Unlimted magic circuit ◆2kGkudiwr6
……私の支給品は、5m先にいる相手をくすぐることができるという手袋だけ。
愛用のバイオリンがないとか武器がないとかそんなチャチなものじゃ断じてない、
もっとすさまじい何かを味わった……
愛用のバイオリンがないとか武器がないとかそんなチャチなものじゃ断じてない、
もっとすさまじい何かを味わった……
だから、選択した。誰か来たら木の幹によりかかって動かずにいよう。
そうやってただの人形の振りをして、姉妹達に会えるまで大人しくしようという作戦だ。
その作戦が正しかったという事は、今近くで歩いている女の子が実証している。
一瞬視線を送られて最初こそ不安だったものの、その後気にした様子は無い。
そろそろ私の真正面に来るけど、女の子はこっちを見ないでそのまま歩いている。
そうやってただの人形の振りをして、姉妹達に会えるまで大人しくしようという作戦だ。
その作戦が正しかったという事は、今近くで歩いている女の子が実証している。
一瞬視線を送られて最初こそ不安だったものの、その後気にした様子は無い。
そろそろ私の真正面に来るけど、女の子はこっちを見ないでそのまま歩いている。
(ふ、ふふふ。完璧な作戦……
このゲームもやっぱり、この金糸雀が楽してズルして頂きかしら~)
このゲームもやっぱり、この金糸雀が楽してズルして頂きかしら~)
そんな事を思った瞬間、突然女の子がカードを取り出した。
不思議に思った瞬間……カードは杖となって、光りだす。
そうして女の子は振り向いて、言った。
不思議に思った瞬間……カードは杖となって、光りだす。
そうして女の子は振り向いて、言った。
「やっちゃえ、S2U」
『Stinger Ray』
「かしらー!?」
『Stinger Ray』
「かしらー!?」
バレていた。
慌てて飛びのくのと、光の雨が後ろの木に突き刺さるのはほぼ同時。
……冗談抜きでぞっとした。まともにくらったらただじゃ済まない。
本来ならすぐ逃げ出すべきなんだろうけど……恐る恐る、私は口を開いていた。
慌てて飛びのくのと、光の雨が後ろの木に突き刺さるのはほぼ同時。
……冗談抜きでぞっとした。まともにくらったらただじゃ済まない。
本来ならすぐ逃げ出すべきなんだろうけど……恐る恐る、私は口を開いていた。
「な、なんで参加者だと気付いたのかしら?」
「バカじゃないの? 首輪とランドセルがあるじゃない」
「はっ!?」
「バカじゃないの? 首輪とランドセルがあるじゃない」
「はっ!?」
呆れた声で返された答えに絶句。ああ、なんてミスを……
だけど後悔する時間さえ相手は与えてくれないらしい。
だけど後悔する時間さえ相手は与えてくれないらしい。
『Stinger Ray』
再び光の雨が降り注ぐ。避けきれずに切り裂かれて、服の一部が裂ける。
……こっちに武器はない。防具もない。なら取るべき手段はただ一つ。
……こっちに武器はない。防具もない。なら取るべき手段はただ一つ。
「せ、戦略的撤退かしら!」
すぐに後ろに振り向いて全力疾走。ここは森。
障害物はたくさんあるから、飛び道具ならある程度は防げる。そう思ったのだ。
……飛び道具だけなら、私の予想は当たりだった。
障害物はたくさんあるから、飛び道具ならある程度は防げる。そう思ったのだ。
……飛び道具だけなら、私の予想は当たりだった。
「諦めが悪いなぁ……拘束して」
『Struggle Bind』
「いっ!?」
『Struggle Bind』
「いっ!?」
今度は無数の縄。しかもただ直進するのではなく、木々の間を縫うように伸びてくる。
私に思いついた行動、残り一つ。
私に思いついた行動、残り一つ。
「キャアアアア!」
余計なこと考えないで、全力疾走する。以上。
■
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
あれから走ること、数分。私は肩で息をしながら立ち止まっていた。
行き着いた先は……湖。視界一杯に綺麗な水が広がっていた。逃げ場、無し。
行き着いた先は……湖。視界一杯に綺麗な水が広がっていた。逃げ場、無し。
「鬼ごっこは、もうおしまい?」
悪魔のような笑みを浮かべて、女の子は歩いてきた。杖を突きつけながら。
理由は一つ……確実に当てるために、だろう。至近距離から撃たれればどうしようも……
理由は一つ……確実に当てるために、だろう。至近距離から撃たれればどうしようも……
(……あれ)
ふと気付いた。
相手は近づいて来てる。そう……5m位に。
それに気付くと同時に、一応手袋を付けてあった手を素早く動かしていた。
相手は近づいて来てる。そう……5m位に。
それに気付くと同時に、一応手袋を付けてあった手を素早く動かしていた。
「きゃ、きゃはははは!?」
効果は絶大。いきなりのくすぐりに女の子は盛大に笑い出す。
当然、杖なんて地面に落ちてしまう。思わず私はにやりとした。
当然、杖なんて地面に落ちてしまう。思わず私はにやりとした。
(ふ、ローゼンメイデン一の頭脳派の名は伊達じゃないのかしら)
くすぐるのをやめると同時に、素早く相手の足元へ走る。杖を拾い上げるためだ。
杖さえ奪えばもう攻撃はできはず、相手を拾い上げるのよりは明らかにこっちの方が早い!
杖さえ奪えばもう攻撃はできはず、相手を拾い上げるのよりは明らかにこっちの方が早い!
……「相手が杖を拾うのなら」これは正しかった。
「はぁ……別に杖が無くても、攻撃できるんだから」
聞こえたのは、そんな言葉。見たのは、光る手のひら。
強い衝撃と共に私は宙を舞い、そのまま湖に落下した。
強い衝撃と共に私は宙を舞い、そのまま湖に落下した。
■
綺麗な着水音。それになびいたかのように、私――イリヤスフィールの白い髪が揺れる。
多少手間取ったものの、無傷。ここだけ見れば成功だろう。だけど。
多少手間取ったものの、無傷。ここだけ見れば成功だろう。だけど。
「これでひとつ……じゃないか」
湖で起こっている波音を聞いて、私は溜め息を吐いた。
どうやらまだ暴れているみたいだ。あの様子だと、どこかの岸に流れ着くかもしれない。
……バーサーカーと一緒なら、こんな用心なんかしないだろう。
だって、私のバーサーカーは最強だ。シロウ達に負けた今だって、そう言える。
だけど、ここにはバーサーカーもシロウもリンもいはしない。
私は一人で、乗り越えなくてはいけない。この聖杯戦争じみた殺し合いの場を。
だから、警戒する。ここは寂しくて、怖いから。だから。
どうやらまだ暴れているみたいだ。あの様子だと、どこかの岸に流れ着くかもしれない。
……バーサーカーと一緒なら、こんな用心なんかしないだろう。
だって、私のバーサーカーは最強だ。シロウ達に負けた今だって、そう言える。
だけど、ここにはバーサーカーもシロウもリンもいはしない。
私は一人で、乗り越えなくてはいけない。この聖杯戦争じみた殺し合いの場を。
だから、警戒する。ここは寂しくて、怖いから。だから。
「絶対に、帰らなきゃいけない」
そう、言葉に出して呟いた。決意そのものを形にするかのように。
もっとも、帰るだけなら別に優勝する必要なんてない。あの偉そうな男の鼻をあかしてやればいいだけ。
それでも敢えて優勝を目指すことにしたのは、願いがあるから。
とは言っても失われた家族を再び取り戻すとか、そんな願いじゃない。
シロウはきっと怒る。彼はやり直しなんて望まない。だから、こんな願いはすぐに廃棄した。
だけど、違う願いが、私にはある。その願いは、私の創られた目的に起因している。
私は聖杯戦争用に創られたホムンクルス。その戦争に勝つために生み出されたモノ。
だから……長い寿命は必要とされなかったんだろう。
見立てでは長くてあと半年。それで私は死ぬ。シロウ達とは、それでお別れになる。
そんなことは嫌だった。だから、願う。もっと、長く生きられるように、と。
前は、死ぬのなんて怖くなかった。だけど今は、やっと手に入れられた家族と別れるのが、怖い。
もっとも、帰るだけなら別に優勝する必要なんてない。あの偉そうな男の鼻をあかしてやればいいだけ。
それでも敢えて優勝を目指すことにしたのは、願いがあるから。
とは言っても失われた家族を再び取り戻すとか、そんな願いじゃない。
シロウはきっと怒る。彼はやり直しなんて望まない。だから、こんな願いはすぐに廃棄した。
だけど、違う願いが、私にはある。その願いは、私の創られた目的に起因している。
私は聖杯戦争用に創られたホムンクルス。その戦争に勝つために生み出されたモノ。
だから……長い寿命は必要とされなかったんだろう。
見立てでは長くてあと半年。それで私は死ぬ。シロウ達とは、それでお別れになる。
そんなことは嫌だった。だから、願う。もっと、長く生きられるように、と。
前は、死ぬのなんて怖くなかった。だけど今は、やっと手に入れられた家族と別れるのが、怖い。
「……シロウには、きっと怒られちゃうね」
思わず、私は表情を曇らせていた。思い浮かんだのは、正義の味方を目指すその姿。
……それでも、これしかないんだ。罪に償えと言うならば一生かけて償う。
例え苦しくても、嫌われても――ずっとずっと、家族と一緒にいられるなら、それで。
だから。
……それでも、これしかないんだ。罪に償えと言うならば一生かけて償う。
例え苦しくても、嫌われても――ずっとずっと、家族と一緒にいられるなら、それで。
だから。
「シロウ、私を守ってね」
首にかけたペンダントを握り締めて……私は呟いた。
【D-7 森の湖畔 1日目 朝】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:魔力小消費
[装備]:S2U@魔法少女リリカルなのは、凛のペンダント@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]優勝して、自分の寿命を延ばす
※セイバールートの半年後から参戦。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:魔力小消費
[装備]:S2U@魔法少女リリカルなのは、凛のペンダント@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]優勝して、自分の寿命を延ばす
※セイバールートの半年後から参戦。
【E-6 湖 1日目 朝】
【金糸雀@ローゼンメイデン】
[状態]:疲労、全身打撲(行動にやや支障あり)
[装備]:コチョコチョ手袋@ドラえもん
[道具]:支給品一式
[思考・状況]お、溺れるのかしらー!?
【金糸雀@ローゼンメイデン】
[状態]:疲労、全身打撲(行動にやや支障あり)
[装備]:コチョコチョ手袋@ドラえもん
[道具]:支給品一式
[思考・状況]お、溺れるのかしらー!?
【S2U@魔法少女リリカルなのは】
魔法少女リリカルなのはA'sまでクロノが使用していたストレージデバイス(意志が無い魔法の杖)。
色んな魔法が標されている辞書のようなものだと思えばだいたい間違いない。
最終的にデュランダルに世代交代した。
※前のSSに従い、自身が原作でやったことに近い性質を持つ魔法なら使える、習得できるとしました。
イリヤの特性は「単純な魔力放出による攻撃」と「拘束」、「遠見」の三つとしています。
単純に魔弾を放つ魔法であるスティンガーレイは完全再現できていますが、
ストラグルバインドは誘導性等が低下している可能性があります。
魔法少女リリカルなのはA'sまでクロノが使用していたストレージデバイス(意志が無い魔法の杖)。
色んな魔法が標されている辞書のようなものだと思えばだいたい間違いない。
最終的にデュランダルに世代交代した。
※前のSSに従い、自身が原作でやったことに近い性質を持つ魔法なら使える、習得できるとしました。
イリヤの特性は「単純な魔力放出による攻撃」と「拘束」、「遠見」の三つとしています。
単純に魔弾を放つ魔法であるスティンガーレイは完全再現できていますが、
ストラグルバインドは誘導性等が低下している可能性があります。
【凛のペンダント@Fate/stay night】
凛が士郎を蘇生させるのに使ったペンダント。
蘇生に大半の魔力を消費したものの、まだ魔力は残っている。
士郎はその後ずっと大事にこれを持っていた。
そのためイリヤは士郎のものだと勘違いしている、ということにしてある。
凛が士郎を蘇生させるのに使ったペンダント。
蘇生に大半の魔力を消費したものの、まだ魔力は残っている。
士郎はその後ずっと大事にこれを持っていた。
そのためイリヤは士郎のものだと勘違いしている、ということにしてある。
【コチョコチョ手袋@ドラえもん】
この手袋をはめると、5mくらい離れている所からでも相手をくすぐることができる。
この手袋をはめると、5mくらい離れている所からでも相手をくすぐることができる。
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