自分用SSまとめ
朋也「軽音部? うんたん?」 4/29 木 祝日
最終更新:
meteor089
-
view
朋也「軽音部? うんたん?」
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:52:28.18:jpDSDOMkO
4/29 木 祝日
4月の祝日。
週末からはゴールデンウィークに突入するので、今日はその前座といった感じだ。
俺のような、何も予定がない暇人は、ただ怠惰に過ごして終わるだけなのだが。
今だって、町の中を意味もなくぶらついたりなんかしているわけで…
強いて言うなら、朝食の後の散歩といったところだ。
気が済めば、いつものように春原の部屋に向かうつもりなのだが。
週末からはゴールデンウィークに突入するので、今日はその前座といった感じだ。
俺のような、何も予定がない暇人は、ただ怠惰に過ごして終わるだけなのだが。
今だって、町の中を意味もなくぶらついたりなんかしているわけで…
強いて言うなら、朝食の後の散歩といったところだ。
気が済めば、いつものように春原の部屋に向かうつもりなのだが。
朋也(ん…?)
歩いていると、ひとりの女の子を見つけた。
梓「………」
中野だった。
身をかがめ、停めてある車の下を覗き込んでいた。
その姿に、通行人がじろじろと目をくれていく。
それもそうだろう。スカートがはだけて少し下着が見えてしまっているんだから。
身をかがめ、停めてある車の下を覗き込んでいた。
その姿に、通行人がじろじろと目をくれていく。
それもそうだろう。スカートがはだけて少し下着が見えてしまっているんだから。
朋也(はぁ…ったく…)
顔を合わせる前に、無視して過ぎ去ろうと思ったのだが…
一応、忠告しておくことにした。
一応、忠告しておくことにした。
朋也「おい、中野」
声をかける。
梓「え…」
219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:52:52.52:+UZ/pLeq0
振り返る。
梓「ああ…」
なんだ、こいつか…とでも言いたげな顔。
梓「はぁ…」
大きくため息をつき、また頭を下げて、車の下を覗き込む。
…せめて、なにか言え。
…せめて、なにか言え。
朋也「おい、見えてるぞ…おまえのパンツ」
梓「っ!」
ばっと身を起こし、手でスカートを抑えながら俺に向き直る。
頬を赤く染め、目を潤ませていた。
頬を赤く染め、目を潤ませていた。
梓「へ、変態っ!」
朋也「いや、おまえ自ら見せてたんだろ。そんなに自信あったのか、下着に」
梓「ち、違いますよっ! 私はただ…」
車を見る。
朋也「車上荒らしか? やめとけよ、ここは人の目が多い」
梓「それも違いますっ!」
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:54:05.42:jpDSDOMkO
梓「この下に猫がいるから、危ないと思って、助けようとしてたんですっ!」
朋也「猫?」
俺もしゃがんで覗き込んでみる。
朋也(あ…ほんとだ)
身を丸め、じっとしたまま動かない猫が一匹いた。
朋也「あの猫、あそこからどかせればいいんだな?」
低姿勢のまま言う。
梓「え?」
朋也「ちょっと待っとけ」
俺は匍匐前進で車の下に入り込んでいった。
朋也(ん、動かないな、あいつ…)
近づけば逃げていくかと思ったのだが…
朋也(よ…)
ひょい、と掴めてしまった。
そのまま這い出る。
そのまま這い出る。
朋也「ほら、いけ」
221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:54:32.46:+UZ/pLeq0
そっと手を離す。
だが、それでも動かない。
座り込んで、前足を舐めていた。
だが、それでも動かない。
座り込んで、前足を舐めていた。
梓「あ…この子、怪我してる…」
見れば、舐めている箇所の毛が抜けていて、そこから血が滲みだしていた。
梓「ど…どうしよう…助けてあげなきゃ…」
おろおろと狼狽する中野。
朋也「動物病院、行ってみるか」
梓「あ…は、はいっ…」
朋也「よし」
中野の返事を聞き、俺は猫を抱えた。
そして気づく。病院の場所なんて、まったく心当たりがないことに。
そして気づく。病院の場所なんて、まったく心当たりがないことに。
朋也「あのさ…この辺って、動物病院、あったっけ」
梓「ちょっと待ってください…」
携帯を取り出し、なにか操作していた。
梓「あ、ありました。こっちですっ」
液晶画面を見ながら言う。
223:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:56:34.92:+UZ/pLeq0
そして、先導するように小走りで道を進んでいった。
俺もその後についていく。
俺もその後についていく。
―――――――――――――――――――――
行き着いた先には、こじんまりとした、寂れた建物があった。
看板には、しっかりと、動物病院と記されていたのだが…
ペンキが落ちたのか、文字がただれていて、ホラーチックだった。
ここで本当に大丈夫かと、内心、心配だったのだが、それも杞憂に終わった。
診察と治療は至極まともだったのだ。
担当の獣医は、好々爺然とした風貌で、事情を話すと、おもしろそうに笑っていた。
なにが気に入られたのか知らないが、診察代も、治療代も格安にしてくれていた。
看板には、しっかりと、動物病院と記されていたのだが…
ペンキが落ちたのか、文字がただれていて、ホラーチックだった。
ここで本当に大丈夫かと、内心、心配だったのだが、それも杞憂に終わった。
診察と治療は至極まともだったのだ。
担当の獣医は、好々爺然とした風貌で、事情を話すと、おもしろそうに笑っていた。
なにが気に入られたのか知らないが、診察代も、治療代も格安にしてくれていた。
―――――――――――――――――――――
梓「…かわいそうです」
今は中野が猫を抱いていた。
通りに据えられたベンチに腰掛け、膝の上でくつろぐその猫を撫でている。
通りに据えられたベンチに腰掛け、膝の上でくつろぐその猫を撫でている。
朋也「まぁ…野良だろうからな。首輪もしてないし」
獣医が言うには、どうも、傷は、人の手によってつけられた可能性が高いということだった。
梓「じゃあ…飼い猫だったら、こんな目に合わないって言うんですか」
朋也「まぁ、少なくとも、野良よりはマシなんじゃないのか」
朋也「そもそも、野良なんて、保健所に収容されれば、それだけでアウトだからな」
224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:57:56.20:jpDSDOMkO
朋也「それに、餌の確保ができなけりゃ、餓死するし…他にも、危険なんてたくさんある」
梓「…そう…ですよね、やっぱり」
梓「………」
しばらくの間視線を落として黙っていると、猫を抱きかかえ、無言で立ち上がった。
どこか思いつめたような顔をしている。
どこか思いつめたような顔をしている。
朋也「どうしたんだよ」
梓「私、この子を飼ってくれる人を探します」
朋也「どうやって」
梓「それは…道行く人に、声をかけて、とか…」
朋也「そら、大変だな」
梓「それでも、やるんですっ」
声を張って答えていた。
朋也(はぁ…俺、こういうのに弱いのかな…)
なぜか放っておけない。
朋也「俺も手伝うよ。おまえがよければだけど」
梓「ほんとですか? ちょっと、不本意ですけど…」
225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:58:30.40:+UZ/pLeq0
梓「この際、なんでもいいです。よろしくお願いしますっ」
朋也「ああ」
梓「それじゃ、人通りの多いところに…」
朋也「いや…そうだな、まず、軽音部の連中に当たってみろよ」
朋也「知り合いだから訊きやすいだろ? それに、もしOKならそこで終わりだ」
梓「あ、そうですね、すっかり忘れてました」
携帯を取り出す。
そして、猫の写真を撮ると、また画面と向き合っていた。
多分、今の画像を添えてメールでも送っているんだろう。
俺は黙って結果を待つことにする。
そして、猫の写真を撮ると、また画面と向き合っていた。
多分、今の画像を添えてメールでも送っているんだろう。
俺は黙って結果を待つことにする。
―――――――――――――――――――――
梓「あ、きた」
中野の携帯から着信音が鳴り響く。
慌てたように開いて、返信を確認する。
慌てたように開いて、返信を確認する。
梓「…ムギ先輩もダメでした」
朋也「そうか…」
他の部員からも、断りの返事が届いていた。
家庭の事情や、経済的負担などが理由だった。
家庭の事情や、経済的負担などが理由だった。
226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 00:59:56.28:jpDSDOMkO
琴吹なら、猫の一匹くらい、なんでもないだろうと期待していたのだが…
その想いも、打ち砕かれてしまった。
その想いも、打ち砕かれてしまった。
朋也「で、琴吹はなんだって?」
梓「なんか…ポチに捕食されるかもしれないから、責任が持てない…らしいです」
朋也「……捕食?」
梓「……はい」
朋也「………」
梓「………」
朋也「…なにを飼ってるんだろうな、琴吹は」
梓「…多分、知らないほうがいいです」
だろうな…。
―――――――――――――――――――――
朋也「あ、すいません、ちょっとい…」
朋也「あ…くそっ」
人の往来が激しい大通りで飼い主探しを始めたのだが…
何かのキャッチと思われているのか、見向きもされなかった。
何かのキャッチと思われているのか、見向きもされなかった。
227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:00:22.70:+UZ/pLeq0
朋也「俺じゃだめだ。次、おまえいってくれ」
梓「わかりました」
梓「…不甲斐ない人」
朋也「聞えたからな…」
―――――――――――――――――――――
朋也(あいつはなんか、上手くやりそうだよな…)
中野から預かった猫とじゃれあいながら、思う。
梓「あの、すみません」
男「ん?」
一発目から捕まえることに成功していた。
梓「えっと、私、今…」
男「3万…いや、君なら4万出すよ」
梓「へ? どういう…」
男「この近くに、いいとこあるからさ、今からいく?」
これは、まさか…
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:01:39.55:jpDSDOMkO
梓「え…いいとこ…ですか?」
朋也「おい、おっさん、なにやってんだよ」
猫を抱いたまま、睨みを利かせて近づいていく。
プリチーな生き物を伴って絡んでくる仏頂面の男…さぞ不気味なことだろう。
プリチーな生き物を伴って絡んでくる仏頂面の男…さぞ不気味なことだろう。
男「ひぃっ、い、いや、私はまだなにも…」
朋也「まだ?」
男「い、いや…はは、なんでも」
背を向けて、足早に去っていった。
梓「なんで邪魔するんですか!」
朋也「おまえ…わかんなかったのか、今の」
梓「岡崎先輩の行動の方がわかりませんよ!」
朋也「いや…だから…」
梓「足を引っ張るなら帰ってください!」
本当に、ただ俺が妨害しただけだと思っているようだ。
誤解を解いておいたほうが、今後の信頼関係のためにもいいんだろうが…
詳しく説明するのも、なんだか気が引けた。
誤解を解いておいたほうが、今後の信頼関係のためにもいいんだろうが…
詳しく説明するのも、なんだか気が引けた。
朋也「…ああ、悪かったよ。もう邪魔しない」
229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:02:05.24:+UZ/pLeq0
だから、俺に非があったと、黙って認めておくことにした。
梓「勘弁してくださいよ、ほんとにもう…」
朋也「でも、ああいうおっさんは避けろよ、一応」
梓「おっさん差別ですか? 最低ですね、自分の近い将来の姿なのに」
朋也「まだ遠いっての…」
今年で18だ、俺は。
―――――――――――――――――――――
梓「そうですか…話を聞いてくれて、ありがとうございました」
女性「いえ…」
朋也(だめだったか…)
今ので4人目だった。
梓「はぁ…」
中野も落胆を隠しきれないようだった。
男1「ねぇ、君さ、さっきから声かけてるよね」
男2「逆ナン?」
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:03:21.13:jpDSDOMkO
梓「え? いえ…違います…」
ちゃらちゃらとした男の二人組に絡まれていた。
男1「じゃ、俺らが君ナンパしていい?」
男2「かわいいよね、君。遊びいこうよ」
梓「あの…それは、ちょっと…」
男1「いいじゃん、いこうよ」
男2「そこのカフェでなんか食べようよ。おごりだよ?」
梓「う…あう…」
困惑した表情で、すがるように目を向けてくる。
SOS信号だろう。
SOS信号だろう。
朋也(いくか…)
立ち上がる。
朋也「こらぁ、なんだ、おまえらは」
男1「はぁ?」
男2「なにおまえ」
朋也「みりゃわかるだろうが。猫を持ったキレ気味な人だ」
232:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:04:01.40:+UZ/pLeq0
猫「にゃあ」
男1「意味が…」
男2「君、もういこうよ。変なの来たし」
中野の手を取ろうと、腕を伸ばす。
俺はその腕を掴んで止めていた。
俺はその腕を掴んで止めていた。
朋也「やめとけ。こいつは俺が先に目をつけてたんだよ」
少しキャラを作ってみた。設定は、鬼畜王だ。
朋也「失せろ、カスども」
猫「にゃあ」
男2「…っ離せよっ」
ばっと俺の手を振り払う。
そして、その瞬間から睨み合いが始まった。
そして、その瞬間から睨み合いが始まった。
朋也「………」
男1「………」
男2「………」
猫「にゃあ」
235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:05:25.70:jpDSDOMkO
男1「…ちっ」
男2「ばぁか」
間の抜けた猫の鳴き声を以って、ガンつけ勝負は終わった。
ふたりの男は捨て台詞を吐くと、雑踏の中へと消えていった。
ふたりの男は捨て台詞を吐くと、雑踏の中へと消えていった。
朋也(ふぅ…)
朋也「おい、中野…」
朋也「あん?」
振り返ると、俺から距離を取って身構えていた。
梓「…このけだもの。ずっと私を狙ってたんですねっ」
朋也「おまえが信じるなっ! ありゃ方便だっ」
梓「………」
疑惑に満ちた目を向けてくる。
朋也(どこまで信用ないんだ、俺は…)
もともとなかったところを、先の一件でさらに信用を失ってしまったのか…。
なら、捨て身でこちらから歩み寄っていくしかない。
まずは安心感を与えて、警戒を解かなくては…。
なら、捨て身でこちらから歩み寄っていくしかない。
まずは安心感を与えて、警戒を解かなくては…。
朋也(はぁ…ちくしょう)
236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:05:53.64:+UZ/pLeq0
朋也「こほん…あー…」
朋也「ほら、おいで梓ちゃん、怖くないよ~」
ぎこちない笑顔で、猫なで声を出す。
梓「…キモ」
…ものすごく冷めた顔で暴言を返されていた。
朋也(ま、そりゃそうか…)
わかってはいたが、実際言われると、ショックと恥ずかしさが同時に襲ってきた。
梓「冗談です。助けてくれて、ありがとうございました」
朋也「ああ、別に…」
恥をかく前に言って欲しかったが。
梓「キモかったのは本当ですけど」
朋也「あ、そ…」
徒労に終わった上に、追い討ちまでかけられていた。
朋也「まぁ、いいけど、何か対策考えないとな」
朋也「おまえ、見た目可愛いから、変な奴よってくるし」
237:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:07:02.35:jpDSDOMkO
梓「な、か、可愛いって…お、おだててどうするつもりですかっ!」
梓「気をよくしたところを、一気につけこんでくるつもりですかっ!」
梓「このけだものっ!」
朋也「想像が飛躍しすぎだ。思ったことを言ったまでだよ」
梓「な、なな…わ、私は騙されませんからっ」
朋也「だから、そんな気はないっての」
朋也「それよか、もう昼だし、飯にしようぜ」
梓「う、うう…」
朋也「ほら、いくぞ」
俺が歩き出すと、後ろからうーうー言いながらもついてきた。
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:07:22.42:+UZ/pLeq0
―――――――――――――――――――――
朋也「ほらよ」
コンビニで買ってきたパンとジュースを差し出す。
梓「ありがとうございます」
受け渡すと、俺も中野が座っているベンチに腰掛けた。
梓「よかったんですか? おごってもらっちゃって」
朋也「いいよ。いつか、おまえにおごってもらった事あっただろ」
朋也「これであいこだ」
梓「でも、あれはお詫びのつもりだったから…」
朋也「まぁ、細かいことは気にするなよ」
梓「はぁ…」
朋也「よし、おまえにもやろう」
俺は自分のパンをちぎって猫に与えた。
くんくんと匂った後、ぺろりと口にしていた。
その姿を見て思う。
くんくんと匂った後、ぺろりと口にしていた。
その姿を見て思う。
朋也「こいつって、あの時おまえがねこじゃらしで遊んでた奴か?」
239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:08:37.33:jpDSDOMkO
梓「そうですよ。気づかなかったんですか?」
朋也「ああ、まぁな。今ようやく思い出したよ」
梓「こんな可愛い子、普通は一度みたら忘れないのに」
言って、中野も自分のパンをちぎって猫の前にそっと据えた。
すると、それも遠慮なく食べ始めていた。
すると、それも遠慮なく食べ始めていた。
梓「かわいいなぁ…」
その様子を温かい目で見守る中野。
朋也「おまえ、猫好きなのか」
梓「はい、大好きですっ!」
朋也「そっか。なんか、らしいよな。おまえ、猫っぽいし」
梓「あ、ありがとうございます…」
こいつにとっては称賛と同義だったようだ。
素直に礼なんか返してきた。
素直に礼なんか返してきた。
朋也「でもさ、それなら、おまえの家で飼ってやれないのか」
梓「それができたら、最初から飼い主探しなんてしてませんよ」
朋也「それもそうだな」
240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:09:01.54:+UZ/pLeq0
梓「岡崎先輩こそ…いや、いいです、やっぱり」
俺に飼えるかどうか打診するつもりだったんだろう。
だが、回答はどうあれ、俺に飼われるのは嫌だったようだ。
だから、途中で切ったんだろう。
まぁ、うちで飼えるわけじゃないので、別によかったが。
だが、回答はどうあれ、俺に飼われるのは嫌だったようだ。
だから、途中で切ったんだろう。
まぁ、うちで飼えるわけじゃないので、別によかったが。
朋也「飯、食い終わったら、また頑張って探さなきゃな」
梓「そうですね。頑張りましょうっ」
―――――――――――――――――――――
梓「あの…ほんとにこれ、効果あるんでしょうか」
朋也「ああ、ばっちりだ」
中野が手に持つのは、可愛らしく装飾されたプラカード。
頭には、ネコミミカチューシャをつけていた。
その2つのアイテムは、憂ちゃんと行った、あのファンシーショップで調達してきていた。
頭には、ネコミミカチューシャをつけていた。
その2つのアイテムは、憂ちゃんと行った、あのファンシーショップで調達してきていた。
朋也「今までは、こっちから攻めていってたけど、それは間違いだった」
朋也「興味のない人にまで当たっちまうから、効率が悪かったんだ」
朋也「だから、今度は待ちに入るんだ」
梓「いえ…そうじゃなくて、なんでネコミミなんですか…」
梓「このプラカードは、わかりますけど…」
241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:10:19.94:jpDSDOMkO
そのプラカードには『この猫、飼ってください!』と書いてある。
宣伝のつもりだった。
宣伝のつもりだった。
朋也「そっちの方がわかりやすいじゃん」
梓「いえ、これつけなくても、プラカードだけで事足りると思いますけど…」
朋也「より目立ったほうが、目を引きやすいだろ」
朋也「おまえ、似合ってるしさ、大抵の男は振り向くと思うぞ」
梓「そ、そんな…」
朋也「こいつのためだ。頑張れよ」
ダンボールを抱えてみせる。
その中には、猫が入っていた。
やはり、拾ってください、なんて言うなら、このスタイルしかないだろう。
その中には、猫が入っていた。
やはり、拾ってください、なんて言うなら、このスタイルしかないだろう。
梓「うう…わかりました」
ダンボールを手に持ち、街頭に立つ。
そして、足元に置くと、プラカードを掲げた。
やはり、道行く人は皆一瞥をくれていく。
こっちをみて、ひそひそと話しこんでいる者たちも見受けられた。
ナンパの算段でも立てているんだろうか。
それでも、隣に俺も立っているから、簡単には近づいてこないだろう。
これが、俺の考えた対策だった。抑止力というやつだ。
単純なことだが、効果は高いと思う。
今も、中野を遠巻きに眺めていた男たちが、諦めたように散会していくのが見えた。
そして、足元に置くと、プラカードを掲げた。
やはり、道行く人は皆一瞥をくれていく。
こっちをみて、ひそひそと話しこんでいる者たちも見受けられた。
ナンパの算段でも立てているんだろうか。
それでも、隣に俺も立っているから、簡単には近づいてこないだろう。
これが、俺の考えた対策だった。抑止力というやつだ。
単純なことだが、効果は高いと思う。
今も、中野を遠巻きに眺めていた男たちが、諦めたように散会していくのが見えた。
243:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:10:47.22:+UZ/pLeq0
やはり、これで合っていたようだ。
―――――――――――――――――――――
5分くらい経った頃だろうか。
一人の男がこちらに近寄ってきていた。
一人の男がこちらに近寄ってきていた。
男「あの…ふぅ、ふぅ…」
興奮しているのか知らないが、息が荒い。
男「か、飼うって、い、いいの…?」
梓「え…はいっ、もちろんですっ!」
男「はぁ…はぁ…き、君、家出少女なんだ…?」
梓「え、あ…はい?」
男「ふっひ…う、うちのアパート…いこう…」
男「君みたいな可愛い子なら…悦んで飼ってあげるよ…」
梓「い、いえ、私じゃなくてっ! この子ですっ」
ダンボールから猫を抱き起こした。
猫「にゃあ」
男「え…なんだ…でも、君も猫だし…」
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:12:20.43:jpDSDOMkO
言って、ネコミミに目をやる。
男「君もついてくるなら、一緒に飼ってあげるよ…ふっひ…」
梓「ひぃっ…え、遠慮しておきます…」
男「はぁ、はぁ…じゃあ、いいや…」
のそのそと立ち去っていった。
梓「…岡崎先輩のせいですよ」
朋也「いや、でも、世間にはああいう奴もいるってわかってよかったじゃん」
梓「上から目線で言わないでくださいっ!」
梓「次は岡崎先輩がやってくださいよっ!」
俺にプラカードを押し付けてくる。
朋也「ああ、いいけど」
受け取る。
梓「ちゃんとこのネコミミもつけてくださいよ」
朋也「やだよ、なんで俺が」
梓「私にはつけさせたじゃないですかっ!」
245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:12:47.46:+UZ/pLeq0
朋也「だからってなぁ、俺だぞ?」
梓「いいから、つべこべいわずにつけてくださいっ!」
朋也「わかったよ…」
仕方なく、装備した。
…周囲の視線が痛い。
…周囲の視線が痛い。
梓「…ぷっ」
朋也「せめておまえだけは笑わんでくれ…」
―――――――――――――――――――――
朋也(お…)
一人の女性がこちらに近づいてくる。
男の情欲を煽るような服を綺麗に着こなして、妖艶な雰囲気を纏っていた。
年の頃は、二十代後半といったところか。
男の情欲を煽るような服を綺麗に着こなして、妖艶な雰囲気を纏っていた。
年の頃は、二十代後半といったところか。
朋也(って、なに分析してんだ、俺は…)
女性「ボウヤ…飼って欲しいの?」
朋也「あ、いえ…俺じゃなくて、こっちの猫っす」
ダンボールを指さす。
女性「そうなの?」
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:13:05.77:PRCvP3Z4O
おまえらキタwwwwwww
247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:14:02.70:jpDSDOMkO
朋也「はい。だめっすか」
女性「私、動物嫌いなの」
女性「でも…」
俺の頬に手を添えた。
どきっとする。
どきっとする。
女性「あなたみたいな動物なら、死ぬほど可愛がってあげるわ」
朋也「はは…」
なんと答えていいのやら…。
女性「これ、名刺。渡しとくわ」
手を取られ、少し強引に握らされた。
そこには、夜の店の名前と、この人の源氏名らしきものが書かれていた。
裏も見てみる。電話番号が手書きされていた。
そこには、夜の店の名前と、この人の源氏名らしきものが書かれていた。
裏も見てみる。電話番号が手書きされていた。
朋也「俺、未成年なんですけど…」
女性「見ればわかるわよ」
朋也「そっすか…」
女性「お店に来いって言ってるんじゃないわ」
女性「私にいつでも連絡入れなさいって言ってるの」
248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:14:23.10:+UZ/pLeq0
朋也「はぁ…」
女性「それじゃね」
色気を漂わせながら去っていく。
梓「…ヒモ野郎。最低です。死ね死ね」
朋也「悪口のタガが外れてるからな、おまえ…」
梓「こんな時まで女をたぶらかすなんて、信じられないです」
朋也「俺は何もしてないだろ…」
朋也「…あぁ、とにかく、もうネコミミはやめだ。これは危険すぎる」
梓「最初からいらないって言ってたのに…このヒモ男は…」
ぶつぶつと小言をぶつけられていた。
止む気配はない。
しばらくはこの状態が続きそうだった。
止む気配はない。
しばらくはこの状態が続きそうだった。
朋也(はぁ…)
―――――――――――――――――――――
一度休憩を取るため、適当な石段に腰掛けた。
朋也「なかなか見つからねぇな」
252:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:19:13.14:jpDSDOMkO
梓「そうですね…」
梓「やっぱり、岡崎先輩が女たらしのクセに唯先輩に手を出すから、皆怒ってるんですよ」
朋也「それはおまえの心の内だ」
朋也「つーか、俺はあいつに手なんか出してないからな」
梓「嘘つき。いつもベタベタしてくるせに」
朋也「どこがだよ。普通の距離感だろ」
梓「朝だって一緒に登校してるじゃないですか」
梓「それに、唯先輩、部室でも岡崎先輩の隣に座りたがるし…」
朋也「それは俺からじゃなくて、あいつの方からきてないか」
梓「あーっ! 今、自分がモテ男だってさりげなく言いましたね!?」
梓「やらしいですっ! すべてにおいてあらゆる意味でやらしいですっ!」
梓「やらしいですっ! やらしいですっ!」
朋也「悔しいですみたく言うな」
朋也「前に言ってたけど、あいつは俺のことなんとも思ってないらしいぞ」
梓「ほんとですか? でも、どういう会話の流れでその発言が出たんですか?」
253:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:19:56.02:+UZ/pLeq0
朋也「いや、冗談のつもりで、俺に気があるのかって訊いてみたんだよ」
朋也「そしたら、そんなんじゃないってさ」
梓「…なるほど」
梓「まぁ、唯先輩は、わりとすぐ人と仲良くなりますからね…」
梓「ってことは、岡崎先輩にじゃれついてるのは、遊びだったってことですね」
梓「あはは、唯先輩にとっては、岡崎先輩なんて、遊びだったってことですよ」
梓「あははは」
朋也「はは…」
俺もなぜか乾いた笑いで同調してしまっていた。
梓「じゃあ、岡崎先輩も、唯先輩のことは、なんとも思ってないわけですね」
朋也「ん、ああ…」
梓「…なんで言いよどむんですか?」
朋也「いや…」
がたっ
朋也(ん?)
254:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:21:11.09:jpDSDOMkO
音のした方に振り向く。
ダンボールが倒れ、猫が飛び出していた。
空に飛び立っていく鳥を追っている。
その先には、激しく車の行き交う道路があった。
俺は考える前に駆け出していた。
ダンボールが倒れ、猫が飛び出していた。
空に飛び立っていく鳥を追っている。
その先には、激しく車の行き交う道路があった。
俺は考える前に駆け出していた。
朋也(うらっ…)
飛び込み、猫をキャッチする。
間一髪間に合った。
猫は、俺の胸の中できょとんとしている。
間一髪間に合った。
猫は、俺の胸の中できょとんとしている。
朋也「いっつ…」
背中に痛みが走る。
モロにコンクリでぶつけたからだ。
腕も擦ってしまい、血が流れてくる感触が肌に伝わってきた。
モロにコンクリでぶつけたからだ。
腕も擦ってしまい、血が流れてくる感触が肌に伝わってきた。
梓「大丈夫ですかっ!?」
中野が駆け寄ってくる。
朋也「ああ、無事だよ」
上体を起こし、猫を両手で掲げてみせる。
梓「そうじゃなくて、岡崎先輩がですよっ」
朋也「ああ、俺は…っつ…」
255:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:21:42.81:+UZ/pLeq0
梓「痛みますか? どこです?」
朋也「いや、大丈夫」
梓「ちょっと腕見せてください」
言って、俺の袖をまくった。
梓「血が出てるじゃないですか…」
朋也「ほっときゃ止まるよ」
梓「そんなこと言って、バイ菌が入ったら大変ですよっ」
梓「ここでじっとしててください。私、ちょっと行ってきます」
そう言い残し、人ごみを縫ってすぐ近くの雑貨店に入っていった。
―――――――――――――――――――――
梓「はい、これでいいです」
朋也「サンキュ」
中野は、水で傷口を丁寧に洗い流し、その上から透明なシートを貼ってくれていた。
梓「患部を水で濡らした後、このシートを貼っておくんですよ」
パック入りになったそれを渡してくる。
256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:22:54.02:jpDSDOMkO
朋也「ああ、わかったよ。で、いくらだったんだ? これと水合わせて」
受け取って、そう訊いた。
梓「お金なんていいですよ。この子、助けようとしてくれたんでしょ」
膝の上に乗り、安心して丸まっている猫の顎を撫でる。
梓「ほんと、馬鹿ですね。あんなことしなくても、道路になんか飛び出しませんよ」
朋也「そうだったかな」
梓「そうですよ」
朋也「ちょっと神経質すぎだったな」
朋也「動物の挙動なんて、予測できないからさ、嫌な予感がして、先走っちまった」
梓「岡崎先輩の行動の方がよっぽど予測できません」
朋也「そっか」
梓「はい、そうです」
朋也「………」
梓「………」
会話が途切れる。
257:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:23:14.62:+UZ/pLeq0
俺はなんとなくネコミミを手にとってみた。
梓「って、なんで猫にネコミミをつけるんですか…意味ないですよ…」
朋也「これで、二倍猫になるだろ」
梓「もう…なんなんですか、それ。意味がわかりませんよ」
梓「ほんと、馬鹿なんだから」
柔和に微笑む。
初めて俺に向けられた曇りのない笑顔。
いつもこんな風に笑っていてくれれば、こいつも無害な普通の女の子なのだが。
初めて俺に向けられた曇りのない笑顔。
いつもこんな風に笑っていてくれれば、こいつも無害な普通の女の子なのだが。
声「あら、岡崎じゃない」
朋也「ん…」
声がして、顔を向ける。
そこには一人の女性が立っていた。
そこには一人の女性が立っていた。
女性「奇遇ね。こんなとこで、なにやってんの」
朋也「美佐枝さん…」
この女性、学生寮の寮母をやっている人だった。
名は相楽美佐枝。
寮生でない俺も、あれだけ通い詰めていれば、嫌でも顔見知りになる。
名は相楽美佐枝。
寮生でない俺も、あれだけ通い詰めていれば、嫌でも顔見知りになる。
美佐枝「ところで…そっちの子は?」
258:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:24:33.41:jpDSDOMkO
中野を見て言う。
朋也「ああ…まぁ、後輩だよ」
梓「あ、初めまして。中野梓といいます」
美佐枝「これは、ご丁寧にどうも。私は、相楽美佐枝。学生寮の寮母をやってるの」
梓「寮母さんなんですか…すごくお若いのに…」
美佐枝「あら? そうみえる? ありがと」
美佐枝「にしても…」
美佐枝「岡崎、あんたも隅に置けないわねぇ。こんな可愛い子とデートなんてさ」
梓「な、ち、違いますっ」
中野が勢いよく否定する。
美佐枝「ありゃ、彼女じゃなかったの?」
朋也「こいつとはそんなんじゃねぇよ」
梓「そ、そうですよっ」
美佐枝「ふぅん、なかなか似合って見えたのにねぇ」
梓「そ、そんなことないですっ! 私たち、犬猿の仲なんですっ」
259:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:24:53.87:+UZ/pLeq0
梓「こ、こんな人となんて…そんな…」
美佐枝「あんた、嫌われてるの?」
朋也「少なくとも、好かれちゃいないかな」
美佐枝「あ、そなの」
朋也「ああ」
猫「にゃあ」
中野の膝の上、猫が鳴いてた。
美佐枝「あら…可愛い猫だこと。触ってもいい?」
梓「あ、もちろんです」
美佐枝「ありがと。それじゃ…」
くすぐるように顎を撫でた。
ごろごろと気持ちよさそうに唸る。
ごろごろと気持ちよさそうに唸る。
美佐枝「あんたの猫なの?」
梓「いえ…野良なんです」
美佐枝「へぇ、それにしては毛並みが綺麗よね」
梓「ですよね。可愛いです」
260:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:26:18.66:jpDSDOMkO
美佐枝さんが撫でると、猫もうれしいのか、尻尾をピンと立てていた。
ここまで気を許させてしまうのは、この人の持つ、包み込むような母性のためだろうか。
動物にもそれが直感的にわるから、安心して身をゆだねることができるのかもしれない。
どうせ飼われるなら、こんな人がいいと思う。
面倒見のいいこの人のことだ、きっと大事にしてくれるに違いない。
だが、寮で飼うなんてことが許されるのだろうか…
そこだけが唯一気にかかる。
ここまで気を許させてしまうのは、この人の持つ、包み込むような母性のためだろうか。
動物にもそれが直感的にわるから、安心して身をゆだねることができるのかもしれない。
どうせ飼われるなら、こんな人がいいと思う。
面倒見のいいこの人のことだ、きっと大事にしてくれるに違いない。
だが、寮で飼うなんてことが許されるのだろうか…
そこだけが唯一気にかかる。
朋也(ダメもとで訊いてみるか…)
朋也「美佐枝さん。そいつ、飼ってやれないか」
美佐枝「え? あたしが?」
朋也「ああ。俺たち、ずっと飼ってくれる奴探してたんだけど…」
俺はこれまでのいきさつを美佐枝さんに話した。
美佐枝「はぁ…その猫の怪我、そういうことだったんだ」
朋也「ああ。だから、頼むよ。美佐枝さんなら、安心して任せられるし」
梓「私からも、お願いします」
美佐枝「う~ん…でもねぇ…」
美佐枝「………」
顎に手を当て、しばしの間、思案に暮れる。
261:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:27:15.50:+UZ/pLeq0
美佐枝「…猫、か。もう一匹増えたところで、変わりないか…」
何かつぶやいていたが、小さくて聞き取れなかった。
美佐枝「うん…わかった。一応、つれて帰ったげる」
梓「ほんとですかっ? ありがとうございますっ」
美佐枝「でも、正式に飼うわけじゃないわよ」
朋也「どういうこと?」
美佐枝「原則、寮でペットを飼うのは禁止されてるからねぇ」
美佐枝「おおっぴらには飼えないってことよ」
美佐枝「部屋を間借りさせてあげるのと、餌をあげることくらいしかできないけど…」
美佐枝「それでもいい?」
梓「十分ですよっ」
朋也「ああ、それだけしてくれりゃ、飼ってるのと変わりねぇよ」
美佐枝「そ。じゃあ、あたしはもう帰るとするかねぇ」
美佐枝「さ、おいで」
猫をその胸に抱く。
一片の抵抗もみせず、大人しく美佐枝さんの腕の中に収まっていた。
一片の抵抗もみせず、大人しく美佐枝さんの腕の中に収まっていた。
262:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:29:27.81:jpDSDOMkO
朋也「ありがとな、美佐枝さん」
梓「ありがとうございますっ」
美佐枝「ん、いいわよ、別に」
美佐枝「それじゃね」
朋也「ああ」
梓「はいっ」
俺たちに背を向け、歩いていく。
梓「よかったぁ…」
よほど嬉しかったのか、肩の力を抜いて、安堵の表情を浮かべていた。
朋也「そうだな」
おもむろに、ぽむっと中野の頭に手を乗せる俺。
梓「な、なにするんですかっ」
が、すぐに振り払われた。
朋也「いや、いい位置にあったから」
梓「そ、そんな理由で触らないでくださいっ」
263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:29:57.78:+UZ/pLeq0
朋也「悪かったな。もうしねぇよ」
梓「………」
朋也「そんじゃ、俺も行くからさ。じゃあな」
言って、俺も美佐枝さんが行ったのと同じ方向に足を向けた。
これから春原の部屋に向かうつもりだった。
今からなら、途中で美佐枝さんに追いつくだろう。
別れの挨拶をした意味がないな…ぼんやりと思う。
これから春原の部屋に向かうつもりだった。
今からなら、途中で美佐枝さんに追いつくだろう。
別れの挨拶をした意味がないな…ぼんやりと思う。
梓「あ、あのっ」
朋也「なんだよ」
声をかけられ、振り返る。
梓「きょ、今日はありがとうございましたっ…協力してくれて…」
梓「その…岡崎先輩のおかげで、飼い主も見つかりましたし…」
梓「猫を助けようって、必死になってもくれましたし…」
梓「ちょっとだけ…見直しました」
朋也「そりゃ、どうも」
梓「それと…頭に手を乗せられたのも、ほんとは嫌じゃないっていうか…」
梓「むしろ…その…」
266:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 01:31:07.50:jpDSDOMkO
もじもじとしているだけで、その先は出てこなかった。
朋也「じゃあさ、これからは仲良くしてくれよな、あずにゃん」
梓「な、あ、あずにゃんって呼ばないでくださいっ」
梓「この調子乗りっ! うわぁぁんっ」
顔を真っ赤にして、どぴゅーっとものすごい勢いで逃げていった。
朋也(変な奴…)
だが、少しだけあいつとの関係が改善された…ような気がした。
―――――――――――――――――――――