ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
「曲がった話」― Analyzing Device ―
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「曲がった話」― Analyzing Device ― ◆02i16H59NY
空も明るみ始めた早朝の街中の道を、一台の車が走っていました。
小さい車の中には、ポニーテール姿の女性が2人、並んで座っていました。
彼女たちはほぼ同時に「それ」に気がつきました。
運転席でハンドルを握っていたセーラー服姿の女――朝倉涼子が、口を開きました。
小さい車の中には、ポニーテール姿の女性が2人、並んで座っていました。
彼女たちはほぼ同時に「それ」に気がつきました。
運転席でハンドルを握っていたセーラー服姿の女――朝倉涼子が、口を開きました。
「ねえ、師匠」
「なんでしょう」
「どうする?」
「決まってるでしょう」
「なんでしょう」
「どうする?」
「決まってるでしょう」
師匠と呼ばれた、上品ながらも動きやすそうな服装の女性は、助手席で溜息をつきました。
彼女たちの視線の先には、大きなT字路のあたり、道の真ん中をフラフラと歩く、黒い服の少女の姿がありました。
それは修道服のようにも見え、どこかの学校の制服のようにも見えます。
そしてポニーテールにこそしていませんが、車の中の2人と同じくらいの長い髪でした。
そんな少女の姿を遠くに眺め、女性は言いました。
彼女たちの視線の先には、大きなT字路のあたり、道の真ん中をフラフラと歩く、黒い服の少女の姿がありました。
それは修道服のようにも見え、どこかの学校の制服のようにも見えます。
そしてポニーテールにこそしていませんが、車の中の2人と同じくらいの長い髪でした。
そんな少女の姿を遠くに眺め、女性は言いました。
「さっきのように時間をかけるのは御免です。見たところ武器も荷物も持っていない様子。
私がやります。通り過ぎざまに片付けてしまいましょう」
「うーん、いいのかなぁ……まあいいや。
さっきはこっちの提案に乗って貰ったし、ここは師匠の顔を立てましょ」
私がやります。通り過ぎざまに片付けてしまいましょう」
「うーん、いいのかなぁ……まあいいや。
さっきはこっちの提案に乗って貰ったし、ここは師匠の顔を立てましょ」
朝倉涼子は、アクセルを踏みました。
◇
浅上藤乃もまた、ほぼ同時に「それ」に気づいていた。
無人の街をこちらに向かってくる、小さな車。そして、その中に2つ並んだ、女性らしきシルエット。
無人の街をこちらに向かってくる、小さな車。そして、その中に2つ並んだ、女性らしきシルエット。
女性――であれば、湊啓太の知り合いであるとは思えない。
あの不良たちに、マトモな女性の知り合いがいるとは考えにくい。
だから復讐として殺す必要はないのだが、しかし、この地に来てから誰かと出会い、何かを知ってるかもしれない。
会話を試みる価値は、ある。浅上藤乃はそう考える。
……もし何も知らなかったなら、殺さなければいけないのだけども。
想像しただけで身も震える罪悪感に責め苛まされながら、それでも車に止まってもらおうと手を挙げかけて、
あの不良たちに、マトモな女性の知り合いがいるとは考えにくい。
だから復讐として殺す必要はないのだが、しかし、この地に来てから誰かと出会い、何かを知ってるかもしれない。
会話を試みる価値は、ある。浅上藤乃はそう考える。
……もし何も知らなかったなら、殺さなければいけないのだけども。
想像しただけで身も震える罪悪感に責め苛まされながら、それでも車に止まってもらおうと手を挙げかけて、
「…………!」
藤乃は、気がついた。いや、気づかされた
向こうも藤乃が見えているだろうに、全く減速しない、それどころか、加速する車。
そして今更ながらに点灯するヘッドライト。
空はだいぶ明るくなってきていたが、それでもハイビームを唐突に浴びせられれば目も眩む。
そのまま車は、藤乃目掛けて突っ込んでくる。それこそ、藤乃を跳ね飛ばさんほどの勢いで。
そして、助手席の窓が開いて、そこから、覗いて見えたのは、
向こうも藤乃が見えているだろうに、全く減速しない、それどころか、加速する車。
そして今更ながらに点灯するヘッドライト。
空はだいぶ明るくなってきていたが、それでもハイビームを唐突に浴びせられれば目も眩む。
そのまま車は、藤乃目掛けて突っ込んでくる。それこそ、藤乃を跳ね飛ばさんほどの勢いで。
そして、助手席の窓が開いて、そこから、覗いて見えたのは、
明らかに自分に向けられた敵意。
知ってる、知らないどころではなく、語り合うことすら拒絶する意思の表出。
問答無用の、殺意。
それらを前に、藤乃は、
知ってる、知らないどころではなく、語り合うことすら拒絶する意思の表出。
問答無用の、殺意。
それらを前に、藤乃は、
「ああ――では仕方ありませんね」
眩いヘッドライトを真正面から見る格好になった今、車の中の人影はよく見えない。
となると……このサイズ、果たして出来るだろうか。……うん、きっと出来る。
彼女は呟く。
となると……このサイズ、果たして出来るだろうか。……うん、きっと出来る。
彼女は呟く。
「――凶(まが)れ」
瞬間、小さな車が丸ごと――歪んだ。
◇
助手席側の窓を開け、銃を撃とうとしていた女性は、咄嗟にそのまま走っている車から飛び出しました。
横目に、今まで乗っていた車が、見えない巨人の手で雑巾絞りにされるかのように、捻れていくのが見えました。
女性は前回り受身で着地の衝撃をやわらげ、しかし勢いは殺すことなく手近な街路樹の陰に飛びこみました。
飛び出す時に引っ掛けたのか、ポニーテールがばさりとほどけて、長い髪が彼女の背に被さります。
一瞬だけ、彼女は車の残骸の方を見ました。
あの瞬間、運転席側の窓は開けていませんでしたし、他には動くものの姿も見えません。
捻って曲げられた車だったモノには、もう人間がまともな形で乗っていられるスペースは残されていないようでした。
同行者は逃げる間もなく車ごと潰されてしまった、と考えるしかありませんでした。
横目に、今まで乗っていた車が、見えない巨人の手で雑巾絞りにされるかのように、捻れていくのが見えました。
女性は前回り受身で着地の衝撃をやわらげ、しかし勢いは殺すことなく手近な街路樹の陰に飛びこみました。
飛び出す時に引っ掛けたのか、ポニーテールがばさりとほどけて、長い髪が彼女の背に被さります。
一瞬だけ、彼女は車の残骸の方を見ました。
あの瞬間、運転席側の窓は開けていませんでしたし、他には動くものの姿も見えません。
捻って曲げられた車だったモノには、もう人間がまともな形で乗っていられるスペースは残されていないようでした。
同行者は逃げる間もなく車ごと潰されてしまった、と考えるしかありませんでした。
「それにしても、何をされたのでしょうね。おおかた、朝倉涼子の『槍』と同じような非常識の類だと思いますが」
つぶやきながらも、女性は自分の武器である小型連射式パースエイダー、FN P90を手に取りました。
街路樹の陰からチラリと覗くと、黒い服の少女はゆっくりとこちらに歩いてくるようでした。
やはり手には何も持っておらず、さきほどの『攻撃』をどうやって繰り出したものか見当もつきませんでした。
街路樹の陰からチラリと覗くと、黒い服の少女はゆっくりとこちらに歩いてくるようでした。
やはり手には何も持っておらず、さきほどの『攻撃』をどうやって繰り出したものか見当もつきませんでした。
「こんな時に『とりあえず突っ込ませる』ための朝倉涼子だったのですが。まったく使えないものです……おっと」
ぼやく女性の眼前で、隠れていた街路樹が捻れて、折れました。
車が潰された時と同様、何が起きたのか全く分かりませんでした。
それでも、こんな威力の『攻撃』を生身で受けたら命に関わることだけは、正確に理解しました。
ひとまず女性は、倒れゆく街路樹越しに、無闇やたらに手に持ったサブマシンガンを乱射しました。
相手が怯んだ気配だけ察知して飛び出し、無茶な姿勢で後方に乱射を続けながら全速力。
次の街路樹まで駆け通して、その陰に飛び込み、隠れました。
そこで素早く空になった弾倉を交換し、女性は珍しく、少しだけ悩むような素振りをしました。
車が潰された時と同様、何が起きたのか全く分かりませんでした。
それでも、こんな威力の『攻撃』を生身で受けたら命に関わることだけは、正確に理解しました。
ひとまず女性は、倒れゆく街路樹越しに、無闇やたらに手に持ったサブマシンガンを乱射しました。
相手が怯んだ気配だけ察知して飛び出し、無茶な姿勢で後方に乱射を続けながら全速力。
次の街路樹まで駆け通して、その陰に飛び込み、隠れました。
そこで素早く空になった弾倉を交換し、女性は珍しく、少しだけ悩むような素振りをしました。
◇
「――――ああ、びっくりしました」
バットやナイフを向けられたことはあっても、銃を向けられたのは初めてだった。
藤乃はそれがもたらすであろう圧倒的破壊より、むしろ連続した大きな音の方に驚いてしまっていた。
それを怯んだと言うのなら、それは爆竹の音に怯んだ程度のこと。
迂闊に動こうとしなかったのが、かえって良かったのか。
それとも、師匠が当てることより逃げることを優先したためか。
P90からばら撒かれた数十発の弾丸は、いずれも藤乃の身体を捉えてはいなかった。
それがどれほどの僥倖であるのか気付きもせず、藤乃はゆっくりと歩を進める。
藤乃はそれがもたらすであろう圧倒的破壊より、むしろ連続した大きな音の方に驚いてしまっていた。
それを怯んだと言うのなら、それは爆竹の音に怯んだ程度のこと。
迂闊に動こうとしなかったのが、かえって良かったのか。
それとも、師匠が当てることより逃げることを優先したためか。
P90からばら撒かれた数十発の弾丸は、いずれも藤乃の身体を捉えてはいなかった。
それがどれほどの僥倖であるのか気付きもせず、藤乃はゆっくりと歩を進める。
隠れる師匠との距離を、悠々と詰める。
いや、今の藤乃には、ゆったりとしか動けない。
腹部の疼きが、藤乃に戦意を与えると同時に、彼女を縛ってもいる。
しかし反撃はない。藤乃のことを恐れているのか。それとも弾数に不安でもあるのか。
物陰から銃口を突き出してきたりしたら、その腕をまずねじ切ってやろうかと思っていたのだが――
いや、今の藤乃には、ゆったりとしか動けない。
腹部の疼きが、藤乃に戦意を与えると同時に、彼女を縛ってもいる。
しかし反撃はない。藤乃のことを恐れているのか。それとも弾数に不安でもあるのか。
物陰から銃口を突き出してきたりしたら、その腕をまずねじ切ってやろうかと思っていたのだが――
藤乃はチラリと一瞬だけ、視線を横に向ける。
そこにあったのは、歪にねじれた小さな車、だったもの。今まさにその横を通り過ぎようとしていたもの。
確か車にはもう1人乗っていたはずだ。
だけど、飛び出した人影は1つきり。
もう1人は――たぶん、まだこの中だろう。
少し想像しただけで、藤乃は罪悪感に押し潰されそうになる。
車ごとねじ曲げられ捻られて、「もう1人」は、きっともう、たぶん――
そこにあったのは、歪にねじれた小さな車、だったもの。今まさにその横を通り過ぎようとしていたもの。
確か車にはもう1人乗っていたはずだ。
だけど、飛び出した人影は1つきり。
もう1人は――たぶん、まだこの中だろう。
少し想像しただけで、藤乃は罪悪感に押し潰されそうになる。
車ごとねじ曲げられ捻られて、「もう1人」は、きっともう、たぶん――
「ああ――わたし、人殺しなんてしたくないのに――」
「なら、しなくていいわ」
「!?」
「なら、しなくていいわ」
「!?」
藤乃の呟きに、聞きなれぬ声が被る。
そして同時に、車の残骸から突き出される長い棒状の物体。
藤乃は反射的にそれを『視て』、捻じ曲げる。
自身を串刺しにしようとしていた凶器を『曲げて』、間一髪、制服の肩口を切り裂かれるだけで直撃を免れる。
そして同時に、車の残骸から突き出される長い棒状の物体。
藤乃は反射的にそれを『視て』、捻じ曲げる。
自身を串刺しにしようとしていた凶器を『曲げて』、間一髪、制服の肩口を切り裂かれるだけで直撃を免れる。
驚く間もないままに、さらに2本、3本、4本。
続けざまに突き出される『槍』。
そのことごとくを『曲げて』逸らしながら、藤乃は慌ててバックステップを取ろうとする。
速い。
突き出される速度が速すぎて、到達する前に『ねじ切る』だけの時間がない。僅かに穂先を逸らすだけで精一杯だ。
続けざまに突き出される『槍』。
そのことごとくを『曲げて』逸らしながら、藤乃は慌ててバックステップを取ろうとする。
速い。
突き出される速度が速すぎて、到達する前に『ねじ切る』だけの時間がない。僅かに穂先を逸らすだけで精一杯だ。
それは、『槍』とでも表現するしかない『攻撃』だった。
車を構成していた鉄板が溶けるように変形し、ウニの棘のように、あるいは水晶の結晶のように突き出している。
藤乃は混乱する。
目の前の光景と状況に、混乱する。
誰が? どうやって? いや、誰が、というのは見当つくが、いったいあの状況をどうやって生き延びて――
車を構成していた鉄板が溶けるように変形し、ウニの棘のように、あるいは水晶の結晶のように突き出している。
藤乃は混乱する。
目の前の光景と状況に、混乱する。
誰が? どうやって? いや、誰が、というのは見当つくが、いったいあの状況をどうやって生き延びて――
視界の隅に、『槍』と同様に、しかし『槍』とはまた異質な質感の、『触手』のようなものが高速で伸びるのが見えた。
それも2本。白い。早い。どことなく生物的だ。1本は素早く『曲げて』進路を逸らして、もう1本も、
……手?
それも2本。白い。早い。どことなく生物的だ。1本は素早く『曲げて』進路を逸らして、もう1本も、
……手?
「凶――っ!?」
視界いっぱいに広がったのは、広げられた手の平と、5本の指。
うねる『触手』の先端についていたその『手』は、藤乃が『曲げる』よりも早く、彼女の顔面を鷲掴みにした。
覆い隠されて、何も見えない。藤乃のこめかみに、『手』の『親指』と『小指』が食い込む。
引き剥がそうと『触手』を握って抵抗してみるも、ビクともしない。
過去に藤乃を陵辱した男たちと同じような――いや、それは、彼女の知る彼ら以上の怪力だった。
そのまま藤乃は強引に引き寄せられ、吊るし上げられる。
頭が割れそうに痛い。首が痛い。
『痛み』という感覚を得てまだ間もない藤乃の思考が、慣れない痛みに、しばし停止した。
うねる『触手』の先端についていたその『手』は、藤乃が『曲げる』よりも早く、彼女の顔面を鷲掴みにした。
覆い隠されて、何も見えない。藤乃のこめかみに、『手』の『親指』と『小指』が食い込む。
引き剥がそうと『触手』を握って抵抗してみるも、ビクともしない。
過去に藤乃を陵辱した男たちと同じような――いや、それは、彼女の知る彼ら以上の怪力だった。
そのまま藤乃は強引に引き寄せられ、吊るし上げられる。
頭が割れそうに痛い。首が痛い。
『痛み』という感覚を得てまだ間もない藤乃の思考が、慣れない痛みに、しばし停止した。
◇
「ふぅん。やっぱり光学的観測によってターゲットを捉えてるわけね。
だから動体視力の限界を超えた速度の対象には攻撃が甘くなるし、目を塞がれたら途端に困ってしまう」
だから動体視力の限界を超えた速度の対象には攻撃が甘くなるし、目を塞がれたら途端に困ってしまう」
右手1本で黒い服の少女を吊るし上げながら、朝倉涼子はつぶやきました。
普段の2倍どころでは済まない長さに伸びてのたくっていたその腕も、今はごく普通の女の子の腕に戻っていました。
伸ばしたところを一度は軽く『曲げられた』左手も、見たところ何の後遺症も残っていないようでした。
何の弾みによるものか、師匠とおそろいのポニーテールにしていた髪も、師匠と同じようにほどけて広がっていました。
ちょうどプロレス技のアイアンクローの要領で相手の抵抗を封じた彼女は、捕らえた相手を面白そうに見回しました。
普段の2倍どころでは済まない長さに伸びてのたくっていたその腕も、今はごく普通の女の子の腕に戻っていました。
伸ばしたところを一度は軽く『曲げられた』左手も、見たところ何の後遺症も残っていないようでした。
何の弾みによるものか、師匠とおそろいのポニーテールにしていた髪も、師匠と同じようにほどけて広がっていました。
ちょうどプロレス技のアイアンクローの要領で相手の抵抗を封じた彼女は、捕らえた相手を面白そうに見回しました。
「ま、有機生命体の身体構造上、そこは無理もないか。目という光学受容器に頼るしかないもんね。
それにしても『歪曲』かぁ……ただの有機生命体がこんな情報改竄の類似現象を引き起こせるなんて。
ある種の突然変異体のようだけど、構造体に妙な化学的・物理的操作も加わってるようだし……興味深いわね」
「どういうことです? 私にも分かるように説明しなさい」
それにしても『歪曲』かぁ……ただの有機生命体がこんな情報改竄の類似現象を引き起こせるなんて。
ある種の突然変異体のようだけど、構造体に妙な化学的・物理的操作も加わってるようだし……興味深いわね」
「どういうことです? 私にも分かるように説明しなさい」
車の陰から出てきた朝倉涼子が相手を制圧したのを確認し、師匠と呼ばれていた女性も戻ってきました。
油断なくP90の狙いを少女に定めたまま、問いかけます。
油断なくP90の狙いを少女に定めたまま、問いかけます。
「ん~、人間の言語って限界あるのよねぇ。上手く言語化できないかも。
そうね、情報の伝達に齟齬が発生するかもしれないけど、平たく言っちゃうと、この子……」
「平たく言うと?」
「どうも、ただ『見るだけ』で対象をねじ曲げることができるみたい。それこそねじ切るまで」
「…………」
「先天的な変異体らしいんだけど。驚きよねぇ、有機生命体がこんな能力を持ってるなんて。しかも2種類も」
「2種類? 曲げる以外にも何かできることが?」
「ううん、右回転と左回転。ほら、あわせて2つ」
「…………」
「……そんな顔しないでよ、師匠。こっちだって上手く伝える言葉が見つからなくて困ってるのに。」
そうね、情報の伝達に齟齬が発生するかもしれないけど、平たく言っちゃうと、この子……」
「平たく言うと?」
「どうも、ただ『見るだけ』で対象をねじ曲げることができるみたい。それこそねじ切るまで」
「…………」
「先天的な変異体らしいんだけど。驚きよねぇ、有機生命体がこんな能力を持ってるなんて。しかも2種類も」
「2種類? 曲げる以外にも何かできることが?」
「ううん、右回転と左回転。ほら、あわせて2つ」
「…………」
「……そんな顔しないでよ、師匠。こっちだって上手く伝える言葉が見つからなくて困ってるのに。」
呑気そうな説明をしている間も、顔面を捕らえられた少女は、必死の抵抗を続けていました。
しかし、爪を立てようが蹴りを入れようが、朝倉涼子の身体はびくともしません。少女の顔を掴んだままです。
しかし、爪を立てようが蹴りを入れようが、朝倉涼子の身体はびくともしません。少女の顔を掴んだままです。
「驚いたと言えば、さっきあなたの腕が伸びたこともそうです」
「しっかり見られてたかしら。できれば師匠の前じゃ使わずに済ませたかったんだけどなぁ」
「やはり隠し札ですか。それよりあなた、私を囮に使いましたね? あの『槍』と『伸びる腕』の射程圏内に、その標的が踏み込むまで」
「それはお互い様でしょ? あたしを見捨てて1人だけ逃げたのは誰よ?」
「ちなみに、どうやって助かったのです? 捻られた車に人の入っていられる隙間なんてなかったように見えましたが」
「ちょっと分子の結合情報弄って、床に穴開けてそこからスルッと下へ、ね。
あとは歪んだ車自体が、隠れるのにちょうどいい障害物になってくれたわ」
「そうですか。しかし車は勿体無かったですね。直せませんか?」
「うん、流石にこの規模の物体の再構成はできないみたい。次の車見つけるまでは、諦めてサイドカー使いましょ」
「しっかり見られてたかしら。できれば師匠の前じゃ使わずに済ませたかったんだけどなぁ」
「やはり隠し札ですか。それよりあなた、私を囮に使いましたね? あの『槍』と『伸びる腕』の射程圏内に、その標的が踏み込むまで」
「それはお互い様でしょ? あたしを見捨てて1人だけ逃げたのは誰よ?」
「ちなみに、どうやって助かったのです? 捻られた車に人の入っていられる隙間なんてなかったように見えましたが」
「ちょっと分子の結合情報弄って、床に穴開けてそこからスルッと下へ、ね。
あとは歪んだ車自体が、隠れるのにちょうどいい障害物になってくれたわ」
「そうですか。しかし車は勿体無かったですね。直せませんか?」
「うん、流石にこの規模の物体の再構成はできないみたい。次の車見つけるまでは、諦めてサイドカー使いましょ」
そうやって話している間も、師匠はいつでも撃てる姿勢のままです。
師匠は言いました。
師匠は言いました。
「ま、話は後です。その『能力』とやらは使えないにしても、さっさととどめを刺してしまいましょう。
あなたが捕らえてからもずっと、殺気だけは衰えていませんから」
あなたが捕らえてからもずっと、殺気だけは衰えていませんから」
◇
車に乗っていた女たちが、何かを喋っている。
こんな状態で撃ったらこっちまで巻き込まれるわよ、とか、それが嫌ならあなたが刀を使いなさい、とか。
どうやら自分の殺し方で軽く揉めているようだ。
視界を奪われたままの浅上藤乃も、ぼんやりとそれを理解する。
こんな状態で撃ったらこっちまで巻き込まれるわよ、とか、それが嫌ならあなたが刀を使いなさい、とか。
どうやら自分の殺し方で軽く揉めているようだ。
視界を奪われたままの浅上藤乃も、ぼんやりとそれを理解する。
殺されるのだろうか。こんな所で。
単に顔を手で覆われただけ、とはいえ、対象物が視えなければ浅上藤乃の『力』は揮えない。
超・至近距離にある掌にはかえって焦点を合わせることができず、だから軸が作れない。凶げられない。
相手もそれを理解しているのだろう。
詳しい原理も何も分からぬまま、ただ、少なくとも「視えない相手は曲げられない」と。
今の藤乃は、まるで――抵抗する術も持たず男たちに辱められていた頃と、おんなじだ。
超・至近距離にある掌にはかえって焦点を合わせることができず、だから軸が作れない。凶げられない。
相手もそれを理解しているのだろう。
詳しい原理も何も分からぬまま、ただ、少なくとも「視えない相手は曲げられない」と。
今の藤乃は、まるで――抵抗する術も持たず男たちに辱められていた頃と、おんなじだ。
――それは嫌だ、と思った。
一度そう思ったら、想いが止まらなくなった。
一度そう思ったら、想いが止まらなくなった。
手で目を塞がれたまま、相手が視えないまま、それでも藤乃は、爛、と睨みつける。
暗闇さえも見通さん、とばかりに、2人の女がいるあたりに視線を向け、両目に力を込める。
相手が視えさえすればいいのだ――視ることさえ出来れば、ねじ切れる。
こんな状態からでも、逆転できる。
脳が蕩けるような灼熱。
果たしてそれは妄想か現実か、2人の女の姿がうっすら脳裏に浮かんだ気がして――
暗闇さえも見通さん、とばかりに、2人の女がいるあたりに視線を向け、両目に力を込める。
相手が視えさえすればいいのだ――視ることさえ出来れば、ねじ切れる。
こんな状態からでも、逆転できる。
脳が蕩けるような灼熱。
果たしてそれは妄想か現実か、2人の女の姿がうっすら脳裏に浮かんだ気がして――
「――あ?」
「――え?」
「――!?」
「――え?」
「――!?」
行使されようとした『力』は、しかし、唐突に薄れ、消えていった。
◇
「急に殺気も失せましたが……なんだったのでしょう、今のは」
「抵抗もしなくなっちゃったしねぇ。ちょっと待ってね……」
「抵抗もしなくなっちゃったしねぇ。ちょっと待ってね……」
相変わらず少女を片手で吊るし上げた格好の朝倉涼子と、銃を構えたままの師匠は顔を見合わせました。
一際強く暴れ、強烈な殺気を発したかと思うと、いきなり気の抜けたように動きを止めた少女。
朝倉涼子は改めて脱力しきった少女の身体に顔を近づけ、嗅ぎ回るように頭を動かし、そして、無造作に言いました。
一際強く暴れ、強烈な殺気を発したかと思うと、いきなり気の抜けたように動きを止めた少女。
朝倉涼子は改めて脱力しきった少女の身体に顔を近づけ、嗅ぎ回るように頭を動かし、そして、無造作に言いました。
「ははぁ、アレがああなって、こうなって、こう、か……なるほど、この子、『使えなく』なっちゃったみたいね」
「どういうことです?」
「こういうこと」
「どういうことです?」
「こういうこと」
おもむろに彼女は、少女の顔から手を離しました。
解放された少女――と言っても、よく見れば朝倉涼子の外見とほぼ同年代――は、ぺたん、と尻餅をつきました。
少女は呆然とした様子で、朝倉涼子、続いて師匠を見比べました。
2人とも、見えない力でねじ曲げらてしまうようなことはありませんでした。
解放された少女――と言っても、よく見れば朝倉涼子の外見とほぼ同年代――は、ぺたん、と尻餅をつきました。
少女は呆然とした様子で、朝倉涼子、続いて師匠を見比べました。
2人とも、見えない力でねじ曲げらてしまうようなことはありませんでした。
「えーっと、あたしは朝倉涼子。こっちは師匠。あなたは?」
「浅上……藤乃。いや、そうじゃなくて……」
「藤乃。いい名前ね。
ああこれは社交辞令よ、有機生命体のパーソナルネームのセンスなんて、正直分からないし」
「浅上……藤乃。いや、そうじゃなくて……」
「藤乃。いい名前ね。
ああこれは社交辞令よ、有機生命体のパーソナルネームのセンスなんて、正直分からないし」
人当たりのいい笑顔を浮かべたまま、朝倉涼子はどこか世間ズレした言葉を吐きました。
3人の今置かれた状況を忘れさせるような、見事な笑顔でした。
3人の今置かれた状況を忘れさせるような、見事な笑顔でした。
「出会いは最悪だったけど、あたしたち、協力しあえるかもしれないわね。でも、とりあえず――」
何か言おうとした師匠を片手で制しつつ、朝倉涼子は1歩少女に歩み寄って、
「どう考えても師匠に説明するのにジャマだから、ちょっとだけ寝ててね。
もし次にあなたが起きることがあったなら、その時に改めてお話しましょ?」
もし次にあなたが起きることがあったなら、その時に改めてお話しましょ?」
とん、と何気ない仕草で、藤乃の首筋に手刀を叩き込みました。
◇
――また、何も感じなくなってしまった。
浅上藤乃は、ぼんやりと考えていた。
浅上藤乃は、ぼんやりと考えていた。
残留していたカラダの痛みは嘘のように消え去って、何も感じなくなって、生きている実感すらも消えうせて。
首筋へ加えられた打撃も、衝撃としてではなく、視覚と聴覚でその存在を知る。
苦痛を感じることなく、ただ意識だけがストン、と闇に落ちていく。
痛覚のない身体でも適切な場所に適切な衝撃が加われば、脳震盪などで意識は失いうるのだ。
首筋へ加えられた打撃も、衝撃としてではなく、視覚と聴覚でその存在を知る。
苦痛を感じることなく、ただ意識だけがストン、と闇に落ちていく。
痛覚のない身体でも適切な場所に適切な衝撃が加われば、脳震盪などで意識は失いうるのだ。
闇の中に落ちていきながら、藤乃は最後に、朝倉涼子の言葉を反芻する。
――協力しあえるかもしれない?
それなら――湊啓太を探す手伝いを、してくれるというのだろうか?
あの2人が? 人殺しの匂いのするあの2人が? ほんとうに?
それなら――湊啓太を探す手伝いを、してくれるというのだろうか?
あの2人が? 人殺しの匂いのするあの2人が? ほんとうに?
答えは返ってくることなく、彼女の意識は一時この舞台から遠ざかる。
◇
「――つまりあなたの話をまとめるとこうですか。
この浅上藤乃という少女は、本来、痛みを感じることのできない無痛症。
でも現在、その症状は間欠的に出たり消えたりしている。
無痛症が治って痛みを感じることができる時だけ、例の『歪曲』が使える。
でも無痛症が前面に出ている時にはそれは使えない、と――」
「そ。まあ、その無痛症の方が後天的っぽいんだけどね。
あと、たぶん本人、現時点じゃそこまで理解してないわ。無痛症が治って能力が消えた時、驚いてたでしょ?
ちょっと眠ってもらったのも、この話を彼女自身に聞かれちゃうのは後々マズイかなー、って思って」
「そこまでは分かりましたが」
この浅上藤乃という少女は、本来、痛みを感じることのできない無痛症。
でも現在、その症状は間欠的に出たり消えたりしている。
無痛症が治って痛みを感じることができる時だけ、例の『歪曲』が使える。
でも無痛症が前面に出ている時にはそれは使えない、と――」
「そ。まあ、その無痛症の方が後天的っぽいんだけどね。
あと、たぶん本人、現時点じゃそこまで理解してないわ。無痛症が治って能力が消えた時、驚いてたでしょ?
ちょっと眠ってもらったのも、この話を彼女自身に聞かれちゃうのは後々マズイかなー、って思って」
「そこまでは分かりましたが」
朝倉涼子による長い説明をざっくばらんにまとめた師匠は、その場に倒れこんだ浅上藤乃を見下ろしました。
気絶しているようですが、放置すればやがて目を覚ますであろう状態でした。
気絶しているようですが、放置すればやがて目を覚ますであろう状態でした。
「なぜ、その話を? さっさと殺しなさいと言ったはずです。まさか情が移ったなどと言い出すのではないでしょうね」
「まさか。ただこの子、うまくいけば戦力として『使える』かな、って。
ちょうど今なら無害だし、会話する余地はあるようだし」
「使えません。仮に首尾よく説得できたとしても、戦力として期待するにはあまりに不安定すぎます。殺しなさい」
「でも、『歪曲』を『使える』時の射程と威力は相当なものよ? 師匠も見たでしょ?」
「この小型連射式パースエーダーの射程と威力があれば十分です。殺しなさい」
「銃声もしないし」
「確かにサイレンサーがあるなら欲しいところですが、ないならないでやりようがあります。殺しなさい」
「弾切れもないし」
「確かに予備の弾は欲しいですが、現状でも十分余裕があります。殺しなさい」
「動作不良もないし」
「確かにできれば予備のパースエイダーも欲しいところですが、このP90は十分信頼に足るようです。
というより、『能力』が使えない今のその子の状態がまさに動作不良でしょう。殺しなさい」
「ってか、師匠もやっぱりその短機関銃だけって状況には不安があるのね。
誰かを倒して武器を奪おうにも、ここまで空振りばっかりだったし。棒は1本あったけど、銃なんてなかったもんねぇ」
「そんなことはありません。殺しなさい」
「何か、もっと有効な『武器』が手に入るまででもいいのよ?
大体、師匠も迷ってるんでしょ?
でなきゃ『殺しなさい』って言う前に師匠自身が殺してるわよね? 北村君の時のように」
「まさか。ただこの子、うまくいけば戦力として『使える』かな、って。
ちょうど今なら無害だし、会話する余地はあるようだし」
「使えません。仮に首尾よく説得できたとしても、戦力として期待するにはあまりに不安定すぎます。殺しなさい」
「でも、『歪曲』を『使える』時の射程と威力は相当なものよ? 師匠も見たでしょ?」
「この小型連射式パースエーダーの射程と威力があれば十分です。殺しなさい」
「銃声もしないし」
「確かにサイレンサーがあるなら欲しいところですが、ないならないでやりようがあります。殺しなさい」
「弾切れもないし」
「確かに予備の弾は欲しいですが、現状でも十分余裕があります。殺しなさい」
「動作不良もないし」
「確かにできれば予備のパースエイダーも欲しいところですが、このP90は十分信頼に足るようです。
というより、『能力』が使えない今のその子の状態がまさに動作不良でしょう。殺しなさい」
「ってか、師匠もやっぱりその短機関銃だけって状況には不安があるのね。
誰かを倒して武器を奪おうにも、ここまで空振りばっかりだったし。棒は1本あったけど、銃なんてなかったもんねぇ」
「そんなことはありません。殺しなさい」
「何か、もっと有効な『武器』が手に入るまででもいいのよ?
大体、師匠も迷ってるんでしょ?
でなきゃ『殺しなさい』って言う前に師匠自身が殺してるわよね? 北村君の時のように」
朝倉涼子は微笑みました。師匠は少しだけ黙り込みました。
「……その少女を連れて行くとして、最後にはどうするつもりです?
我々の利害と対立するのでは? 面倒は御免ですよ」
「ああ、それは大丈夫」
我々の利害と対立するのでは? 面倒は御免ですよ」
「ああ、それは大丈夫」
朝倉涼子は、そして不恰好に倒れていた浅上藤乃を抱き起こしました。
抱き起こして、その腹部に軽く手を当てて、そして、
抱き起こして、その腹部に軽く手を当てて、そして、
「何もしなくてもこの子、どうせもうすぐ死ぬから」
朝倉涼子は、少し微笑んで、
「この子、どうせもうすぐ死ぬから」
もう1回言いました。
◇
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの真の強みは、その解析能力だ。
涼宮ハルヒを観察して、その情報を情報統合思念体に送る。そのために造られた存在。
情報を操作して非現実的な現象を起こす能力も、高い肉体的能力も、ある意味でおまけに過ぎない。
その本分は、情報を集めることにこそある。
そこで起こったことを、解析することにある。
涼宮ハルヒを観察して、その情報を情報統合思念体に送る。そのために造られた存在。
情報を操作して非現実的な現象を起こす能力も、高い肉体的能力も、ある意味でおまけに過ぎない。
その本分は、情報を集めることにこそある。
そこで起こったことを、解析することにある。
もちろん、人間とは意識のありようの異なる情報統合思念体に造られただけあって、不得手はある。
人間社会における常識には欠ける部分があるし、人間心理にはいまいち疎い。
長門有希よりも遥かに上手く人間のコミュニティに溶け込んでいた朝倉涼子も、それは変わらない。
表層的には感情表現豊かで人当たりもいいが、時折、ぎこちなさが滲んでしまう。
人間社会における常識には欠ける部分があるし、人間心理にはいまいち疎い。
長門有希よりも遥かに上手く人間のコミュニティに溶け込んでいた朝倉涼子も、それは変わらない。
表層的には感情表現豊かで人当たりもいいが、時折、ぎこちなさが滲んでしまう。
しかし現象面の解析ならば、通常の人類より遥かに高い能力を持っている。
「そこで何が起きたのか」「何が原因なのか」、それを看破する能力は極めて高い。
時にそれは、現在の人類の言語では表現が困難な概念で、それゆえ意思の疎通に齟齬を生じることはあるけれど。
それにまた、情報統合思念体との接続がなければ、分からないことも多いのだけど。
それでも、ただの人間が普通に知りえることより遥かに多くのことを、瞬時に見抜くことができる。
「あの集団」の中において、何か不可解なことがあった時、いつも「答え」を出すのはいったい誰だったろう?
朝倉涼子は、そんな「彼女」の同類なのである。
「そこで何が起きたのか」「何が原因なのか」、それを看破する能力は極めて高い。
時にそれは、現在の人類の言語では表現が困難な概念で、それゆえ意思の疎通に齟齬を生じることはあるけれど。
それにまた、情報統合思念体との接続がなければ、分からないことも多いのだけど。
それでも、ただの人間が普通に知りえることより遥かに多くのことを、瞬時に見抜くことができる。
「あの集団」の中において、何か不可解なことがあった時、いつも「答え」を出すのはいったい誰だったろう?
朝倉涼子は、そんな「彼女」の同類なのである。
そして、この舞台においては、その能力こそが制限されている。
朝倉涼子が『近視』に例えた、距離的な制限がかかっている。
朝倉涼子が『近視』に例えた、距離的な制限がかかっている。
逆に言えば――近づけば、分かる。
浅上藤乃の、『歪曲』の能力のことも。
それが、右回転と左回転、2種類のチャンネルを持っていることも。
その能力が、彼女の後天的な無痛症と、背中に負った負傷とに連動していることも。
そして――浅上藤乃自身がまだ気付いていない、重症化しつつある虫垂炎のことも。
それが、右回転と左回転、2種類のチャンネルを持っていることも。
その能力が、彼女の後天的な無痛症と、背中に負った負傷とに連動していることも。
そして――浅上藤乃自身がまだ気付いていない、重症化しつつある虫垂炎のことも。
穿孔し腹膜炎を起こしつつあるその病状は、放置すればそれだけで十分に死に至る。
今後どういう風に行動するかによっても進行は異なるだろうし、ゆえに断定は難しいのだが……
適切な医療処理を受けられなければ、大雑把に見て、あと1日ほど。
持ち堪えたとしても、最大で2日。
どう贔屓目に見ても、3日間持つことはあり得ない。
この会場に許された時間制限めいいっぱい生き抜くことは、絶対にできない。
今後どういう風に行動するかによっても進行は異なるだろうし、ゆえに断定は難しいのだが……
適切な医療処理を受けられなければ、大雑把に見て、あと1日ほど。
持ち堪えたとしても、最大で2日。
どう贔屓目に見ても、3日間持つことはあり得ない。
この会場に許された時間制限めいいっぱい生き抜くことは、絶対にできない。
それが、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース・朝倉涼子の見立てだった。
◇
「……浅上藤乃の面倒はあなたが見なさい。
また上手く説得できなかったり、病気が進行し過ぎて使い物にならなくなったら、責任をもって『処分』するように」
「はいはい」
「もし万が一、あなたが浅上藤乃から攻撃を受けても、私は助けません。1人で逃げて、浅上藤乃の自滅を待ちます」
「分かってるわ。そこは覚悟の上よ。……それで、このままお城の方に行けばいいのね?」
また上手く説得できなかったり、病気が進行し過ぎて使い物にならなくなったら、責任をもって『処分』するように」
「はいはい」
「もし万が一、あなたが浅上藤乃から攻撃を受けても、私は助けません。1人で逃げて、浅上藤乃の自滅を待ちます」
「分かってるわ。そこは覚悟の上よ。……それで、このままお城の方に行けばいいのね?」
言いながら、朝倉涼子はデイパックの中からサイドカーつきのバイクを引っ張り出しました。
依然気絶したままの浅上藤乃をヒョイとサイドカー側の座席に座らせて、彼女はハンドルを握りました。
その後ろに、普通のバイクで2人乗りするような要領で、師匠が座ります。
依然気絶したままの浅上藤乃をヒョイとサイドカー側の座席に座らせて、彼女はハンドルを握りました。
その後ろに、普通のバイクで2人乗りするような要領で、師匠が座ります。
「そのことですが、一度その前に警察署に寄りましょう」
「警察署?」
「警察官の使っている武器や、犯罪者から押収した品々があるかもしれません。パトカーなどもあるでしょう。
少し寄り道になりますが、ここからも近いですしね」
「なるほど」
「もしもそこで使い勝手のいいパースエイダーが手に入ったら、浅上藤乃を早々に処分してもいいかもしれません」
「やめて」
「警察署?」
「警察官の使っている武器や、犯罪者から押収した品々があるかもしれません。パトカーなどもあるでしょう。
少し寄り道になりますが、ここからも近いですしね」
「なるほど」
「もしもそこで使い勝手のいいパースエイダーが手に入ったら、浅上藤乃を早々に処分してもいいかもしれません」
「やめて」
言い争う2人を乗せたまま、サイドカーは発進しました。
ポニーテールのほどけた長い髪が、2人の背後にたなびきます。
師匠も朝倉の髪の中に顔を突っ込むような真似はせず、首をずらしてそれを避けます。
ポニーテールのほどけた長い髪が、2人の背後にたなびきます。
師匠も朝倉の髪の中に顔を突っ込むような真似はせず、首をずらしてそれを避けます。
「それにしても邪魔な髪ですね。切ってしまいましょうか」
「あ、髪留めの再構成忘れてたかしら。って師匠それはやめて今はやめてちょっと運転中だからほんと待って」
「あ、髪留めの再構成忘れてたかしら。って師匠それはやめて今はやめてちょっと運転中だからほんと待って」
浅上藤乃は、未だ気絶したまま。
3人を乗せたサイドカーは、浅上藤乃が辿った道を逆になぞるように、走り去っていきました。
あたりはすっかり明るくなっています。
もうすぐ、日が昇ります。
3人を乗せたサイドカーは、浅上藤乃が辿った道を逆になぞるように、走り去っていきました。
あたりはすっかり明るくなっています。
もうすぐ、日が昇ります。
【D-3/警察署付近/一日目・早朝】
【師匠@キノの旅】
[状態]:健康。サイドカー後部座席
[装備]:FN P90(50/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x18)@現実、両儀式のナイフ@空の境界
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、
[思考・状況]
基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。
1:朝倉涼子を利用する。
2:一旦、警察署に向かい武器などを物色する。その後、天守閣の方へと向かう。
3:浅上藤乃を同行させることを一応承認。ただし、必要なら処分も考える。よりよい武器が手に入ったら殺す?
[状態]:健康。サイドカー後部座席
[装備]:FN P90(50/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x18)@現実、両儀式のナイフ@空の境界
[道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、
[思考・状況]
基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。
1:朝倉涼子を利用する。
2:一旦、警察署に向かい武器などを物色する。その後、天守閣の方へと向かう。
3:浅上藤乃を同行させることを一応承認。ただし、必要なら処分も考える。よりよい武器が手に入ったら殺す?
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康。サイドカー運転中
[装備]:シズの刀@キノの旅
[道具]:デイパック×4、基本支給品×4、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実、蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、
フライパン@現実、人別帖@甲賀忍法帖、ウエディングドレス、アキちゃんの隠し撮り写真@バカとテストと召喚獣
[思考・状況]
基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。
1:師匠を利用する。
2:警察署に向かう。その後、天守閣の方へと向かう。
3:SOS料に見合った何かを探す。
4:浅上藤乃を篭絡し、活用する。無理なようなら殺す。
[備考]
登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。
銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。
[状態]:健康。サイドカー運転中
[装備]:シズの刀@キノの旅
[道具]:デイパック×4、基本支給品×4、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実、蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、
フライパン@現実、人別帖@甲賀忍法帖、ウエディングドレス、アキちゃんの隠し撮り写真@バカとテストと召喚獣
[思考・状況]
基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。
1:師匠を利用する。
2:警察署に向かう。その後、天守閣の方へと向かう。
3:SOS料に見合った何かを探す。
4:浅上藤乃を篭絡し、活用する。無理なようなら殺す。
[備考]
登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。
銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。
【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:気絶。無痛症状態。腹部の痛み消失。サイドカーの横座席。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:湊啓太への復讐を。
0:(気絶中)
1:朝倉涼子と師匠への対処? 朝倉涼子の「協力」の申し出を検討する?
2:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。
3:後のことは復讐を終えたそのときに。
[備考]
腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。朝倉涼子の見立てでは、3日間は持ちません。
「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。
「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。(最後の対決のほぼ2日前)
湊啓太がこの会場内にいると確信しました。
そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。
警察署内で会場の地図を確認しました。ある程度の施設の配置を知りました。
[状態]:気絶。無痛症状態。腹部の痛み消失。サイドカーの横座席。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:湊啓太への復讐を。
0:(気絶中)
1:朝倉涼子と師匠への対処? 朝倉涼子の「協力」の申し出を検討する?
2:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。
3:後のことは復讐を終えたそのときに。
[備考]
腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。朝倉涼子の見立てでは、3日間は持ちません。
「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。
「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。(最後の対決のほぼ2日前)
湊啓太がこの会場内にいると確信しました。
そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。
警察署内で会場の地図を確認しました。ある程度の施設の配置を知りました。
[備考]
D-3とE-3の境界付近、地図上のT字路になってる辺りに、
フィアット・500@現実が大きく捻じ曲がった状態で放置されています。
とても動かせる状態ではありません。街路樹も折れ、弾痕や空薬莢も残されています。
D-3とE-3の境界付近、地図上のT字路になってる辺りに、
フィアット・500@現実が大きく捻じ曲がった状態で放置されています。
とても動かせる状態ではありません。街路樹も折れ、弾痕や空薬莢も残されています。
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