夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

前川みく&ルーザー

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カーテンの隙間から夕日が差し込んでいた。もう間もなく日は沈み、夜がやってくる。
部屋に入ってくる夕日の光量も、どんどん少なくなっていく――だというのに、部屋の主は室内灯を点けようともせず、ベッドの上に座り込んだままだった。
膝を抱えた体操座りのまま、動く気配をまったく見せない少女の頭には、奇妙なアクセサリーが着けられていた。
動物の耳を模した――俗に言うネコミミだ。
少女の名は前川みく。輝く星(スタァ)を目指し、夢を叶えるために故郷を離れ上京してきた少女――だった。

現在、前川みくの身体には、三画の令呪が刻まれている。
あらゆる過去を【なかったこと】にする【やり直し】の聖杯戦争のマスターとして、彼女はこの偽りの街にいるのだ。
どうして彼女が聖杯に招かれることになったのか――彼女自身、その理由は分かっていない。
だが、もしもきっかけというものが生まれた瞬間があったとすれば、それはあのときだろう。
自分よりも後に入ってきた、アイドルの世界のことなんて何も知らないだろう三人が、すんなりとデビューを決めてしまったあのときだ。
喜ぶ三人の顔を見たときにみくの中に生まれた羨望は、決して小さな感情ではなかった。

素敵な【魔法】があるから、女の子は【アイドル】になることが出来るんです――
そんな言葉を信じて、ずっと努力してきた。
延々と続くレッスンは辛かったけれど、いつか輝く自分になるためには必要なことだと言い聞かせて歯を食いしばって耐えた。
アイドルとして目立つためにはいつも通りの自分じゃ足りないと思って、自分が一番可愛いと思う猫をモチーフにしたキャラクター作りだってした。
なのに、【現実】は【理想】には程遠かった。

「だからみくは……ここにいるの……?」
『ああ、そういうことだろうね』

みくの他には誰もいないはずの部屋で、彼女以外の誰かの声がした。
驚いたみくは声の方へと振り向いて――そして、『それ』を見てしまったことを後悔した。
薄闇に紛れるように、『彼』は全身を黒に包んでいた。髪。瞳。学生服。全てが漆黒のように黒く――言いようもなく、気持ちが悪かった。

「だっ……、誰にゃ!?」
『おいおい、僕を呼んだのは君なんだぜ。まったく、僕のマスターにはそこから説明しないといけないのかよ』

そこまで言われて、みくの中で全てが繋がった。
この街で記憶を取り戻したと同時に、みくの脳内には聖杯戦争に関する知識も刷り込まれていた。
つまり、みくの目の前にいる得体の知れない少年こそが――

「みくの、サーヴァントなの……?」
『ようやく分かってくれたかい。じゃあ、改めて――僕が君のサーヴァントの【ルーザー】だ』

そう言うと、ルーザーを名乗った少年は笑った。それはもう、とてつもなく不快そうに。
ルーザーを直訳すれば、敗者――勝者にあらざる者ということになる。
そう、このクラスは敗者であることを運命づけられたクラスだ。
ルーザーの真名は、球磨川禊。かつて【グッドルーザー】と呼ばれ、誰よりも負け続けた男。

『さぁ、次はマスターのことを話してくれよ。僕がずっと自分語りをしたって構わないけど、僕のことなんて知ったって何にもならないだろうからね』
「あ……み、みくの名前は、前川みくにゃ!」
『みくにゃ? 僕が言えたことじゃないけど随分個性的な名前だね。
 流行りのキラキラネームは悪影響しか与えないっていうけど大丈夫かい?
 周囲からのイジメで過負荷(マイナス)になっちゃいないかい?』
「みくの名前はみく……にゃ! にゃは名前じゃないにゃ!」
『ああ、語尾に「にゃ」をつけるって、そういうキャラなわけか……うん……』
「ちょっと! みくのことを痛々しい目で見るのはやめるにゃあ!」

みくにとって猫キャラを貫くのはアイドルとしての矜持だ。
たとえ己のサーヴァントといえども馬鹿にされる謂われはないと、みくは怒った。
だがルーザーはそんなみくの怒りを意にも介さず会話を続ける。

『僕は君のサーヴァントだ。好きに使うといいさ。だけどその前に、君の願いくらい聞かせてもらってもいいだろう?
 なんせ僕は君の命令なら何でも聞かなくちゃいけない身分だ――主の意向くらいは知っておきたいのさ』

ルーザーが求めたのは、みくは聖杯戦争にどう臨むのか――その意志の確認だった。
ルーザーの質問に、みくは即座に答えることが出来なかった。みく自身、自分がどうするのか決めかねていたのだ。
だけど――自分が何を望んでいるのか。それは答えられる。

「みくは……やり直したい。
 シンデレラプロジェクトのみんなや、Pチャンと出会う前から……全部をやり直して、みくもあのステージに立ちたい……!
 そうしないと、きっとみくは前に進めないから!」

もしも、あのときもっと上手く出来ていたら――ステージに立っていたのは、あの三人ではなくみくのほうだったかもしれない。
もしかしたらというifを、諦めることが出来ない。だからみくは、もう一度やり直すことを望む。
前に進むために。自分が望むアイドルになるために。

だが、みくの言葉をルーザーは一蹴する。


『前に進むために、過去をなかったことにする? ――はん、面白くない冗談だ』

『やり直しを望むってことは、過去へ戻ろうとする行為だってことも分かってないのかい?』

『君は前へ進もうとしているつもりかもしれないけどよ、僕に言わせてみれば後ろへ前進してるだけだ』

『そのまま前に進んでいれば、幸せなエンディングを迎えられたかもしれない――なのにわざわざ回り道をしようとするなんて何を考えてるんだか』

『【なかったこと】にする? それがどういうことなのかも分からずに、よく言えたもんだ』

『なら教えてやるぜ。【なかったこと】にするっていうのが、どういうことなのかを』


『僕の能力「大嘘憑き(オールフィクション)」で――君の【ネコミミ】を【なかったこと】にする!』



ルーザーがそう宣言した直後。前川みくの頭部から、ネコミミが消失した。


「にゃ――にゃにゃっ!?」

『ああ、ついでにその口調。さっきから気に入らなかったんだよね』

「いったいみくに何をした  ――!?」

そこでみくの声は止まった。彼女のネコミミとお決まりの語尾「にゃ」は、ルーザーの「大嘘憑き」によって【なかったこと】にされたのだ。
自らの二大アイデンティティを消失した前川みくは、混乱のあまり完全に言葉を失った。

『【なかったこと】にするっていうのは、こういうことなんだぜ。
 聖杯戦争は他のマスターとサーヴァントの願いを全て【なかったこと】にする戦いだ。
 僕は負け続けてるからさ、今さら負け星が一つ増えたところで構いやしない。
 だから、ごめんね。さっきは君の命令は何でも聞くって言ったけれど――やっぱりそれは【嘘】だった。
 君がなんだか気に入らないから――僕は今回も、負けることにする』

球磨川禊は過負荷(マイナス)だ。彼に一般常識は通用しない。
世界中の誰もが「カラスは黒い」と言ったとしても、彼は一人で「カラスは白い」と言うだろう。
それこそが「混沌よりも這い寄る過負荷(マイナス)」球磨川禊なのだから。

「それでも……それでもみくは……諦められない  」
『いやいや、そのキャラもういいから(笑)』
「アイドルになるのがみくの夢  !」
『おいおい、僕の話を聞いてた? 生憎、僕の「大嘘憑き」は【なかったこと】をさらに【なかったこと】にすることは出来ない。
 つまり君のネコミミと語尾は、一生そのままってことなんだぜ』
「それでも……みくは……みくはアイドルが好きだから……!」
『あーあー、こんなに話が通じないなんてな――』

「みくは自分を曲げないにゃ!」
『ああ――やっぱり今回も、勝てなかったよ』

「え……? も、戻ってるにゃ!?」
『「安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)」……三分間だけ【なかったこと】に出来るスキルさ。
 ごめんごめーん。【なかったこと】を【なかったこと】に出来ない「大嘘憑き」なんて、全部僕の嘘だよ☆』

ルーザーの言葉の多くが嘘だったということに気付いたみくは、その場にへたりこんだ。

『前川みく。
 気高くプライドを捨て、
 本心のために自分を偽り、
 みっともなく格好付ける。
 それでいて特別(スペシャル)にも、異常(アブノーマル)にも、偶像(アイドル)にもなれない普通(ノーマル)だ。
 しかし――嫌いじゃないぜ、そういうのは』

『僕が生まれついての負け犬なら、君はさながら負け猫ってところか。
 同じルーザー同士――へらへらと、腹を割らずに仲良くしようぜ』

『負け犬には負け犬の戦い方がある。僕らはきっと勝てないだろうけど、勝てないなりにやれることはあるさ。なんせ僕は負け戦なら百戦錬磨だ』

「さぁ――始めようぜ、僕たちの聖杯戦争を。負け犬と負け猫が、主役になろうとする戦いを」



【クラス】
ルーザー

【真名】
球磨川禊@めだかボックス

【パラメーター】
筋力E- 耐久E- 敏捷E- 魔力E- 幸運E- 宝具E-

【属性】
混沌・負

【クラススキル】

過負荷(マイナス):
あらゆるパラメーター、スキルにマイナス補正がかかる。
生まれついての性質であるため解除することは不可能。

心眼(負):A-
 弱さという弱さを知り尽くしているため、
 相手の肉体・精神的弱点を探る事を得意とする。
 高い確率で相手の弱点を見抜く。

人格破綻:A-
 人格が破綻しているため、普通の人間では意志の疎通が難しい。
 Aランクともなると、ただそこにいるだけで周囲に不快感など精神ダメージを与える。

【宝具】
『安心大嘘憑き(エイプリルフィクション)』
ランク:B- 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:20
三分間だけ「現実(すべて)」を「虚構(なかったこと)」にする能力。

『却本作り(ブックメーカー)』
ランク:EX- 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:-
 相手の「心を折る」宝具。
 実態は大きなマイナス螺子である。
 その螺子で貫かれた者は肉体や精神など全てのスペックが球磨川禊と同レベルにまで落とされる。

【weapon】
『螺子』
全身に隠し持つ、大小様々な大量の螺子。

【方針】
『勝てなくても、主役になろう』

【マスター】
前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
過去をやり直してでも、【アイドル】になる。

【weapon】
『ネコミミ』

【能力・技能】
アイドルとして必要な能力はそこそこ持っている。

【人物背景】
アニメ版からの参戦。大阪出身でアイドルを目指し上京している15歳。
猫キャラを貫いてアイドルデビューすべく日々研鑽を重ねているが、後輩である島村卯月らが先にデビューを決めてしまったため焦りと羨望を抱えている。

【方針】
アイドルになりたいという強い願いはあるものの、具体的な方針は未定。



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