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  • ろりしょたばとるろわいある@ うぃき
  • his sin, his crossroads(前編)

ろりしょたばとるろわいある@ うぃき

his sin, his crossroads(前編)

最終更新:2007年05月13日 11:20

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だれでも歓迎! 編集

his sin, his crossroads ◆M42qaoJlNA


 「ど、泥棒ー!」
 目の前でランドセルを漁っている忍者の少年を前に、のび太は咄嗟に周囲を探るが何もなかった。
 「か、か、返してよ! それ、僕のだ!」
 「おっと!」
 飛びかかってきたのび太を反射的な身ごなしでかわし、きり丸は弁解する。
 「泥棒だって? 人聞きの悪いこと言うなって、俺はただこれを……」
 そう言って、きり丸はランドセルの中に突っ込んでいた手を引き抜き、握ったペットボトルをのび太の目の前にちらつかせてみせる。
 しかし、のび太は頑なに頭を振ってあとずさる。
 「し、信じるもんか……!」
 のび太の頭は、寝起きの靄の中でめまぐるしく回転する。
 ……そうだ。きっとあのペットボトルを気絶していた僕の口に突っ込んで、水をむりやり飲ませて溺れさせて殺す気だったけど、
僕が起きたから慌てて言い訳してるんだ。
 だって本当に悪い人じゃなかったらまずは僕にあやまるはずだ、泥棒して悪かった、って!
なのに目の前のこの変な格好の忍者は謝らないで何か言い訳ばかりしてる。慌ててるから謝る言葉が出てこないんだ。そうなんだ。
僕がウソの言い訳を信じて油断したらズガン! と水の詰まった重たいペットボトルで頭を殴って殺すつもりなんだ?  そうなんだ?
でもアッカンベーだ、おあいにくさま。僕は絶対に騙されるもんか、知らない奴なんか信じるもんか!
 「信じないぞ! 僕は信じないぞー!」
 「なあ、ちょっとは話を聞けって。見捨ててもいいところを、せっかく助けてやったってのによ」
 「泥棒するつもりで助けたんだろ? 僕の荷物を勝手に取ったあと、そのペットボトルで僕を殺すつもりだったんだろ!
 僕はおまえなんか信じないぞー!」
 地団太を踏み疑心暗鬼まるだしで喚くのび太を前に、ダメだこりゃ、ときり丸は内心肩をすくめた。
 ついでにちらりと、自分のランドセルに目をやる。
 (……どうするか?)
 自分の商売の相手として、のび太はダメだということがわかった。
 泥棒呼ばわりの誤解を解くことも、情報を得ることも、この様子では無理だろう。
 なら……。
 (悪いウワサを撒かれる前に、口を封じておくべきか?)
 そんな考えが忍び寄る。
 相手は同年代の子供。見たところ何の訓練も受けてない、ひ弱そうな少年だ。
 とは言え、普通の子供のように親の手伝いをして野良仕事をしているという感じではない。
 手足は日焼けも薄く、筋肉のメリハリもなくたおやかで、女の子のようだ。しかし体格はそこそこ人並みにある。
 かなりいいものを食べて育ってきたのだろうか。
 (もしかしてこいつ、いいところの坊ちゃんなのか? おかしな服を着てるけど、そう悪い身なりでもないしな……)
 その可能性に思い当たり、きり丸はもう一度思い直した。
 (だとしたら、こりゃいいカモだ。ここで諦めるには惜しいなあ……)
 きり丸の手には、水のたっぷり詰まったずっしりと重い水筒がある。
 殴り殺す凶器には向かないが、ポカンとぶん殴ってもう一度ネンネしてもらうくらいはできそうだ。
 多分数コマ後には目を覚ますだろうし、都合よく記憶喪失になってくれる可能性もある。
 今度は気絶している間に逃げられないように縛っておいて、その後で改めてじっくり話し合いを行えばよい。
 きり丸は決めると、今にも逃げようとして踵を返しかけていたのび太の袖を掴んだ。
 「は、離せよー!」
 のび太は暴れるが、きり丸が片手で押さえ込めるくらいに弱い抵抗しかできない。
 痺れを切らして振り向いた先、のび太は見た。
 青い忍者服を着込んだ変わった服装の少年が、まるで謝るように顔の前で片手を立て、
人の良さそうな笑みを浮かべながらペットボトルを軽々振りかぶっているのを……

 (た……、た、た……)
 のび太は青褪め、頭が真っ白になり、

 「う、わ―――――――っ!!! たたたた助けてドラえも―――ん!」

 火事場の焼け糞が何とやら、のび太は反射的に近くにあった観葉植物、灰皿、はてはテーブルまで
とにかく手に触れるものなんでもをきり丸目掛けてぶん投げはじめた。
 「おわっ?!」
 投げられた物品はどれもあてずっぽうな方向にすっ飛んで行き、きり丸にかすりもしなかったが、
幾らかの隙ができる。
 その間に、のび太は踵を返して脱兎のごとく逃げる。
 計算しての行動ではない。パニックに陥っていた。
 ただ我武者羅に、めちゃくちゃに走り、何も考えずにひたすらに背中を見せて逃げていく。
 「お、おい、ちょっと待てって!」
 きり丸も慌ててのび太を追う。
 落とすまい失くすまいと、守銭奴らしくしっかり小脇にのび太のランドセルを抱えながら。
 「ドロボウー!! ひとごろしー!!!」
 のび太は泣き喚きながらあっちを曲がりこっちを曲がりして逃げる。
 「人聞きの悪いことをあんま言うなって!
 ……とにかく待ってくれ、ホント間違いなんだって! 謝るからさ! なっ?」
 足で追いかけ口で平謝りしながら、きり丸は顔をしかめる。
 なんかマズくないか、この展開?
 もし、このまま逃げおおせたのび太がきり丸についての悪評を流すようなことがあれば、
きり丸自身が危険にさらされ、せっかくのビジネスチャンスもパアになりかねない。
 一方的に泥棒=危険人物とみなされ、不特定多数に敵意を向けられるなんて冗談ではない。
 働いてそれに見合ったカネがもらえるという仕組みは、信用があってこそ成り立つ仕組みである。
汗水たらして働いても、ゼニを貰う前に雇い主の不興をかってクビになっては元も子もないのだ。
しかもこの場においては、「クビ」というのは文字通りに首が飛ぶ意味にも繋がりかねない。
 いやまさに、信用あっての物種、命あっての物種である。
 なんとしてもきり丸についての誤解を振りまかれることだけは避けねばならない。
 最悪、本当に口を封じることも考えねば。

 しかし、最初のわずかな隙だけならまだ訓練を積んだきり丸が挽回することも可能だったのだが、
最初にのび太のランドセルをしっかり拾って小脇に抱える手間をとってしまった分だけさらに遅れを取ってしまった。
 おまけにのび太は考えなしに走りまくるのだから、逃げる先が読めずに追うのも一苦労である。
 さらに場所は入り組んだ都市の一角であった。
地の利は中世人のきり丸より、コンクリートジャングルに慣れた現代人ののび太に圧倒的にある。
 追いかけっこの末、気がつけばきり丸はのび太を完全に見失ってしまっていた。
 (まっじぃ……)
 きり丸は背を冷や汗が伝うのを感じる。
 どうする?


 □ □ □  


 時は、一と半刻ほど前に遡る。
 場所は、北西に数キロほど遡る。
 登場人物は、時代を越えて出会った少年二人から、世界を越えて出会った少年と乳児に変わる。


 グリーンの気を引いた太鼓の音はしばらくして止んだが、それでもグリーンは山頂へ進み続けていた。
 それは人が残っていることを期待してのものであったし、さらに言うなら上空を飛んでいく人影が目に入ったからだ。
 それは、最初の会場で見た、異装の少女。
 コウモリ翼のポケモンを背に張り付かせ、山頂へと先に向かっていく。
 とっさに地に伏し、疎らに山肌に生えている植物の陰に隠れながらそれを慎重に追った。
 敵側の人間である以上危険人物の可能性が高いが、うまくすれば情報を引き出せるかもしれない。
 直接に接触するのでなくてもいい。むしろ、迂闊に動いて一方的に気づかれるのは避けたい。
 目論見としては、あの少女が山頂で太鼓を叩いていた参加者たちに接触するのを待ち、それを様子見しつつ情報をかすめ得るというのが
最もグリーンとひまわりにとって危険が少なく、利を得られる方法であるだろう。
接触は、情報を得た上で安全を確認できればそうすればよい。

 そして――――。
 グリーンが黒翼を駆る少女に遅れること十数分して山頂に辿り着き、そこで目にしたのは、意外な光景であった。


 戯れじゃれあう少年少女、その仲良さげな様子に焼きもちを焼いているのか、ひとり怒った様子の少女。
 なにやら楽しそうな掛け合い声さえ聞こえてくる。
 グリーンは山小屋の陰でそれを窺う。
 こちらが注意深くしているのが馬鹿らしく感じられるほど、無邪気に遊んでいるように見える子供たち。
 この状況で遊びに興じるなど、正気か――――。
 呆れながら見守るが、この場に集められたのが子供ばかりなら、殺し合いの意味すらまだ
 よくわかっていない少年少女たちがいる可能性もある。わざわざ派手な音を立てて太鼓を叩いていたのも、
与えられた品でとりあえず遊んでみようとしただけで、人寄せの意図はなかったという可能性もある。
 目の前で戯れているのは、そういう参加者たちなのかもしれない。
 ――しかし、一人は確実に違う。

 紫がかった桃色のショートヘアの少女――確か、「リリス」と言ったか。
 ルール説明の補助をしていた人間が、ルールを理解していないということはあるまい。
 だが、なぜ敵側の人間であるリリスが、グリーンの目の前で参加者たちと遊び戯れているのか?
 殺し合いの意図を知らしめるべく、円滑に殺し合いを進行せしめるべく、特別に送り込まれたのだろうか?
 あるいは早々に裏切り、ジェダの寝首を掻くべく他の参加者と手を組んだのか?
 しかし――彼女の首には、よく見れば他の二人と同じに輝く首輪が嵌められている。
 あれがあるのに、軽々しく裏切り、参加者と馴れ合うというのは解せない。
 そもそも、彼女は最初のルール説明の時には首輪をつけていなかったはずである。
ちなみに服装もあの時のと違う。なぜかナース服などを身にまとっている。まあこちらはどうでもいいが。
 主催側だった人間が、なぜ首輪までつけ、この場にいるのだろうか?
 何かミスでも犯して、その罰に参加者と同格の扱いにまで貶められたあげく殺し合いに放り込まれたのだろうか?
 だが、それは一歩間違えば参加者に重要な情報をリークするもとにもなりかねない。
 ジェダという男は、そのような浅慮をする人間なのだろうか。
 あの少女はほんの下っ端で、たいした情報を与えられていないから簡単に切り捨てられたのだろうか。
 それとも、別の理由があるのだろうか。

 謎は弥増すばかりである。
 殺し合いを促進するための主催の差し金なのか?
 それとも、単純に罰か何かでこの場に放り込まれたのか?
 あるいはそれ以外の理由によるものなのか?

 まさかリリスたっての希望による参加であるとは思いもよらずに、グリーンは
目の前にいるリリスの存在の不可解さに頭をひねる。


 しかし、裏事情を確かめられる機会は訪れなかった。

 途中で、山の向こう麓のほうから、マルマインの群れが一斉に大爆発を起こしたかのような、あきれた轟音が鳴り渡ったせいである。
 とっさにひまわりの口を塞いだが遅く――――大声で泣いてぐずる赤ん坊を抱え、グリーンは慌ててその場を離れざるを得なかった。
 よって山頂の三人の子供たちの、一時の遊び戯れの後の顛末は知らない。


◇


 まだ、耳鳴りがしているようだ。

 グリーンは懐に抱えたひまわりを見やる。
 今は泣き疲れ、落ち着いた様子でいぎたなく眠っているが、響き渡った轟音に突然火のついたように大声で泣き出したときは肝が冷えた。
 山頂の参加者たちにこちらがばれなかったのは僥倖であった。

 山頂の子供たちへの接触は失敗した。
 得られた情報もほとんどない。
 見たものは三人の子供が遊び戯れる姿のみであるし、聞き取れた会話はほんの僅かである。

 ――――「きゃ、ニケ。頭大丈夫? 頭悪くない?」
 ――――「うぅ、俺はもうダメかも知れない……」
 ――――「ああん♪ 患者さんがそんなとこ触っちゃダメだよぉ」

 最近の子供のままごと遊びは随分とませているらしい。
 ――いや、それはともかく。
 この僅かなやりとりから分かる情報は、リリスと遊び戯れていた少年が「ニケ」という名であることくらいだ。
 リリスが名前を知っているということは、ニケという少年はリリスと同じく元主催側の人間だったのだろうか。
 ここに来て名前を教えあったという可能性もあるが、あれほど馴れ馴れしく遊びあっている様子だと、元もとの知り合いであった可能性が高い。
 武器を渡され、殺し合いをしろと宣告された場で、知らない人間と暢気に遊ぶような真似はたとえ子供でもすまい。
たいていは警戒してなかなか近づけないだろう。それが、敵側と皆に割れているリリスと遊び戯れているのならなおさらだ。
 ふと思う所あって名簿を見返し、あらためて確認してみる。
 「……そういうことか」
 リリスの名前はないが、ニケの名前は名簿の中ほどに銘記されていた。グリーンの記憶どおりに。
 彼はおそらく、殺し合いのゲームを円滑に進めるべく、主催側の差し金で最初から仕込まれていた、いわばジョーカー的存在だったのだろう。
 そこに、補助としてかイレギュラーとしてかは知らないが、リリスが二枚目のジョーカーとして仕込まれたのか。
 もしリリスがこの場に放り込まれた理由が罰でなければ、ニケとリリス、この二人は他の参加者に比べ色々と優遇が施されている可能性がある。
 例えば、首輪は見た目だけのハリボテかもしれない。グリーンの手にある複製首輪のように。
 例えば、支給品は強力なポケモンや殺傷能力の高い銃器で固められているかもしれない。
 例えば、ジェダの言った三大禁則――「この場からの逃亡」「禁止区域への侵入」「首輪の解除」を無視することができるのかもしれない。
かれら二人に限っては、自由にこの場とジェダのいる場所を行き来できたり、禁止区域を横断できたり、首輪を自由に取り外すことができるのだろうか。
 これらを考えると、接触を逸したのは結果的に幸運だったかもしれない。
 何も知らないまま接触していたら、ひまわり共々危険に晒されていたかもしれない。
 だが、接触を避けて逃げ回るだけではいられない。
 殺し合いに乗らず、この場から脱出するためには彼らから得られる情報が重要なヒントになるだろう。
 首輪のカラクリ、この場所からの脱出方法――この二人を捕まえて話を聞くことができれば、それらの解明もたやすく、
ジェダを倒す方法の糸口も見つかるだろう。

 しかし、ひまわりを共に危険に晒すわけにはいかない。
 足手まといにしかならない乳児。どこかに放り出していくわけにもいかない。
 ひまわりは善良そうな、赤ん坊を殺すなど思いもつかなそうな人間に預けておくのがよいだろう。
そうして身軽になったら、グリーンは単身で再びあの二人との接触を試みればよい。
 ひまわりを預けられそうな人間として、グリーンはふと麦わら帽子のトレーナーを思い出すが、
そう運良く出会えるということもないだろうと頭を振った。
 誰でもいい、信じられそうな人間を見つけて押し付けるしかない。
 もしグリーンの見込みが裏切られ、グリーンの与り知らぬ場所でひまわりがその相手に殺められるような結果に終わったとしても――仕方ない。
そこまでは責任を持ってやれない。

 山頂から撤退したグリーンが今いる場所は、最初にいた市街地の北外れ、道の左脇に広がる白砂の海岸である。
 地図で言えばA-6北西部に当たる地点だろうか。
 何故こんな場所に移動したのか。
 なんのことはない――理由は簡単である。
 見慣れた、それでいて明らかに奇妙な、良く目立つオブジェがあったから。
 海を臨むようにずらりと横一列に並んだ「電話ボックス」が。

 山頂で見たことの情報整理を終えて、グリーンはためしに一つのボックスに入り、
適当な番号をプッシュして受話器を耳に当ててみる。

 ――――……

 まるで繋がらないか、謎の交換手が訳の分からないことを喋るばかり。何か情報を求めて耳を傾け続けてみても、
まるで実の得られない意味不明な内容を垂れ流すのみ。
 通じることは端から期待していなかったが、やや落胆した気分で受話器を戻した。
 分厚い電話帳をめくってみたが、グリーンの知っている施設の名はひとつも載っていなかった。
 ポケモンセンターも、フレンドリィショップも、各シティにあるジムも、オーキド研究所も。


 ひまわりが、足元に落ちている貝殻をものほしそうに小さな手を伸ばしているのに気づく。
 「……これが欲しいのか」
 グリーンが手ずからピンク色の小さな貝を拾ってその掌に乗せてやると、きゅっと五指をまるめ握りこみ、
無邪気に微笑んでみせた。
 赤ん坊の笑みは感情表現ではなく単なる反射だというが――。


 ――――ふと、泣き声が聞こえた。


 「ヒック……ヒック……」

 ひまわりを片腕に抱えたまま、もう片手に竹刀を下げ、電話ボックスの陰にしゃがみこんで姿を隠しながら
様子を窺う。

 「ドラえもぉん……助けてよお、ドラえもぉぉん……」

 情けない涙声が、市街地はずれのうら寂しい風景に弱々しくこだまする。
 目を凝らすと、泣き声の主は、年はグリーンより二つ三つ下と思しき、普通の格好をした少年だった。
 洟を垂らし、よたよたと走る姿は無様で、これ以上ないくらいに無防備である。
 手に何も持っていない。腰に武器やボールを携えている様子もない。ランドセルすら持っていない。
 「うわああぁ……っ、ヒック……。うひッ……ひッく。
  ドラえ……もぉぉん、どこだよぉ……。助けてよお……」
 僅かに逡巡するが、懐に負ったひまわりの温みと重みに判断を迫られ、立ちあがった。
 ひまわりを抱えたまま、並んだ電話ボックス越しに声をかけてみる。
 「……おい」
 「うぇぇぇ……え…?」
 泣き声が、途中でいぶかしむような声に変わる。
 メガネの少年が、ぎこちなくこちらを向く。

 ガラス越しに、目が合った。


◇


 「磯野カツオ、と言うのか」
 「……うん。お兄さんは? その子は?」
 「俺はグリーン。コイツはひまわりだ」
 「た!」
 ひまわりが元気よく手を上げてカツオにあいさつするが、カツオは応えもしない。
 暗い表情、不信でぎらついた目を上目ぎみに向けて警戒もあらわな様子のカツオを見て、
グリーンは露骨に舌打ちしたい衝動をかろうじて堪えた。


 赤ん坊のひまわりを抱いていたのが功を奏してか、咽び歩いていた少年はおとなしくグリーンとの接触を受け入れた。
 否、正確には逃げたり刃向かったりする体力も気力も残っていなかったのが一番の理由のようであったが……。
 へとへとの様子だった少年を海辺の木陰に休ませ、簡単に介抱を施してから話を聞いてみた。
 少年――カツオは不信と疑心暗鬼をあらわにしていたが、それでもぽつりぽつりとグリーンの問いかけには答えた。
 いわく、気がつくと市街地にいたこと。他に二人の少年と会ったこと。しばらくその二人と一緒に行動していたが、
その中の一人、弥彦という少年が自分の友人「らしき」人物を殺したこと。自分はそれを確かめに戻らねばならないということ。
しかし、途中で忍者の格好をした怪しい参加者に襲われ、殺されそうになって、必死に逃げてきたところだということ――――。

 支離滅裂な言葉の内容を何とか意味の通るよう整理すると、大体こういうことらしい。

 カツオは支給品を忍者の少年に奪われたと言い、丸腰で膝を抱え座り込んだまま、
ちらちらとグリーンの竹刀に目をやっている。
 その瞳には、畏怖の陰りと狡い光が交互している。
 襲われやしないかという不安と、隙あらば奪えはしないかという下心。
 グリーンは竹刀を引き寄せ抱えこむ。
 これがただの竹刀ではなく、危険な品であるということを知らない人間に、うっかり持たれるわけにはいかない。

 結論から言えば、カツオは、ひまわりを預けられるような人間ではなかった。
 戦闘に際しての強さや人格の質には目をつぶるとしても、精神的に不安定な人間に、
一種のこわれもののような赤ん坊を押し付けることはできない。
 カツオはむしろ、ひまわり同様、他者の保護を必要とする弱者であった。

 グリーンは内心舌打ちせずにはいられない。
 何をやっている。
 これでは、足手まといが一人から二人に増えただけである。
 望む進展は得られず、行動を起こそうにも束縛が増えるばかり。


 相変わらず陰鬱な調子で、ぽつりとカツオが問いかける。
 「お兄さん、ジャイアンを見なかった?」
 「ジャイアン? そんな名前は名簿には……」
 「あ、ええと、違うんだった……。
  剛田武って名前で、僕と同い年で、体が大きくて、歌がヘタで――」
 「そんな人間には会っていない」
 「……そう……」
 礼すらも言わず、カツオは再び膝を抱え込み項垂れる。
 膝小僧越しに、陰気な目つきだけをこちらに寄越したまま。

◇

 のび太はグリーンとひまわりに内心怯えていた。
 嘘の名前を教えたのも、何か策があってのわけではなく、ただ漠然とした警戒心のゆえだった。
 この人たちも、あの忍者のように襲ってくるつもりなのかもしれないと、のび太は二人から目を離さずに様子を窺い続ける。
 何かされそうになったらすぐ逃げ出せるように。
 今、のび太の手元には武器も、何もない。すべて忍者の少年に奪われてしまった。
 のび太は切実に思った。
 武器が欲しい。
 心を咬み続ける恐怖から逃れたくて、必死で願った。
 殺されないために、怖い目にもう遭わないために、生き残るためになんでもいいから武器が欲しい。
 (……そうだ……)
 のび太は、ふと思い出す。
 「三人をやっつければ、ご褒美で何でも叶えてくれる」と最初に誰かが言っていたことを。
 ――正確には、ご褒美でもらえるのは「武器」「情報」「回復」の三種に限定されるのだが、のび太はそこまで覚えていなかった。
加えて、ほとんど磨耗しかけた精神力は、何もかもを歪めて書き換えてしまう。のび太にとって都合のよいほうへ。信じたい方へ。
そして一方では、信じたくない最悪の可能性へ。
 あの、ジャイアンだったかもしれない子豚は、殺されるとき、ものすごく痛そうだった。苦しそうだった。
 もしかしたら、自分もあんな風に誰かに殺されるのだろうか、ここで。
 痛くて苦しくてのた打ち回りながら、ドラえもんにも、ジャイアンにも、スネ夫にも、しずかちゃんにも、
ママにも、リルルにも会えずに、ひとりで死んでしまうのだろうか。
 いやだ。
 あんなのは……
 (……嫌だ、死にたくない! 殺されるのはいやだよ、怖いよドラえもん……!)
 のび太は身を震わせ、歯を食いしばる。
 (死ぬのはいやだ。痛いのや苦しいのも嫌だ。
 僕ばっかり酷い目に遭うのはいやだ。
 でも、ジャイアンやリルルがいるのに、殺し合いなんてしたくないよ。)
 …………。
 ……。
 (……でも、……ジャイアンやリルルに知られなければ、そして二人が無事なら?
 目の前の二人は、僕の全然知らない人だ。
 これまで会ったのも、みんな全然知らない子だった。
 ……殺し合いの相手がみんな知らない人間なら、別にいいじゃないか。
 人を殺すのは悪いことだけど、誰かに怒られないなら……大丈夫なんじゃないだろうか)

 目の前で人殺しを見た。実際に襲われもした。
 いじめられっ子ののび太だって、やられっぱなしは悔しいと思う心がある。

 のび太が他のみんなと同じことをしていけない理由なんて、どこにもない。
 人を殺すのはいやなことだと分かっているけど、人を殺しちゃいけない理由なんて、知らない。

 (そうだ、みんな悪いことをしてるなら、僕もしたっていいじゃないか。
 どうせ他のみんなだって僕を殺そうとしてるんだ。だったら、ここで僕もゲームに乗って誰かを殺そうとしたって、
悪いはずがないじゃないか。むしろそのほうが正しいんじゃないだろうか。
 ――それに、ドラえもんのひみつ道具を借りれば、こんなのなかったことになんていくらだってできるじゃないか。頭いい、僕!)

 自分の閃きに、のび太は膝に深く顔を埋めてほくそ笑む。

 (ようし、僕も殺し合いに乗ってやる。
 そして、ご褒美をもらって家に帰してもらうんだ。
 で、ドラえもんの道具で全部なかったことにしてもらおう!
 ……でも……)

 ごくりと唾を飲み込む。
 膝小僧を見つめる。
 勉強も運動もビリッけつの自分が、ドラえもんの道具もなしに人を殺すなんて本当にできるのだろうか。
 でも、それでも……やるしかないのだ。
 死なないためには、元の場所に帰るためには誰かを殺して生き残るしかないのだ。
 でも、それはのび太が悪いのではないはずだ。こんな場所がいけないのだ、きっと。
 のび太は必死に心の内で誰かに言い聞かせる。
 相手はジャイアンか、母親か、ドラえもんか、はたまた自分自身か――。
 (僕は悪くない、誰かを殺したって悪くない! ここなら誰を殺したって悪くないんだ!)
 唾を飲み込んだばかりなのに、口がすぐに乾いてくる。
 無理やり唾を湧き上がらせて、また飲み込む。ゴクン、と喉が鳴る。

 自分でも殺せそうな相手で、真っ先に思い浮かんだのは、すぐ側にいる黄色いベビー服を着た赤ん坊のことだった。
 赤ちゃんを殺す?
 自分の考えに、のび太は思わず二の腕に鳥肌を立てた。どうやって殺すのか、その方法を考えただけで足が萎えそうになる。


 「……?」
 ふと、周囲が暗くなる。
 いつの間にか近づいてきたグリーンが、上から覗き込んでいるようだ。
 ……もしかして、考えていることに気づかれたんだろうか?

 うつむいた顎の下から首筋に、背中に、ぶわっと滝のように冷や汗が浮かぶ。
 頭に、何か触れる。
 「う、うわああああぁぁっ!」
 のび太は勝手に怯えて頓狂な悲鳴を上げ、弾かれたように砂浜の上を転がりあとずさった。
 「殺さないで! ごめんなさい! ごめんなさい!」
 襟首を掴んで引っ張り戻され、砂の上に転がされる。
 のび太は恐怖で思わず身を丸めるが、降ってきたのは殺意ではなく、呆れを含んだ声だった。
 「おい、落ち着け」
 「い、いやだいやだ殺さないで! ごめんなさい!」
 小気味の良い音が響いた。
 ずきりと首が痛む。頬が奇妙にじんじんと熱く、なぜか自分の顔が横を向いているのをのび太は不思議に思う。
 「落ち着け」
 ぶたれたんだ……のび太はようやく気づいた。
 怒りは湧かなかった。泣く気分にもならなかった。ただ、ぼんやりとして頭が回らない。
 「……落ち着いたか?」
 グリーンの声は、多少配慮を含んで柔らかくなっていた。
 のび太はつられて、首をこっくりと下に落とす。
 (……殺されるんじゃ、なかったのか)
 安堵を覚え、震える息を吐いた。
 小便の染みた生乾きの半ズボンの冷たさを、なぜかいまさらに感じた。

 「お前がさっき話したことを、改めて確認させてもらう」
 さくり、と砂を掻く音にのび太は顔を上げる。
 「……最初に、二人の少年と会ったと言っていたな」
 のび太の目を見て喋りながら、手に持った竹刀は砂の上を滑り続ける。
 先生の教鞭に似たその動きを、のび太はなんとなく目で追い――
 「その二人と会ったのは、どこだった?」
 ――『ここから』
 「地図上の位置がわからないなら」
 ――『ぬけだす』
 「近くにあった目立つ建物を教えてくれるだけでいい」
 ――『ほうほうを』
 「お前が走ってきた方向からして、それは市街地のどこかだっただろう。
 タワーが見えた方角だけでも、覚えてはいないか?」
 ――『さがしている』


  『ここから ぬけだす ほうほうを さがしている』



 のび太は思わず声を上げかけたが、グリーンに鋭く睨まれ、すんでのところで声を上げるのをとどまった。
 幾分ためらいながら、のび太は喋り始める。
 「気が付いたら、ビルにいて……そこで泣いてたら、二人に会ったんだ。詳しい場所とか方角はわかんないけど……でも、タワーは見たよ」
 のび太は喋りながら、だらしなく足を引きずりながら歩き、時々八つ当たりするようにぐりぐりと靴のつま先で砂を抉る。
砂に文字を描いて返す。
 『ふつうにしゃべればいいじゃないか』
 「そうか。タワーの近くか」
 『きづかれたら まずい』
 『くびわを ばくはされる かのうせいが ある』
 「……だって、タワーの近くまで行ったんだ、僕たち」
 『どうやったら ここからぬけだせるの?』
 「そうか。タワーに着くまで、誰にも会わなかったんだな?」
 『くびわをはずすほうほうを さがすひつようがある』
 「うん、誰にも会わなかったよ。他の人には……」
 『どうやって?』
 「そうか……ついでだが、タワーの近くで子豚を見なかったか?」

 「!!?」
 砂文字の会話に集中を割いているうちは、あの忌まわしい記憶を思い出す作業も多少は楽だった。
それはグリーンの配慮でもあったのかもしれない。
 しかし、その一言で思い出されたものばかりは、そうはいかなかった。
 砂文字を描くのも忘れて、のび太はおののいた。
 「なんでそれを知ってるの!?」
 のび太の過剰な反応に、グリーンも動揺した様子を見せる。
 「子豚を見たのか? ……お、おい?」
 「み、見たけど………う、……うあ……あぁぁぁ……」
 あの光景を思い出し、どっと脂汗を浮かべながらのび太はうずくまる。
 胸がむかむかして吐きそうになり、何度か空えずきを繰り替えすが何も出てこない。
 そういえば朝食も昼食もまだだったことを、のび太はいまさらに思い出す。
 「おい、大丈夫か?」
 口元を押さえながら、のび太は側に来たグリーンにすがりつく。
 「お、思い出したら……うぇっ、きぼち…わるく……」
 「何があった? 子豚を見て、それから何があった?」
 「た? た?」
 ひまわりも心配したのか、のび太の脂汗で濡れて冷え切った額をぺたぺたと叩いてくる。
 「こ、子豚を、食べようとしたんだ。弥彦君が、剣を持ってたから、トンカツ、って。
 カ、カツオ君も賛成して、で、でもぼ、ぼく、やめた方がいいって思ったのに――」
 気分の悪さに朦朧としていたため、のび太はうっかりカツオの名を洩らしてしまうが、
グリーンもそのことに注意を向ける余裕がなかった。
 うつむき続けていたのび太は見ることができなかったが、のび太の言葉に「起こってしまったこと」を察し、
グリーンも顔色をやや悪くする。
 「……子豚を、殺したのか」
 のび太は、いよいよ震えを大きくしながらうなずいた。
 その続きは、子豚の正体を知っているグリーンには容易に想像できる。
 「でも、殺したあと……子豚が、人間の子供になっちゃったんだ!
 ち、血がいっぱいで、バラバラになって、……うえぇぇっ……」
 子豚の竹刀が起こした思わぬ惨禍に、さしものグリーンも内心平静ではいられない思いだった。
 あのイガグリ頭の子供は、間接的にはグリーンのせいで殺されたようなものなのだから。
 「そ、その子豚が、もしかしたらジャイアンかもしれなくて……だから、僕、戻って確かめなくちゃ……」
 「…………」
 その一言に、グリーンはかろうじて一筋の楽観をみる。
 ジャイアンは、のび太と同い年くらいの大柄な少年だという。
 ――あの子供は、せいぜい5歳くらいだった。加えて、間違っても「大柄」ではない。
 ということは、のび太が見た子豚は、殺された子豚は、グリーンが返り討ちにしたあの子供の豚になったものとは
違う可能性がある。

 グリーンはランドセルから『落書帝国』を取り出し、羽ペンを走らせる。
 思い出せる限りの情報をもとに具現させたのは、『落書帝国』の元の持ち主であり、
グリーンを最初に襲撃してきた、あの子供。
 かりそめの姿を得たゴーレムは、無表情に、ぽつねんとその場にたたずむ。
 ゴーレムしんのすけを指差し、グリーンはのび太に尋ねる。
 「カツオ、こいつを知っているか?」
 「……この子、だれ?」
 口をぬぐいながら、のび太はしんのすけを象ったゴーレムに純粋な奇異の目を向ける。
 「見たことはないか? こいつは、ジャイアンという人間ではないか?」
 「……ぜんぜん違うよ。こんな子見たこと……」
 ふと、のび太は目をしばたかせる。
 「あれ……」
 「どうした?」
 「……この子、知らないけど、どっかで見た気がして……どこだったろう」
 のび太は、ゴーレムしんのすけをじっと凝視する。
 「…………」
 今、ここでグリーンが一言言ってやれば、のび太を苦しみから救ってやることができる。
 おまえが見た子豚は、ジャイアンではないと。
 なぜなら、あの子豚はジャイアンと似ても似つかぬこの子供が正体であるからだと。
 俺が原因をつくったことだから、それは確かなことだと。
 ――しかし、言うべきかグリーンは迷う。

 これから脱出のために仲間を募ろうと思っている上で、他人に疑われたり、
警戒されたりする材料を作るわけにはいかなかった。
 その代償に、のび太が親友を見殺しにしたかもしれない罪悪感にしばらく泣き苦しむとしても。


  □ □ □


 グリーンからもらったペットボトルの水で口をゆすぎ終わり、水でふやかしたパンを
無理にでも飲みこむと、気分もなんとか落ち着いてきた。
 胃液を吐き続けた時に、警戒する気持ちも一緒に吐き出してしまったのか、今は張り詰めた心も少し楽になっていた。
 誰かを信じるのは危険だという事は心に相変わらず刻まれたままだが、目の前のグリーンとひまわりなら、
自分に危害を加えることはなさそうだと思えた。
 自分を守ってくれるのかもしれないと感じた。
 ここから脱出する方法を教えてくれるのかもしれないと、期待できた。
 「具合はどうだ」
 同じように水で溶いたパンをひまわりに与えていたグリーンが、のび太が食事を終えたのを見計らって声をかけた。
 「……落ち着いたよ。水とパン、ありがとう」
 のび太の口調が警戒むき出しだった最初の時と変わっていることに気づいてぴくりと眉を上げるが、
それ以上さしたる反応も見せず、グリーンはひまわりを抱いて立ち上がる。
 「そうか。――これから移動するが、付いてこられるか?」
 「え……ど、どこに行くの?」
 「学校だ」
 「へっ?」
 意外な言葉に、のび太は間抜けな声を出す。
 学校? こんなところで?
 「地図の中心にあっただろう。
 ……中心にある施設には人が集まりやすい。それが、子供にとって慣れ親しみ深い学校ならなおさらだ。
 お前の探しているジャイアンだかタケシだかの知り合いも、そこに行けば見つかる可能性もある」
 「……え……?」
 「子豚が人間に変わるようなことがあるわけがないだろう」
 「な、何を言うんだよ!」
 「お前は緊張でおかしくなっていたから、豚を人間と見間違えたんだろう。
 ジャイアンを本当に見つけることができれば、おまえの心配もなくなるだろうさ」
 「あ……」
 そうだ。
 グリーンの言うとおり学校に行けば、もしかしたら元気なジャイアンに会えるかもしれない。
 だが、今ののび太はそれを素直に喜べない。
 ジャイアンに会ってしまえば、殺し合いに乗るのがつらくなる。
 下手をしたら再会した瞬間に、ジャイアンと殺し合いをしなければならない羽目になる可能性だってありそうだ。
そんなことはのび太はしたくない。
 でも帰りたい。
 殺されたくない。自分は痛い思いをしたくない。

 グリーンの言うことを信じ、人を殺さずに協力しあってここから脱出する方法を探すか。
 それとも、自分のみを信じ、殺し合いに乗って三人を殺し、脱出の願いを叶えてもらうか。
 どちらが容易いだろうか。
 どちらがのび太にとって楽だろうか。

 (……楽なのは……僕ができそうなのは……)
 殺し合いなんて、運動もろくにできないのび太にできるわけがない。
 それこそ、勝てそうな相手なんてひまわりのような乳児くらいではないか。

 (…………殺し合いって、きっと楽じゃないよね)
 のび太など、逆に返り討ちにあって殺されるのが一番ありそうではないか。

 (それに……僕が殺し合いをしなくたっていいかもしれない)
 そのうち、ドラえもんが気づいて助けに来てくれることだってあるかもしれないじゃないか。
 わざわざ殺し合いをがんばらなくたっていいんだ。
 グリーンや他の頭がいい子たちがここから抜け出す方法を探してくれて、最後にドラえもんが迎えに来てくれる。
 のび太はそれを待っていればよい。
 テストは赤点、かけっこは最下位ののび太ができることなんて、大してありはしないのだ。
 自分はなにもしないで、他人任せ。それが一番楽な方法。一番安全な方法。
 のび太がわざわざ苦労しなくたってよかったのだ。
 そうだ、殺し合いなんてばかげてる。
 それに気づいて、のび太はあっさりと考えを翻した。

 やーめた。殺し合いなんてやめた。


 「無理強いはしないが、どうする」
 グリーンの言葉に、のび太は夢中でうなずく。
 「い、行くよ! 学校に行ってジャイアンを探す!」
 そうだ、グリーンの言うとおり、自分はきっと勘違いして見間違えたんだ。
 ジャイアン=子豚なんて、あるわけがないじゃないか!
 「お兄さんと一緒に探せば、ジャイアンだってきっと見つかるよね!」
 既に背を向けて歩き出しながら、グリーンがぼそりと呟く。
 「勘違いをするな」
 「……え?」
 「お前の用事だろう、お前が片付けるんだ。
 俺も学校に行く目的が別にあるから同行するだけで、人探しの手伝いはしない」
 「そんなぁー……あ、待ってよ~!」
 のび太は、飲みかけのペットボトルを持ってグリーンのあとを追う。
 その足取りは、数時間前と違って希望がこもり、力を取り戻していた。

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