312 :ルカ君とナナセさん :2009/01/15(木) 23:33:32 ID:9DChjkpD
「ナナセさん、好きです!」
誰もいない教室の中、意を決してそう告げたルカを前に、ナナセは驚愕して目を見開いた。
そのナナセをルカはじっと見つめる。
その口から返されるのは否定か、肯定か・・・!
「ナナセさん、好きです!」
誰もいない教室の中、意を決してそう告げたルカを前に、ナナセは驚愕して目を見開いた。
そのナナセをルカはじっと見つめる。
その口から返されるのは否定か、肯定か・・・!
「・・・・どうして?」
長い沈黙の後、ナナセの口から出たのはどちらでもなく、
その答えを薄々予想していたルカはあぁやっぱり、と心の中で大きくため息をついた。
思い当たる節が無いほどに、ナナセはやはり自分など眼中になかったのだ。
ダメだ、卑屈になるな、ルカ・アンジェローニ・・・!
俯きたくなる自分を必死に抑え、ルカはぐっとナナセを見据えた。
「好きになるのに理由がいりますか?僕はもうずっと前から貴方だけを見てきたんです。」
長い沈黙の後、ナナセの口から出たのはどちらでもなく、
その答えを薄々予想していたルカはあぁやっぱり、と心の中で大きくため息をついた。
思い当たる節が無いほどに、ナナセはやはり自分など眼中になかったのだ。
ダメだ、卑屈になるな、ルカ・アンジェローニ・・・!
俯きたくなる自分を必死に抑え、ルカはぐっとナナセを見据えた。
「好きになるのに理由がいりますか?僕はもうずっと前から貴方だけを見てきたんです。」
一方、ナナセは混乱していた。
可愛らしい外見と家柄も相まって、ルカを狙う女子生徒は非常に多い事をナナセは承知していた。
それゆえナナセはルカが自分を選ぶ事があるなどとはつゆほどにも思っていなかった。
ルカに言い寄る女の子達の中には自分より遙かに可愛らしい子が沢山いたし、
そんな彼女達と親しそうに談笑している姿も何度も目撃しているので
その中に本当に好きな子がいるのかな、位にしか思っていなかったのである。
可愛らしい外見と家柄も相まって、ルカを狙う女子生徒は非常に多い事をナナセは承知していた。
それゆえナナセはルカが自分を選ぶ事があるなどとはつゆほどにも思っていなかった。
ルカに言い寄る女の子達の中には自分より遙かに可愛らしい子が沢山いたし、
そんな彼女達と親しそうに談笑している姿も何度も目撃しているので
その中に本当に好きな子がいるのかな、位にしか思っていなかったのである。
だがそのルカは自分が好きだという。しかもずっと前からだったと言う。
正直嬉しかった。
だが「ありえない」と自分の中で完結していたものをいきなりひっくり返されたナナセは
訳が分からず、混乱するしかなかった。
正直嬉しかった。
だが「ありえない」と自分の中で完結していたものをいきなりひっくり返されたナナセは
訳が分からず、混乱するしかなかった。
ナナセにとってルカは弟のような存在である事は確かだった。
いつも側にいる、ほっとする存在。
好きか嫌いかと言われれば・・・もちろん好きだ。
でもそこに「異性として」という言葉は入らなかった。いや、自分から入れる事を否定していた。
だって自分が選ばれる事なんて無いと思っていたから。
いつも側にいる、ほっとする存在。
好きか嫌いかと言われれば・・・もちろん好きだ。
でもそこに「異性として」という言葉は入らなかった。いや、自分から入れる事を否定していた。
だって自分が選ばれる事なんて無いと思っていたから。
しかし「かわいい弟」だった存在は、いきなり目の前で「男性」になってしまった。
真っ直ぐ見つめてくるルカの視線が恥ずかしい。
真っ直ぐ見つめてくるルカの視線が恥ずかしい。
「ナナセさんは、もう他に誰か好きな人がいるんですか・・?」
「いえ・・・いません・・」
その返答はルカを少しホッとさせる。
「でも・・・ルカ君の事は・・」
ナナセはかすれた声を絞り出した。
「・・・わからないんです・・」
「え?」
否定も肯定もできない。
そんな今の自分の気持ちをナナセは言葉を選びながら正直にルカに告げた。
全てを聞き終わったルカは、苦笑しながら言った。
「そうだったんですか、わかりました。これから女の子と話す時はもう少し気をつけるようにします。」
その笑顔が寂しそうに見えて、ナナセは慌てて口を開いた。
「違うんです、ルカ君に悪い事なんか少しもなくて、私が・・・!」
それをルカの言葉が遮った。
「ナナセさん。僕の事嫌いですか?僕の気持ちは迷惑ですか?」
「きっっ!嫌いなわけないじゃないですか!!」
「いえ・・・いません・・」
その返答はルカを少しホッとさせる。
「でも・・・ルカ君の事は・・」
ナナセはかすれた声を絞り出した。
「・・・わからないんです・・」
「え?」
否定も肯定もできない。
そんな今の自分の気持ちをナナセは言葉を選びながら正直にルカに告げた。
全てを聞き終わったルカは、苦笑しながら言った。
「そうだったんですか、わかりました。これから女の子と話す時はもう少し気をつけるようにします。」
その笑顔が寂しそうに見えて、ナナセは慌てて口を開いた。
「違うんです、ルカ君に悪い事なんか少しもなくて、私が・・・!」
それをルカの言葉が遮った。
「ナナセさん。僕の事嫌いですか?僕の気持ちは迷惑ですか?」
「きっっ!嫌いなわけないじゃないですか!!」
「ルカ君って私より可愛いくらいだし!一緒にいると安心するっていうか和むっていうか、
いつも話を聞いてくれて優しいなーって思ってますし!それからコンピュータの扱いとか
プログラミングとか機械のメンテナンスとかいつもすごいなーって尊敬してますし!!
それから・・・!!!」
べらべらとルカの良い点を羅列しだしたナナセに、ルカは思わず吹き出しそうになった。構わずナナセは続ける。
「・・・それにルカ君の気持ちが迷惑だなんて思ってもないですし!どっちかと言えば嬉し・・・」
そこまで言ってナナセはハッと我に返った。
顔を真っ赤に染めてオロオロするナナセを前に、ルカは今度こそ笑い出してしまった。
「わかりました、わかりました・・。とりあえず嫌われていない事が分かったので今日は満足です。
今日は呼び出してしまって すみませんでした。」
いつも話を聞いてくれて優しいなーって思ってますし!それからコンピュータの扱いとか
プログラミングとか機械のメンテナンスとかいつもすごいなーって尊敬してますし!!
それから・・・!!!」
べらべらとルカの良い点を羅列しだしたナナセに、ルカは思わず吹き出しそうになった。構わずナナセは続ける。
「・・・それにルカ君の気持ちが迷惑だなんて思ってもないですし!どっちかと言えば嬉し・・・」
そこまで言ってナナセはハッと我に返った。
顔を真っ赤に染めてオロオロするナナセを前に、ルカは今度こそ笑い出してしまった。
「わかりました、わかりました・・。とりあえず嫌われていない事が分かったので今日は満足です。
今日は呼び出してしまって すみませんでした。」
帰ります・・と言ってナナセがフラフラ教室を出ていった後、ルカは思わずガッツポーズを決めた。
手応えは悪くない。
そもそも今日の目的は、鈍いにも程があるナナセに自分の気持ちを知ってもらう事であり、
結果として彼女の口から「私もルカ君が好きです」と返事をもらう事ではない。
もちろんそんな都合のいい返事が返ってくれば嬉しいが・・・ハナから期待はしていなかった。
手応えは悪くない。
そもそも今日の目的は、鈍いにも程があるナナセに自分の気持ちを知ってもらう事であり、
結果として彼女の口から「私もルカ君が好きです」と返事をもらう事ではない。
もちろんそんな都合のいい返事が返ってくれば嬉しいが・・・ハナから期待はしていなかった。
しかし一番怖かったのは、彼女の気持ちが既に他者にあるという事を告げられることだった。
自分の側にはいつもアルトやミハエルのような魅力的な男性がいる。
ナナセの気持ちが既にそのどちらかを向いていたとしたら・・・勝つのは難しい。
さらに最悪のパターンは「私が好きなのはランカさんです♪」という言葉をくらう可能性だった。
自分の側にはいつもアルトやミハエルのような魅力的な男性がいる。
ナナセの気持ちが既にそのどちらかを向いていたとしたら・・・勝つのは難しい。
さらに最悪のパターンは「私が好きなのはランカさんです♪」という言葉をくらう可能性だった。
それでもどうしても今、自分の気持ちをナナセに伝えておきたかった。
彼女自ら気が付いてくれるのを待っていたが、ナナセと過ごしている間にそんな時は永遠に訪れないという事をルカは悟った。
ナナセは言葉の端々に「自分なんてダメだ」という自虐を織り込む癖があった。
こんなに魅力的な女性なのに、自分は一番劣っていると思いこんでしまっていて、
ランカのように輝いている女性を異常なまでにプッシュしてしまうのは、その反動によるものらしいとルカは気が付いた。
自分は影の存在。
慕う事はあっても慕われるなどありえない。
そんな思い込みを持っているナナセは自分が好かれているなんて、きっと微塵も思わないに違いない。
彼女自ら気が付いてくれるのを待っていたが、ナナセと過ごしている間にそんな時は永遠に訪れないという事をルカは悟った。
ナナセは言葉の端々に「自分なんてダメだ」という自虐を織り込む癖があった。
こんなに魅力的な女性なのに、自分は一番劣っていると思いこんでしまっていて、
ランカのように輝いている女性を異常なまでにプッシュしてしまうのは、その反動によるものらしいとルカは気が付いた。
自分は影の存在。
慕う事はあっても慕われるなどありえない。
そんな思い込みを持っているナナセは自分が好かれているなんて、きっと微塵も思わないに違いない。
ルカは焦った。
ナナセから動く事は無いだろうが、他の誰かがナナセに好意を持ち、それを伝えたら?
免疫の無い彼女の事だ。きっと大きく揺れ動くだろう。
連れて行かれてしまう---------------。手の届かない所へ。
ならばそうなる前に、自分から彼女の心に風穴を開けるしかない。
とにかく好きだと言う事を伝えなければ何も始まらない!
ナナセから動く事は無いだろうが、他の誰かがナナセに好意を持ち、それを伝えたら?
免疫の無い彼女の事だ。きっと大きく揺れ動くだろう。
連れて行かれてしまう---------------。手の届かない所へ。
ならばそうなる前に、自分から彼女の心に風穴を開けるしかない。
とにかく好きだと言う事を伝えなければ何も始まらない!
かくして、ルカはナナセを呼び出したのだった。
結果として、誰か他に好きな人がいるのかという問いは一応とはいえ否定され、
むしろ好意的に自分の気持ちを汲んでくれた・・と思う。
ここからは彼女次第。
肩は叩いた。後は振り向いてくれるかどうか・・だ。
結果として、誰か他に好きな人がいるのかという問いは一応とはいえ否定され、
むしろ好意的に自分の気持ちを汲んでくれた・・と思う。
ここからは彼女次第。
肩は叩いた。後は振り向いてくれるかどうか・・だ。
次の日。
「ナナセさーん、おはようございまーす!」
学園内を歩いていたナナセは、その声に心臓が跳ね上がった。
「ル・ルカく・・・!」
「今日は暑いですねー。早くプール始まらないかなぁ。」
いつもと変わらず無邪気な口調のルカを前に、ナナセは完全に挙動不審になってしまっていた。
(何か言わないと・・・!えっと、昨日の返事・・・!えっと・・!!)
「あ・・・あのね、ルカ君、わ、私・・・」
言いかけたナナセの手を、ルカがスッと掴んだ。
驚いて顔を上げたナナセの顔を、ルカが真っ直ぐ見つめていた。
そのままルカはフッと優しく微笑んだ。
『まだ言わなくていいんですよ?』
その目はそう言っているような気がした。
(・・・待っててくれるの?ルカ君。私の返事・・・)
「ナナセさーん、おはようございまーす!」
学園内を歩いていたナナセは、その声に心臓が跳ね上がった。
「ル・ルカく・・・!」
「今日は暑いですねー。早くプール始まらないかなぁ。」
いつもと変わらず無邪気な口調のルカを前に、ナナセは完全に挙動不審になってしまっていた。
(何か言わないと・・・!えっと、昨日の返事・・・!えっと・・!!)
「あ・・・あのね、ルカ君、わ、私・・・」
言いかけたナナセの手を、ルカがスッと掴んだ。
驚いて顔を上げたナナセの顔を、ルカが真っ直ぐ見つめていた。
そのままルカはフッと優しく微笑んだ。
『まだ言わなくていいんですよ?』
その目はそう言っているような気がした。
(・・・待っててくれるの?ルカ君。私の返事・・・)
「行きましょう?教室。」
つないだ手をそのままに、ルカが歩き出した。
「うん・・・」
赤い顔のまま、少しうつむき加減でナナセはその後についた。
もうルカは何事もなかったかのような顔で歩いていた。
「・・・ありがとう・・・」
ナナセは呟いてみる。
その声は小さく、ルカには届かないだろうと思った。
しかし繋いだ手は・・・少しだけ強く握り返されたのだった。
つないだ手をそのままに、ルカが歩き出した。
「うん・・・」
赤い顔のまま、少しうつむき加減でナナセはその後についた。
もうルカは何事もなかったかのような顔で歩いていた。
「・・・ありがとう・・・」
ナナセは呟いてみる。
その声は小さく、ルカには届かないだろうと思った。
しかし繋いだ手は・・・少しだけ強く握り返されたのだった。
それから何事もなく、平穏無事に毎日は過ぎていく。
そんなある日、ランカと昼食をとっているナナセの元にルカがやってきた。
「L.A.I.技研で今度アミューズメントパーク用の機体を開発したんですけど、そのモニターをやってみませんか?」
「モニター・・ですか?」
「といってもそんな堅苦しい物じゃありません。ただ遊んでみて、感想を聞かせてもらえればいいんです。」
「どんなゲームなの!?」
目を輝かせながらランカが食いついてきた。
「本物の空を飛ぶ疑似体験・・といった感じですかねぇ。まるで自分が鳥になったような感覚を楽しめるはず・・なんですけど。」
「すごいすごい!それってルカ君が作ったの!?」
「え、えぇまぁ・・そうなんですけど・・」
ルカの言葉にナナセが感心してため息をついた。
「そんな事まで手がけているんですね、ルカ君って・・」
その反応に照れてルカは鼻の頭を掻いた。
「今度の日曜だと他のスタッフも出払っていて都合がいいんですけど、お二人の予定はどうですか?」
とたんにランカが顔をしかませた。
「あちゃー・・私、お仕事が入っちゃってるよぅ。残念だけどナナちゃんだけでも行っておいでよ」
「え、ランカさん、行けないんですか・・」
悲しそうな顔をするナナセの肩をランカはぐっと掴んだ。
「行っておいで!ね!!」
何故かものすごい笑顔で迫るランカに、思わずナナセは
「は、はい・・いいですか?私一人でも?」
とルカの方を見た。
「ええ、もちろん構いません・・」
言いかけてルカは、ランカがナナセの肩越しにバチンッとウィンクするのに気が付いた。
(ランカさん・・・ありがとうございます!)
ナナセに気が付かれないように、ランカに向かってぐっと親指を立てるルカだった。
そんなある日、ランカと昼食をとっているナナセの元にルカがやってきた。
「L.A.I.技研で今度アミューズメントパーク用の機体を開発したんですけど、そのモニターをやってみませんか?」
「モニター・・ですか?」
「といってもそんな堅苦しい物じゃありません。ただ遊んでみて、感想を聞かせてもらえればいいんです。」
「どんなゲームなの!?」
目を輝かせながらランカが食いついてきた。
「本物の空を飛ぶ疑似体験・・といった感じですかねぇ。まるで自分が鳥になったような感覚を楽しめるはず・・なんですけど。」
「すごいすごい!それってルカ君が作ったの!?」
「え、えぇまぁ・・そうなんですけど・・」
ルカの言葉にナナセが感心してため息をついた。
「そんな事まで手がけているんですね、ルカ君って・・」
その反応に照れてルカは鼻の頭を掻いた。
「今度の日曜だと他のスタッフも出払っていて都合がいいんですけど、お二人の予定はどうですか?」
とたんにランカが顔をしかませた。
「あちゃー・・私、お仕事が入っちゃってるよぅ。残念だけどナナちゃんだけでも行っておいでよ」
「え、ランカさん、行けないんですか・・」
悲しそうな顔をするナナセの肩をランカはぐっと掴んだ。
「行っておいで!ね!!」
何故かものすごい笑顔で迫るランカに、思わずナナセは
「は、はい・・いいですか?私一人でも?」
とルカの方を見た。
「ええ、もちろん構いません・・」
言いかけてルカは、ランカがナナセの肩越しにバチンッとウィンクするのに気が付いた。
(ランカさん・・・ありがとうございます!)
ナナセに気が付かれないように、ランカに向かってぐっと親指を立てるルカだった。
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