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朋也「軽音部? うんたん?」 4/25 日
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meteor089
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朋也「軽音部? うんたん?」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:48:20.44:cUBlBpOS0
4/25 日
朋也「ふぁ…ん」
早い時間、自然と目が覚める。
体に重さを覚えることもなく、寝直す気にもならない。
ここ数日、バスケの試合に向けて体調を管理していたおかげだろう。
まぁ、それも、単に体が疲れて早めに床についていただけの事だったが。
ともかく、生活サイクルが朝方に戻ってきたのは確かだった。
疲労とは、人の意思だけでは、どうにも抗い難いものだ。
休みたいという欲求が、平常時の思考を簡単に上回る。
まるで、本能のようにだ。
そのせいで、春原の部屋を出ていく時間が早まり、何度か親父と顔を合わせていた。
その瞬間はたまらなく嫌だったが、すぐに不快感は薄れ、意識はベッドへ向いていた。
俺のこだわっていた、つまらない意地なんて、現実的な負荷の前では無意味なものだ。
そういえば…前にも似たようなことを思ったことがある。
そう、芳野祐介の手伝いをした時だ。
体に重さを覚えることもなく、寝直す気にもならない。
ここ数日、バスケの試合に向けて体調を管理していたおかげだろう。
まぁ、それも、単に体が疲れて早めに床についていただけの事だったが。
ともかく、生活サイクルが朝方に戻ってきたのは確かだった。
疲労とは、人の意思だけでは、どうにも抗い難いものだ。
休みたいという欲求が、平常時の思考を簡単に上回る。
まるで、本能のようにだ。
そのせいで、春原の部屋を出ていく時間が早まり、何度か親父と顔を合わせていた。
その瞬間はたまらなく嫌だったが、すぐに不快感は薄れ、意識はベッドへ向いていた。
俺のこだわっていた、つまらない意地なんて、現実的な負荷の前では無意味なものだ。
そういえば…前にも似たようなことを思ったことがある。
そう、芳野祐介の手伝いをした時だ。
朋也(とっとと中退して、働きでもしたら、やる気出るのかな…)
本当に出るだろうか…。
いや、とてもそうなるとは思えない。
まだ、何も考えずに授業を受けていたほうが楽な気がする。
食うために働き続ける…。
そんな歯車にはまってしまえば、自分が哀れに思えても、放棄することもできなくなってしまうのだろう。
考えただけでも、ぞっとする。
いや、とてもそうなるとは思えない。
まだ、何も考えずに授業を受けていたほうが楽な気がする。
食うために働き続ける…。
そんな歯車にはまってしまえば、自分が哀れに思えても、放棄することもできなくなってしまうのだろう。
考えただけでも、ぞっとする。
朋也(でも、もう後一年なんだよな…)
………。
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:49:38.60:1qYNd8dxO
やめだ。こんな重苦しいこと、朝っぱらから考えていたら、気分が滅入る。
朋也(いくか…)
重い気分を振り払うように、勢いをつけて体を起こした。
―――――――――――――――――――――
春原「ん…うひひ…」
朋也(まだ寝てやがる…)
春原の部屋。
ベッドの中で、幸せそうに寝息を立てていた。
こいつも、朝錬なんかしていたくらいだから、もう起きているだろうと見込んでいたのだが…。
ベッドの中で、幸せそうに寝息を立てていた。
こいつも、朝錬なんかしていたくらいだから、もう起きているだろうと見込んでいたのだが…。
春原「うひ…ひひ…」
どんな夢を見ているんだろう。
布団の端を掴んで、口の中でもごもごさせていた。
布団の端を掴んで、口の中でもごもごさせていた。
朋也(なにか他のものを入れてみよう)
俺は台所に向かった。
冷蔵庫を漁る。
いくつか適当に調味料を手に取って、また戻ってくる。
冷蔵庫を漁る。
いくつか適当に調味料を手に取って、また戻ってくる。
朋也(よし、まずはこれだ)
マヨネーズを口に近づけてみる。
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:50:05.78:cUBlBpOS0
春原「う…む…」
吸い出していた。
朋也(じゃあ、次は…)
コショウを近づける。
だが、さすがに非流動体では口で吸えないようだった。
だが、さすがに非流動体では口で吸えないようだった。
朋也(だめか…ん?)
と思ったら、鼻の呼吸で吸い込み始めていた。
春原「ん…ぶはぁっ!」
荒々しく目覚める。
春原「げほっ…んだよ、マヨネーズ…?」
朋也「おはよう」
春原「うおっ、岡崎っ」
朋也「俺が来てやったんだから、もう起きろ」
春原「いや、まずどうやって入ってきたんだよ、鍵は…」
朋也「不用心にもかかってなかったぞ。しっかりしろよ」
朋也「まぁ、俺が昨日、閉めずに出たんだけどさ」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:51:15.83:1qYNd8dxO
春原「なら、偉そうに注意促すなっ!」
朋也「んなマヨネーズみたいな感じで言われてもな…」
春原「僕の意思じゃねぇよ…起きたら、いきなりこんなんだったんだよ」
春原「昨日、無意識にマヨネーズで一杯やって寝ちゃったのかな…」
朋也「心配するな。そんな情けない宅飲みはしてないぞ」
朋也「俺が今、直接そそいでただけだからな。すっきり起きられるようにさ」
マヨネーズとコショウを手に持ってみせる。
春原「普通に起こせよっ! しかも、なんだよ、そんなに色々持ってきやがって…」
テーブルの上に置かれた様々な調味料に気づいたようだ。
春原「ワサビまであるしさ…」
朋也「おまえの体内で、全く新しい調味料を調合しようと思ったんだ」
春原「変な探究心燃やすなっ!」
―――――――――――――――――――――
春原「くそぅ、昼まで寝てようと思ってたのによ…」
着替えを済ませても、まだぶつぶつと文句を垂れ流していた。
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:51:56.23:cUBlBpOS0
朋也「せっかくの日曜なんだから、もっと有意義に過ごせよ」
春原「めちゃ脱力してうつ伏せになってるあんたに言われたくないんですけどっ」
朋也「ま、それはそれとしてだ…」
上体だけ起こす。
朋也「朝飯食いに行こうぜ。俺まだ食ってないし」
春原「いいけどさ。どこいくの」
朋也「朝定食があるとこ」
春原「じゃあ、近くにある適当な定食屋でいいよね」
朋也「この辺のはあんまり好きじゃないんだけど」
春原「なら、繁華街の方まで出る?」
朋也「遠い」
春原「マジでわがままっすね…」
朋也「やっぱ、宅配ピザ頼もうぜ」
朋也「それで、手がギトギトになって、部屋中油まみれにしよう」
春原「絶対外食にするからなっ!」
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:54:48.33:1qYNd8dxO
朋也「なんでも否定するな、おまえ。そんなに世の中に不満があるのか」
春原「あんたがめちゃくちゃなこと言うからでしょっ!」
春原「つーか、マジでどうすんの。そろそろ決めてよ」
朋也「そうだな、じゃあ、駅前に出るか」
朋也「琴吹がバイトしてるファストフードの店があるんだけど、そこにしよう」
春原「え!? ムギちゃん、バイトなんかしてんの?」
朋也「ああ、この前みかけたぞ。クーポンももらったしな」
春原「へぇ、偉いなぁ、お嬢様なのに。やっぱ、いい子だよ」
春原「うしっ、そうと決まれば、早くいこうぜっ」
朋也「そういきりたつなよ。俺の動く気が失せちゃうじゃん」
朋也「前日までテンション高かったのに、当日になって萎える感じでさ」
春原「あんた、面倒くさいぐらい繊細っすねっ!」
―――――――――――――――――――――
律「ありゃ、岡崎に春原じゃん」
駅前まで出てくると、偶然部長と鉢合わせた。
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:55:35.07:cUBlBpOS0
春原「げっ、部長」
律「なんだよ、その反応はっ」
律「こんな美少女に出会えたこと、神に感謝しろよっ」
春原「するかよ。むしろ、謝って欲しいぐらいだね」
春原「今からせっかくムギちゃんのバイト先に行こうってとこだったのにさ」
春原「はぁ…台無しだよ」
律「あん? なに、あんたらもあそこのハンバーガー食いに来てんの?」
春原「も…ってことは、おまえもかよ」
律「私はそうだけど…かぁ、なんだよ、目的地一緒なのか…」
春原「嫌なら、雀荘にでも入り浸ってろよ」
律「なんで雀荘なんだよっ! おまえがパチ屋にでも行ってろよっ!」
律「私の方が先に行くって決めてたんだからなっ!」
春原「いいや、僕だっ!」
律「私だっ!」
春原「………」
律「………」
律「………」
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:56:41.75:1qYNd8dxO
だっ、と店まで駆けていくふたり。
朋也(そういう速さを競うのかよ…)
俺もその後を追う。
―――――――――――――――――――――
紬「いらっしゃいませ~…」
紬「あら…」
春原「いやぁ、いらしゃっちゃった」
律「割り込みすんなっ、アホっ」
春原「僕のが早かったってのっ!」
紬「あのぉ…」
春原「すみませんね、このデコがうるさくて」
律「なんだと、こらっ」
春原「あ、注文いいですか」
紬「はい。どうぞ」
春原「じゃあ…君の体を一晩…なんてね」
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:57:02.46:cUBlBpOS0
紬「ご注文は、廃棄ピクルスが一点、以上でよろしいですか?」
春原「死ねってことっすかっ!?」
律「ぶっ、うくくく…」
―――――――――――――――――――――
注文と会計を終え、テーブルにつく。
春原「ったく、なんでおまえが一緒に座ってんだよ」
律「しょうがねぇじゃん、他に席が空いてないんだからさ」
春原「他人の席に勝手に相席してウザがられてくればいいじゃん」
律「そんなの私のキャラじゃないしぃ」
律「おまえのが似合ってるぞ、普段からウザがられてるしな」
春原「あんだと?」
律「事実だろぉ?」
紬「お待たせしましたぁ」
琴吹が大きめの盆に注文の品を載せ、運んできてくれる。
またレジと代わってもらったんだろう。
またレジと代わってもらったんだろう。
春原「お、ムギちゃん直々に持ってきてくれるんだね」
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:58:24.65:1qYNd8dxO
律「センキュー、ムギ」
紬「これがお仕事だからねぇ。はい、どうぞ」
言って、テーブルに盆を置いた。
紬「今日は、三人で遊んでるの?」
律「違うよ、たまたま会っただけだって」
春原「そうそう。僕がわざわざこいつと遊ぶなんて、ありえないよ」
律「そりゃ、こっちのセリフだってのっ」
紬「まぁまぁ、ふたりとも。仲良くしなきゃ」
律「無・理」
紬「りっちゃん…もう、これからは部室でお菓子出せなくなるかも…」
律「え、なんでさ!? そんなことしたら軽音部じゃなくなるじゃん!」
それもどうかと思うが。
紬「だって…ふたりが喧嘩してるところをみるなんて、私、悲しくて…」
紬「そのショックで自我が保てなくなりそうなんだもの…」
律「んな、オーバーな…」
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 22:58:54.87:cUBlBpOS0
紬「だから、仲良くして?」
律「…わかったよ。でも、ちょっとだけだぞ」
紬「春原くんも、ね?」
春原「まぁ、ムギちゃんがそう言うなら、僕も少しぐらいは…」
紬「よかったぁ。それじゃ、握手しましょ」
春原と部長の手を取って、握らせる。
春原「………」
律「………」
律「………」
紬「わぁ、ぱちぱちぱち~」
ひとりで拍手を送っていた。
紬「じゃあ、岡崎くん、このふたりをよろしくね」
朋也「ん、ああ…」
紬「では、ごゆっくり~」
最後は店員の職務に戻り、恭しく下がっていった。
朋也(よろしくったってなぁ…)
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:01:05.71:1qYNd8dxO
春原「……こっのっ…」
律「…くのっ…くのっ…」
握手から指相撲に移行していた。
朋也(どうしようもねぇだろ…)
―――――――――――――――――――――
春原「ムギちゃんが言うから、仕方なくちょっとだけ遊んでやるんだからな」
律「まんま私の事情だからな、それ」
差し当たって俺はこのふたりにゲーセンで遊ぶよう提案していた。
すると、どちらもゲーセン自体は好きだったようで、了承を得ることができていた。
すると、どちらもゲーセン自体は好きだったようで、了承を得ることができていた。
春原「はっ、言ってろよ。でもな、馴れ合うつもりはないからな」
春原「男らしく、対戦できるゲームで勝負しろっ」
律「私は女だっつーのっ!」
最初からこんなんで、大丈夫だろうか…。
―――――――――――――――――――――
春原「うりゃりゃりゃっ!!」
律「ヴォルカニックヴァイパァーっ!!」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:02:13.27:cUBlBpOS0
最初に選んだのは、オーソドックスに格闘ゲームだった。
画面の中で激しくコンボが交錯する。
俺はその様子を春原側の筐体から見ていた。
画面の中で激しくコンボが交錯する。
俺はその様子を春原側の筐体から見ていた。
朋也(しっかし…)
同キャラ対戦だからなのかもしれないが、立ち回り方も大体似ているというか…
こいつら、やっぱり、ほんとは気が合うんじゃないだろうか。
こいつら、やっぱり、ほんとは気が合うんじゃないだろうか。
春原「だぁ、くっそ…」
KOの文字がでかでかと表示されていた。
春原が負けたようだ。
春原が負けたようだ。
春原「あっ、あの野郎…」
死体となった春原のキャラに、超必殺技が繰り出されていた。
春原「てめぇ、悪質だろっ!」
立ち上がり、向かい側にいる部長に噛み付く。
律「はーっはっは! 勝利者の特権だっ。悔しかったら勝つことだなっ」
向こうも筐体の上から顔を覗かせて、言い返してくる。
春原「ちきしょー、連コインだっ!」
律「オウ、きなさい、ボクチン」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:03:21.66:1qYNd8dxO
結局、4連戦し、2勝2敗で引き分けていた。
―――――――――――――――――――――
春原「次はレースで勝負だっ」
律「のぞむところだっ!」
春原「岡崎、おまえも混じれよ」
朋也「ああ、いいけど」
―――――――――――――――――――――
運転席を模した筐体の中に乗り込み、硬貨を入れる。
コースと使用する車種を選ぶと、レースが始まった。
コースと使用する車種を選ぶと、レースが始まった。
春原「うらぁああっ!」
律「あ、なぁにすんだよ!」
春原の車が一直線に部長車めがけて突っ込んでいった。
摩擦で煙を立てながら壁に押し付けられている。
摩擦で煙を立てながら壁に押し付けられている。
律「くっそぉぉっ!」
アクセルを全開にして窮地を脱する部長の車。
今度は部長が春原のケツにつき、追突していた。
今度は部長が春原のケツにつき、追突していた。
春原「てめぇっ!」
93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:03:44.90:cUBlBpOS0
律「おりゃりゃっ!」
格闘ゲームのノリを引きずったまま、激突しあう。
俺が安全運転で一周してきても、まだ同じ場所で争っていた。
ふたりをその場に残し、周回を重ねるべく過ぎ去っていく俺。
俺が安全運転で一周してきても、まだ同じ場所で争っていた。
ふたりをその場に残し、周回を重ねるべく過ぎ去っていく俺。
春原「うわぁっ」
律「ひゃあっ」
朋也(なんだ?)
俺の画面に煙のグラフィックが立ち込めていた。
見れば、春原の車と部長の車が爆発して炎上していた。
見れば、春原の車と部長の車が爆発して炎上していた。
朋也(なにやってんだよ…)
律「あーも、おまえがいっぱいぶつかるからぁ」
春原「おまえの車がもろいのが悪いんだよっ」
律「なにぃ?」
ゲーム内どころか、プレイヤー同士でも争いが起き始めていた。
その間もレースは進んでいく。
そして、常に安全運転を心がけていた俺が順当に1位を取っていた。
その間もレースは進んでいく。
そして、常に安全運転を心がけていた俺が順当に1位を取っていた。
春原「あ、てめぇ、岡崎、ずりぃぞっ」
律「漁夫の利か、この野郎っ!」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:04:52.13:cUBlBpOS0
言いがかりをつけ始められていた。
こんな時だけは結託する奴らだった。
こんな時だけは結託する奴らだった。
―――――――――――――――――――――
朋也「なぁ、発想を変えて、協力プレイができるやつにしたらどうだ」
朋也「仲良くするっていうのが、一応の建前だろ」
春原「まぁ、そうだけどさ…」
律「協力かぁ…」
顔を見合わせる。
春原「はぁ…」
律「はぁ…」
律「はぁ…」
同時にため息を吐いていた。
朋也「シューティングゲームでもやってみろよ」
朋也「ほら、あのテロリストを鎮圧する奴とかさ」
春原「…まぁいいけど」
―――――――――――――――――――――
春原「おまえ、けっこうやるじゃん」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:06:08.55:1qYNd8dxO
律「へへっ、おまえもな」
やはり相性がいいのか、序盤は上手く連携し、なんなく突破していた。
このまま何事もなくいってくれればいいのだが…
このまま何事もなくいってくれればいいのだが…
春原「うわっ、なにすんだよっ」
律「あ、わり」
部長の放ったロケットランチャーの爆風に春原が巻き込まれていた。
春原「ちっ、今後は気ぃつけろよ」
律「感じ悪ぃなぁ…あんたが変な位置に居るのも悪いんだろ…」
フレンドリーファイアで少し空気が悪くなっていた。
お互い、単独プレイも目立ちだす。
お互い、単独プレイも目立ちだす。
律「あ、今のアイテム私が狙ってたのにぃ」
春原「早いもん勝ちだろ」
律「むむ……」
徐々に亀裂が大きくなっていく。
そんな時、事件は起きた。
そんな時、事件は起きた。
律「あーっ、おまえ、私撃ったなっ!」
春原「わり、ミスった」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:06:45.38:cUBlBpOS0
律「嘘つけ、アイテム欲しさに消そうとしたんだろっ」
律「殺られるまえに殺ってやるっ」
春原に向けてマシンガンを放つ部長。
画面が血で染まっていく。
画面が血で染まっていく。
春原「てめぇ、やりやがったなっ!」
春原も火炎放射やロケットランチャーで応戦していた。
ふたりとも、ボス戦に備えて温存しておいたであろう武器を躊躇なく使っていく。
ステージも破壊しつくされ、ボロボロになっている。
敵テロリストも真っ青の破壊活動だった。
ふたりとも、ボス戦に備えて温存しておいたであろう武器を躊躇なく使っていく。
ステージも破壊しつくされ、ボロボロになっている。
敵テロリストも真っ青の破壊活動だった。
―――――――――――――――――――――
律「やっぱ、協力はダメだな。勝負しなきゃ」
律「音ゲーで決着つけようぜ」
春原「ふん、のぞむところだ」
朋也「おまえに不利なんじゃないのか。相手は軽音部部長だぞ」
春原「関係ないね。僕の天性のセンスさえあれば」
朋也「あ、そ」
―――――――――――――――――――――
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:07:56.16:1qYNd8dxO
律「…ふぅ」
最後に一発、たんっ、と叩き終える。
部長が選んだのは、ドラム型の筐体だった。
その実力は、思わずプレイに見入ってしまう程のものだった。
この類のゲームをやったことのない素人の俺でも、だ。
恐ろしいスピードで迫ってくるシンボルをほぼ逃すことなく叩いていた。
あんなのに反応できるなんて、正直考えられない。
部長が選んだのは、ドラム型の筐体だった。
その実力は、思わずプレイに見入ってしまう程のものだった。
この類のゲームをやったことのない素人の俺でも、だ。
恐ろしいスピードで迫ってくるシンボルをほぼ逃すことなく叩いていた。
あんなのに反応できるなんて、正直考えられない。
春原「…な、なかなかやるじゃん」
動揺を隠せていなかった。
GREAT!と表示された画面を見て固まっている。
GREAT!と表示された画面を見て固まっている。
律「次はあんたな。あたしより高得点出してみなよ」
春原「ふん、やってやるさ…」
硬貨を投入する。
そして、曲の選択が始まった。
どんどん下にスクロールしていく。
そして、曲の選択が始まった。
どんどん下にスクロールしていく。
春原「ボンバヘッ入ってないとか、イカれてんな、これ…」
そんなのが入っているほうがおかしい。バグの領域だ。
春原「ま、いいや、これで」
選曲が終わり、ゲームが開始される。
ノリのいいヒップホップのリズムが流れてきた。
ノリのいいヒップホップのリズムが流れてきた。
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:08:22.12:cUBlBpOS0
春原「YO! YO!」
MISS! MISS! MISS!
ガシャーンッ!
春原「…あ」
金網の閉じられるような音と共に、画面にはゲームオーバーの文字が躍る。
つでにブーイングも聞えてきた。
つでにブーイングも聞えてきた。
朋也(だせぇ…)
春原「なんだよこの機械っ! 僕のビートがわからないのかよっ!」
律「はっは、画面に八つ当たりするなよな」
春原「こんなポンコツで勝負しても意味ねぇってのっ」
春原「ボンバヘッも入ってないしよ…無効試合だっ!」
律「んとに、ガキだなぁ、おまえは…」
―――――――――――――――――――――
春原「だぁ、なにやってんだよ、ゼスホウカイっ!」
春原「おまえの単勝1点買いだったんだぞっ」
律「はは、馬鹿め、オッズに目が眩んだようだな」
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:09:33.64:1qYNd8dxO
律「3番人気なんて選ぶからそういうことになるんだよ」
次の勝負の場は、メダルを使った競馬ゲームだった。
律「複勝と合わせて多点買いしとけよなぁ」
春原「んなミミッチィことできるかよ。収支期待できねぇだろ」
律「マイナスよりマシじゃん」
春原「ふん、所詮、女にはわかんないか…」
春原「岡崎、おまえどうだった?」
朋也「キチクオウ→センゴクランスの馬単が的中だ」
春原「マジかよ!?」
律「ほぉ…」
春原「ちょっとめぐんでくんない?」
朋也「ああ? しょうがねぇな…」
―――――――――――――――――――――
ひとしきり遊んだ後、昼飯を食べに出た。
近場のファミレスに入り、腹を満たす。
近場のファミレスに入り、腹を満たす。
春原「部長、おまえも女なら、もっとらしいもん頼めよな」
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:09:54.65:cUBlBpOS0
律「私ほどの美少女なら、なに食べてても絵になるのよ、おほほ」
部長が頼んだのは、分厚い肉料理だった。
そのうえに、ガーリックソースなんてゴツイものもかけていた。
そのうえに、ガーリックソースなんてゴツイものもかけていた。
春原「おい、岡崎、聞いたかよ」
春原「こいつ、すげぇナルシスト女だぜ」
律「おまえだって、メニュー言う時かっこつけてただろぉ」
律「通ぶって略しちゃってさ、まったく店員さんに通じてなかったじゃん」
律「どこのローカル呼称だよ、って顔してたぞ」
春原「発音がよすぎて、ネイティブにしか伝わんないだけだよっ」
律「焼き魚&キノコ雑炊なんて日本語しかねぇじゃん」
春原「&があるだろうがっ」
律「そこは略してただろうがっ」
朋也(うるせぇ…)
―――――――――――――――――――――
再びゲーセンに戻ってくる。
春原「おし、結構金も使っちゃったからな…次で決めるぞ」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:11:09.21:1qYNd8dxO
律「ああ、いいぜ、雌雄を決してやるよ」
春原「最後だからな、おまえにジャンルを選ばせてやるよ」
春原「レディーファックユーってやつだ」
律「レディーファーストだろ…そのボケはちょっと無理があるぞ」
春原「いいから、選べよ」
律「そうだな…う~ん」
店内を見回す。
律「あ、あれは…」
振っていた顔を止め、ある一点を見つめる。
律「あれにしようか」
指さす先には、UFOキャッチャー。
律「たくさん景品取った方が勝ちな」
春原「なるほどね、いいよ」
春原は、不敵な顔でにやついていた。
得意なんだろうか、こいつは。
得意なんだろうか、こいつは。
―――――――――――――――――――――
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:11:29.47:cUBlBpOS0
律「あのカチューシャ犬は特別、得点がでかいことにするぞ」
ケース内には、カチューシャをかけた犬のぬいぐるみがふてぶてしく鎮座していた。
小型、中型、大型とあるが、部長が指定したのは大型タイプだ。
小型、中型、大型とあるが、部長が指定したのは大型タイプだ。
律「あれが3点で、他のが1点な」
春原「いいけど…ブサイぬいぐるみだな」
律「かわいいだろがっ、特にチャームポイントのカチューシャが」
春原「そこが、僕の知ってる動物の同類にみえて、なんか馴染めないんだよね」
律「…それは、誰を指してるのかなぁ?」
春原「さぁね」
律「…ぜってぇ勝つ。私が勝ったら土下座して詫び入れろよな」
言いながら、財布から硬貨を取り出し、投入する。
デラデラと機械音が鳴り出し、アームがプレイヤーの制御下に置かれる。
チャンスは3回のようだった。
デラデラと機械音が鳴り出し、アームがプレイヤーの制御下に置かれる。
チャンスは3回のようだった。
律「よし…」
まず一回目。
アームを一度横に動かしてx軸を合わせ、そのまま縦に移動させる。
狙いは大型カチューシャ犬のようだった。
アームを一度横に動かしてx軸を合わせ、そのまま縦に移動させる。
狙いは大型カチューシャ犬のようだった。
律「今だっ」
105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:12:42.85:1qYNd8dxO
ぬいぐるみに向かってアームが下りていく。
が、少し距離が足りず、手前で空を切っていた。
が、少し距離が足りず、手前で空を切っていた。
律「くそぉ…」
アームが初期位置に戻ってくる。
2回目。
さっきと同じように、ぬいぐるみの上まで持っていく。
今度は頭上に下りていった。
が、カチューシャ部分を掴んでしまい、するりと抜けていった。
2回目。
さっきと同じように、ぬいぐるみの上まで持っていく。
今度は頭上に下りていった。
が、カチューシャ部分を掴んでしまい、するりと抜けていった。
春原「ははっ、そんにカチューシャ欲しいのかよ」
春原「もう自分のしてるくせに、他人から奪おうとするなよ」
律「うっさい、あんたは黙っとけ」
律「ちくしょお…」
3回目。大型は諦めて、小型狙いにしていたが、これも失敗していた。
結果、部長は0点。
春原が一つでも取れば、勝ちが確定する状況になった。
結果、部長は0点。
春原が一つでも取れば、勝ちが確定する状況になった。
律「うぐぐ…」
春原「はは、ほら、どけよ。次は僕だ」
入れ替わり、春原がプレイする。
慣れた手つきで、アームを移動させていく。
小型カチューシャ犬に向けて、迷いなく進んでいく。
慣れた手つきで、アームを移動させていく。
小型カチューシャ犬に向けて、迷いなく進んでいく。
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:13:05.36:cUBlBpOS0
止める位置もばっちりに見えた。
アームが下りていく。
そして、見事掴んだまま持ち帰っていた。
アームが下りていく。
そして、見事掴んだまま持ち帰っていた。
春原「おらよ、これで、もう僕の勝ちだね」
取り出し口からぬいぐるみを出し、一度空中に放ってキャッチしてみせた。
律「うぅ…くっそ…」
春原「欲張ってあんなデカいの取ろうとするからだっての」
春原「あれはおまえの器以上の業物なんだよ」
律「だって…欲しかったし…」
しゅん、としおれてしまう。
それは負けたからなのか、目当てのものが取れなかったからなのかはわからない。
ただ、本当に欲しかったのだろうということだけはその様子から伝わってきた。
それは負けたからなのか、目当てのものが取れなかったからなのかはわからない。
ただ、本当に欲しかったのだろうということだけはその様子から伝わってきた。
春原「…はぁーあ、普段はこんなことしねぇからな」
言って、UFOキャッチャーと向き合った。
春原の目線、狙う先は、大型カチューシャ犬に向けられていた。
春原の目線、狙う先は、大型カチューシャ犬に向けられていた。
朋也(こいつ、もしかして…)
アームが移動する。
止まったのはやはり、大型カチューシャ犬の頭上。
まっすぐにターゲットめがけて下りていくアーム。
止まったのはやはり、大型カチューシャ犬の頭上。
まっすぐにターゲットめがけて下りていくアーム。
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:14:15.64:1qYNd8dxO
そして、少し細くなっている首周りを掴んだ。
しっかりと固定される。
そのまま、こちらに持ってきて…
すとん、と落ちていた。
それを気だるげに取り出す春原。
しっかりと固定される。
そのまま、こちらに持ってきて…
すとん、と落ちていた。
それを気だるげに取り出す春原。
春原「おらよ、やる」
律「え? いいのか?」
春原「ああ。僕は、こんなのいらないしね」
律「あ、ありがとう…」
受け取る。
大事そうに、ぎゅっと抱きしめた。
大事そうに、ぎゅっと抱きしめた。
春原「ふん…」
照れ隠しなのか、わざとしらけた態度を装っているようにみえた。
春原「じゃあ、もういいか」
アームを二度小さく動かし、1ゲームを自分の意思で降りていた。
春原「ああ、そうだ、この小せぇのも、やるよ」
律「うん…ありがとう」
受け取って、大きい方と一緒に抱える。
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:14:39.56:cUBlBpOS0
律「あんた、上手いな、UFOキャッチャー」
春原「まぁね。この界隈じゃ、ゲーセン荒らしって呼ばれてるくらいだからね」
朋也「そうだな…」
朋也「おまえ、よく機械に体当たりして、振動を与えることで景品落としてるもんな」
春原「そういうブラックリストに載るような意味じゃねぇよっ!」
律「わははは!」
春原「ったく…」
いろいろあったが、部長も春原も、今は笑顔を浮かべていた。
これを機に、こいつらの仲が改善されていけばいいのだが…。
これを機に、こいつらの仲が改善されていけばいいのだが…。
朋也(ダメ押ししとくか…)
朋也「おまえらさ、プリクラでも撮ってこいよ。俺がおごってやるから」
春原「なんで僕らが…」
律「そ、そうだよ、意味がわからん…」
朋也「そのプリクラ、明日琴吹に見せてやれよ」
朋也「それで、一日仲良く過ごしたって言えばいいじゃん」
朋也「口だけじゃ、信用されないかもしれないしさ。いつものおまえら見てるわけだし」
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:15:46.20:1qYNd8dxO
春原「………」
律「………」
ふたりともだんまりを決め込んでいる。
春原「…ま、僕はいいけど。ムギちゃんのためにね」
春原が先に口を開く。
律「…私も。おやつのために、しょうがなくだけど」
部長もそれに続く形で了承する。
朋也「そっか。じゃ、行ってこい」
春原に100円硬貨を4枚渡す。部長からはぬいぐるみを預かった。
シートをくぐり、筐体の内側に入っていくふたり。
しばらく静かだったと思うと…
シートをくぐり、筐体の内側に入っていくふたり。
しばらく静かだったと思うと…
律「おまえ、なんでこれ選ぶんだよっ」
春原「これが一番僕の写りがいいからね」
律「ざっけんなっ」
なにごとかわめき出していた。
そして、勢いよく出てきたと思うと、すぐに隣の落書きスペースに移動した。
そこでもシートが揺れるほど騒いでいる。
その騒音が収まったと同時、ふたりとも外に出てきた。
そして、勢いよく出てきたと思うと、すぐに隣の落書きスペースに移動した。
そこでもシートが揺れるほど騒いでいる。
その騒音が収まったと同時、ふたりとも外に出てきた。
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 23:16:07.64:cUBlBpOS0
春原「ちくしょー、僕に変な文字上書きしやがって…」
律「私なんか目が半開きになってるやつだし…待ってって言ったのに…」
出力されたシールを手に苦い顔をしている。
朋也「なんだよ、さっきまでいい感じだったのに…」
春原「岡崎、見てくれよ、これ」
朋也「あん?」
プリントシールを受け取る。
二つに区切られた枠の片方に写っている春原には、上から罵詈雑言が書きこまれていた。
もう、悪口なのか春原なのかわからないほどに。こっちは部長が編集したのだろう。
もう片方は、春原の周りにオーラのようなものが描かれていた。
まるで、なにかの能力者のようにだ。どっちがどっちを編集したか一目でわかる出来だった。
一方、部長の方だが、キメポーズの途中だったのか、残像が写っていた。
その顔も、引力に引きずられているような感じになっている。
二つに区切られた枠の片方に写っている春原には、上から罵詈雑言が書きこまれていた。
もう、悪口なのか春原なのかわからないほどに。こっちは部長が編集したのだろう。
もう片方は、春原の周りにオーラのようなものが描かれていた。
まるで、なにかの能力者のようにだ。どっちがどっちを編集したか一目でわかる出来だった。
一方、部長の方だが、キメポーズの途中だったのか、残像が写っていた。
その顔も、引力に引きずられているような感じになっている。
春原「ざけやがって、デコっ!」
律「死ね、ヘタレっ!」
ああ…結局最後はこうなってしまうのか…。
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