(投稿者:エアロ)
「・・・そうか。 エメリンスキーのならず者共が・・・」
帝国のどこか、暗い部屋で誰かがつぶやく。
暗い電灯のもと、装飾だけは豪華なテーブル、そして壁にかかるは色を反転させたエントリヒ国旗。
そう、ここは
軍事正常化委員会、通称「黒旗」の秘密のアジト。
一時期の摘発で帝国内の黒旗勢力はかなり減退したが、まだ多数の残党がこうして穴倉の中で息を潜めている。
アルトメリアの支部とも連絡が取れない状況なのだ。
そういう八方塞に陥った際、洋の東西、今昔を問わずにこういう組織が使う手段。
陰謀。
黒旗は首脳部の人脈を活かし、国防軍にその根を張りつつあったのだ。
その実行役として利用していたのが・・・
実は前旅団長のエメリンスキーと黒旗首魁のグスタフ・グライヒヴィッツは提携関係にあったのだ。
といっても友情や信義、忠誠などさらさらない、相互利用関係でしかなかったが。
「大臣、もはやエメリンスキーのならず者たちは実行役としての利用価値すらありません。
監視員を引き上げさせ、手を切るのが打倒でしょう。」
メガネをかけたやせぎすの側近が問いかける。
「しかし、切ったとして次はどこを実行役にするのだ。
蜥蜴が尻尾を切れば次の尻尾が生えてくるが、人間はそうは行かぬぞ」
グライヒヴィッツはしわのにじんだ顔をさらにゆがませ苦々しげに吐息する。
前政権では内務大臣を務めていたが、過激な論調、極めて自分勝手な政策で国民からの人気は低く、
その危険な軍事ビジョン、国粋主義的政治思想にマクシムム皇帝もギーレン宰相も彼を危険視していた。
その挙句、黒旗を立ち上げクーデターを画策したが親衛隊の暗闘により失敗、鎮圧。
現在は穴倉で身を潜めているという体たらくである。
「いずれにせよ大臣、われわれの関与の証拠を残さぬことが懸命ですぞ、手を打っておくべきかと」
右側の側近がいうとグライヒヴィッツはうなずき、ある固有名を呼んだ。
「
フィルトル、ロナ」
「マイン・フューラー、お呼びでしょうか」
そこに影のようにスッと現れたのは黒い服を着たMAIDときわどい格好をしたMAID。
黒旗所有のMAID、フィルトルとロナである。
「エメリンスキーのならず者共の動向を探れ、決して潰しはするな。
それは親衛隊などに任せておけばいい、深入りはしないように」
「ヤヴォール、マイン・フューラー」
そういうと二人は闇に溶けるように消えた。
「手は打っておく、あせることはない、最後に勝つのは我々なのだからな」
そういうとグライヒヴィッツは闇に消え入るような笑みを浮かべたのだった。
最終更新:2009年02月20日 11:31