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死線の寝室――(Dead room)
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死線の寝室――(Dead room) ◆EchanS1zhg
【0】
《 You just watch, 『DEAD BLUE』!! 》
【1】
月に立ち向かい、天を剣の様に穿ち、超然と屹然と悍然と傑然と、そして一目瞭然とそこに存在する摩天楼。
孤高であるその頂点の周りには何も無く、光は聞こえず、風は見えず、天を見下ろせず、地を見上げることもできない。
虚無の空間。皆無の空間。絶無の空間は、全てを持ち合わせしかし何をも得てはいない王の為の孤独な空間。
何処とも繋がらない闇色の世界。そこに屹立とする漆黒の石塔。暴君の為の其処に、彼女の為の部屋が用意されていた。
白い――白い白い白い白い白い、外の世界とは真逆の真っ白の部屋。
潔癖と言うよりなお漂白されたと言う方が正しいような、異様で美しく不自然な白ばかりの空間。
床に敷かれた毛足の長いふかふかの絨毯は雪の様に白い。その上に並べられた家具のどれもが白く、
壁紙も全て白ければ勿論そこにかけられた時計や額縁なんかも一つの例外もなく全て真っ白だった。
部屋の中を照らす蛍光灯も病的なまでに白で、この部屋で白で無い部分があるとしたらそれは窓とその外側だけだった。
潔癖と言うよりなお漂白されたと言う方が正しいような、異様で美しく不自然な白ばかりの空間。
床に敷かれた毛足の長いふかふかの絨毯は雪の様に白い。その上に並べられた家具のどれもが白く、
壁紙も全て白ければ勿論そこにかけられた時計や額縁なんかも一つの例外もなく全て真っ白だった。
部屋の中を照らす蛍光灯も病的なまでに白で、この部屋で白で無い部分があるとしたらそれは窓とその外側だけだった。
そんな白い部屋の中に彼女が――玖渚友が存在する。
蒼色の少女。完璧な少女。完璧で少女ではなく、少女として完璧な、欠ける所も余るところもなく完成された少女。
人間としては著しく不完全で不均等で不自然。故に、彼女は理の内を越えたところにある美しさを体現していた。
小さく華奢で白く儚げな肢体。
美少女などと言う言葉が陳腐に感じるほどの少女らしい、それが最上表現であり、でしかない整った可愛らしい顔。
そして、彼女の中で一際目を惹きそして彼女たらしめている――青色。
両の瞳と、足元まで流れる髪が天色。ありえないからこそ綺麗だと思える透き通るようなシアン。三原色の一端。
人間としては著しく不完全で不均等で不自然。故に、彼女は理の内を越えたところにある美しさを体現していた。
小さく華奢で白く儚げな肢体。
美少女などと言う言葉が陳腐に感じるほどの少女らしい、それが最上表現であり、でしかない整った可愛らしい顔。
そして、彼女の中で一際目を惹きそして彼女たらしめている――青色。
両の瞳と、足元まで流れる髪が天色。ありえないからこそ綺麗だと思える透き通るようなシアン。三原色の一端。
物語の中で最重要にして不必要。そんな青色の”点”が黒色の”面”の中の白色の”立体”の中に落とされていた。
【2】
「うにー」
【2】
「うにー」
白い部屋の中に青い玖渚友。そしてその周りに散乱したノイズの様なあれやこれら。
それは句点の様に置かれたデイパックの中から彼女がぶちまけた、その中身――支給品の数々だった。
それは句点の様に置かれたデイパックの中から彼女がぶちまけた、その中身――支給品の数々だった。
「四次元ポケット……なんて言ってたけれども、どちらかというとロッカーカッターの概念だよね、これ」
彼女にとって一番の関心事であった四次元デイパック。
零時より十数分程。構い格闘し実験して理解すると、ブラブラと振り回してそして彼女はそれを絨毯の上に放った。
それから、ふーんと納得するように息を漏らしながら散乱した他のあれこれを透がつ眺めつうろうろとし始める。
ひとつひとつを見て記憶し、触れて理解し、才能と称される脳の中へと情報を書き込んでゆく。
零時より十数分程。構い格闘し実験して理解すると、ブラブラと振り回してそして彼女はそれを絨毯の上に放った。
それから、ふーんと納得するように息を漏らしながら散乱した他のあれこれを透がつ眺めつうろうろとし始める。
ひとつひとつを見て記憶し、触れて理解し、才能と称される脳の中へと情報を書き込んでゆく。
「わ。けっこう重い」
そして一つのスーツケースに彼女は興味を示す。一人の技術者として、独りの暴君として。
通常のものより一回り小さめなその紺色の四角い箱には、ただ”五号”とだけ名前がつけられていた。
付属していた説明書によると、この箱は核兵器――水素爆弾が内臓されているらしい。
通常のものより一回り小さめなその紺色の四角い箱には、ただ”五号”とだけ名前がつけられていた。
付属していた説明書によると、この箱は核兵器――水素爆弾が内臓されているらしい。
「……分解は、できないか。ほーしゃせんの危険が危ないし、ね」
もっとも、その為の道具もなかったが玖渚友はそれをいたずらに分解することを諦めた。
通常は少なくとも数トンの重量とそれだけの体積を必要とする水素爆弾がスーツケース大に収まっているのは興味深いが、
しかし如何せんどうしようもない。内容が確認できなければこれはもう信じるか信じないかの問題でしかない。
そして確認する為には実際に爆発させてみるしか方法はない。
だが、もし本物の爆弾ならばこの6キロメートル四方の広さしかない世界の端は、それこそ”跡形も無く木っ端微塵”になるだろう。
通常は少なくとも数トンの重量とそれだけの体積を必要とする水素爆弾がスーツケース大に収まっているのは興味深いが、
しかし如何せんどうしようもない。内容が確認できなければこれはもう信じるか信じないかの問題でしかない。
そして確認する為には実際に爆発させてみるしか方法はない。
だが、もし本物の爆弾ならばこの6キロメートル四方の広さしかない世界の端は、それこそ”跡形も無く木っ端微塵”になるだろう。
「信じない理屈は存在しないけれどもね。うにー……っと」
そう言うと、玖渚友は立ち上がり壁一面を使った窓の方へとてとてとと歩いてゆく。
四次元デイパックという超空間を利用したものが実在する以上、必要な質量なんてものはもう存在しないも同義だからだ。
信じても信じなくてもいいことがあるなら取りあえずは信じておく。それが彼女のスタンスでありパターンでもある。
四次元デイパックという超空間を利用したものが実在する以上、必要な質量なんてものはもう存在しないも同義だからだ。
信じても信じなくてもいいことがあるなら取りあえずは信じておく。それが彼女のスタンスでありパターンでもある。
「こっちは東向きで、あの海の上に見える黒い壁が端っこかな。
だとすればここまでの距離は1333メートル丁度と。ふぅん、鎌倉幕府が滅亡した年と同じだね、うん」
だとすればここまでの距離は1333メートル丁度と。ふぅん、鎌倉幕府が滅亡した年と同じだね、うん」
ガラスにぴたりとおでこをつけ、見下ろす夜景から得た情報で二次元の地図を三次元のものへと彼女は更新してゆく。
窓は東側にしかないので情報はそこから見えるだけの分しか得られないが、しかし現在地を割り出すのには問題はなかった。
窓は東側にしかないので情報はそこから見えるだけの分しか得られないが、しかし現在地を割り出すのには問題はなかった。
「ここはE-5の摩天楼。だから消失までには後、53時間と41分26秒か……。
いーちゃんが僕様ちゃんを見つけ出すのは十分の百倍はあるね。安心、安心」
いーちゃんが僕様ちゃんを見つけ出すのは十分の百倍はあるね。安心、安心」
ふふふ――と笑うと、玖渚友は振り返り外界へと繋がる唯一の、これもまた真っ白な扉を見つめる。
彼女の中には自身がその扉を開くなどという考えは毛一本ほども存在しない。面倒だし、不可能。そしてなにより、いーちゃんを信じているから。
扉はもとより、この状況。この異変。この事態が、自分といーちゃんの間を阻めるなどとは、それこそ原子一個分だって思っていない。
彼女の中には自身がその扉を開くなどという考えは毛一本ほども存在しない。面倒だし、不可能。そしてなにより、いーちゃんを信じているから。
扉はもとより、この状況。この異変。この事態が、自分といーちゃんの間を阻めるなどとは、それこそ原子一個分だって思っていない。
「予測の時間です。いーちゃんはあの扉を開いて開口一番なんて言う? 回答者僕様ちゃん」
A 『 ――友! 大丈夫か、助けにきたぞ。一緒にぼくたちの家に帰ろう 』
A 『 ――友! 大丈夫か、助けにきたぞ。一緒にぼくたちの家に帰ろう 』
B 『 ――友! お前だけは生き残れ、ぼくはここで朽ちる。でも、お前の中からは消えない』
C 『 ――友! この世界はもうお終いだ。二人で一緒に死のう。最後の最後に本当に宇宙を破壊してやろう』
D 『 ――友! 結婚しよう! ぼくたちは史上最後のアダムとイブだ。世界の終わりまでえっちぃことばっかしようぜ』
じたばたじたばた。玖渚友は純白のシーツの上でにやにやにまにま、じたばたじたばたと悶えている。純粋な少女の様に――
【3】
…………
じたばたじたばた。玖渚友は純白のシーツの上でにやにやにまにま、じたばたじたばたと悶えている。純粋な少女の様に――
【3】
…………
……………………
………………………………
まどろみの中で青色の彼女は蒼色に思考する。少女ではなく”暴君”の一面。死線として、ほんの僅かに。
人類最悪――最悪の機械師――砂漠の狐(デザートフォックス)。
人類最悪――最悪の機械師――砂漠の狐(デザートフォックス)。
三度立ち塞がるか。
一度目は一年前。
いーちゃんの代替品であった《チーム》が解散に追いやられた――が、これはどうでもいいこと。
所詮は戯れ。対決以下の試し合いでしかなかったのだから。暇を潰せる程度としては悪くはなかった。
いーちゃんの代替品であった《チーム》が解散に追いやられた――が、これはどうでもいいこと。
所詮は戯れ。対決以下の試し合いでしかなかったのだから。暇を潰せる程度としては悪くはなかった。
二度目はその半年後。
いーちゃんと敵対した。その結果は――ざまぁ見ろ。
”本物”と敵対してアレが勝てる道理があるだろう訳がない。いーちゃんの完全勝利に幕は下りた。
いーちゃんと敵対した。その結果は――ざまぁ見ろ。
”本物”と敵対してアレが勝てる道理があるだろう訳がない。いーちゃんの完全勝利に幕は下りた。
三度目は今。
幕は下りたというのに、今またしても――……………………。
それは三度目の正直? 二度あることは三度ある? 仏の顔も三度まで? ――無理は三度?
幕は下りたというのに、今またしても――……………………。
それは三度目の正直? 二度あることは三度ある? 仏の顔も三度まで? ――無理は三度?
世界の終わり”ごとき”が、”私”と”彼”とを同時に相手取ろうとは片腹痛い。
歩く逆鱗と呼ばれる彼女。死線の先にいる彼女は待つ。己が寝室――立ち位置にて、何者かの到来を、世界の終わりが始まるのを。
歩く逆鱗と呼ばれる彼女。死線の先にいる彼女は待つ。己が寝室――立ち位置にて、何者かの到来を、世界の終わりが始まるのを。
………………………………
……………………
…………
zzz...
今は、ただ眠る。夢見る少女の様に――……
【E-5/摩天楼・頂上階/1日目・深夜】
今は、ただ眠る。夢見る少女の様に――……
【E-5/摩天楼・頂上階/1日目・深夜】
【玖渚友@戯言シリーズ】
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、五号@キノの旅
[思考・状況]
基本:いーちゃんらぶ♪ はやくおうちに帰りたいんだよ。
1:いーちゃんが来るまで寝る。ぐーぐー。
[備考]
登場時期は「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。
【五号@キノの旅】
一見すると紺色のスーツケースにしか見えないが、実際は水素爆弾を内臓した熱核兵器。
バックルの代わりにスイッチがついておりそれで起爆させることができる。
おまけの時限信管を使えば、起爆までの時間を3秒から100日までの間で調整可能。
[状態]:健康、睡眠中
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、五号@キノの旅
[思考・状況]
基本:いーちゃんらぶ♪ はやくおうちに帰りたいんだよ。
1:いーちゃんが来るまで寝る。ぐーぐー。
[備考]
登場時期は「ネコソギラジカル(下) 第二十三幕――物語の終わり」より後。
【五号@キノの旅】
一見すると紺色のスーツケースにしか見えないが、実際は水素爆弾を内臓した熱核兵器。
バックルの代わりにスイッチがついておりそれで起爆させることができる。
おまけの時限信管を使えば、起爆までの時間を3秒から100日までの間で調整可能。
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