新生人工言語論

人工文化による警鐘

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ほとんどの人工言語作成者は人工言語だけを作っています。
ですが、言語というのは文化のひとつです。よく言語文化と言われるので横並びと考えられがちですが、その民族の絵画や建築技術などと同じく文化のひとつです。
文化は言語を包みます。風土と並んで言語の土台となります。

『エスペラントの話』三宅(昭51 大学書林)のp13によれば、「人間種族の平和と幸福とをもたらすためには、公平な共通語を持たなければならない」とあります。
ですがザメンホフは語彙の源泉に西洋語を選びました。文化は事実上西洋のものを拝借しています。
これは本当に公平でしょうか。公平でないとどういうことが話者間で定められなくなるのか、ちょっと言語の作成者に聞いてみましょう。

1:貴方の言語で太陽は何色ですか?
2:貴方の言語で虹は何色ですか?
3:貴方の言語で牛と米を表わす単純語はいくつありますか?
4:貴方の言語にオーロラやスコールはありますか?
5:貴方の言語で兄弟は男女や長幼で分けますか、それとも分けませんか?
6:貴方の言語の調理動詞は焼く系と煮る系のどちらが細かいですか?
7:貴方の言語で高貴な色は何色ですか?
8:貴方の言語で狼は何を象徴しますか?
9:貴方の言語で林檎は赤いものですか?
10:貴方の言語でプロトタイプの鳥は何ですか?

大体の人工言語ではこれらが不定です。話者・作者によってまちまちです。考えなくとも決まってるからです。
そう、それは西洋文化か自分の文化です。これは公平ではないし、話者間で誤解も招いてしまいます。

文化は言語に影響します。数式などを除いて剥離できません。
ゆえに文化は言語を補完します。文化は言語に恩恵を与えます。

文化について考えなかったり無視することに対して私は警鐘を鳴らしました。
これまでの人工言語は形態論、統語論、音韻論、果ては文字論といったレベルをメインに考察していました。言語そのものの内面的なシステムです。
しかし、それを取り囲む環境という部分には触れていませんでした。
いえ、正確には触れる段階に達していなかったのでしょう。
個人でなさってる場合、5年10年ほどやってようやく辞書や概説書がまとまればいいほうです。文化まで手が回らないというのが実情でしょう。

自言語がどの文化・風土に依拠するかはきちんと設定しておきましょう。そうでないと話者間の誤解が絶えませんから。
依拠するのは自然文化でも人工文化でも構いません。
ただ、普及型は政策上、特定の文化を選べない立場にある点でジレンマを抱えているので即決はできないという問題があります。
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