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  • 朋也「軽音部? うんたん?」 5/2 日

自分用SSまとめ

朋也「軽音部? うんたん?」 5/2 日

最終更新:2011年05月09日 17:16

meteor089

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管理者のみ編集可

朋也「軽音部? うんたん?」

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313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:12:15.45:+UZ/pLeq0


5/2 日

ゴールンウィーク。その初日。
いや…世間ではもう、昨日から入っているところの方が多いのか…。
なら、正確には二日目なのかもしれない。
なんにせよ、その連休効果で町の中は人で溢れかえり、異様な活気に包まれていた。
まだ朝食を食べていてもおかしくはない時間だというのにだ。

朋也(交通量も多いな…)

やっぱり、この連休に遠出する世帯が多いんだろう。
道路がかなり混みあっていた。
そして、どの車の窓からも、楽しそうに会話する家族の姿が垣間見ることができた。
………。

朋也(なんか食うか…)

俺はとりあえずのところ、駅前に出ることにした。

―――――――――――――――――――――

朋也(今日は琴吹の奴、いなかったな…)

俺は琴吹のバイト先であるファストフード店で、少し遅めの朝飯を済ませていた。
毎週日曜にシフトが入っていると聞いていたのだが…店内にその姿は見えなかった。

朋也(旅行にでも行ってんのかな…あいつなら、海外とか…)

朋也(まぁ、なんでもいいけど…)


314:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:12:49.03:+UZ/pLeq0


寮の方に足を向ける。
これからまた春原の部屋で無意味に時間を浪費することになるのだ。
いつものことだったが、今だけは余計にむなしく思えた。
空は一点の曇りも無い快晴。そして、余裕たっぷりの連休初日。
なのに、俺のやることといえば、むさ苦しい男とふたりで悶々と駄弁るぐらいのものなのだから。

朋也(はぁ…)

予定のある奴らが恨めしい。
周りの道行く人たちも、これからの時間を満喫すべく動いているんだろう。
俺とは大違いだ。

朋也(いくか…)

考えていても仕方ない。そう思い、一歩踏み出すと…

声「なんで勝手にそんなことするのっ!?」

女の怒声。その声には、聞き覚えがあった。
目を向ける。

朋也(琴吹…)

見れば、なにやら誰かと揉めているようだった。
相手は、紳士風な、身なりのきちんとした、老いのある男性だ。
俺は正直、驚いていた。偶然、今ここで琴吹を見かけたこともそうだが…
まず、なにより、あの温厚な琴吹が、怒りをあらわにして声を荒げていることにだ。
あの男性となにがあったんだろうか…

紬「あ、ちょっと、離してっ!」


315:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:14:03.27:jpDSDOMkO


肩を掴まれ、必死に抵抗していた。

朋也(あ…あの野郎…)

俺は駆け足で近づいていった。

朋也「おい、あんた、なにやってんだ」

紬「あ…岡崎くん…」

男「ん…?」

男性の動きが止まる。
その隙を突いて、琴吹が俺の後ろに隠れた。
ぎゅっと服の裾を握ってくる。

朋也「こんな公衆の面前で、拉致でもしようとしてたのかよ、あんたは」

朋也「場合によっちゃ、警察につき出すけど」

男「いえ、待ってください、私は琴吹家の執事をやらせていただいている者で、斉藤と申します」

朋也「執事…?」

斉藤「はい」

そんな人までいるのか、琴吹の家は…。
改めて生きる世界が違うことを実感させられる。

斉藤「失礼ですが、あなたは、どちら様で…?」


316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:14:55.66:+UZ/pLeq0


朋也「あ、ああ…俺は、琴吹さんのクラスメイトで…」

紬「私の片想いだった人よ」

朋也「…は?」

紬「でも、今両思いになったわ。そうでしょ?」

俺の腕に強く絡み、さらに力をこめてくる。
そこからは、やわらかい感触が伝わってきた。
胸が当たっているのだ。
…でかい。それが体感できる…。

朋也「あ、ああ…」

俺はなにがなんだかわからず、情けない声で肯定してしまっていた。

紬「ほらね。両思いの恋人同士なんだから、あなたは早く帰ってもらえる?」

紬「いつまでも一緒にいるなんて、野暮なことしないわよね?」

斉藤「………」

しばし、沈黙する。

斉藤「…はぁ。わかりました」

ひとつため息をついて、そう答えた。

斉藤「…お嬢様をよろしくお願いします」


318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:16:11.37:jpDSDOMkO


振り向きざま、俺にそう告げると、路肩に駐車していた黒塗りのベンツに乗り込んで、車道に出て行った。

紬「………」

朋也「琴吹…そろそろ…」

紬「あ、ごめんなさい」

慌てて俺から離れる。

朋也「…で、なんだったんだ、今のは」

紬「うん…ちょっと、色々あって…」

紬「あ、そうだ、ごめんなさい、勝手に恋人なんかにしちゃって…」

朋也「いや、いいよ、別に。おまえとだし…嫌でもないからさ」

紬「そう? それは、ありがとう」

眩しい笑顔。
もういつもの琴吹に戻っていた。

朋也「よかったら、事情を聞かせてくれないか」

琴吹があそこまで取り乱していたのだから、どうしても気になってしまう。

紬「…うん」

少しの間があって、小さく返事が返ってきた。


319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:16:47.34:+UZ/pLeq0


その表情には、少しだけ陰りが見えた。
なにがあったんだろうか…。

―――――――――――――――――――――

朋也「ふぅん…そうだったのか」

俺たちは、噴水のある広場に移動してきていた。
ベンチに腰掛け、琴吹から話を聞いていたのだが…
なんでも、勝手にバイトを辞めさせられていたらしい。
これ以上続けるのは、勉学に差し支えあると判断されたからだそうだ。
だが、そんなこと、本人の与り知らないところで決められるのだろうか。
そう疑問に思ったが…琴吹家の人間が動いているのだ。
大抵のことはまかり通ってしまいそうなので、すぐにその懐疑は消えていった。

朋也「それで、今日はバイト先に挨拶しにきてたのか」

紬「うん、そうなの。私からなにも音沙汰がないのは失礼だと思って」

朋也「そっか。やっぱ、しっかりしてるよ、琴吹はさ」

紬「ありがとう、岡崎くん」

朋也「でも、なんであの斉藤さんに止められてたんだ?」

止められるようなこともでもないと思うのだが…。

紬「あれは、止めてたっていうより、連れ戻そうとしてたのよ」

紬「今日は、家族でイタリアに発つ予定だったから」


321:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:18:11.54:jpDSDOMkO


紬「その便に間に合うように、私を迎えにきてたの」

紬「もう、時間がぎりぎりだったから」

朋也「ん? ってことは、今はもう…」

紬「うん、手遅れかな」

朋也「それは…いいのか?」

紬「いいのよ。勝手にバイトのこと決められちゃってたし…」

紬「私もね、言ってくれれば、考えたの」

紬「もう3年生だし、いつかは辞めないといけないのはわかってたから」

紬「でも、それをいきなり、私になんの断りも無くなんて、ひどいもの」

紬「だから、旅行なんていかないの」

むくれた顔で言う。
つまり、これはささやかな反抗というわけだ。
あの時咄嗟に出てきた片想い宣言にも、ようやく納得がいった。

朋也「じゃあ、今日はこれからどうするんだ」

朋也「旅行行くはずだったんなら、暇になったんじゃないのか」

紬「うん、そうね…残りの休日をどうやって過ごそうか、それを考える一日になりそう」


322:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:18:44.93:+UZ/pLeq0


朋也「ならさ、今日は俺と一緒に遊んでみないか」

せっかくだから、こういうのもいいかもしれない。
少なくとも、春原の部屋で退廃的にぐだついているよりはずっといい。

紬「え? いいの?」

朋也「もちろん。だって、俺たち、恋人同士なんだろ」

言葉遊びのつもりで、そう言った。

紬「あ…そうねっ。じゃあ、よろしく、朋也くんっ」

向こうも乗ってきてくれたようだ。
こんなところ、絶対に春原の奴には見せられない。
きっと、嫉妬に狂って暴れだすに違いない。

朋也「こっちこそ。紬」

紬「ふふ」

朋也「まずはバイト先に挨拶しにいかなきゃな」

紬「うんっ」

―――――――――――――――――――――

また駅前まで出てきて、ファストフード店まで足を運んでくる。
俺は店の外で琴吹をただじっと待っていた。


323:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:20:55.54:jpDSDOMkO


朋也(しかし、どういう反応をされるんだろうな…)

もしかして、自分の口で伝えなかったことを非難されたりするんだろうか…。
他の従業員からも、蔑みの眼差しで見られたり…。
………。

朋也(お…)

考えていると、自動ドアをくぐって琴吹が出てきた。
それも、晴れやかな顔を伴って。

朋也「どうだった」

その顔を見れば、訊くまでもないかもしれないが。

紬「うん…店長も、みんなも、今までご苦労様って、そう言ってくれたの」

朋也「よかったじゃん」

紬「うん。みんなすごくいい人たちで…私、ここで働けて本当によかった」

朋也「向こうも、琴吹と一緒に働けてよかったって思ってるよ」

だからこそ、そんな言葉をかけてもらえたんだろう。

朋也「なんたって、こんな可愛くて、その上しっかり者なんだからな」

紬「ふふ、ありがとう。すごく持ち上げてくれるのね」

朋也「そりゃ、今は俺、琴吹の彼氏だからな。自分の彼女は、褒めたいもんだよ」


324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:24:35.25:jpDSDOMkO


紬「ふふ、私、岡崎くんの彼女になれてよかったな」

紬「こんなに優しくて、その上かっこいいんだもの」

朋也「そりゃ、どうも」

まるで頭の軽いカップルのような褒め合いだった。

朋也「じゃ、いこうか」

紬「うんっ」

同時、俺に手を重ねてくる琴吹。

朋也「あ…」

紬「いいでしょ?」

朋也「ん、ああ」

多少動揺が声に出てしまう。

紬「ふふ」

そんな俺をみて、余裕のある笑みを見せる琴吹。

朋也(なんなんだ、この差は…)

朋也(…まぁ、いいか)


325:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:25:02.85:+UZ/pLeq0


その手に温かさと柔らかさを感じながら、俺たちは歩き出した。

朋也「ああ、そうだ、どこか行きたいところあるか」

紬「う~ん、そうねぇ…岡崎くんに任せるわ」

朋也「俺か? いいのかよ。俺、女の子が好きそうな場所とかわかんないぞ」

紬「いいの。普段岡崎くんがいくところに連れてってほしいな」

朋也「まぁ、それでいいなら、俺も楽だけど…」

朋也「あんまり期待するなよ?」

紬「大丈夫。岡崎くんと一緒だもの。きっと、どこにいっても楽しいと思うの」

朋也「そっかよ…でも、余計にプレッシャーだな…」

紬「あはは、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど」

紬「気楽にいきましょうね、岡崎くん」

朋也「ああ、だな」

朋也(しかし…)

琴吹にリードしてもらっているような、この現状…。
男として情けない…。

―――――――――――――――――――――


326:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:26:15.20:jpDSDOMkO


紬「ここが噂の…」

朋也「なんか、大げさだな」

紬「私、一度も来た事がなかったから…」

俺たちがやってきたのは、古本、新刊、中古CD、ゲームなどを総合的に扱っている中古ショップだ。
全国にチェーン展開し、その名を知らない者はいないのではないかというくらいに有名な店だった。

朋也「琴吹は、やっぱ新品で買うんだな」

紬「うん、そうなんだけど…立ち読みって、ずっとやってみたかったのっ」

朋也「そっか…」

やはり一般人とは少し違った感覚をしているようだ。

紬「はやくいきましょっ」

朋也「ああ」

こんなところ、ふたりして遊びに来るような場所でもないかと思ったのだが…
喜んでくれているようで、なによりだった。

―――――――――――――――――――――

紬「わぁ…ほんとにみんな立ち読みしてるぅ」

子供のように目を輝かせながら言う。


327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:26:35.78:+UZ/pLeq0


紬「いくら読んでても、店員さんに注意されないのよね?」

朋也「ああ、そうだよ。だから、実質ここに住みついてるような奴もいるんだ」

紬「えぇ? ほ、ほんとに?」

朋也「ああ。ほら、あそこに座り込んでる奴がいるだろ?」

朋也「あいつは、ここら一帯を仕切ってる、いわば主みたいな存在だな」

朋也「だから、通り過ぎる時は挨拶しなきゃならないんだ」

紬「そ、そんなしきたりが…」

朋也「行ってみるか」

紬「う、うん」

座り込んでいる男のもとに歩み寄っていく。

紬「あ、あのっ…」

男「……?」

紬「わ、私、琴吹紬といいます。新参者ですが、どうぞよろしくお願いしますっ」

男「おぅ…あ…うぶぅ…」

朋也「琴吹、もういいぞ。認められた」


328:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:28:33.67:jpDSDOMkO


紬「よ、よかったぁ…」

朋也「じゃ、もう行こう。あんまり居すぎて怒りを買うとまずい」

紬「う、うん、わかった…」

完全に信じ込んでいるようだ。
ちょっと悪い気はしたが…正直、面白かった。

―――――――――――――――――――――

紬「あれ、このコーナー、ピンク色になってる…なんでかしら」

迷い込むようにして、入っていこうとする。

朋也「琴吹、そこは…」

寸でのところで止める。

紬「? どうしたの、岡崎くん」

朋也「入ったらダメだ。そこは18歳未満はお断りゾーンだ」

紬「え…そうだったの?」

朋也「ああ。俺の後ろ、右上に監視カメラがあるだろ?」

朋也「あれで捕らえられてたら、警報が鳴ってたんだぞ」

紬「そ、そんな…」


329:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:29:20.03:+UZ/pLeq0


朋也「いいか? 今からカメラの死角に入る」

朋也「そしたら、何食わぬ顔で健全なコーナーから出て行くんだ」

朋也「いくぞっ」

紬「は、はいっ」

したたたーっ!

俺たちは素早く動き出した。
本の整理をしていた店員からは、奇異な視線を向けられ続けていた。

―――――――――――――――――――――

一通り見回り、もとの位置に戻ってくる。

紬「なんか、わくわくしたねっ」

朋也「なにが」

紬「通路も狭くて、人を避けながら進む感じが、こう、なんていうんだろ…」

紬「そう、未開の地に踏み入っていくパイオニアみたいで」

朋也「じゃあ、客は全員、なんかよく得体の知れない部族ってことか」

紬「あはは、それはなんだか失礼な感じ」

朋也「まぁ、それはそうと、一周してきたわけだけど、なんか気に入ったのあったか」


331:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:30:55.08:jpDSDOMkO


紬「うん、少女マンガの区画で、『今日からあたしゃ!!』っていうのが、気になったかな」

朋也「そ、そうか…」

少年漫画にもよく似たタイトルで面白い漫画があるのだが…
なにか関係あるんだろうか。謎だ…。

朋也(それはいいとして…)

朋也「じゃあ、俺は青年誌のとこいるからさ。気が済んだら、声かけに来てくれ」

紬「うん、そうするね。岡崎くんも、飽きちゃったら、私の方に来てね」

朋也「わかった。んじゃ、また後でな」

紬「うん」

―――――――――――――――――――――

琴吹と別れてから漫画を読み始めて、すでに5冊は読破していた。
巻数も抜けることなく連番でそろっていたので、快適に読むことができていた。

朋也(ん…)

6冊目を読み始め、中盤に差し掛かったとき、濡れ場が訪れた。

朋也(ふむ…)

いつになく集中する俺。
ページを繰る手が止まる。


332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:31:44.05:+UZ/pLeq0


声「岡崎くん」

朋也(うおっ)

咄嗟に持っていた漫画を背に隠して振り返る。

紬「なに読んでるの?」

朋也「い、いや、別に…あ、そ、そうだ、琴吹はもういいのか? 漫画は…」

紬「うん、先の巻が途切れちゃってたから、もう終わりにしようかなって」

朋也「そ、そっか…」

紬「それで…岡崎くんは、なにを読んでたの?」

朋也「ん? いや、たいしたもんじゃねぇよ」

紬「気になるなぁ…見せて?」

朋也「い、いや、もう出よう」

さっと漫画を棚に戻し、琴吹の手を引いて出口に向かった。

―――――――――――――――――――――

紬「どうしたの? 急に…」

朋也「いや…もう昼だし、腹減ったからさ、どっかで食いたいなってな…」


335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:33:41.52:jpDSDOMkO


ごまかしのつもりで言ったが、実際、俺は小腹が減っていた。
タイミングとしては丁度よかったのかもしれない。

朋也「琴吹は、どうだ? 腹、減ってないか?」

紬「う~ん、そうね…減っちゃってるかも…」

朋也「じゃあ、なんか食いに行こうか」

紬「そうね、いきましょう」

―――――――――――――――――――――

俺がわりとよく利用するラーメン屋。
ニンニク入りで、コクのある濃い味がウリの店だ。
食べた後は、しばらく息にニンニク臭が混じってしまうほどの強烈さがある。
それに、脂分も多いので、どんぶりもべたついている。
琴吹にどこで食べたいか訊かれ、ここのことを話すと興味を示したので、一応連れて来たのだが…

朋也「本当にここでよかったのか」

そういう食器事情も含めて、女の子が好むような店ではないように思う。
だが、それらを説明しても、琴吹はここに来たがっていた。

紬「もちろん。私、こういうストイックなラーメン屋さんで食べてみたかったのっ」

紬「ヤサイマシマシニンニクカラメアブラ! だったかしら?」

朋也「いや、ここはそんな二郎チックなところじゃないからな…普通のラーメン屋だよ」


336:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:34:33.50:+UZ/pLeq0


紬「あら、そうなの?」

朋也「ああ。やめとくか?」

紬「ううん。ここまで来たんだから、食べていきましょ?」

言って、先陣を切って中に入っていった。
俺も後に続く。

―――――――――――――――――――――

カウンター席に隣り合って座る。
俺は醤油ラーメンで、琴吹はみそラーメンを注文した。
しばらくして、俺たちの前にラーメンが差し出された。

紬「あ、おいしそうな匂い…」

言って、箸に麺をからめる。

紬「ふー…ふー…」

息を吹きかけ、よく冷ます。
そして、髪を横にかき上げてから口にした。

紬「けほっ、けほっ」

どんぶりから立ち込める湯気も一緒に吸ってしまったのか、むせてしまっていた。

朋也「ほら、水」


337:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:35:59.09:jpDSDOMkO


俺のそばにあったお冷サーバーから琴吹のコップに水を満たして、それを渡す。

紬「んん…ありがとう」

受け取り、喉を潤した。

朋也「食べられそうか?」

紬「うん、大丈夫。今ちょっと食べたけど、麺にも味が染みててすごくおいしいから」

朋也「そっか。でも、無理はするなよ? 最初は結構キツイかもだからさ」

朋也「食べられないと思ったら、残りを俺にくれ。完食するから」

紬「ふふ、それ、間接キス…じゃなくて、間接口移しのお誘いかしら?」

朋也「ばっ…んな下心ねぇっての」

紬「あはは、ごめんなさい、冗談で言ったの」

あどけなく笑う。
こうなると、もうなにも言えなかった。

朋也(ったく…)

結局、琴吹は自力で食べ切っていた。
しかも、スープまでだ。
お嬢様なんて温室育ちなはずなのに…見上げた胆力だった。

―――――――――――――――――――――


339:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:36:46.00:+UZ/pLeq0


紬「はぁ~っ…すごい、ほんとにニンニクの匂いがする…」

口に手を当て、口臭を確認していた。

朋也「じゃ、クレープでも食って中和するか。俺、おごるよ」

序盤にリードされた分を盛り返すべく、そう申し出た。

紬「ほんとに?」

朋也「ああ。まぁ、琴吹には必要ないかもしれないけどさ…」

紬「そんな…うれしいよ、その気持ちも…」

紬「私、おごってもらうなんて、初めてだし…それも、男の子になんて…」

紬「だから、特別に思っちゃうな」

朋也「そっか。じゃあ、彼氏の役割も果たせてるのかな」

紬「うん、すごくね。ありがとう、朋也くんっ」

抱きつくように腕を組んでくる。
琴吹のいい匂いが、ふわりと香る。
思わずどきっとしてしまう俺がいた。

紬「いきましょ?」

立ち止まっていると、そう声をかけてきた。


340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:38:03.25:jpDSDOMkO


朋也「あ、ああ…」

腕を絡ませたまま歩き出す。
本当に恋人同士になったようだった。

―――――――――――――――――――――

クレープも食べ終わり、ひと息入れる。
クレープ自体はうまかったのだが、腹の中でラーメンと混じり合って少し気持ち悪かった。

紬「おいしかったぁ。えっと、これで息は直ったかしら…」

また口に手を当て、口臭を確認する。

紬「う~ん…」

難しそうな顔。
納得がいかないといった感じだ。

朋也「俺も確認しようか? 息はぁ~ってやってくれ」

冗談だった。
そんなエチケットに関することなんて、自分以外に知られたくはないだろう。

紬「じゃあ、お願いね」

…普通に受け入れていた!
琴吹の顔が迫ってくる。
俺のすぐ鼻先で止まった。
そして、口を開けて…


341:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:38:49.18:+UZ/pLeq0


紬「はぁ~」

温かい吐息がかかる。
甘い香りがした。
ニンニク臭さなんて微塵もない。

紬「…どう?」

朋也「…ちょっとよくわかんなかったな…もう一回いいか?」

紬「ん、それじゃあ…」

再び甘い香りを堪能する。

朋也(ああ、琴吹って、歯並びいいよな…)

そんなことを考えながら、俺はこのシチュエーションに興奮を覚え始めていた。

紬「…岡崎くん?」

朋也「ん、ああ…」

軽くトリップしてしまっていたようだ。
琴吹の声で現世に戻ってこれた。

紬「どうだった?」

朋也「う~ん…もう一回やれば、わかるかも…」

紬「岡崎くん…楽しみ始めてない?」


342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:40:38.67:jpDSDOMkO


朋也「あ、バレた」

紬「くすくす…もう、子供みたい」

屈託なく表情を和ませて微笑む琴吹。
陽だまりの中で見るその笑顔は、とても魅力的に見えた。
春原が入れ込むのも無理はない。そう思えるくらいに。
こいつの彼氏になる奴は、幸せ者だ。
その分、男の方にも釣り合いが取れていないといけないんだろう。
残念ながら、俺や春原では役者が足りなかった。

朋也(ま、でも、今は俺が仮の彼氏だしな…)

朋也(う~ん…)

俺は急に自分の身だしなみが気になった。
琴吹の隣に立つという、その敷居の高さを意識してしまったからだ。
とりあえず、俺も自分の口臭を確認してみる。
やはり、ニンニクの匂いが強く香った。
口というか、胃から直接匂いが昇ってきている感じだ。
それくらい強烈なはずなのに、琴吹からはバニラのような甘い香りしかしなかった。
実に神秘的だ、琴吹は…。

―――――――――――――――――――――

腹ごなしに、町の中を練り歩く。

紬「あ、岡崎くん、見て、あれ」

足を止め、ショーウインドウを指さす。


343:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:42:04.90:+UZ/pLeq0


その中には、げっ歯類のような、謎の生き物のぬいぐるみがあった。

紬「可愛いわぁ…」

近づいていき、すぐそばで眺める。

朋也「そうか? つぶらな瞳してるけど、なんか、口開けてよだれたらしてるし…」

朋也「ヤバイ薬キメた直後みたいになってるぞ」

紬「むしろそこがいいのよぉ~」

朋也「あ、そ」

そんなとりとめもない会話を交わしながら、次はどこに行こうか…などと考えていた。
すると…

がらり

装飾品のベルが鳴らされると共に、その店のドアが開いた。
店員らしき人がこちらに寄ってくる。

男「あの、琴吹紬様…でよろしかったでしょうか」

紬「はい、そうですけど…」

男「ああ、やっぱり。いつもお父様には大変お世話になっております」

紬「は、はぁ…」


344:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:43:26.77:jpDSDOMkO


男「今日は、うちでなにかお求めで?」

紬「いえ、ただ見てただけなので…」

男「ああ、そうでしたか。気に入ったものがあれば、お持ち帰り頂こうと思ったのですが…」

紬「い、いえ、そんな、悪いですから…」

男「でしたら、せめて、お茶をお出しするので、中でくつろいでいかれてください」

紬「い、いえ…えっと…い、いきましょっ、岡崎くんっ」

朋也「あ、ああ…」

俺の手を引いて、急ぎ足で立ち去る。
後ろからは、店の人の呼び止める声が聞え続けていたが、立ち止まることはなかった。

―――――――――――――――――――――

紬「ごめんなさい」

あの場から離れて一旦落ち着いた頃、琴吹が開口一番そう口にした。

朋也「なにが」

紬「私のせいで、こんな逃げるようなことになっちゃって…」

朋也「いや、俺は別になんとも思ってないよ」

朋也「けど、お茶くらい、もらってもよかったんじゃないか?」


345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:44:11.03:+UZ/pLeq0


紬「うん…それだけなら、いいんだけど…」

紬「こういう時って、必ず最後に、お父さんによろしく言っておいて欲しいって、そう言われるの」

紬「私、そういうことって、上手く言えないから、苦手で…」

紬「それに、今は喧嘩中だから、なおさら伝えにくいし…」

紬「もてなしてもらったのに、そんなことじゃ、お店の人に悪いから…」

朋也「そっか…なんか、大変なんだな、琴吹も」

紬「ううん、そんな大変ってほどじゃ、ないんだけどね…」

朋也「まぁ、事情はわかったよ。これからはそういうことにも気をつけながらいこう」

紬「ごめんね…」

朋也「謝るなよ、そのくらいのことで」

紬「うん…」

朋也「ほら、いこう」

今度は俺の方から手を取って歩き出した。

―――――――――――――――――――――

その後も似たようなことが立て続けに起きた。
電器店の近くを通りかかれば、呼び込みが騒ぎ出し、店長を呼びつけられたし…


346:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:45:35.10:jpDSDOMkO


ショッピングモールに入れば、各コンテナのオーナーが直々に挨拶しにくる始末だ。
おまけに、道ですれ違った、いかにもその筋な方にも会釈されていた。
その度にそそくさと逃げ出していたのだが…
繰り返すうち、気づけば俺たちは町外れまできてしまっていた。

朋也「手広くやってるんだな、琴吹んとこの事業はさ」

紬「お恥ずかしいかぎりです…」

朋也「いや、誇れることだよ」

紬「うぅ…そうかな…」

朋也「ああ」

朋也(でも、これからどうするかな…)

カラオケ…なんて、俺のガラじゃないし…
バッティングセンター…は、さすがにだめだな…
そもそも、俺はまともにバットを振れない。
琴吹は…どうだろう…
野球に興味がなくても、打つだけならそれなりに楽しめるかもしれない。

朋也(つーか、バッティングセンターなんて、この町にあったかな…)

それすらも知らなかった。
穴だらけの発想だ…

朋也(う~ん…)


347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:45:59.49:+UZ/pLeq0


紬「岡崎くん、あそこ、入ってみない?」

朋也「ん?」

考えを巡らせていると、琴吹が俺の袖を引いてきた。
指さす先、寂れたおもちゃ屋があった。

紬「なんだか、おもしろそうじゃない?」

朋也「ん、そうだな…」

それほどでもなかったが、琴吹にとっては新鮮だったのかもしれない。

朋也(さすがにこんなとこまでは、琴吹家の手は伸びてないよな…)

ともあれ、まずは入ってみることにした。

―――――――――――――――――――――

店内には、時代に逆行するようなおもちゃが数多く並んでいた。
まるで、ここだけ時の流れが止まってしまっているようだった。

朋也(おお…懐かしい…キャップ弾だ…)

キャップ弾とは、プラスチック製ロケットの先端に火薬を詰めて、空に放って遊ぶおもちゃだ。
落ちてきて地面に当たると火薬が炸裂し、乾いた音が響くのだ。
それだけの単純な仕組みだったが、やけにおもしろかったことを覚えている。
ガキの時分、年上の遊び仲間に混じって、ずいぶんこれで遊ばせてもらったものだ。

朋也(あの時は自分で買えなかったんだよな…)


348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 02:47:10.17:jpDSDOMkO


それを思うと、なぜか大人買いしたくなる衝動に駆られた。

朋也(って、今さらだよな…)

この年でそんな遊びをするわけにもいかない。
俺にだって、一応、周囲の目を気にするだけの恥じらいはある。
まぁ、散々琴吹といちゃついてきておいて、なんだが…

紬「岡崎くん、みてみて、水鉄砲よっ」

カチカチと空砲を撃っている。

紬「かっこいいと思わない?」

そして、まじまじとその構造を眺めていた。

朋也「いや、別に…つーか、なんだ、珍しいのか?」

紬「うんっ、私、水鉄砲なんて触ったの初めてだから」

朋也「そっか」

男からしてみれば、水鉄砲を避けて通る人生なんて、ほぼ考えられないのだが。

朋也「じゃあ、それ買って、実際に撃ってみろよ。近くに公園あったし、そこでさ」

紬「あ、いいねっ、それっ。おもしろそうっ。早速買ってくるねっ」

きらきらと目を輝かせながら、カウンターに駆けていった。


365:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:18:20.52:+UZ/pLeq0


朋也(俺も一個買うか…安いし…)

一つ手にとって、琴吹の後を追った。

―――――――――――――――――――――

紬「えいっ!」

ピュピュッ

発射された水が勢いを失って地面に染みていく。

紬「撃った時に手ごたえを感じるわ…これが武器を扱うことの重みなのね…」

朋也「いや、単純に水を押し出してる抵抗だからな」

言って、俺も発射する。
特に意味はなかったので、適当なところを狙っていた。

朋也「やっぱ、マトがないと盛り上がらないな」

朋也「なんか、手ごろなもんがないか…」

びしゃっ

朋也「ぷぇっ」

水が口に入り込んでくる。

紬「あ、ごめんなさい、威嚇射撃のつもりだったんだけど…」


366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:19:30.43:jpDSDOMkO


朋也「おまえな…」

びしゃっ

紬「きゃっ」

お返しとばかりに、俺も撃ち返す。

紬「…えいっ」

びしゃっ

朋也「うわっ」

さらに撃ち返された。

朋也「………」

紬「………」

さささっ!

同時に距離を取る。
それは、お互いが銃撃戦の開幕を了承したことを意味していた。
琴吹は俺に発砲しながら草むらに向かって行く。
俺は水道のコンクリ部分に身を隠してそれを避けた。
顔だけを出して、琴吹を確認する。

朋也(いない…?)


368:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:20:16.48:+UZ/pLeq0


その時、上から落ち葉が大量に降ってきた。

朋也(ちぃっ)

ごろごろと転がってその場から離れる。

朋也(奇襲か…やるな、琴吹)

振り返ると、琴吹が水道で弾を補充していた。

朋也(喰らえっ)

ぴゅぴゅぴゅっ

三連射。
が、水道の影に隠れられてしまう。

朋也(ちっ、残弾が少ない…)

補給が必要だが、琴吹が陣取っていて近づけない。

朋也(どうする…?)

朋也(ん…?)

ダンボールが落ちていた。
これを盾に進めば、あるいは…

朋也(よし…)


369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:21:39.77:jpDSDOMkO


体を覆い隠しながら突進する。
足音に気づいた琴吹が顔を出してきた。

紬「!」

驚いているようだ。必死にヘッドショットを狙ってくる。
が、すべて外れていた。
そうこうしているうちに、琴吹の目の前までやってくる。

朋也「終わりだぜ、琴吹」

ぴゅっぴゅっ

紬「きゃっ」

胸の辺りに二発入った。

紬「卑怯よ、岡崎くん…」

朋也「防弾チョッキだったと思って、許してくれ」

へたり込んでいる琴吹に手を差し伸べる。

紬「ん…」

その手を取って、立ち上がる。

紬「濡れちゃった…」

服がぺたぺたと肌に吸い付いていた。


370:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:22:12.37:+UZ/pLeq0


被弾箇所は胸。つまり…はっきりと形がわかってしまっていた。
いや、それはブラの形なのかもしれないが…正直、たまらない。

紬「もう一度、水を満タンにしてやり直しましょっ」

朋也「あ、ああ…」

まだ続行する気なら、どんどん胸に当てていけば、いずれは…

朋也(って、俺は春原かよ…)

しかし…

朋也(遊びの中で起きたことなら、不可抗力だよな…)

………。
やってやるぜ…。

―――――――――――――――――――――

紬「あ~っ、おもしろかったぁ」

息も切れてきたので、一度休憩を入れていた。
髪も服も、だいぶ水気を含んでしまっている。

紬「水鉄砲って、楽しいのね」

朋也「ああ、だな」

俺も途中から邪な考えは消え、童心に帰って純粋に楽しんでしまっていた。


371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:23:25.64:jpDSDOMkO


そうできたのも、きっと、琴吹の遊びに対する純真な姿勢につられてしまったからだろう。

朋也(ほんと、いい顔してたもんな…)

朋也(ん…?)

子供「………」

俺たちの腰掛けるベンチの手前、じっと見上げてくる男の子が四人。
小学校低学年くらいだろうか。

紬「なぁに? どうしたの?」

子供「………」

誰も何も言わず、無言で見つめてくる。

紬「これ?」

水鉄砲を差し出す。
すると、一人がこくりと小さく頷いた。

紬「欲しいの?」

また、頷く。

紬「じゃあ、ちょっと待っててね」

子供たちに言って、俺に顔を向ける。


372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:23:57.90:+UZ/pLeq0


紬「岡崎くん、私、さっきのおもちゃ屋さんに行ってくるね」

朋也「こいつらの水鉄砲買いにか?」

紬「うん」

朋也「じゃ、俺もいくよ。2個ずつ買ってやろう」

紬「あ、さすが岡崎くんねっ。ふとっぱら」

朋也「おまえもな」

―――――――――――――――――――――

おもちゃ屋で人数分購入してくると、全員に分け与えた。
子供たちは、礼の言葉を言うと、嬉しそうに水鉄砲を手の中に収めていた。

紬「ふふ、かわいい」

朋也「まぁ、今時のガキにしちゃ、可愛げがある方かもな」

こんな水鉄砲なんかで喜ぶのは、かなりの希少種なんじゃないだろうか。
今は高性能な携帯ゲーム機など、おもしろい娯楽で溢れかえっているのだ。
そっちに傾倒しているのが普通だろう。

朋也(ま、俺も言えた義理じゃないか…)

俺も小学校高学年頃からは、遊びといえば、友人の家に入り浸ってひたすらゲームだった気がする。
いつからか、自然とこういう遊びはやめてしまっていた。


373:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:25:27.71:jpDSDOMkO


子供1「あの…」

紬「ん? なに?」

子供1「お姉ちゃんたちも、一緒にやらない? 水鉄砲」

子供2「やったほうがいいし」

子供3「やろうよ」

子供4「う○こ」

一人だけ異端なことを口走っていたが、遊びのお誘いだった。

紬「いいの?」

子供1「うん、もちろん」

子供2「だから言ってるし」

子供3「おまえ口調キツイだろ」

子供4「ち○こ」

紬「じゃあ、一緒に遊びましょっか。岡崎くんも、ね?」

朋也「ああ、いいけど」

子供1「やったぁ」


374:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:25:56.32:+UZ/pLeq0


子供2「当然だし」

子供3「おまえ傲慢すぎるぞ」

子供4「うん○こ」

無邪気にはしゃぎ出すガキども。変わった連中だった。
見ず知らずの俺たちに近づいてきたかと思えば、おもちゃをねだってみたり…果ては遊びに誘うなんて。
一人、頑なに下ネタしか言わない奴もいるし…とりあず、退屈だけはしないで済みそうだった。

―――――――――――――――――――――

二チームに別れ、公園の端と端にそれぞれの陣営を敷いた。
場についてから5分後に状況開始の取り決めだった。
俺は腕時計を見た。

朋也「よし、時間だ。いくぞ」

子供1「はい」

子供4「ちん○こ」

俺が前衛を張り、ガキふたりを後衛に据え、突撃していく。

子供2「ファイアインザホォルだしっ!」

掛け声と共に向こうから何かが投擲された。ちょうど俺の足元に落ちてくる。
直後…

ぱんぱんぱぱんっ!


375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:27:08.86:jpDSDOMkO


朋也「おわっ」

激しい火花が散る。爆竹だった。

子供1「うわぁああっ」

子供4「ひぃぃいうん○ちん○ぉおっ」

ぴゅぴゅぴゅっ

混乱して俺を撃ち始めていた。

朋也「ちょ、おい、やめろ…」

子供2「死ねし」

子供3「おまえ暴言吐きすぎ」

ぴゅぴゅぴゅっ

敵からも攻撃を受ける。
もはや俺一人が袋叩きにされている状態だった。

朋也「だぁーっ、くそ、このクソガキどもっ、喰らえ、こらっ」

俺も反撃する。

子供1「うわぁ、僕は味方ですよぉ」

朋也「知るかっ! おまえが先に撃ってきたんだっ」


376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:27:35.50:+UZ/pLeq0


子供1「そんな…うわっ」

顔に水がかかる。

子供3「よそ見だし。おまえ死ぬし」

子供1「てめぇっ!」

敵味方入り混じり、ドッチボールで言うめちゃぶつけの様相を呈していた。

紬「くすくす」

琴吹はそんな俺たちを喧騒の外から眺め、終始笑っていた。

―――――――――――――――――――――

朋也「はぁ…」

びしょびしょになった体をべちゃっと荒くベンチに預ける。

紬「おつかれさま」

隣で琴吹がねぎらいの言葉をかけてくれる。
俺とは反対に、もう服は乾ききっていた。

紬「楽しそうだったね、岡崎くん」

朋也「ああ…年甲斐もなくはしゃいじまった」

紬「くすくす…なんか、可愛かった。大きな子供みたいで」


377:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:28:48.04:jpDSDOMkO


朋也「あ、そ…」

ガキどもはすでに家路についていた。
帰り際、俺たちの水鉄砲をくれてやると、二丁拳銃だなんだと、また騒ぎ出していたが。

紬「あ…」

朋也「ん…」

琴吹のバッグから携帯の着信音。

紬「ごめん、ちょっと出るね」

朋也「ああ」

紬「えっと…」

携帯を取り出し、ディスプレイを見て、相手を確認している。

紬「………」

一瞬、表情を曇らせると、ためらいがちに通話を始めた。
最初は、黙ったまま相手の話を聞いていた。
そして、次第にぽつぽつと返事を返すようになったところで電話を切った。

紬「………」

浮かない顔。

朋也「あー…もしかして、親御さん?」


378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:29:12.57:+UZ/pLeq0


紬「うん…」

朋也「で…なんだって?」

紬「話し合いたいから、帰ってきてほしい、って…」

紬「アルバイトのことも謝りたいし、イタリアにも、夜の便で出るから、って…」

朋也「そっか。そりゃ、よかったじゃん。仲直りってことだな」

紬「そう…だね」

朋也「なら、もう帰らなきゃだな」

紬「うん…」

朋也「俺、送ってくよ」

紬「ありがとう、岡崎くん」

朋也「ああ、別に」

立ち上がる。

朋也「じゃ、いこうか」

紬「うん」

―――――――――――――――――――――


379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:30:27.40:jpDSDOMkO


琴吹は、この町へは電車で来ているらしく、俺が送ってあげられるのも、駅までだった。
実家は隣町の方にあるらしい。

紬「今日は本当にありがとうね。すごく楽しかったわ」

朋也「俺の方こそ。おまえといられてよかったよ。ありがとな」

紬「ふふ、どういたしまして」

冗談めかしたように言う。

紬「でも、なんだか寂しいね…これで、恋人同士が終わっちゃうなんて」

朋也「じゃ、最後にキスするか」

紬「え…えぇ!?」

慌てふためく琴吹。
初めてみるその動揺っぷりに、顔が緩むのを抑えられなかった。
そして、冗談だと、そう言おうとした時…

紬「…うん。しましょうか…」

朋也「え?」

紬「………」

目を瞑って、顔を上げる。
緊張しているのか、頬を赤くして、その太めの眉がへの字になっていた。


380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:30:57.56:+UZ/pLeq0


朋也(どうするんだよ…俺)

ごくりと生唾を飲み込む。
このままいってしまえば、なし崩し的に付き合うことになったりするんだろうか。
………。
でも、それは…

朋也(違うよな…)

こんな、その場の雰囲気に流されて始まった関係なんか、絶対長続きしない。
なにより、俺は…

朋也(って、なんで平沢の顔が出てくんだよ…)

朋也(ったく…)

俺は頭を振った。
そして、琴吹を見据える。
その頭に手を置いた。

朋也「それは、ほんとの彼氏ができた時のためにとっとけよ」

ぽんぽん、と優しく触れる。

紬「ん…」

ゆっくりと目を開ける琴吹。

紬「…あ…あはは…ご、ごめんなさい、私ったら…真に受けちゃって…」


382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:32:19.46:jpDSDOMkO


わたわたと、手の先を絡ませて弄ぶ。

朋也「まぁ、でも、俺も、かなりどきっとしたよ」

紬「そ、そう?」

朋也「ああ。だって、気づかれないように、つむじに5回くらいキスしてたんだぜ、俺」

紬「え…ほ、ほんとに?」

頭頂部をさする。

朋也「まぁ、作り話だけど」

紬「もう…」

ぷっと吹き出す。

朋也「それじゃな」

紬「うん、またね」

笑顔で別れの挨拶を交わした。
最後に、琴吹の恥らう乙女な姿を見ることができてよかった…歩きながら思う。
あのワンシーンのために、今日一日があったと言っても過言ではないかもしれない。

―――――――――――――――――――――



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