ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
二輪車の乗り手
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二輪車の乗り手 ◆LxH6hCs9JU
「ねぇ、『上条くん』」
「なんですか、『千鳥さん』」
「なんですか、『千鳥さん』」
「「…………」」
「いい天気よねー。雲一つない快晴。気温は暑すぎもせず、寒すぎもせず」
「そうだな。星が綺麗に見えるっつー意味では快晴だな。まだ夜だけど」
「そうだな。星が綺麗に見えるっつー意味では快晴だな。まだ夜だけど」
「「…………」」
「ああそうそう。私の荷物の中にこんなものが入ってたんだけどさ。じゃ~ん、暴徒鎮圧用のスタンガン」
「へぇ~。最高出力二十万ボルトだってよ。これなら覗き魔も一発でお陀仏だと、そう言いたいわけですか」
「へぇ~。最高出力二十万ボルトだってよ。これなら覗き魔も一発でお陀仏だと、そう言いたいわけですか」
「「…………」」
「って、そうじゃなくてね。仮に危ないヤツと出くわしたとしてもよ。自分の身くらいは守れるってこと」
「そうかいそうかい。んじゃ、ここは勇敢な千鳥かなめさんに任せるとしますかね。俺はここで待ってるからよ」
「そうかいそうかい。んじゃ、ここは勇敢な千鳥かなめさんに任せるとしますかね。俺はここで待ってるからよ」
『ちょ、ちょちょっ、木下くんってば! ちゃんと後ろ支えててよ? 絶対離しちゃダメだかんね!?』
『無理じゃ! 自転車じゃあるまいし、支え切れるわけがなかろう!?』
『無理じゃ! 自転車じゃあるまいし、支え切れるわけがなかろう!?』
「……あー、でもなんか取り込み中みたいだからさ。ここはスルーしときましょうか。うん」
「……おいおい。あっちのバイクに乗ってる子、おまえと同じ制服着てるぞ? 同級生とかじゃないのか?」
「……おいおい。あっちのバイクに乗ってる子、おまえと同じ制服着てるぞ? 同級生とかじゃないのか?」
『ノゥ! 揺れる、崩れる、あがががががが……がらごらがっしゃーん!』
『く、櫛枝ー!? 口で言うほど派手には転んでおらんからしっかりするのじゃ!』
『く、櫛枝ー!? 口で言うほど派手には転んでおらんからしっかりするのじゃ!』
「違う違う。この制服はあくまでも借り物だって……あ、こけた」
「こけたな。って、ここいらはバイクの教習所かなんかですか!?」
「知らないわよ。んなもん、本人たちに直接訊いてみりゃいいでしょうが。上条くん、ゴー」
「嫌だね! 俺の勘が告げている、絶対ろくなことにはならね――」
「こけたな。って、ここいらはバイクの教習所かなんかですか!?」
「知らないわよ。んなもん、本人たちに直接訊いてみりゃいいでしょうが。上条くん、ゴー」
「嫌だね! 俺の勘が告げている、絶対ろくなことにはならね――」
「…………おまえたち、さっきからコソコソなにやってるの?」
「「はぅあっ!?」」
◇ ◇ ◇
町外れの海岸線沿いには、背の低い草むらが広がっている。
土の地面とアスファルトの境界線付近から南の方角を眺めれば、あとはもう海まで一直線だ。
闇夜のため、足下はひどく暗い。草に覆われた大地を全力疾走でもしようものなら、距離感も掴めず海に飛び込む結果を迎えるだろう。
土の地面とアスファルトの境界線付近から南の方角を眺めれば、あとはもう海まで一直線だ。
闇夜のため、足下はひどく暗い。草に覆われた大地を全力疾走でもしようものなら、距離感も掴めず海に飛び込む結果を迎えるだろう。
交通事故とは恐ろしいものである。
いついかなる理由でタイヤがスリップし、進路を逸れるかわかったものではない。
熟練した運転手でも走り慣れない道では注意するというのに、ノウハウを知らない素人が挑むのはもはや自殺行為と言えよう。
いついかなる理由でタイヤがスリップし、進路を逸れるかわかったものではない。
熟練した運転手でも走り慣れない道では注意するというのに、ノウハウを知らない素人が挑むのはもはや自殺行為と言えよう。
「教訓――触らぬ神に祟りなし」
「一朝一夕でに身につくものでもなかったのう」
「いや、まったく」
「一朝一夕でに身につくものでもなかったのう」
「いや、まったく」
遠く広がる海を前方に、冷たい感触を伝える塀を背に、櫛枝実乃梨と木下秀吉が水を飲んでいる。
実乃梨は体のあちこちに絆創膏を貼っていて、しかし笑顔を絶やさず、横目で見る秀吉は失笑気味だ。
彼女たちの傍らには、一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が停められていた。
実乃梨は体のあちこちに絆創膏を貼っていて、しかし笑顔を絶やさず、横目で見る秀吉は失笑気味だ。
彼女たちの傍らには、一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が停められていた。
「だから言ったでしょ。扱えないものを無理に扱おうとしたって、痛い目を見るだけだって」
休憩中の二人に、炎の長髪ではなく黒の長髪を持つ少女、シャナが言った。
厳格な言に実乃梨と秀吉は殊勝な態度を示し、はーい……と揃ってうな垂れる。
厳格な言に実乃梨と秀吉は殊勝な態度を示し、はーい……と揃ってうな垂れる。
「事実、“鍛錬”はこやつらに目撃されていたのだ。命永らえているのは、単に運が良かっただけのことと覚えよ」
シャナが首から下げるペンダント型の神器“コキュートス”から、遠雷のような声が響き渡る。
これはシャナの身の内にその存在を宿す“紅世の王”、“天壌の劫火”アラストールによるものだった。
これはシャナの身の内にその存在を宿す“紅世の王”、“天壌の劫火”アラストールによるものだった。
「あっはははー……うす、反省しております。で、でもさぁ! やっぱ無視できない問題だと思うんだよね」
「たしかにのう。本人の意思を無碍にするわけにもいかぬし、かといってシャナの弁がもっともであることに変わりはない」
「モトラドはね、走っているときが一番幸せなんだ。あんな地に車輪もついてないようなところに閉じ込められるのはゴメンだよ」
「しかし経験者がいなかったのも事実。だからこそ鍛錬の機会を与えてやったのだ」
「そして、それは失敗に終わった」
「たしかにのう。本人の意思を無碍にするわけにもいかぬし、かといってシャナの弁がもっともであることに変わりはない」
「モトラドはね、走っているときが一番幸せなんだ。あんな地に車輪もついてないようなところに閉じ込められるのはゴメンだよ」
「しかし経験者がいなかったのも事実。だからこそ鍛錬の機会を与えてやったのだ」
「そして、それは失敗に終わった」
まるで仲のいい女の子グループが、下校中に道草を食っているような光景でもあった。
その実、討論の種となっているのは、日常では考えられない“喋る二輪車”である。
実乃梨、秀吉、シャナとアラストールの三人は、“武器”としてここに在るエルメスの処遇について、意見を交し合っていた。
その実、討論の種となっているのは、日常では考えられない“喋る二輪車”である。
実乃梨、秀吉、シャナとアラストールの三人は、“武器”としてここに在るエルメスの処遇について、意見を交し合っていた。
「あー……つまりだ。そのバイク……っと、モトラドだったっけか。モトラドのエルメスは、誰か運転手が欲しいと。
でも、おまえら三人の中にバイクの運転をできる奴がいないんで、櫛枝が今の今まで運転の練習をしてたってわけだ」
「ただまぁ、目立つ上に危険な行為だし、あたしたちみたいな部外者に発見される可能性も大だから、彼女が止めたと。
実際、あたしたちに害意があったら格好の的だったわけだし、端から見てもなにしてんだか、ってのは思ったけどさぁ」
でも、おまえら三人の中にバイクの運転をできる奴がいないんで、櫛枝が今の今まで運転の練習をしてたってわけだ」
「ただまぁ、目立つ上に危険な行為だし、あたしたちみたいな部外者に発見される可能性も大だから、彼女が止めたと。
実際、あたしたちに害意があったら格好の的だったわけだし、端から見てもなにしてんだか、ってのは思ったけどさぁ」
三人の輪からわずかに離れたところで、一組の男女が体育座りをしている。
ツンツン頭の少年と腰まで届く黒髪の少女は、上条当麻と千鳥かなめという名を持つ。
二人、西に向かって歩を進めていたところで鍛錬の現場を発見し、そこをシャナに捕獲されたのだった。
ツンツン頭の少年と腰まで届く黒髪の少女は、上条当麻と千鳥かなめという名を持つ。
二人、西に向かって歩を進めていたところで鍛錬の現場を発見し、そこをシャナに捕獲されたのだった。
「とにかく、鍛錬の結果は出た。エルメスには大人しく――鞄に戻ってもらう」
運転の心得を持たない実乃梨が、なぜエルメスを走らせようとしていたのか。
それはエルメス本人の『走りたい』という要求と、『鞄の中は嫌だ』というわがままによるところが大きい。
それはエルメス本人の『走りたい』という要求と、『鞄の中は嫌だ』というわがままによるところが大きい。
これから各地を巡り歩くにあたって、押すという運搬方法を続けていては、エルメスは大きな荷物となってしまう。
ただでさえどこから襲撃が迫るかもわからない現状、手荷物は少なくしておくべきなのである。
だが、物とはいえ本人に意思がある以上、鞄の中に収納しておくのを嫌がられては、他の案も考えざるを得ない。
そうして実乃梨が閃いた。ここにいる誰かがエルメスを運転できるようになればいいじゃん、と。
ただでさえどこから襲撃が迫るかもわからない現状、手荷物は少なくしておくべきなのである。
だが、物とはいえ本人に意思がある以上、鞄の中に収納しておくのを嫌がられては、他の案も考えざるを得ない。
そうして実乃梨が閃いた。ここにいる誰かがエルメスを運転できるようになればいいじゃん、と。
勤労女子高生に演劇馬鹿、そして世俗に疎いフレイムヘイズと、もともと自動二輪車の運転技術を持っている者はいなかった。
指導官がいない以上、技能は一から身につける必要があり、まずは実乃梨がチャレンジしてみたのだが、あえなく玉砕。
その途中に、シャナが懸念していた第三者――上条とかなめによる現場の目撃があり、挑戦は中断となったのだ。
指導官がいない以上、技能は一から身につける必要があり、まずは実乃梨がチャレンジしてみたのだが、あえなく玉砕。
その途中に、シャナが懸念していた第三者――上条とかなめによる現場の目撃があり、挑戦は中断となったのだ。
「先生! 恥を忍んでお願いがありやす!」
「なに」
「ワンモアチャンス!」
「ダメ」
「現実は非情だーっ!」
「なに」
「ワンモアチャンス!」
「ダメ」
「現実は非情だーっ!」
今は非常時、たかが自動二輪車の運転技術を身につけるために時間を割いているわけにはいかない。
シャナは実乃梨の懇願に対して冷厳に答え、よよよ……と一人の少女の泣き崩れる絵が出来上がった。
シャナは実乃梨の懇願に対して冷厳に答え、よよよ……と一人の少女の泣き崩れる絵が出来上がった。
(なんか、北村といい櫛枝といい……危機感持ってる奴って意外と少ないんじゃないかと思えてきた)
(奇遇ね。あたしも今そう思ってたとこ……あれ、北村くんといえばさ)
(奇遇ね。あたしも今そう思ってたとこ……あれ、北村くんといえばさ)
初対面の人間が見せるオーバーリアクションに戸惑いを覚えつつも、かなめが会話に割って入る。
「あのさ、櫛枝さんだっけ? ちょっと訊きたいんだけど……その制服は拾い物とかじゃないわよね?」
「およ? そういうあなた様はあっしと同じ学校の制服を着ていらっしゃる……もしかしてスクールメイト!?」
「や、これはあたしの私物じゃないんだけど……それはそうと、北村くんって知ってる? 眼鏡かけた男子なんだけど」
「北村くん……? 北村くんといえば……おお! 我がクラスのボスでねーか! なぜにその名を!?」
「つい数時間前に会ってるのよ、その北村くんと。こっちの覗き魔も含めて」
「おい、おまえやっぱり根に持ってんだろ?」
「およ? そういうあなた様はあっしと同じ学校の制服を着ていらっしゃる……もしかしてスクールメイト!?」
「や、これはあたしの私物じゃないんだけど……それはそうと、北村くんって知ってる? 眼鏡かけた男子なんだけど」
「北村くん……? 北村くんといえば……おお! 我がクラスのボスでねーか! なぜにその名を!?」
「つい数時間前に会ってるのよ、その北村くんと。こっちの覗き魔も含めて」
「おい、おまえやっぱり根に持ってんだろ?」
シャナに捕獲されたものの害意はないと判断され、この場に腰を落ち着かせていた二人からは、まだ詳しい素性を聞いていなかった。
実乃梨の友人、北村祐作の名がかなめの口から出てきたことを発端に、会話の軸はそちらへと移る。
実乃梨の友人、北村祐作の名がかなめの口から出てきたことを発端に、会話の軸はそちらへと移る。
◇ ◇ ◇
「北村祐作……名簿に記されていない十人の内の一人が、櫛枝実乃梨のクラスメイトってわけか」
「ワシも含めて、これで二人埋まったの。やはり、各々の知人が名を連ねている可能性が高そうじゃ」
「うっそ。ってことは、キョーコなんかもいるかもしれないってわけ……? あぁもう、サイテー」
「数名の名を伏せているのは、そういった不安を煽るためのものでもあるのだろうな」
「おいおい勘弁してくれよ……こちとら、ただでさえ頭がパンクしそうだってのによ」
「とりあえず、北村くんは温泉にいるんだよね。うん。となると……ごめんよ、エルメス!」
「えぇっ、いきなりなにさ?」
「ワシも含めて、これで二人埋まったの。やはり、各々の知人が名を連ねている可能性が高そうじゃ」
「うっそ。ってことは、キョーコなんかもいるかもしれないってわけ……? あぁもう、サイテー」
「数名の名を伏せているのは、そういった不安を煽るためのものでもあるのだろうな」
「おいおい勘弁してくれよ……こちとら、ただでさえ頭がパンクしそうだってのによ」
「とりあえず、北村くんは温泉にいるんだよね。うん。となると……ごめんよ、エルメス!」
「えぇっ、いきなりなにさ?」
各々の交友関係、警戒対象や懸念事項、そして温泉施設で北村が待っていること等を軽く話し終えたところで、実乃梨が唐突に頭を下げた。
下げられた側のモトラド、エルメスは訳がわからないといった様子でこれを訝る。
下げられた側のモトラド、エルメスは訳がわからないといった様子でこれを訝る。
「残念だけど、私じゃエルメスの運転手にはなってやれないんだ……ごめんよ……本当にごめんよ……」
「そりゃあ何回も転ばれるのはイヤだけどさ。さっきまであんなに頑張ってたのに、どうして急に?」
「いやー、そりゃま、目的地が定まったともなれば、遊んでもいられないしねぇ」
「つまり、さっきまでのは遊びだった……ということかの?」
「あらら、ひどい話」
「そりゃあ何回も転ばれるのはイヤだけどさ。さっきまであんなに頑張ってたのに、どうして急に?」
「いやー、そりゃま、目的地が定まったともなれば、遊んでもいられないしねぇ」
「つまり、さっきまでのは遊びだった……ということかの?」
「あらら、ひどい話」
友人である北村の居場所がわかるや否や、手の平を返したように運転技術の習得を断念する実乃梨。
振り回された気分を味わっているだろうエルメスに、悪びれもせず言葉を続ける。
振り回された気分を味わっているだろうエルメスに、悪びれもせず言葉を続ける。
「おっと、しょぼくれるのはまだ早いぜ。なんたって、これから合流する北村くんは……バイクの運転ができるのだ!」
「おおー」
「ただし、これ校則違反だからオフレコでお願い!」
「他言無用、ってやつだね」
「おおー」
「ただし、これ校則違反だからオフレコでお願い!」
「他言無用、ってやつだね」
実乃梨の話によれば、北村は自動二輪車の運転免許を持っているらしい。
無事に合流と相成れば、めでたくエルメスの乗り手も見つかるという寸法だ。
モトラド本来の主人である旅人は未だ影も噂もないため、この場は代行の運転手に席を譲るしかない。
エルメスとしても早く走りたいというのが本音であり、ならばとっとと温泉に向かおう、と自ら鞄に収まることを承諾した。
無事に合流と相成れば、めでたくエルメスの乗り手も見つかるという寸法だ。
モトラド本来の主人である旅人は未だ影も噂もないため、この場は代行の運転手に席を譲るしかない。
エルメスとしても早く走りたいというのが本音であり、ならばとっとと温泉に向かおう、と自ら鞄に収まることを承諾した。
「それじゃあ、ワシらはこれから温泉に向かうということでいいかの?」
エルメスを鞄に収納しようと悪戦苦闘しながら、秀吉が確認を取る。
「知人との合流は早急に済ませておいたほうがよかろう。この世界の調査を合理的に進める上でも、な」
「……そうね。おまえたちはどうする? 私たちはもう行くけど」
「北村に頼まれた仕事があるしなぁ。それを済ませてからそっちと合流するよ」
「仕事?」
「……そうね。おまえたちはどうする? 私たちはもう行くけど」
「北村に頼まれた仕事があるしなぁ。それを済ませてからそっちと合流するよ」
「仕事?」
モトラドを支給された本人である秀吉がこれを収納し終えたところで、シャナが問う。
上条は鞄から地図を取り出し、指で図の外側をなぞりながら説明した。
上条は鞄から地図を取り出し、指で図の外側をなぞりながら説明した。
「ああ、ここの端っこ……地図でいうところのこの部分な。ここが気になるんだとよ。だから……」
「それならとっくに調査済みよ」
「……なんですと?」
「それならとっくに調査済みよ」
「……なんですと?」
他愛もない疑問に、シャナが即座の回答を下す。
「今はまだ夜だから遠目じゃわからないと思うけど、会場の端は『黒い壁』よ。
闇に覆われているとかじゃない。あれがなんなのかは、まだよくわからないけれど……。
少なくとも、おまえたち二人が足を運んだってなにか新しいことがわかるとは思えない」
闇に覆われているとかじゃない。あれがなんなのかは、まだよくわからないけれど……。
少なくとも、おまえたち二人が足を運んだってなにか新しいことがわかるとは思えない」
指で海の向こうを示しながら、シャナは淡白に言ってのけた。
上条も目でそれを追うが、広がっているのは夜空ばかりだ。
たしかに黒くはある。が、これが壁と言われようとも、肉眼では納得しがたい。
上条も目でそれを追うが、広がっているのは夜空ばかりだ。
たしかに黒くはある。が、これが壁と言われようとも、肉眼では納得しがたい。
「……いや、逆に興味が湧いた。やっぱ俺たち行くわ。情報ありがとな、シャナ」
既に確かめたというシャナの言を噛み砕き、それでも上条は会場の端に向かうと告げた。
シャナもそれを無理に止めようとはせず、了承する。
シャナもそれを無理に止めようとはせず、了承する。
「ってなわけで、行きましょうか『千鳥さん』。いいかげん機嫌直せよな」
「あら、あたしとしては女の子同士団体行動でも良かったんだけどねぇ、『上条くん』」
「ほほう。な~んか含みのある言い方だな。つーかねちっこいぞ」
「どっちがよ。まぁ、一人じゃさびしーでしょうから、仕方ないけどついてってあげるわよ」
「この……っ、んじゃそういうわけで! 北村に会ったらよろしく伝えといてくれ!」
「あら、あたしとしては女の子同士団体行動でも良かったんだけどねぇ、『上条くん』」
「ほほう。な~んか含みのある言い方だな。つーかねちっこいぞ」
「どっちがよ。まぁ、一人じゃさびしーでしょうから、仕方ないけどついてってあげるわよ」
「この……っ、んじゃそういうわけで! 北村に会ったらよろしく伝えといてくれ!」
別れも手早く、上条とかなめは西への進行を再開した。
去り行く背中を見送りながら、シャナは実乃梨と秀吉に向き返る。
去り行く背中を見送りながら、シャナは実乃梨と秀吉に向き返る。
「さ、私たちも行きましょう。そろそろ夜も明けるだろうし」
「うむ。鍛錬で時間を浪費した分、遅れを取り戻さなくてはな」
「いえっさ! 待っててくれよクラス委員長! いま櫛枝が駆けつけるぜ!」
(気のせいじゃろうか……今、千鳥にまで女子扱いされたような気がしたのじゃが……)
「うむ。鍛錬で時間を浪費した分、遅れを取り戻さなくてはな」
「いえっさ! 待っててくれよクラス委員長! いま櫛枝が駆けつけるぜ!」
(気のせいじゃろうか……今、千鳥にまで女子扱いされたような気がしたのじゃが……)
どこか釈然としない気持ちの秀吉を最後尾に、シャナたちもまた、温泉への道を進み出した。
◇ ◇ ◇
「で、その物騒なもんはなんだ?」
「櫛枝さんに貰ったのよ。護身用に。彼女、刃物はいらないって言うんでね」
「櫛枝さんに貰ったのよ。護身用に。彼女、刃物はいらないって言うんでね」
西への進路。
千鳥かなめは、櫛枝実乃梨から譲り受けた小型の鎌を弄くりながら歩いていた。
千鳥かなめは、櫛枝実乃梨から譲り受けた小型の鎌を弄くりながら歩いていた。
「スタンガンに鎌に……そこまで防備を固めてどうする気ですか」
「いつどこで暴漢に襲われるかわかったもんじゃないからね~」
「……やっぱ根に持ってやがる」
「いつどこで暴漢に襲われるかわかったもんじゃないからね~」
「……やっぱ根に持ってやがる」
入浴の場面を覗かれたことを未だ怒っているのか、それともただからかっているのか、かなめの表情には含みがある。
隣を歩く上条は辛辣なため息を零しつつ、シャナから頂戴した情報を反芻していた。
隣を歩く上条は辛辣なため息を零しつつ、シャナから頂戴した情報を反芻していた。
(世界の端……黒い壁、ね)
夜が明ければ、その黒い壁というものに関しても現実味を帯びてくるのだろうか。
シャナの言によれば、壁より向こうは一切の闇に包まれ、どれだけ目を凝らしたとて不可視の境界線が敷かれているらしい。
手で触れまではしなかったものの、試しに石を投げてみたら、そのまま闇に吸い込まれたとのことだ。
実は踏み越えられるのではないか、とも思ったそうだが、それを確かめるにはリスクが高すぎる。
人類最悪なる男の放った“消滅”という言葉を信じるならば、人体で触れるのは避けたほうが無難だろう。
シャナの言によれば、壁より向こうは一切の闇に包まれ、どれだけ目を凝らしたとて不可視の境界線が敷かれているらしい。
手で触れまではしなかったものの、試しに石を投げてみたら、そのまま闇に吸い込まれたとのことだ。
実は踏み越えられるのではないか、とも思ったそうだが、それを確かめるにはリスクが高すぎる。
人類最悪なる男の放った“消滅”という言葉を信じるならば、人体で触れるのは避けたほうが無難だろう。
そこまで聞き及んで、上条当麻は逆に興味を抱いたのだ。
黒い壁。無限の闇。そんな原理不明の異常なる現象。
それが“異能”の一端だと仮定するならば。
黒い壁。無限の闇。そんな原理不明の異常なる現象。
それが“異能”の一端だと仮定するならば。
(俺の右手……『幻想殺し(イマジンブレイカー) 』で触れれば、壁はどうなる?)
上条当麻の右手は、幻想殺しと呼ばれる異能封じの右手だ。
如何な魔術、如何な超能力であったとしても、この右手に触れればたちまち打ち消されてしまう。
この右手自体はどういった代物なのか、というのは上条が生来抱えている謎であり、今になっても解明はされていない。
インデックス曰く魔術ではなく、風斬氷華曰く超能力でもありえないという、謎の力。
ただ、異能ならば打ち消せるという情報だけを持ち――上条は、試してみる価値はあると踏んだ。
如何な魔術、如何な超能力であったとしても、この右手に触れればたちまち打ち消されてしまう。
この右手自体はどういった代物なのか、というのは上条が生来抱えている謎であり、今になっても解明はされていない。
インデックス曰く魔術ではなく、風斬氷華曰く超能力でもありえないという、謎の力。
ただ、異能ならば打ち消せるという情報だけを持ち――上条は、試してみる価値はあると踏んだ。
(壁だかなんだか知らねぇが、変な力で俺たちを閉じ込められると思ってんなら……まずはその幻想をぶち壊す!)
決意は変わらない。
指針も変わらない。
軸はぶれず、我が道を信じ、上条当麻は世界の端を目指す。
指針も変わらない。
軸はぶれず、我が道を信じ、上条当麻は世界の端を目指す。
「……なに? 急に黙りこくっちゃって。まさかあんた、思い出したりしてたんじゃ……っ」
「思い出す……って、なにをだ、なにを! 妙な勘繰りすんな!」
「思い出す……って、なにをだ、なにを! 妙な勘繰りすんな!」
相方に覗き魔の汚名を引き摺られつつ。
【E-1/一日目・早朝】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】:健康
【装備】:無し
【道具】:デイパック、支給品一式(不明支給品1~2)、吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣
【思考・状況】
基本:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない。
1:西部の端を確かめに向かう。壁があるなら『幻想殺し』で触れてみる?
2:インデックスを最優先に御坂と黒子を探す。土御門とステイルは後回し。
3:第二回~第四回放送までに北村と落ち合う。
【状態】:健康
【装備】:無し
【道具】:デイパック、支給品一式(不明支給品1~2)、吉井明久の答案用紙数枚@バカとテストと召喚獣
【思考・状況】
基本:このふざけた世界から全員で脱出する。殺しはしない。
1:西部の端を確かめに向かう。壁があるなら『幻想殺し』で触れてみる?
2:インデックスを最優先に御坂と黒子を探す。土御門とステイルは後回し。
3:第二回~第四回放送までに北村と落ち合う。
【千鳥かなめ@フルメタル・パニック!】
【状態】:健康
【装備】:とらドラの制服@とらドラ!、二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣、小四郎の鎌@甲賀忍法帖
【道具】:デイパック、支給品一式(不明支給品×1)、陣代高校の制服@フルメタル・パニック!
【思考・状況】
基本:脱出を目指す。殺しはしない。
1:西部の端に行きどうなっているか確認する。
2:知り合いを探したい。
3:第二回~第四回放送までに北村と落ち合う。
【備考】
※2巻~3巻から参戦。
【状態】:健康
【装備】:とらドラの制服@とらドラ!、二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣、小四郎の鎌@甲賀忍法帖
【道具】:デイパック、支給品一式(不明支給品×1)、陣代高校の制服@フルメタル・パニック!
【思考・状況】
基本:脱出を目指す。殺しはしない。
1:西部の端に行きどうなっているか確認する。
2:知り合いを探したい。
3:第二回~第四回放送までに北村と落ち合う。
【備考】
※2巻~3巻から参戦。
【二十万ボルトスタンガン@バカとテストと召喚獣】
坂本雄二お手製の暴徒鎮圧用スタンガン(20万ボルト)。
服の上からでも通電するタイプ。違法改造の気配がしてならない。
坂本雄二お手製の暴徒鎮圧用スタンガン(20万ボルト)。
服の上からでも通電するタイプ。違法改造の気配がしてならない。
◇ ◇ ◇
「それで、その北村という男子はどんな人物なのじゃ?」
「う~ん、一言で言うとだね……まるお、って感じ?」
「……まるおって、なに?」
「う~ん、一言で言うとだね……まるお、って感じ?」
「……まるおって、なに?」
東への進路。
櫛枝実乃梨は、これから合流する北村祐作の人柄について話しながら歩いていた。
櫛枝実乃梨は、これから合流する北村祐作の人柄について話しながら歩いていた。
「先生、ドラえもんだけでなくちびまるこちゃんも知らないの? サザエさんは?」
「この子は世俗に疎いものでな。そういったものに関しての知識は乏しいのだ」
「要はテレビアニメーションでしょ。たしかに詳しいわけじゃないけど……」
「この子は世俗に疎いものでな。そういったものに関しての知識は乏しいのだ」
「要はテレビアニメーションでしょ。たしかに詳しいわけじゃないけど……」
鍛錬のために幼少期を費やしてきたシャナにとって、人間の世はまだまだ広大だ。
トーチであった平井ゆかりの存在に割り込み、一介の高校生として振舞うようになってからも、充分ならしさを得るには至らなかった。
トーチであった平井ゆかりの存在に割り込み、一介の高校生として振舞うようになってからも、充分ならしさを得るには至らなかった。
知るべきことはまだまだいっぱいある。
実乃梨や秀吉のような――坂井悠二や吉田一美と同じ年代の人間には、親近感を抱いてしまうのも事実である。
非常時の最中、テレビアニメについて話しながら目的地への道を歩むなど、フレイムヘイズとしての使命を思えば考えられない。
実乃梨や秀吉のような――坂井悠二や吉田一美と同じ年代の人間には、親近感を抱いてしまうのも事実である。
非常時の最中、テレビアニメについて話しながら目的地への道を歩むなど、フレイムヘイズとしての使命を思えば考えられない。
(でも)
これは必要なことなのだ。
現在陥っている非常は、シャナの知る“紅世”の常識では語れない。
ゆえに様々な方面から情報を吸収する必要があり、人類最悪が零していた『ドラえもん』の話とて、無関係であるとは限らない。
櫛枝実乃梨、木下秀吉、エルメス、上条当麻、千鳥かなめらの持ち寄った情報は皆、等しく考察の材料として頭の中に収めていく。
現在陥っている非常は、シャナの知る“紅世”の常識では語れない。
ゆえに様々な方面から情報を吸収する必要があり、人類最悪が零していた『ドラえもん』の話とて、無関係であるとは限らない。
櫛枝実乃梨、木下秀吉、エルメス、上条当麻、千鳥かなめらの持ち寄った情報は皆、等しく考察の材料として頭の中に収めていく。
「とにかく、北村くんは頼りになること間違いなしだよっ! 今頃は余裕かましてお風呂にでも浸かっているかもしれない!」
「いや、それはさすがに緊張感がなさすぎじゃろう。まあ、櫛枝の友達という時点でありえん話でもないような気はしてきたが……」
「いや、それはさすがに緊張感がなさすぎじゃろう。まあ、櫛枝の友達という時点でありえん話でもないような気はしてきたが……」
見聞は広めるべき。情報は好き嫌いせず吸収するべき。未知は、知るべき。
これから向かう先、街中の温泉施設ではどのような出会いが待つのか。
シャナはわずかながらの期待を胸に、櫛枝実乃梨の――友達に会える喜びに共感していた。
これから向かう先、街中の温泉施設ではどのような出会いが待つのか。
シャナはわずかながらの期待を胸に、櫛枝実乃梨の――友達に会える喜びに共感していた。
(……みんなとも、その内きっと)
未だ見ぬ、友人たちの動向を按じながら。
【E-2/一日目・早朝】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:健康
[装備]:逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1~2個所持)
[思考・状況]
基本:櫛枝実乃梨の用心棒になりつつこの世界を調査する。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
2:みんなが少し心配。
[備考]
※封絶使用不可能。
※清秋祭~クリスマス(11~14巻)辺りから登場。
[状態]:健康
[装備]:逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1~2個所持)
[思考・状況]
基本:櫛枝実乃梨の用心棒になりつつこの世界を調査する。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
2:みんなが少し心配。
[備考]
※封絶使用不可能。
※清秋祭~クリスマス(11~14巻)辺りから登場。
【櫛枝実乃梨@とらドラ!】
[状態]:全身各所に絆創膏
[装備]:金属バット
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1個所持)
[思考・状況]
基本:シャナに同行し、みんなが助かる道を探す。そのために多くの仲間を集める。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
[備考]
※少なくとも4巻付近~それ以降から登場。
[状態]:全身各所に絆創膏
[装備]:金属バット
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1個所持)
[思考・状況]
基本:シャナに同行し、みんなが助かる道を探す。そのために多くの仲間を集める。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
[備考]
※少なくとも4巻付近~それ以降から登場。
【木下秀吉@バカとテストと召喚獣】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1~2個所持)、エルメス@キノの旅
[思考・状況]
基本:シャナに同行し、吉井明久と姫路瑞希の二名に合流したい。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
2:エルメスの乗り手を探す。第一候補は北村祐作。
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1~2個所持)、エルメス@キノの旅
[思考・状況]
基本:シャナに同行し、吉井明久と姫路瑞希の二名に合流したい。
1:温泉に向かい、北村祐作と合流する。
2:エルメスの乗り手を探す。第一候補は北村祐作。
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