ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

はじまりの森

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はじまりの森 ◆MjBTB/MO3I


木々の間から見える空も、少しずつ白んできた。どうやら相当に時間が経っているらしい。
森の中というものは歩くだけでも大変で、当然のように時間が早く経つものだ。
手間がかかるからスピードも遅くなるし、周りも見えにくいから道にも迷いやすくなる。
それが暗い夜となると更に危ない。いくらなんでもあまりお近づきになりたくない、そんな場所だ。
まぁ、こういう獣道にも慣れているんだろう木野君が前を歩いてくれるおかげで、どうにか自分は迷わず進んでいるようなんだけど。

というわけでこんばんは。脱ぎたくても脱げない呪いのきぐるみの中の人、吉井明久でっす。テヘ☆

いや、あのね。聞いてよ。
さっきからね、木野君が全然僕とおしゃべりしてくれないの。さびしいの。
いや、わかるよ? 「ふもっふ」としか言えない僕と会話が成立する人間はいないだろうってことはわかるよ?
知ってるけど何この仕打ち。っていうかのっけから僕の扱い酷くない?
っていうかこのきぐるみどうやって脱ぐの? 僕には何も出来ないよ?
木野君、脱がせて。お願いだからこれ脱がせてェェェェェェェ!

「ふもおおおおおお!」
「……どうしました?」
「ふも……ふももっ! ふもっふ!」
「大丈夫です。このまま進めば無事に東に……街に出られますから」

あーもう! 駄目! 駄目でしたぁー! ほら駄目だ! ほーらね! ほら!
誰だよこんな変なもの作っちゃったの! 出てきてよ! 謝って! 僕に!
そりゃあ不用意に着ちゃった僕も僕だよ! でもこんなの想像だにしないもの!
アバ○ムやシ○ナクとかそんな魔法も使えない僕に、こんな状況でどうしろって!?
……不幸だ。凄い蹴りとか入れてもらったら壊れたりしないかな? 僕の体も壊れそうだけど。

「ふもぅ……」

何気なくついたため息が、ボン太くんスーツ越しに外に行く。
けれどそんなことはどうでもいい。今は、別のことが気にするべきだ。
木野君がまたもやこっちを怪訝そうに振り向いたけど、もうなんか、いい。

きぐるみよりまず……姫路さんは、大丈夫だろうか?

名簿に僕と一緒に名前を書かれていた姫路さん。
優しくて、試召戦争では常に僕達を助けてくれた姫路さん。
無自覚のままその殺人料理で僕を遥か高み――あの世的な意味で――へ連れてってくれる姫路さん。
自分に自信が無くて、いつも自分を卑下してしまうけれど、本当はとっても凄い姫路さん。
その笑顔で、僕だけじゃない、周りの皆を癒してしまう姫路さん。

さっきの僕みたいに、危険な目には遭ってはいないだろうか?
とはいっても僕よりも頭も要領もいいから、ちょっとはマシなはずだけど。
でも、それでも心配だ。変な人に追い掛け回されてたりしてないだろうか。
Fクラスの皆がいないせいで、たった一人で苦労しているかもしれない。
まぁあのクラスメイトがいたら別の意味で大変だったかもしれないけど……。
ただ、今は僕しかいない。姫路さんの友達は、僕一人なんだ。

そう、今は、僕一人。

雄二もいない。美波もいない。秀吉もムッツリーニもいない。
これは本当は喜ばしいことなんだけど、喜ばしいことなんだけど……。
やっぱり、寂しいと思ってしまうのは馬鹿な考えなんだろうか。
いや、馬鹿だな。「友達も巻き込まれてれば良かった」なんて最低じゃないか。
本当駄目だな僕は。もっと気合を入れる所だって言うのに。
……けれど、色々と不安なものは不安だ。

「ふぅもふ…………」

また、ため息。
木野君はもうこっちを見なかった。大体察してくれたんだろう。
逆に助かる。

しかし……どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
答えを掴むために最初に言われたこと――覚えてない部分もあるんだけど――を思い返す。
生き残るのは最後の一人。ここからは出られない。端っこから消えていく。
食料や水、生きていくための道具、そして武器が渡される。
……ここから、出られない。端っこから、消えていく。消える。消えていく。消えて……。
ああ、そうだ。"さっき見たあれ"は、やっぱりそういう事なんだ。でもあの"黒"の仕組みは、一体……。

そう、僕達は実はもう既に、"端っこが消えている"という状況を目撃していた。

というのも、それは木野君がまさにその「端がどうなっているかが気になる」と言ったのが始まりだ。
姫路さんを探すのが先決だとは思ったけれど、木野君としては"ここ"がどうなっているのかを先に知りたかったらしい。
正直なところそれは僕も気になってはいたから、断る理由なんて無い。だから文句は言わず木野君についていくことにしたのだ。
そして木々や草を掻き分けて到着。木野君曰く、地図にしてB-2。その場所自体には何の異常も無かったんだけど……。


その北の方を見ると……黒い黒い何かが現れていた。


はっきり言って、異常だった。こんな不思議なことは周りで起きたことも見たことも無い。
時間が経っていたおかげで森の中も少しずつ明るくなっているのに、あの一角だけは真夜中のままのようだった。
流石の木野君もこれには驚いたのか、逆に何も言わないままでしばらく立ち尽くしたままになって。
あれはそう、「どうしたものか」と迷っていたんだろう。気持ちはわかる。
あんな得体も知れないものが出てきてたんじゃ、言葉だって失うよね。

森の中、東へ東へと引き返しながら今も思い出す。
僕もあれはかなりぞっとした。本当になんだったんだろう。
わからない。でもあれがどうにか出来ないままじゃ、ここから帰るなんて事は出来ないんだ。
あれは一体……僕達の道を塞いで立ち退かせるあの黒いのは一体……。
と、ここで僕の頭の中にファンタジックな熟語が浮かび上がった。
難しい話じゃ無い。ゲームや漫画によく出てくる、アレだ。

"結界"

ありがち、といえばありがちだ。でも、だからってどうしろっていうんだ。
大体本当に結界だったとして、対処法はおろか仕組みすらもわからないし。
それどころかこんな曖昧な事を口に出したら、皆から「ゲームと現実の区別くらいつけなさい」と罵られると思う。

でも、こんな所にいつの間にか呼ばれて、あんなものを見ちゃった日には……なんでもありな気がしてしまう。
そもそも今がまさに趣味の悪いゲームみたいな状況なんだ。何が起こったって不思議じゃない、絶対。
木野君に言ったら笑われるだろうか? 雄二の場合は……ひとしきり笑った後に、なんだかんだで乗ってくれそうだけど。

でも本当に、あれは一体何だったんだろう。文月学園でもあんなものは見たことが無かった。
もしあんなものが作れるなら、試召戦争の時にも何らかの形で使われているかもしれないけど、そんな様子も無い。
あれの正体が掴めたなら、僕達はこんなところで最後の一人になろうともがき苦しまなくたっていいんだろう。
けれど解らない。僕にはあれが何なのか全然わからない。理解も追いついてない部分もあるし、正直。
あんなのさえなければ、皆が傷つけあわないで済むのに……!

誰かが傷つけあうのは、嫌だ。それが名前を知ってる人でも名前を知らない人でも、僕は絶対に見たくはない。
でも残念なことに、僕が話しかけた女の人は僕に銃を突きつけてきた。これだけでも僕はもうかなりのショックだ。
試召戦争は違う。あれは学業の一環。決して血で血を洗うものじゃあない。基本は。
Fクラスのたまの暴走……は、まぁ似たようなものかもしれないけど……でも、こんなのとは違う。
こんな最悪の状況は、ありえない。こんな最低な椅子取りゲームは、許せない。
でも、だからってどうすればいい? 何から手をつければいいんだ? それ以前に僕なんかに手がつけられるのか……!?

誰かが死にそうになったりとか、そんなのは嫌なのに……!


       ◇       ◇       ◇


さて。
"黒い何か"を目撃してしばらく歩いていた僕達は、なんだかんだで遂に森を抜けることが出来た。
B-2で"何か"を――結界、と結論付ける勇気は無い――見た後、素直に回れ右して引き返したおかげだ。
木野君が欲を出さずに冷静に行動してくれたおかげで、こうして道に迷わずに元の場所に戻ることが出来た。
あのまま更に進んでいたら、道に迷うどころか何かの拍子にまたあの女の人と出会っちゃったかもしれないし。

とはいっても、今は僕の心の中に森が出来てしまっていた。
辺りは平地。もう天然の木々が僕と木野君を囲っていたりはしない。
けれど僕は心中、不安を具現化させた木々の中で、ゆっくりと迷子になっている。

「姫路さんはどうなっているだろうか」「学校は今頃何をしているだろうか」
「自分と姫路さんがこんな場所にいる事に皆気付いているだろうか」「雄二達が心配してはいないか」
「そもそも姫路さんの身に何が起こってもおかしくない」「むしろ自分はどうなんだ。生き残れるのか」
「あの黒いものはなんだったんだ」「自分程度の力なんかで、争いを止める事なんて出来るのか」

沢山の木が、まるで絵本の世界の住人にでもなったかのように僕に話しかけてくる。
それは全部僕の心に不安を植えつける内容だ。良い事なんてちっともありゃしない。
姫路さんだったら、美波だったら、雄二だったら、秀吉だったら、ムッツリーニだったら、答えは出せたかもしれない。
けれど僕には今すぐに答えを出したくても、出せそうにはない。頭の動きが鈍いのは鉄人からのお墨付きだ。

でもそっちがそうくるならと、あれからこっちはこっちである策を披露していた。
答えが思いつかないなら……そう、"考えないようにすれば良い"。
そう。今僕がどんなに背負い込んだって、正直何も変わるとは思えない。
むしろこうやって不安に縛り付けられたままじゃ、万が一何かが起こったときに動きが鈍る。
頭の鈍さが今すぐに変えられないなら、せめて体だけは鈍くならないようにしないと駄目だ。
だから、今はあえて何も考えない。逃げるわけじゃない、保留にするだけ。空元気かもしれないけど、今はこれが精一杯だ。
今はただ木野君の事を信じて姫路さんを探す! 勿論寄りかかるだけじゃなく、理想としては互いに力をあわせて……。
とは言っても今は意思疎通が出来ないんだけどね! ああもう、こっちは今すぐ何とかしなきゃ!
どうしようか! 教えて木野君! 教えて! ……ああ、この問題だけでもう現実逃避してしまいたくなるんだけど。
色々と保留にしたばかりなのに、何考えてるんだろうね僕は。ああもう本当、どうしようこのきぐるみ。

「さて、少し聞きたいことがあります」

そんな風に悩んでいた最中。木野君が突然足を止めて、僕に振り向きながら話しかけてきた。
気付けば目の前には橋。すぐ傍には流れる川。遠くを見渡せば街が見えた。
随分歩いたもんね……ああそうか、橋を渡って街の中に入る前に確認したいことがあるんだろうな。
でもどうやって意思疎通を図れば……。

「このまま僕は街に向かいたいんですが……それからどうするか、悩んでます。
 まずは病院に行き、あるかもしれないし一つも無いかもしれない医療品を探すか。
 それとも東海岸沿いを進んで、そこが消滅する前に少しでも辺りを見ておくべきか。
 もしくはこのまま南下して中央へと行き、少しでも人との接触の機会を多くするべきか。
 または飛行場に向かい、何らかのイレギュラーに期待するか……どうするべきでしょうか?
 一応僕は護衛役という名目でここにいるので、出来る限りあなたの意見を尊重したいと思うんですけど」

いや、だからきぐるみ越しじゃ……どうするの? どうするの?

「まず、病院に行きたい場合は……そうですね、縦に頷いてください。
 そして東海岸沿いに行きたいと思うなら、首を横に振ってください」

ああ、なるほど! アクションで判断するのか!
考えたね木野君。これなら選択問題な限りは安心だ。でも、残り二つは?

「南下したい場合はその場で回転。飛行場に向かう場合はジャンプでお願いします」

あれ? 急にアクションが派手になったね。どうして? 右手挙げるとかで良くない?
慣れないきぐるみだからちょっと大変なんだけど。なんか君、そこまで僕に求めちゃうんだ?
うーん、病院の場合……医療品って、こんな最後の一人を決める戦いで用意されてるかな?
僕なら用意しないと思う。だってあの狐面の人は、僕達に死んで欲しいんだから。だから病院は、今はやめとこう。
それに今は人探しをしてるんだ。どうせなら南下して人の集まる場所に行きたい。南下の場合は……ああ、その場で回転か。

せーの、いっかいてーん!



くるーん♪





ふらふらふら……☆





ばしゃーん!



「ふももももももももー!」
「ああっ!」


と! 一回転したはいいものの!
慣れないきぐるみでそんな激しいアクションを決行した僕は、バランスを崩してしまった!
しかもあろう事か川に転落! 水音が聞こえる! うわ! どうしよう! ひょっとして流される!? 沈む!?
どうしてこんな事に!?


 ___
/ || ̄ ̄|| ∧_∧
|..||__|| (     )  どうしてこうなった・・・
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
|    | ( ./     /
 ___
/ || ̄ ̄|| ∧_∧
|..||__|| ( ^ω^ )  どうしてこうなった!?
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
|    | ( ./     /

 ___ ♪ ∧__,∧.∩
/ || ̄ ̄|| r( ^ω^ )ノ  どうしてこうなった!
|..||__|| └‐、   レ´`ヽ   どうしてこうなった!
| ̄ ̄\三  / ̄ ̄ ̄/ノ´` ♪
|    | ( ./     /

 ___        ♪  ∩∧__,∧
/ || ̄ ̄||         _ ヽ( ^ω^ )7  どうしてこうなった!
|..||__||         /`ヽJ   ,‐┘   どうしてこうなった! 
| ̄ ̄\三  / ̄ ̄ ̄/  ´`ヽ、_  ノ    
|    | ( ./     /      `) ) ♪



木  野  君  の  所  為  だ  よ  !

なんだよあの求められたアクションの難易度! 無理だってヴぁ!
またよく僕もやったもんだよ! そりゃバランス崩すってもんですよ!
うわぁぁぁぁん! このままどうなってしまうんだ僕わー!


       ◇       ◇       ◇


【第一問】
結界について、説明しなさい。


●椎名真由美の答え
「秩序を維持するために区域を分けて、聖と俗の領域を区切るもの……で良い?」

○教師のコメント
正解です。ある雑誌でこれをテーマにした漫画が連載されていますね。


●『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーの答え
「そうね……フレイムヘイズとしては、"封絶"や"テッセラ"とかから入りたいとこだけど。
 まぁ面倒だから凄く簡単に言うわ……来て欲しくない奴を退ける為のもの、ってのはどう?」

○教師のコメント
確かに実に簡単……しかしそれは主にフィクションの世界で語られる要素が前に出た答えですね。
ですがあなたの世界で「"結界"と言えばこれしかない」というのであれば……不正解だとばっさり斬って捨てるのも野暮でしょう。


●蒼崎橙子の答え
「結界、ね。あまり会いたくは無いが、知り合いにそれのエキスパートがいるぞ。まぁそれはどうでも良いか。
 では本題と行こう。まずその結界というのはな、聖域と不浄域を隔離するものだ。面ではなく、線でな。
 上でも話しているが、理由はそうして区域を分けることによって秩序を維持しようと考えているからだ。
 随分と閉鎖的な話だが、こればかりはそういう由来のものなのだから私にはどうしようもない。
 そしてこれは本来は仏教用語なんだが、古神道や神道における神社などでも同じ概念が存在しているために使われている。
 まぁ同様に私達魔術師も勝手に言葉を拝借してしまっているんだがな。魔術師が身を護る術の総称となってしまったわけだ。
 ちなみにこの結界という単語だが、サンスクリット語では"Siimaabandha"、大和語としては端境やたんに境ともいう。
 この辺りはまだまだ初級。ネットが普及した今では簡単に手に入る情報だ。魔術師が語れどもまだ何の自慢にもならん程度だな」

○教師のコメント
詳し過ぎです。


       ◇       ◇       ◇


さて、大混乱の淵にいた僕だったけれど。
実は僕が転んだ場所は思ったよりも浅かったので、結局溺れたりすることは無かったのだった。
おかげで"吉井の川流れ"だけは避けられたわけで。ああ、助かった。なんか本当に死ぬかと思った。
木野君が手を伸ばしている。僕を起き上がらせようとしてくれているんだろうか。
おのれ木野君めェ、後で覚えておくが良い……でもきちんと助けてくれてありがとう。

とまぁ、結局僕は川の浅瀬で仰向けになっていただけで、木野君の手を借りて難なく起き上がることが出来たのだった。
なんだかんだで素直に助けられる僕。ああ、出来るならこのままこれ脱がせて欲しいんだけど、無理か。
……そうやって必死に川から上陸した後、木野君はちょっと申し訳なさそうにこちらに謝罪をしてきたのであった。

「まぁ、その、軽率ですみませんでした」

でも、いや、いいよ。結局助かったんだし無問題だ。

「怪我とかして……ませんよね?」

大丈夫大丈夫。と、頷いて返事をする僕。
こうやって心配してくれるんだから、木野君はやっぱり良い人だよね。

「良かった。では予定通り南下しましょうか。見つかるといいですね、姫路さん」

また僕は頷いて返事を返す。うん、本当に見つかって欲しいよ。
結局僕の意見を尊重してくれる君を、僕は本当に尊敬する。
さっきは「覚えておくがいい」とか考えちゃってごめんよ。

「そういえば、浸水とかしてません?」

これには否定をするように首を横に振った。
大丈夫だよ木野君、そこまで心配しなくても僕は平気だから。
大丈夫大丈夫。それはともかく出発だ。そんなに気を使わずに、一緒に行こう!
姫路さん、見つかるといいなぁ。実は近くにいたりして……なんて期待しすぎるのはやめよう。

僕達は進む。姫路さんを探すために、ここから逃げるために。
こんな危険な椅子撮りゲームは間違っているんだと、その想いを現実にする為に。
やってやる、やってやるぞ!





……と、このときには何故だか僕は気付けなかった。


何にって? それはね。



"「浸水したかどうか」を尋ねられたときに嘘でも頷いておけば、木野君はきぐるみを脱がせてくれただろう"ということにだ。





ちなみに僕がこれに気付いたのは、一緒に歩き始めて十歩目を過ぎた辺りからです。





…………  僕  の  馬  鹿  !  !


       ◇       ◇       ◇


【第二問】
「河童の川流れ」と同じ意味の諺を挙げなさい。


●喜緑江美里の答え
「"弘法も筆の誤り"、"猿も木から落ちる"、などですね」

○教師のコメント
正解です。諺の勉強をする際には、こういった類義語から始めるのもいいかもしれません。


●コルネリウス・アルバの答え
「"Even Homer sometimes nods"」

○教師のコメント
なるほど、そう来ましたか……正解です。


●エルメスの答え
「……"猿も木から落ちる"?」

○教師のコメント
そうそれ。


●蒼崎橙子の答え
「略)――――という事もあって、これは日本に仏教が流れ着いた際の一種の随方毘尼であると言える。
 随方毘尼というのは仏教の戒律の一種で、TPOにあわせた規制や緩和を行うことだ。随処毘尼などとも言うんだがな。
 毘尼とはサンスクリット語で戒律を意味するVinayaの音写。つまり訳せば"随所戒律"――もう、言わなくても解るだろう?
 少し話がずれたな。そもそも仏教用語における結界というものは、広義で言えば襖に障子に縁側といった形でも残ってはいる。
 日本はどうも空間を仕切るという意識に乏しくてな。だからこそ結界が"面"ではなく"線"として形作られたのだろうが。
 故にこの現代の日本でも日常的に"結界"というものは好んで張られているのさ。現代人が気付こうが気付くまいがな。
 例えば暖簾。これは下げることで往来と店を柔らかく仕切り、また時間外には仕舞うことで営業していないことを表示する。
 店舗と外を区分しているわけだ。区域を分けることで秩序を護る、とは最初に言ったが覚えているな? つまりはそれだよ。
 仏教用語そのままの意味での結界は、ある意味一種の精神論が絡み合って出来ているものだと考えても差し支えは無いだろう。
 だが私達魔術師の言う結界となるとまた別の意味を孕んでくる。何せ私達は"身を護る為"に学習し、使用しているからな。
 魔術師は主に魔力や道具を媒介にし、"護るべき対象"へと他の"様々なもの"が近づくのを避ける為にと結界を張る。
 一定の区画を隔離させるわけだな――――どうだ、先程の仏教用語から離れているのを感じるだろう? 解ったら続けるぞ。
 結界の形は様々。それらは魔術師のレベル差と目的と趣味によって枝分かれしているが、勿論いくつかに区分けも出来る。
 例えばそうだな……本当に壁を作ってしまったり、見えない壁を作ってしまったり。フィクションの世界でもよくあるものだな。
 だがな、そんなフィクションで馴染み深いものよりも上等なのは、"誰もが自発的に近づかない"という結果を引き起こす結界だ。
 つまりは"ここに近づいてはいけない"と周りの人間に"強制観念"を与える方法だな。勿論一般人に異常と思わせないレベルでだ。
 人間の無意識下に、さっきも言った強制観念を訴える。決して一般人が想像するようなステレオタイプの形としては現れない。
 だがこれは楽だぞ。何せ誰も怪しまないし近づかない。結界が張られている事すら気付かれないから滅多なことでは破られない。
 見えたり見えなかったりといった壁を作って怪しまれ、余計に人が集まっては結界も本末転倒というものだからな。
 因みに更に高等技術を駆使した結界もあるにはあるが――――この業になると魔術師ではなく魔法使いの領域になってしまう。
 だがまあ、最初に言った知り合いは才に非常に恵まれていて、遂に空間遮断の域に到達していたが――あれは特例中の特例だ。
 ああ、それとだ。半端に力を持つ者がみだりに結界を張ろうとしていたら止めてやれ。あれは面白半分に張るものじゃない。
 何故かって、答えは簡単だ。"力試しをしたい気質をもつものは、人間だけとは限らない"ということさ。
 ついでに話は変わるが、結界を張った後に歴史を長く紡いだ武器を抜くのも禁止だ。並の結界なら消え失せる。
 歴史を長く長く刻んできた武器というのは、それだけで魔術への対抗が出来るモノとしての力を蓄えて神秘と化しているからな。
 そもそも、力が大きいものが更に力が大きいものに潰されるのは、この地球上における弱肉強食という形でも既に現――――(略」

○教師のコメント
結界についての問題は既に終了しました。




【B-4/橋の前(北側)/一日目・早朝】

【キノ@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:エンフィールドNo2(5/6)@現実、九字兼定@空の境界
[道具]:デイパック、支給品一式×2  暗殺用グッズ一式@キノの旅
[思考・状況]
基本:生き残る為の手段は問わない。ひとまずは明久と行動し、貰った道具分くらいは護衛する。
1: 明久と南下する。
2:「姫路さん」が脱出の鍵を持っていないようなら、彼らを見捨てることも厭わない。
3:エルメスの奴、一応探してあげようかな?
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
※「師匠」を赤の他人と勘違いしている他、シズの事を覚えていません。

【吉井明久@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康
[装備]:ボン太くん改造型@フルメタル・パニック!
[道具]:デイパック、支給品一式(未確認ランダム支給品0~1個所持)
[思考・状況]
基本:姫路瑞希と共に脱出する為行動する。
1:ふも、ふもう、ふもふも(木野君と南下する)
2:ふもっふふもっふ……(木野君これ脱がしてくれないかなあ……)
[備考]
※西東天の言ったルールを一部理解していません。少なくとも名簿に名前が載っていない参加者がいることは覚えていません。
※「KILLYOU」の意味が「あなたは殺し合いに乗っているか?」で正しいと思ってしまいました。


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