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魔女狩りの王

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魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.



 禁書目録ことインデックス、上条当麻、そして土御門元春
 以上が参加者名簿に載っている彼、ステイル=マグヌスの知人達だった。

「……さて、どうするかな」
 何気なく呟いてしまった言葉に思わず苦笑する。

 ステイル=マグヌスはイギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』に所属する魔術師であり、そうである前に一人の少女、インデックスに全てをささげた身でもある。
本来、いや少し前の彼ならばこの状況下においても自らの行動をどうしようか、などと迷うことはなかっただろう。
彼の魔法名である『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』の通りこの場にいる者全てを自らの魔術をもって焼き殺し、彼女に勝利をささげ自らはその命を絶つ。
 それだけの行為を成し遂げるだけの力を彼は身につけたのだから。
 では、どうして今彼は迷っているのか。

「……どうにも毒されているね、僕も」
 無意識に懐を探り、身につけていたタバコさえ没収されていたことに苛立ちつつも、「彼」のことを考える。今現在のインデックスのパートナー。ステイル自身は二度と立つことができない場所に
これからずっと立ち続けるであろう少年上条当麻。

 仮に先の考えのままインデックス一人を生き残らせたところでその途中で彼が失われたことをインデックスが知ればどうなるか。そのときの彼女の心境など二重の意味で考えたくはない。
 ……そんな考えが浮かんでくること自体、とある少年と関わって以来の「毒されている」ということに他ならないのだが。

 ――では、ステイル=マグヌスとしてはこの場所においていかなる行動をとるべきなのだろうか。
 彼は考える。
 先の皆殺し案は確かに乱暴な手段ではあるが同時にこれ以上ないほどにこの舞台のルールに則したベストとはいかなくともベターな案であることも事実だ。
その案が今のところは使用できない以上、ステイルはどのようにするのがベストなのだろうか?

 選択肢その一、今すぐにこの舞台でインデックスを探し出し、守る。

(……論外だな)
 この案を彼は即座に切って捨てる。ただでさえステイルは若さに似合わぬ強大な魔術を身につけることと引き換えにして
自身から戦闘のプロとは思えぬほどに体力・格闘能力を失っている。
 それに引き換えインデックスの逃走技術は極めて高い。
 一切の記憶を無くした状況下にあっても彼や神裂火織といったネセサリウスでも屈指の使い手たちの追撃を数ヶ月にわたって逃れつづけたという実績がある。
 仮に彼がインデックスの姿を探したこの舞台中を追いかけたところで、彼女からこちらに接触してくれる気になるまで彼女に会うことは敵うまい。

 選択肢そのニ、この舞台から脱出しようとする集団を作る、もしくはそのような集団にもぐりこみ数の力を持ってインデックスとの接触を図る。

(……愚策にも程がある)
 この案にも価値はない。
 確かに先の案に比べると、この案はインデックスと合流できる可能性は高い。しかし、それはあくまでも集めたメンバー全員が純粋に脱出を目指す場合の話だ。
一人でも集団にまぎれて優勝を目指す暗殺者が混じってしまえばメンバー間の疑心暗鬼によって集団は崩壊し、残された結果は危険人物に彼女の情報が渡ってしまうというだけとなる。

 選択肢その三、ひとまず彼女のそばで彼女の身を守ることを諦める。

(……やはり腹は立つけど現状ではこれがベストなのだろうね)
 ステイルは自嘲する。そう、今となっては彼女のすぐそばで彼女を守るナイトの役目を請け負っていいのはただ一人。彼にはできなかった本当の意味で彼女を守りきった一人の少年だけの栄誉だ。
 ステイルに許されるのは彼女に害が降りかからないように、彼女の目に止まる前に彼女に害成す全てを殺す。
 そう考えるならばと、ステイルは彼に支給された「武器」を見た。そう、好みに彼女の敵を全てひきつけることを目的とするのならばこれは大当たりの分類に入るだろう。

 それは武器というにはあまりに異質。
 そもそもが人に害成す為の使い方なぞ想定されていない。

 あまりに日常的なその「武器」の名前は拡声機という。

「……これを使えば」
 確実に彼の居場所を他の参加者に知らせることができるし、積極的に優勝を狙うたぐいの危険な参加者を集めることにもなるだろう。
「それが、どうした」
 迷うことすらない、なぜなら彼は全てを彼女にささげるとそう決めたのだから。
 そして彼は拡声機をもって会場へと語りかける。

『――この舞台に呼ばれた者達よ、聞こえるか? 我が名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』とでも記憶しておけ。
 この声が聞こえた者もそうでない者も関係無しに僕は貴様達に対して宣言する。貴様達のような愚かな者たちにその名を聞かせるのも憚られる為に、あえて名前までは伝えることはしないが、この僕が命に代えても守り抜くべき存在もこの舞台へと呼ばれている。
 よって僕はここに宣言する! 万が一この先彼女の名前が呼ばれるようなことがあれば僕は貴様達を一人残らず地獄へと叩き落そうと!

 脱出を願う多少は賢明なる者達よ、貴様達の奮闘を僕は期待しよう。貴様達が一刻も早くそして一人でも多くこの舞台から脱出できる方法を見つけ出せることを。
 タイムリミットはかの存在の命が尽きるまで、貴様達が戦う意思があろうとなかろうと関係ない。そのときがきたのなら僕は貴様達が無抵抗であろうがなかろうが、区別無しに殺す。
 そしてあの男程度の口車に乗せられて殺し合いを肯定してしまった愚劣極まりない矮小な微生物にも劣る存在たちよ。正直この瞬間にも貴様達と同じ空気を吸っていると思うことすら耐えがたい。
 すぐにここに来い! 僕のこの言葉が身の程知らずな大言壮語ではないことを、貴様達の苦痛と絶叫と死をもって証明してやろう。
 僕の所在地はD-4のホールだ。
 繰り返…いや、貴様達のような愚か者は先の言葉全ては覚えきれないか。簡潔に伝えてやろう。
優勝したいと願うような愚か者はエリアD-4ホールへ来て己が愚劣さをあの世で後悔せよ!』






 ◇ ◇ ◇






 拡声器をおろしてステイルはふう、と息をついた。
 これを聞いた彼の知人達がどう動くであろうか考える。

 ――インデックスにとって今の自分はあくまでも「上条当麻と一緒に動いたことがある魔術師」でしかない。あの放送をする前ならともかく、今となっては上条当麻と合流でもしない限りはこちらに近付こうとさえ思わないだろう。それでいい、と彼は思う。
 では上条当麻はどうだろう。あの少年がゲームに乗るところなどステイルには想像さえできない。まあ、もし仮に万が一そのような事態が起きているとするならば。

(遠慮なく、いつもの君のようにその間違った考えは叩き直させてもらおうじゃないか。まあ、僕は拳ではなく魔術を使わしてもらうがね)
 こちらの暴挙を止めるためにここへ来るかもしれない少年のことは草々に頭から追い出す。万が一インデックスよりこちらを優先させてここにくるようなら口先三寸、適当な理由をつけて追い払うつもりだ。彼には彼の仕事がある。
 そして最後の一人、土御門元春。
 荒事という点に関しては彼が最も信頼できるが、人格的には最も信用できない。そんな彼に対して、ステイルが下す判断とは……。

(ま、放っておけばいいさ)
 それだけであった。確かに人格的に裏切りさえ平気でおかすダブルスパイな彼は信頼するには値しない。
だが、リアリストな彼の知性に関しては信用してもいい。
 今は学園都市、上条当麻の保護下に置かれているとはいえ、インデックスが魔術の世界における超VIPであることに変わりはない。
 それを傷つける心配は今のところしなくていい。ならば今のところは彼は泳がしておくが一番だ。

 ――そして最期に彼、ステイル=マグヌス自身の今後に関して。

「さて、来るならこいよ愚か者達」
 拡声器を使わずホールの中で一人きり彼は再び宣言する。
 ここホールに飛ばされたのはルーン魔術を扱うステイルにとっては最高の幸運だった。何せ筆記用具や印刷機具には事欠かない。
 すでにホール内のいたるところにはルーンを刻んだ紙があるいはばら撒かれ、あるいは貼られている。
 ここはすでに彼が裁きを下す処刑場。のこのこ飛び込んでくる愚か者達にはその愚かさに対する報いを与えよう。

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)
それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)
それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD)
その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)
顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)」

 ――彼の宣言とともに魔女狩りの王が顕現する。

 紅蓮に燃える処刑場、王を従えし魔術師は焔の剣を携えて愚かな獲物を待ち受ける。






【D-4/一日目・深夜】
【ステイル=マグヌス @とある魔術の禁書目録】
[状態] 健康
[装備] ルーンを刻んだ紙を多数。筆記具少々
[道具] デイパック、支給品一式(ランダム支給品1個所持、ただし武器ではない模様) 、拡声器
[思考・状況]
1、インデックスの名前が呼ばれるまでしばらく(崩壊が3、4エリアあたりに迫るくらい)待ちつづける。
2、インデックスがここに来たら即座に保護。上条当麻、土御門元春ならば適当に追い返す(怪我等で休息が必要ならそれくらいは許す)
3、その他の参加者が来たら問答無用で殺す。
4、万が一インデックスの名前が呼ばれたら優勝狙いに切り替える。

【魔女狩りの王(イノケンティウス)】
魔術師ステイル=マグヌスが使用する魔術のひとつ、その意味は『必ず殺す』。
形状は炎の巨人を象る重油の人型で、
真紅に燃え盛る炎の中に重油のような黒くドロドロした人間のカタチをしたモノが芯になっている。
この炎の塊自体を攻撃しても意味は無く周囲に刻んであるルーンの刻印を消さない限り何度でも蘇る。
教皇級の魔術であり3000℃の炎の塊が突撃するその威力は凄まじいの一言。
強力さに相応の、結構な規模の下準備が必要であるのが欠点といえば欠点。

【炎剣】
ステイルがルーンのカードを設置した範囲内でのみ使用できる術式。
彼の主武装の一つで3000度の炎の剣を生み出す魔術。
ある程度形状を変化させる事もでき、これで斬りつけた物は白い灰か黒い炭と化す。
さらに炎剣そのものを爆発させ、広範囲を吹っ飛ばすことも可能。





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