旅は道連れ  ◆lip1g.SKtc



――これは絵本か何かの類なのだろうか?

マサオがやたらとページ数が少ない本を見て思った、最初の感想がこれである。
自分が普段見るような物ではなく、何故か男同士の絡みがやたらと多い物で、正直良く分からない。
リアルおままごとでもこんなものは無かった。
というか、現実でもこんなことをしている人がいるというのだろうか。

「どう? 知ってる?」
「うーん……こんなの見たことも聞いたこともないよ……」

この薄い本は自分の支給品ではなく、隣にいる女の子のものだった。
名前はビアンカ。日本人では無いということは確かだ。

「アベルも大人になったらこういうことをするのかなあ?」

殺し合いの場には自分と同じく、友達が参加しているようで、これも何かの縁という事で一緒に行動するようになった。
彼女がここを通って、声をかけてくれなかったら自分は泣きっぱなしだったので、その点は彼女に感謝している。
しかし早速移動しようと彼女に言おうとした瞬間に、彼女から移動する前に見てもらいたいものがある、と言われたのだ。
それがこの本。今は読み終わってビアンカに返した。

「でも……僕はこんなことしたくないなあ……」

男同士でそういうことをするというのは、マサオにとっては未知の領域であった。
試しにかすかべ防衛隊の男子の面子と、そういうことをするという妄想を膨らませた結果、気持ち悪くなった。
唯一マトモになりそうなのは風間君だろうか。しんちゃんとぼーちゃんは、申し訳ないがヒドいことになりそう。
いや風間君でもしたくはないが。というかマトモってなんだ。

「あ」

ふと気付いたのは風間君としんちゃんが、それっぽいということ。

(しんちゃんと風間君って、結構絡んでるような)

例えばしんちゃんが風間君の耳に息を吹きかけ、風間君がそれに変な反応をし、その後しんちゃんに怒る。
普通の男の子同士でもこんなことをしているのを、見たことはない。
しんちゃんは風間君に対しては反応も多いし、いじることも多いし。
風間君もまんざらでは無いのだろうか。

(まさか……ね)

いや、よそう。
友達をそんな風に考えるなんて失礼にも程がある。
絡みが多かろうが、それが彼等の関係を物語るわけではない。
だが一度浮かんでしまった考えは、振り払おうにも中々頭から放れようとはしない。

「ねえ、そろそろ行かない?」
「へっ!? あ、うんそうだね……」

ちょうど良く声をかけてくれたお陰で、ようやく頭から放れた。
彼女からは助けられてばかりだ。

「それじゃあ、どっちへ向かうの?」
「んー……ちょっと待って」

そう言ってビアンカは、スマートフォンと呼ばれる物を取り出した。
自分と違って、彼女は操作方法を一通り把握しているようだ。
スマートフォンの画面にマップが表示され、それを見てビアンカはうんうんと首をひねる。
マサオも画面を見ると、気になる文字を発見した。

「えーっ! ふたば幼稚園がここにあるの!?」
「ここ知ってるの?」
「知ってるも何も! 僕の世界にあった建物だよ!」

ふたば幼稚園。自分や他のかすかべ防衛隊が通う、幼稚園である。
でもなんで殺し合いの場に存在しているのだろう。

「ふーん……あ、これ現在位置も把握できるんだ」
「へー、じゃあ確認したいんだけど」
「ちょっと待って」

画面に表示されたのはE-2の文字だった。
ふたば幼稚園はE-3という場所にあり、マップで見ればそこまで距離は遠くない。

「てことは、私はそこの幼稚園からここに来たのね」
「行ったことがあるの?」
「うん、スマートフォンの機能を確認してたら偶然開いて分かったの」
「何かあった?」
「火がなくても明かりがつくランタンならあったけど、それ以外は何も無いわよ?」
「そんなランタンあったっけ……」

そんなことはさておき、自分としてはふたば幼稚園に行きたいのだが、何も無いのであれば行く必要は無いだろう。
自分としては市街地に行きたい。森なんて、いかにも危なそうな場所に進んで行く人はいないだろう。
それに怖い。


「じゃあ、こっちに行きましょ!」
「こっちってどっち?」

そうビアンカに聞きつつ、スマートフォンの画面を覗く。

「私たちがいるのはE-2でしょ? 市街地に行けば誰かに会えると思うの」
「じゃあD-2の方に行くの?」
「森なんて行きたくないでしょ?」
「あ、うん……」

もしかして、見透かされていたのだろうか。だとしたら恥ずかしい。
でも市街地に行く事になって、ホッとしている自分もいた。
行き先が決まったことでビアンカはスマートフォンをしまい、D-2の方向へと体を向ける。
幸いにして建物が近くに見えたので、方向は直ぐに分かった。

「それじゃあ早速……」
「あ、待って! 支給品確認してなかった!」
「貸して。私が確認するわ」
「わ、分かったよ」

……自分の支給品なのだから、自分が確認するべきではないか。
もう渡してしまったし、今更そんなことを言ってもどうしようもないけど。
と、肩をぽんぽんと叩かれる。

「なに?」
「じゃーん!」

振り向けばそこには、とてつもなくおぞましい顔。
コワモテかかしと呼ばれる、もしかしたらビアンカとアベルが手にしていたかもしれない、カボチ村の名産品である。

「あっはははっ! 面白い顔ねこのカカシ!」
「ヒ……」
「ねえ、マサオ君もそう思うでしょ?」
「ヒイィイイイィイ!!!!!」
「あ、ちょっと!」

ビアンカはお化け退治をして多少は慣れているが、マサオはただの幼稚園児なのだ。
しかも泣き虫で怖がりである彼には、刺激が強すぎるカカシであった。
全力で彼はその場を泣きながら逃げ出した。ビアンカはそれを追いかける。
その後一悶着あれど、和解し無事市街地へと歩き始めたようだ。

【E-2/深夜】

【ビアンカ@ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁】
[状態]:健康
[装備]:さやかの剣@魔法少女まどか☆マギカシリーズ、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品一式、桂美々著の同人誌セット@Fate/kaleid liner PRISMA ILLYA プリズマ☆イリヤ
[思考・行動]
基本方針:アベルと一緒に家に帰る。殺し合いには乗らない
1:アベルを探す
2:他の人に会ったら、この本の意味を聞いてみたい
3:マサオ君と行動

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、コワモテかかし@DQ5、ランダム支給品×0~1(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:皆を探して合流。殺し合いには乗らない
1:しんちゃんと風間君を探す
2:ビアンカと行動
3:あの本って何だろう……?

【コワモテかかし@DQ5】
佐藤マサオに支給。物凄く恐ろしい顔をした案山子。道具として使用するとマインド系の効果。
ほとんどの参加者を驚かせることが可能……かもしれない

≪027:セカンドジョーカー 時系列順に読む 031:その赤き血は誰のため
≪028:真夜中のお菓子パーティにようこそ 投下順に読む 031:その赤き血は誰のため
≪020:未知の世界へ踏み出そう ビアンカの登場SSを読む 031:白き盾のフェニーチェ
佐藤マサオの登場SSを読む

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最終更新:2014年03月28日 08:48