。」
「そんな戦闘民族のような家嫌すぎるわ。」
「まあ私もそんな漫画みたいなことは無いと思うけどね。」
「まあ良い、どのみち強くなるために父は超えねばならぬ壁、それが早いか遅いかというだけのことだ。」
「戦闘民族だあああああ!?」
「爺さんに言われているのだ、お前は父を超えねばならぬと。」
「どうみても戦闘民族ですありがとうございました。
 ほんとうに怖いわ上田家…………でも、ちょいと憧れるけどね。」
「なんでだ。」
「繋がってるじゃん。決闘と血統で。」
「まあな。」
「私は親のことなんて覚えてない。私の日記の最初のページは『私は一人で生きて行くことにした』だよ?
 何の前置きもなくつながりを感じていられる人間が一人も世の中に居ない恐怖といったらないね。」
「お前の能力で調べられないのか?」
「なんかずっと眠ってたのから目覚めて何も記憶が無くてね。
 私はいったいどんな気持ちで最初のページを書きだしたのか。
 他人の気持ちを知るのでさえ恐ろしいのに自分のそれなんて恐ろしくて知りたくもないよ。」
「なるほどなあ。」
「それにしても明尊ちゃんはリアクション薄いよね。」
「どこがだ?」
「いや、人が私の過去話と能力聞くとたいてい同情だったりドン引きだったりするんだけど。」
「え、だってお前いくらすごい能力でもそれに対してやってることは普通じゃん。
 解るんだから調べる、聞こえるんだから聞いちゃう、見えるんだからみえちゃう。
 普通にできることをやってるだけなのになんで驚く必要がある。」
「……なるほどね、だからって自分の心が読まれているのにも驚かないというのはどうだろう。」
「俺は自らの思うところに一片も恥じる必要が無いからな。」
「私が大声で『この人裏切ろうとしてまーす!私たちの計画をじゃましようとしていまーす!』って言っても?」
「はて、なんのことだか。」
「やれやれだね。」

 俺は俺だ。
 一片も恥じること無く俺だ。
 誇りこそすれ心を見られて何故不快に思わねばならないのか。
 むしろ、あんな情けない父親を見られたのが不快なのだ。
 と、この考えも伝わっているのか。
 まあ構うまい。もう知っていることだ。
 というか話すのが面倒だからこれで良いか?

「それはちょっと寂しいかな。」
「解った解った。ちゃんと話してやるよ。」
「明尊ちゃんのその普通は、私にとって特別なんだよ。」

 肩に手が置かれる。
 細くてしなやかで白くてヒンヤリとした指。
 体温を殆ど感じさせない冷たい指。

「明尊ちゃんの心のなかの“特別”にはずぅっと同じ人が居るんだね。」
「恥ずかしくて言えないがな。ずっと片想いだ。
 あの人こそお前と同じ能力を持っていれば手間が省けるのだが。」

 肩に指が食い込む。
 その理由は俺には分からない。
 時々妹の明が妙に強く抱きついてくる時があるがまあそれと同じようなものだと思っておこう。
 俺の経験によれば女性というのはわりと気分屋なものだしな。

「昨日が消えて行くのなら、せめて私は明日が欲しい。
 そうやって私は今日をもがき続けているの……。」

 誰も知らない震えた声。
 熱の通わぬ小さな指。
 月を見てセンチになっているのだろうか。
 まあ付き合うのも悪くはない。
 優しさは偉大なる俺の偉大さの現れだ。
 彼女の手を握り月を見上げる。

「明日を探すが人の道。
 それを示すは俺の道。
 日の光は人に恵みを与え、月の光は人に夢を与える。
 故にその二つは尊い。
 俺はその日月の如く尊くあれと願って生を享けたのだ。」
「…………。」
「だからまああれだ、何が言いたいかっていうと……。」
「なに?」
「少なくとも明日、日がまた昇るが如くお前の側には俺が居る。
 少なくとも今宵、月が浮かぶかの如くお前の側には俺が居る。
 だから……それほど嘆くな、お前はお前だ。」
「明尊ちゃん……。」

 抱きつかれた。
 うっほほ~い、テンション上ってきたぞ!
 いや待て、俺には吉静さんという人が……あ、やばい当たってる胸当たってるこれは卑怯だ。
 こんなのに耐えられる訳ないじゃないか。 
 俺だって至って普通な男子中学生だぞ?
 健康なんだぞ?
 耐えろ、耐えろ俺、優しく頭撫でるだけにしておけ。
 ここで妙な行動を起こすとルートが著しく制限される気がする。
 頑張れ俺のりせえええええええええええええええええええええい!

「明尊ちゃんと明尊ちゃんのお父さんとの喧嘩の決着が付いたら話があるの。
 …………聞いてくれる?」
「え、あ……まあ話くらいなら。」
「返事、考えといてね。」

 どうする俺!
 どうする俺!?


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