概要
「貧乏人の背は罪を負うに細すぎよう。救いが欲しくば神に祈れ。仏に跪け。さもなくば──去ね」
葛神家が分家の一員と目される正体不明。
門隠大社の枢軸だけがその名と実体を知る、大社の粛清役である。史実に照らす限り葛神家に分家などというものはなく、一族を名乗る者も、「罰神さま」その人をおいて他にいない。人間なのか侍女兵なのか、悪鬼妖怪の類であるのかすら定かではなく、大社が抑止力として創作した怪談であると見る向きもある。
なお、門隠九家が化身の姿をしたためた御伽絵巻では、鮫のようなあぎとを持つ穢の神「罰神(バチノカミ)」が描かれており、これが名前の由来と思われる。罰神は、厄神(ヤクノカミ)と同じく穢れから生まれた禍津神であり、字を厄災の元とし、それについて文字をしたためることの一切を禁じている。
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罰神とは |
皇国において最初期に精製された楼蘭メヱド、「怪異宿し」が一人。
怪異「燭・蝋・紙・墨」のうち、墨の怪異こと「墨染」を司るが、太陽光の下では力を十全に発揮できない欠陥を抱えていたために、内向きの粛清役に成り下がる。汚れ仕事を通じて大社の内情を掌握する内に、侍女兵の身をして大社と対等に物を言うようになり、今や「賽銭」「布施」「浄財」と称した金銭取引によってのみ、悪逆を代行する刺客になり果てた。
結界で閉ざされた「迷ひ社」という半廃屋の神社に住み、飼い殺しに近い扱いを受けている。怪異「墨染」がどのような能力であるのか、子細は定かでないが、太陽光を浴びると著しく消耗するため、その力が十全に発揮されるのは、宵の刻、ないし雨天の下であるとされる。
墨の怪異。水に関係した能力であると類推される。
体から分泌される黒色の液状物を媒体として、おそらくは水分を含有する物質を自在に反応、または操作することができ、この液状物を便宜的に「墨」と呼んでいる。
その発現方法は幅広く、単純なものでは水素を生成し気化させての爆破、呼吸器へ墨を流し込んで対象を窒息させる、などといった使い方が確認されているが、その実、どのような性質の能力であるのか、はっきりとは判明していない。ただしそうした発現方法のいずれも、太陽光を浴びると墨が蒸発してしまうため、一切機能することがない。
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- 通称:「罰神さま」「罰点印」「墨鮫」
- 出身:楼蘭皇国
- 所属:門隠大社
- 装備:不明
- 身長:不明
- 年齢:不明
アヲザメ
罰神の使役する楼蘭原生種「ツバメガ(燕蛾)」の亜種。「イカルガ(鵤蛾)」。
体格は燕蛾とさほど変わらないが、体色は青黒く、頭部に刀のような細長く鋭い角がある。野生の鵤蛾はほぼ絶滅しているが、暗殺に用いるために少数が繁殖されており、アヲザメはその内の一匹に当たる。かなりの高齢であるのか、体や翅に治癒し切れていない無数の傷があり、同種特有の角も中ほどで折れてしまっている。
罰神には、アヲ、と呼ばれているようである。
迷ひ社
半廃屋の神社。
久月邸のほど近く、薄墨桜が咲く墨染林の最奥に位置する。四方を結界で閉ざされ、九鬼家の獄窩によって一帯を警備されているため、通常、人が立ち入ることはないに等しいが、暇を持て余した獄窩が仕事を疎かにすることがままあるために、不運に見舞われ、迷い込む者も少なからずいるようである。
かつては侍女兵の隔離施設を兼ねていたらしく、離れのような住居が併設されていた跡がある。
葛神緋々色
「だからぁ、絶対私の方がお姉さんよぉ。だって私、シロがかか様の股から出てくるところ見たものぉ」
怪異宿しが一人。門隠大社の奉る現人神、狗頭大現神(クズノオオアキツカミ)その人。
葛神白々朗の実妹に当たる。
門隠大社によって、かつての罰神や兄・白々朗らと同時期に精製された個体であり、あらゆるものを熱量や光に変える、燭の怪異こと「燭光」を司る。温度変化に弱いという欠陥があり、夜になれば極度の寒気に苛まれ、低温の水に触れるだけで凍傷を負うため、常に厚着をして過ごしていたという。またかなりの喫煙家であり、護身用の暗器を兼ねて特注したキセルを生涯愛用していた。
他の怪異宿しのいずれの怪異にも対抗しうる唯一の存在であったために、その身は門隠大社の象徴の任にありながら常に謀略の渦中にあり、命の危険に晒される立場にあった。彼女の自尽は大社の内部にそれまで以上の軋轢をもたらし、紙の怪異を司る者の謀殺を経て、やがて新たなる「厄の怪異」を創出せんとする「白鴉計画」に繋がっていくこととなる。
関連
- 阿倍野誠明 … 雇用主の一人。だが、時として単純な金銭以外の繋がりも伺える。
- 以麿川義元 … 雇用主の一人。ここから依頼を請け負う際は「浄財」の桁を一つ多く見積もっているようである。
- 久月深悟 … 鵤蛾の提供元であったが、深悟が当主となって以降は関係が途絶している。
最終更新:2010年03月07日 23:26