(投稿者:店長)
-
ザハーラの前線基地に、フードを被った人物がある人物……否、メールを探していた。
彼の身なりはボロボロで、態々単身でやってきた様子であった。
その時たまたま非番だったメールであった
アピスが、都合よく自身になぜか攻撃的な癖に一緒にいたがるネイトと共にやってきたのは幸運だっただろう。
「ちょっと、アンタ誰よ」
「あれ?貴方は……」
不振人物にその手に装備されたアモン・ラーを向けかけるネイトは、間髪入れたアピスのつぶやきを聞いて咄嗟に引っ込めた。
「久しいな。覚えててくれて嬉しいよ」
ザハーラの太陽に炙られて日焼けした肌で一瞬分からなかったが、アピスはその人物を過去に出会った人物だと思い出した。
無論軍人であれば問題だが、彼はエントリヒ人だが軍人ではない。一介のフリージャーナリストだ、と以前聞いた事があるからだ。
「誰よコイツ」
「コイツとはひどいな。これでもフリーのジャーナリストだ。ほれ、身分証明」
ネイトに手渡されたのは、軍から取材を許可されたことを記すものだ。
従軍記者であるなら誰しも所持してなければならないものである。
もし持ってないまま写真をとったりすれば、忽ち軍人に檻に放り込まれることになる。
「……偽装してないようね」
「けど、何で態々ここに?」
「ああ、コイツを渡したくてな……アンタに」
懐から、彼は綺麗に手紙を入れるような封筒に包まれたものを手渡しした。
それでも茶色に日焼けした紙は、小さな歴史を積み重ねたように伺える。
「開けても?」
「ああ……ま、俺は今回コイツを渡しに来たついでに別の取材があるからよ……じゃ、失礼するぜ」
アピスに封筒を受け取らせた彼は片手を上げて別れの挨拶を済ませ、彼らの前から退散していく。
「しっかし古臭いね。アンタみたいに」
「ははは……レンちゃん厳しいね」
封筒からゆっくりと取り出して、出てきたのは外装と似たように古臭いモノクロ写真が数枚。一年や二年ではない……もっと、古い写真。
ペラリ、ペラリと無言で捲るアピスの指が……ある写真に触れたとたんに止まる。
「……アピス?」
ネイトはアピスの顔を伺う。
そこには、アピスが懐かしいものを見る表情のまま泣いていた。
アピスがまだ生まれたての時期、
エントリヒ帝国の新型兵器であった第一世代メード部隊に所属していたアピスには多くの同胞がいた。
姦しい三人組のロゼ、ファービー、
メリッサ。強面で屈強な石像を思わせるライデン。
普段ぼーっとしている心優しきガリバルディ。他にもミソッ歯ですばしっこいディックとか実に多くの仲間。
その中の筆頭として、ヤヌスという兄貴格と後にエントリヒの軍神と呼ばれるようになる
ブリュンヒルデ。
そして従軍記者であった彼は、そんな新型兵器の宣伝のための取材をするという名目で彼らに近づいた。なにせ人型兵器という新ジャンルである。特ダネとしてはこれ以上のものはないだろう……最初は動物園で珍しい動物を見たがる来園者の気分で近づいた。
「よぉ、なんだいにーちゃん。取材か?」
まず最初に目に付いた彼……ヤヌスが彼に声をかける。ヤヌスの態度に最初面食らった彼だが、次の瞬間にはメモ帳とペンを構える。
「ああ、……インタビューをしていいかい?」
「おう!バリバリきやがれってんだ……で、モク吸いたいんだが……火あるかい?」
まるでどこにでもいるような人間みたいな彼らに、別の関心が膨らんでいく。
──ああん? 怖いかって? ったりめーだろ?
──兵器として失格? おいおいひでーな。これでも心はあるんだぜ?とびっきりのな。
──そうだな、前の戦いで仲間が一人逝ったな。あの馬鹿……。
取材をしていると、いつの間にか他のメード達が興味津々の様子で彼を見つめていた。
「あー、いいなヤヌス! 後で私達も取材してねー!」
「ずる! 何抜け駆けしようとしているのよロゼ!」
「何を馬鹿な!このメリッサ様を差し置いて……!」
すぐさま目の前で喧騒が巻き起こった様子に、流石の彼も取材を受けていたヤヌスも苦笑する。しかし互いに嫌ではなかった。
「な? 確かに俺達は兵器として生まれたが……人間しているんだぜ?」
しばらく彼らの取材をしていると、一人遅れて陣にやってきたメードがいた。
その場にいるメードらは各々思い思いの格好をしているが、彼女は重々しい黒の鎧と槍とを装備していた。
「なにやら騒がしいと思えば、取材の方が来ていましたか」
「よぉ、ブリュンヒルデ……なんでも俺らのことを取材させてくれってさ」
「マイン・カイザーよりその旨は聞いております……ブリュンヒルデと申します」
今までのラフな対応とは異なった丁寧なそれに面食らった彼は言うべき言葉を出せずにいた。
「あいも変わらずかてーな。いっそのことその鎧ごと楽になったらどうだ?」
「全員が全員、だらけるのはいけませんと思いますが」
「あ、いや……そうじゃなくってだな……」
ヤヌスがブリュンヒルデに馴れ馴れしく首に手を回して圧し掛かる。それに大して拒絶ことしないが、呆れた半分しかたなさ半分といった様子でため息を吐き、流し目でヤヌスを見る。
その光景に他のメードらは苦笑を浮かべてた。
「ああ、そうだそうだ……写真撮影、いいです?」
「写真撮影ですか?……私達をですか」
「おーおー、いいね! きれーにとってくれよ?」
トップバッターは俺だ!とヤヌスが宣言する。その隣で私は結構です……と控えめに声をだすブリュンヒルデを背後からアピスが
ヤヌスも巻き込んで抱き寄せる。そうすると自然にヤヌスとブリュンヒルデの距離が縮まり、くっつく。
思わぬ事態にブリュンヒルデは恥ずかしそうにそっぽを向くが、すぐにアピスが声をかける。
「ほら、……二人とも笑ってないと勿体無いよ?」
「せっかくの美人が勿体ねーって」
「はい、3……2……1」
カシャ。
関連
最終更新:2008年12月29日 10:51