自分用SSまとめ
朋也「軽音部? うんたん?」 5/3 月 祝日
最終更新:
meteor089
-
view
朋也「軽音部? うんたん?」
383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:33:02.25:+UZ/pLeq0
5/3 月 祝日
春原「なぁ、岡崎…」
朋也「なんだよ」
雑誌を読みながら応答する。
春原「ゴールデンウィークだぞ」
朋也「知ってるよ」
春原「じゃあさ、なんかゴールデンなことしようぜっ」
春原「こんなとこでうだうだやってたらもったいねぇよ」
朋也「そうだな、こんな薄汚い部屋なんか、一刻も早く出て行きたいもんな」
春原「そこまでは言ってないだろっ!」
朋也「で、ゴールデンなことって、なんだよ」
春原「そうだなぁ…やっぱ、黄金にちなんだことがいいよね」
春原「埋蔵金掘りに、町に繰り出したりとかさっ」
朋也「どこ掘るつもりなんだよ…」
春原「そりゃ、やっぱ、金脈がありそうなとこだよ」
385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:34:20.89:jpDSDOMkO
春原「銀行の近くとか、案外よさそうな感じじゃない?」
春原「もしなくても、金庫まで掘り進めば、僕ら大金持ちだぜ?」
朋也「ただの強盗だからな…」
朋也「つーか、金脈って、金の鉱脈のことだぞ。埋蔵金とは関係ない」
春原「あん? そうなの? ま、どうでもいいけど」
朋也「じゃ、言うな」
春原「それよか、おまえはなんかないの」
朋也「ない」
春原「んだよ、素っ気ねぇなぁ…きのうも、なかなか来なかったしさ…」
春原「なにやってたんだよ」
朋也「なんでもいいだろ、別に」
こいつにだけは話したくなかった。
泣き喚かれたりでもしたら面倒だ。
泣き喚かれたりでもしたら面倒だ。
春原「よくねぇよっ! おまえがこなきゃ、僕がひとりになるだろっ」
春原「きのうは、ずっと貧乏ゆすりでビート刻んでるしかなかったんだからなっ」
朋也「知らねぇよ…」
386:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:34:40.20:+UZ/pLeq0
春原「今日こそは僕と同じ時を過ごしてもらうからなっ!」
朋也「気持ちの悪い言い回しをするな」
春原「だからさぁ、どっか行こうぜ」
朋也「その案が浮かばないからここにいるんだろ」
春原「そうだけどさぁ…」
朋也「大人しく漫画でも読んどけ」
春原「結局それしかないのかよ…あーあ、つまんね…」
コタツの向こう側、春原はばたりと床に倒れこみ、俺の視界から消えた。
ふて寝でもするのかと思ったが、寝転がったままぶつぶつと不満を漏らし続けていた。
ふて寝でもするのかと思ったが、寝転がったままぶつぶつと不満を漏らし続けていた。
春原「なんかおもしろいことないの、岡崎」
朋也(うるせぇな…)
春原「聞いてる?」
朋也「ねぇっての」
春原「なんだよ、つまんねぇ奴だなぁ…」
俺は無視して雑誌を読み続けた。
―――――――――――――――――――――
387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:36:05.30:jpDSDOMkO
春原「なんか、家族連れが多いねぇ」
朋也「まぁ、大型連休の只中だからな」
町の中、行き交う人たちを品定めするように眺める俺たち。
外出を決めたのは、こいつの愚痴にいい加減耳が耐えられなくなったからだった。
外出を決めたのは、こいつの愚痴にいい加減耳が耐えられなくなったからだった。
春原「にしても…なかなかヒットしないなぁ…」
春原「岡崎、おまえも可愛い娘見つけたら教えてくれよ」
朋也「ひとりで探せよ」
こいつのナンパの片棒なんて担ぎたくもない。
春原「遠慮すんなって。おまえの好みの娘がいたら、ばっちり協力してやるからさ」
朋也「って、なんだ、俺もやんのかよ」
春原「そりゃ、そうでしょ。なんのためにここまで出てきてんだよ」
朋也「暇つぶしだけど」
春原「僕が女の子ひっかけちゃったら、おまえ、暇になるじゃん」
朋也「まぁ、そうだけどさ…」
春原「な? だからさ、ふたり以上で固まってる女の子たち狙って、協力して落とそうぜ」
朋也「落とすって、んな簡単に言うけどな、失敗すりゃただのピエロだぞ。恥かくリスクが高すぎる」
388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:36:35.50:+UZ/pLeq0
春原「大丈夫だって。その辺は僕に任せとけよ。巧みな話術で瞬殺してやるからさ」
春原「それに、おまえも女ウケいいツラしてるし、成功率は高いって」
朋也「おまえのトークセンス頼みってところに不安を覚えるんだけどな」
春原「僕を信じろっ! かなりの場数を踏んできた百戦錬磨の手錬なんだぞっ」
朋也「勝率は?」
春原「え゛? ははっ、そりゃ、ぎりぎり判定負けする時もあったさ」
要するに一度も成功したことがないんだろう。
朋也「つーか、おまえ、琴吹はいいのかよ」
春原「ん? それはそれ、これはこれだよ」
朋也「あ、そ」
朋也(はぁ…)
他にやることがあるわけでもなし…ひとりでいるよりはマシかもしれない。
―――――――――――――――――――――
春原「あーあ、なかなかいい娘みつかんないなぁ…」
朋也「お、あの娘なんかいいんじゃないか」
389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:37:42.46:jpDSDOMkO
春原「え、どこ?」
俺の指さすその先を凝視する春原。
春原「って、なんだよ、ガキじゃん」
朋也「ちょうど親子でそろってるしさ、娘さんを僕にくださいっ、ってやってこいよ」
春原「もうそれ、路上で結納してるだろっ! ナンパしにきてんの、ナンパっ」
朋也「結婚を前提にだろ?」
春原「結婚を前提にナンパって、どんな奴だよっ! 重すぎるだろっ」
朋也「けっこう切羽詰ってそうだったから、そう見えたんだよ」
春原「んながっついてねぇよっ。ったく…もっと真面目にやれよ」
真面目にナンパするのもどうかと思うが。
朋也「わかったよ」
春原「頼むぞ、ほんとに…」
朋也「お、早速みつけたぞ」
春原「どこ?」
朋也「ほら、あそこ」
390:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:38:04.59:+UZ/pLeq0
春原「って、今度はバァさんかよっ!」
朋也「なんだよ、不満か?」
春原「当たり前だろっ!」
朋也「おまえのストライクゾーンがわからん」
春原「せめて、娘って呼べる年齢層に絞ってくれっ」
朋也「そっか。そうだったな。おまえ、ロリコンだもんな」
春原「どんだけ下を想定してんだよっ!?」
春原「ああっもう、おまえが想像する僕の好みじゃなくて、おまえ自身の好みで探してくれっ」
春原「そっちのが間違いなさそうだからな…」
朋也「わぁったよ」
春原「今度こそ頼むぞ…ん?」
人混みに目を向けて、そこで固まる。
春原「おい、岡崎、みてみろよ、あの二人組」
朋也「あん?」
春原が示した先に顔を向ける。
ひとりは、背が小さめで髪がショート。小動物のような雰囲気を持っていた。
ひとりは、背が小さめで髪がショート。小動物のような雰囲気を持っていた。
391:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:39:13.03:jpDSDOMkO
もうひとりは、黄色いカチューシャとリボンが印象的だった。顔立ちはかなり整っている。
春原「かわいくない?」
朋也「ああ、まぁな」
春原「決まりだね。いくぞ、岡崎っ」
―――――――――――――――――――――
春原「ねぇ、君たち、今、暇?」
進路を塞ぐように相手の正面に立ち、あげくボディタッチまでしていた。
女1「………」
女2「………」
春原「よかったらさ、僕らと遊ばない? 楽しいことしまくろうよ」
春原「朝まで、あ~んなことや、こ~んなことしてさっ、げへへ」
下ネタの追撃。最悪な第一印象を、これでもかというくらいにねじこんでいた。
女1「あんたたち…春原と、岡崎じゃない?」
カチューシャをした、気の強そうな女がそう返してきた。
春原「うん? そうだけど…なに? 僕らって、そんなに有名なの?」
392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:40:09.92:+UZ/pLeq0
女1「うちの学校じゃ、悪名の高さで知れ渡ってるわね」
春原「あ、君も光坂なんだ? へぇ、知らなかったなぁ、こんな可愛い子がいたなんて」
春原「名前、なんていうの?」
女1「涼宮」
朋也(ん?)
どこかで聞いたような…
春原「え? って、もしかして…キョンが入ってる部活の、部長さん?」
朋也(ああ、そういえば…)
あいつの所属する部活動の話になった時、その名が出てきたことを思い出した。
涼宮「そうよ」
春原「へぇ、美人だって聞いてたけど、ほんとだったんだ」
春原「でも、残念だなぁ。もうキョンっていう彼氏がいるもんね」
春原「さすがに友達の彼女は寝取れないからなぁ」
涼宮「キョンとは付き合ってないわ。誤解しないで」
春原「まぁたまた~、みんな言ってるよ」
393:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:41:28.32:jpDSDOMkO
涼宮「それはただの、何も知らない外野の意見よ。信憑性なんかゼロに等しいわ」
涼宮「そんなことより、あんたたち、今日一日、SOS団の臨時団員として働きなさい」
春原「へ? どういうこと?」
涼宮「私たち、6対6のサバイバルゲームに挑むためのリザーバーを探していたところなの」
涼宮「こっちは4人しかいないから、あとふたり必要だったのよ」
涼宮「そこへ、丁度あんたたちが現れたってわけ」
春原「ふぅん…サバイバルゲームねぇ…なんか、おもしろそうじゃん」
朋也「そうか?」
春原「おまえも、やるよな?」
朋也「いや、俺は…」
涼宮「拒否権はないわ。バスケだかなんだかで、キョンを貸してあげたことあったでしょう」
まるで備品のように言う。
涼宮「あの時の貸しは、ここできっちりと清算してもらうわ」
断ることを許さない、意志のこもった瞳。
朋也「…ああ、わかったよ。借りは返さなきゃいけないよな」
394:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:41:53.93:+UZ/pLeq0
涼宮「殊勝な心がけね。ま、当然だけど」
強引な女だ。あいつの気苦労も、こいつからきているんだろうな…きっと。
―――――――――――――――――――――
涼宮「あ、来た」
向かいの通りから、キョンと、長身で細身の男が一緒に駆けてきた。
涼宮「遅いわよっ、キョン、古泉くん。呼んだらすぐに来なさい」
男「すみません、走って来たんですが…気合が足りなかったみたいですね」
キョン「いや、遅くはないだろ、全然早…って、あれ…」
春原「よう、キョン」
朋也「よお」
キョン「春原に、岡崎…え、もしかして、おまえらか? サバゲーの補充要員って…」
涼宮「その通りよ」
涼宮が答える。
キョン「マジでか…」
涼宮「大マジよ。これで参加人数を満たせたわ」
395:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:43:08.76:jpDSDOMkO
好戦的な口調で言う。
早く戦いたくてうずうずしているようだった。
早く戦いたくてうずうずしているようだった。
涼宮「さて、キョンは面識あるからいいとして…古泉くん、有希。一応自己紹介しときなさい」
涼宮「これからチームで戦うことになるんだからね。こういう形式的なことも大事よ」
男「そうですね。では、僕から…」
一歩前に出る。
男「古泉一樹です。以後お見知りおきを」
笑顔を作り、さわやかに言ってみせた。
さらさらの長髪で、いかにもモテそうな美男子といった容姿をしている。
さらさらの長髪で、いかにもモテそうな美男子といった容姿をしている。
古泉「直接お会いするのは初めてですが…僕の方は、あなたたちのことは、以前から存じてます」
丁寧口調のまま続ける。
春原「あん? そうなの?」
古泉「ええ、あなたたちコンビは、その筋の人間には人気が…」
女「…それ以上喋るな」
古泉「んっふ、これは手厳しい」
女「………」
396:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:43:30.81:+UZ/pLeq0
涼宮と一緒にいた女。
おとなしそうだが、意外と毒を吐く奴なんだろうか…
おとなしそうだが、意外と毒を吐く奴なんだろうか…
女「…長門有希」
こちらを見て、その一言だけをぽつりと漏らした。
朋也「岡崎朋也」
春原「春原陽平」
俺たちも名前だけ伝えた。
なんとも事務的な自己紹介だった。
なんとも事務的な自己紹介だった。
涼宮「じゃ、親交も深まったことだし、行くわよっ」
多分、なにも関係に変化はなかっただろう。
―――――――――――――――――――――
キョン「しっかし…まさか、おまえらを連れてくるとはな…予想外だったよ」
春原「おう、よろしくな、キョン」
涼宮の後に続き、現地へと向かう俺たち一向。
朋也「つーか、おまえらって、サバゲー愛好会かなんかなのか」
キョン「いや、そういうわけじゃないんだけどな…たまたまだよ」
397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:44:46.23:jpDSDOMkO
キョン「俺たち、休みの日は市街探索…ああ、まぁ…町の中をぶらついたりしてるんだけどさ…」
キョン「きのう、その途中で、ある男に絡まれたんだ」
キョン「その時に、サバゲーの話を持ちかけられて、うちの団長様が乗っちまったんだ」
朋也「ふぅん…そうなのか」
しかし、いきなりサバゲーに誘ってくるなんて、どんな男なんだろう…
ミリタリーな趣味を持った、アブナイ奴なのか…
ミリタリーな趣味を持った、アブナイ奴なのか…
春原「でもさ、涼宮…ハルヒちゃんだっけ? 初めてみたけど、可愛いよね」
春原「おまえも、けっこうやるじゃん」
キョン「なにをどうやるのかわからん」
春原「はっ、とぼけん…うわっ」
ばっとケツを抑える春原。
春原「な、なにすんだよっ」
古泉「おっと、失礼。手が空中で派手にスリップしてしまいました」
春原「な、なに言って…」
古泉「事故ですよ、事・故。んっふ」
春原「………」
398:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:45:14.53:+UZ/pLeq0
ぎこちなく俺たちに振り返る。
春原「なんか、気色悪いんだけど、こいつ…」
キョン「そういう奴なんだ。自分の身は自分で守ってくれ」
春原「…ははっ、どういう意味なのかなぁ」
朋也「…さぁな」
できるだけ考えたくない…なにも考えないようにしよう…。
―――――――――――――――――――――
涼宮「着いたわ」
広い敷地の中に木造の建物がひとつ、ぽつんと佇んでいた。
誰の記憶からも忘れ去られたかのように、老朽化が進んでいる。
誰の記憶からも忘れ去られたかのように、老朽化が進んでいる。
涼宮「ここで待ち合わせることになってたはずんなんだけど…」
腕時計を見る。
涼宮「時間は合ってるわね…」
男「おう、お嬢ちゃん。逃げずにやってきたか」
どこからともなく、ガラの悪そうな男が現れた。
タッパがあり、威圧感もそれ相応にあった。
タッパがあり、威圧感もそれ相応にあった。
399:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:46:35.37:jpDSDOMkO
年の頃は、30前後だろうか。
それにしては、悪戯っ子のように目がギラギラしていた。
それにしては、悪戯っ子のように目がギラギラしていた。
涼宮「当たり前じゃない。こんな面白そうなイベント、あたしがすっぽかすわけないわ」
男「ふん、そうかい。威勢のいいこった」
男「こっちの準備は大体できてるからな。あとはおまえらを待つだけだ」
男「装備は向こうの小屋に一式揃えてある」
ここからそう遠くない場所に、物置のような小さい小屋があった。
男「一四○○(いちよんまるまる)時にゲーム開始だ」
男「俺たちは裏口から、おまえらは正面からあの建物に突入する」
木造の建物を指さす。
男「それでいいな?」
涼宮「ええ、わかったわ」
男「せいぜい俺様を楽しませてくれよ」
不敵な笑みを見せ、奥に消えていった。
涼宮「みんな、気合いれていくわよっ」
興奮した面持ちで小屋にずんずんと歩いていく。
400:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:47:35.86:+UZ/pLeq0
俺たちもそれに続いた。
―――――――――――――――――――――
春原「うわ、かっけぇ…」
小屋の中にあったのは、プロテクトアーマーのような重装甲と、マシンガンだった。
ディテールに凝っていて、とてもおもちゃとは思えない。
ディテールに凝っていて、とてもおもちゃとは思えない。
朋也(お…建物の見取り図まである…)
朋也(やけに本格的だな…まさか、銃も本物ってことはないだろうな…)
………。
朋也(はっ…まさかな…)
長門「…弾はゴム弾。ギアの上からでも被弾すれば、肉体的な痛みは相当のものだと予想される」
長門「気をつけたほうがいい」
長門有希が装備を身につけながら、淡々と言った。
長門「いかなる状況であれ、撃たれるよりは撃つべき」
涼宮「いいこと言うじゃない、有希。そうよ、攻撃は最大の防御なんだからね」
涼宮「さっさと全滅させちゃいましょ」
キョン「また、物騒なことを…つーか、危ないんじゃないのか、このゲーム」
401:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:48:58.10:jpDSDOMkO
長門「死に至るまでの危険性はない。あくまで被弾箇所の人体が著しく損傷するだけ」
キョン「いや、十分ヤバイじゃないか…」
春原『みろよ、これ、すげぇかっこよくない?』
春原が上半身だけアーマーを身にまとっていた。
春原『これ、ガスマスクって奴だよね?』
篭った声。顔面を保護する装甲の下から発声しているからだ。
春原『なんか、本格的だよね…っうわっ』
古泉「んっふ、下半身がお留守ですよ、んっふ」
春原『なんなんだよ、こいつ!? いつの間にかすげぇ近いよっ!』
古泉「特に*を守らないと…常に誰かに狙われていることを、もっと自覚したほうがいい」
春原『ひぃぃいいっ』
古泉に襲われ始める春原。
朋也(しかし…)
あの、長門有希という子は、なんでダメージのでかさがわかるんだろう…
長門「………」
402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:49:32.36:+UZ/pLeq0
何者なんだ、あいつは…
―――――――――――――――――――――
時間になり、屋内に突入した。
中は薄暗く、視界が悪かった。
そのため、暗視ゴーグルを作動させて進むことになった。
中は薄暗く、視界が悪かった。
そのため、暗視ゴーグルを作動させて進むことになった。
キョン『暗視調整、良し。吸気弁、作動良し』
朋也『妙な気分だな…』
キョン『ああ。体は軽いのに視界が重い』
春原『潜水夫になった気分だよね』
涼宮『そこ、無駄口を叩くんじゃないわよ。オペレーションスタートっ』
古泉『了解です、ゆりっぺ』
長門『…自重しろ』
古泉『んっふ、すみません、もしくはさーせん』
―――――――――――――――――――――
周りを警戒しつつ、ゆっくりと廊下を進む。
先頭は涼宮だ。この部隊の指揮官であるため、強化服の上から腕章をしていた。
死んでたまるか戦線、と書かれてある。
先頭は涼宮だ。この部隊の指揮官であるため、強化服の上から腕章をしていた。
死んでたまるか戦線、と書かれてある。
403:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:50:54.36:jpDSDOMkO
涼宮『いないわね…』
未だ敵とエンカウントしていなかった。
物音もしない。
物音もしない。
涼宮『この区間にはいないのかしら…』
その言葉を聞いて、俺たちの緊張が少しだけ解けた。
その時…
その時…
朋也『ん?』
赤いランプが四つ、奥の通路で軌跡を残しながら揺らめいた。
電気も通っていないようなこの建物内での明かり。
考えられる光源は、ひとつしかない。暗視装置が放つ光だ。
電気も通っていないようなこの建物内での明かり。
考えられる光源は、ひとつしかない。暗視装置が放つ光だ。
ばたたたたっ! ばたたたたっ!
案の定、すぐに銃声が響いた。
涼宮『っ! 待ち伏せよっ!』
全員、さっと遮蔽物に身を隠す。
弾が柱に当たって、バチバチと大きな音を立てていた。
俺たちも、相手の攻撃が休まると、その隙に身を乗り出して撃ち返した。
弾が柱に当たって、バチバチと大きな音を立てていた。
俺たちも、相手の攻撃が休まると、その隙に身を乗り出して撃ち返した。
涼宮『古泉くん、有希! その通路からあそこまで回りこめるから、潜行してちょうだい!』
涼宮『挟撃するわよっ』
404:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:51:20.78:+UZ/pLeq0
最も通路の入り口に近かったふたりに指示を出す。
古泉『わかりました、任せてください』
長門『わかった』
即時行動に移し、がしゃがしゃと装備の揺れる音を立てながら消えていった。
朋也(すげぇな、涼宮の奴…)
あの指示が出せるということは、建物内の空間の把握ができているということだ。
それはつまり、ほんのわずかな時間見取り図を眺めただけで、完全に頭の中に入れてしまったことを意味する。
それはつまり、ほんのわずかな時間見取り図を眺めただけで、完全に頭の中に入れてしまったことを意味する。
たたたっ! ばたたたっ!
向こうから新しい銃声がふたつ。
古泉と長門有希だった。
手を振って、制圧が完了したことをこちらに伝えてきた。
不意をつかれはしたが、意外にあっけなく終わった開幕戦。
涼宮の采配が的確だったおかげだ。
敵は正面から俺たちの攻撃を受け続け、突然横から潜行部隊の奇襲を受けたのだ。
ひとたまりもなかったろう。
古泉と長門有希だった。
手を振って、制圧が完了したことをこちらに伝えてきた。
不意をつかれはしたが、意外にあっけなく終わった開幕戦。
涼宮の采配が的確だったおかげだ。
敵は正面から俺たちの攻撃を受け続け、突然横から潜行部隊の奇襲を受けたのだ。
ひとたまりもなかったろう。
涼宮『よくやったわ、ふたりとも』
通路を抜け、敵の居た位置までやってくる。
そこは、ずいぶんと開けた場所だった。
さっきまでの一方通行な一本道と違い、動きやすい。
そこは、ずいぶんと開けた場所だった。
さっきまでの一方通行な一本道と違い、動きやすい。
古泉『んっふ、正確に仕事ができて、なによりです、Angel Beatあっ…』
407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:53:31.33:jpDSDOMkO
ばたたたたっ!
かんっ、とひとつ金属音がしたと思うと、古泉が発砲しながら勢いよく倒れた。
敵からのヘッドショットを受けたのだ。
敵からのヘッドショットを受けたのだ。
涼宮『どこからっ…』
向かい側の出入り口から、がしゃがしゃと音を立てながら足音が遠のいていった。
ヒットアンドアウェイだ。敵は、反撃される前に退いていた。
ヒットアンドアウェイだ。敵は、反撃される前に退いていた。
涼宮『逃げられたか…』
キョン『大丈夫か、長門』
長門有希が床にうずくまっている。
キョンに安否を訊かれ、フェイスセーフ、メット、吸気弁の三つを外した。
キョンに安否を訊かれ、フェイスセーフ、メット、吸気弁の三つを外した。
長門「問題ない。でも…ルール上もう動けない」
手や足など、体の末端はセーフだが、内臓の詰まった胴や、頭にもらえばそこでゲームオーバーということだった。
長門「…あなたのせい」
古泉「僕も突然のことだったので、なにがなんだか…一応すみませんでした」
古泉も頭部の装備をすべて外していた。
長門「…死ぬならひとりで死ぬべき。馬鹿」
…古泉の死に際の乱射が長門有希に被弾していたらしい。
408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:53:59.70:+UZ/pLeq0
キョン『これでまた同人数に戻っちまったな…』
今しがたふたり処理した矢先の出来事だったので、落胆の具合も大きい。
涼宮『終わったことは、言っても仕方ないわ。先へ進みましょう』
涼宮『ふたりのカタキを取るのよ』
言って、先行する。
春原『ハルヒちゃん、頼もしいね』
キョン『こういう時だけは、役に立つんだ、あいつも』
涼宮『なにがこういう時だけよ! 聞えてるんだからね、キョンっ』
キョン『あー、すまんすまん…』
―――――――――――――――――――――
涼宮『静かね…』
通路を進むが、人のいる気配が感じられない。
しかし…
しかし…
朋也『俺たちが追う立場になってるけど、それって不利なんじゃないか』
涼宮『じゃ、私たちも待ち伏せしろっていうの? そんなの嫌よ』
涼宮『言ったでしょ? 攻撃は最大の防御だって。なにより、あたしの性分にあわないわ』
409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:55:13.59:jpDSDOMkO
朋也『あ、そ…』
闘争心の塊のような奴だった。
春原『ん…?』
春原『うわぁあああっ! ゴキブリだぁあああっ!』
ばたたたたたっ!
朋也『馬鹿、んなのほっとけよ!』
涼宮『なにやってんの、金髪! 敵に位置がばれるじゃないっ!』
キョン『春原、無駄弾撃つなっ』
春原『わ、わりぃ、つい…』
どがらしゃーっ!
大きい音がして、目の前で天井が抜けていた。
春原の撃った弾が、脆くなった部分に当たり、ぶち抜いてしまったんだろうか…。
もくもくと埃が舞う。が、マスクをしている俺たちには無害だった。
次第に煙も薄れ、晴れていく視界。
春原の撃った弾が、脆くなった部分に当たり、ぶち抜いてしまったんだろうか…。
もくもくと埃が舞う。が、マスクをしている俺たちには無害だった。
次第に煙も薄れ、晴れていく視界。
涼宮『あ…』
そこには、敵が三人、重なって倒れていた。
上の階で、丁度床が崩れた場所にいて、落ちてきたのだろう。
上の階で、丁度床が崩れた場所にいて、落ちてきたのだろう。
411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:55:40.78:+UZ/pLeq0
その衝撃からか、吸気弁が外れて埃を吸い込んでしまい、咳き込んでいる者もいた。
すかさず俺たちが銃を構えると、手を挙げて降伏していた。
すかさず俺たちが銃を構えると、手を挙げて降伏していた。
―――――――――――――――――――――
春原『いやぁ、なんか、あそこは怪しいと思ってたんだよねっ』
春原『なんていうの? 動物的カンってやつ?』
あの偶発的な事故以来、春原は延々と自画自賛し続けていた。
朋也『おまえ、うるさい』
春原『いいじゃん、敵もあと一人なんだしさ。軽くトークしながらいこうぜ』
その残った一人とは、やっぱり、あの目つきの悪い男なんだろう。
今は3対1の状況で有利だが…なにか嫌な予感がしてならない。
今は3対1の状況で有利だが…なにか嫌な予感がしてならない。
春原『ん…どうしたの、いきなり止まっちゃってさ』
涼宮『この扉の向こうは大部屋になってるの。特に入り組んでいるわけでもなく、単純な構造よ』
涼宮『もしここに潜伏してるとしたら…』
涼宮『不用意に全員で突入すれば、一網打尽にされる可能性もあるわ』
涼宮『身を隠す遮蔽物が、室内にある家具ぐらいしかないでしょうからね』
涼宮『それに、罠を張られているかもしれないしね』
413:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:56:55.20:jpDSDOMkO
春原『ははっ、大丈夫だって。三人で袋叩きにしちゃえばいいじゃん』
春原が銃を構えることもなく、無造作に扉を開けた。
涼宮『あ、馬鹿っ…』
入り口に足を踏み入れる春原。
室内を見回す。
室内を見回す。
春原『何もないよ』
俺たちに向き直り、肩をすくめてみせる。
そして、また正面に視線を戻す。
そして、また正面に視線を戻す。
春原『この部屋にはいなかったみた…』
カシャッ
物音がしたと思うと、大量の日光が窓から降り注いできた。
朋也『うお…』
暗視装置がちりちりと焼けていた。
腕で光を遮り、影を作ることで対処した。
腕で光を遮り、影を作ることで対処した。
春原『うぐあぁ…目がぁあっ! 目がぁあっ!』
春原はモロに直視してしまったようだ。
となれば、おそらく暗視装置は焼き切れてしまっているだろう。
となれば、おそらく暗視装置は焼き切れてしまっているだろう。
414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:57:21.71:+UZ/pLeq0
ばたたたたたたっ!
春原『ぎゃぁあああああああああっ!』
銃弾を浴びながら後ずさり、俺たちのいる場所まで押し戻され、そこでばたりと倒れた。
朋也(くそっ…!)
暗視装置を切り、半身になって室内を見る。
すると、光を背にして、ひとりの男が立っていた。
斜光カーテンを開けて、暗視装置の弱点を突いてきたのだ、あいつは…。
俺は迷わず発砲する。
すると、光を背にして、ひとりの男が立っていた。
斜光カーテンを開けて、暗視装置の弱点を突いてきたのだ、あいつは…。
俺は迷わず発砲する。
ばたたたたたっ! ばたたたたっ!
キョンと涼宮も加わり、掃討射撃のように絶え間なく弾が飛んでいく。
だが、そんな派手な攻撃もむなしく、ソファーに身を隠しながら別の出入り口から逃げられてしまった。
だが、そんな派手な攻撃もむなしく、ソファーに身を隠しながら別の出入り口から逃げられてしまった。
朋也(逃がすかっ…!)
俺が一番に追い始め、その後に残りのふたりもついてきた。
―――――――――――――――――――――
部屋から出ると、すぐに階段があった。
暗視装置を再び作動させ、一気に下りていく。
そして、中程まで来たところで…
暗視装置を再び作動させ、一気に下りていく。
そして、中程まで来たところで…
どがぁっ!
415:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:58:38.24:jpDSDOMkO
最上段から何かが砕ける音。
朋也(嘘だろ…!?)
壁を突き破って、突然敵が現れていた。
銃を構える。狙われるのは、当然一番近い位置に居る…
銃を構える。狙われるのは、当然一番近い位置に居る…
涼宮『嘘っ…』
ばたたたたたたっ!
キョン『うぁああっ!』
声を上げたのは、涼宮ではなく、キョンだった。
自分が盾となり、涼宮をを守っていたのだ。
自分が盾となり、涼宮をを守っていたのだ。
涼宮『キョンっ! なんで…』
涼宮はキョンが階段から落ちないように支え、両手がふさがり、銃を落としてしまっていた。
容赦なく敵の銃口が向く。
容赦なく敵の銃口が向く。
朋也(くそっ…!)
朋也『喰らえっ』
ばたたたたたたたっ!
敵に向けて発砲する。
が、すぐさま逃げられてしまった。
が、すぐさま逃げられてしまった。
416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 03:59:02.96:+UZ/pLeq0
涼宮『キョン…』
キョン『あつつ…あー、俺はもうゲームオーバーだな…あとは任せた』
涼宮に抱きかかえられるその腕の中で、若干苦しそうに言う。
涼宮『……うん』
朋也『行くぞ、涼宮。終わりは近い』
涼宮『…わかってるわ』
―――――――――――――――――――――
薄暗い通路をただひたすら進む。俺が前衛、涼宮が後衛だった。
俺たちの他に足音は聞えない。やはり、また待ち伏せなのだろう。
今は2対1の状況なので、その判断は正しいはずだ。
俺たちの他に足音は聞えない。やはり、また待ち伏せなのだろう。
今は2対1の状況なので、その判断は正しいはずだ。
朋也『ん…』
大き目の扉が目の前にあった。
一度立ち止まる。
一度立ち止まる。
涼宮『この先は、結構な広さのあるホールになってるわ。そして…出入り口はここしかないの』
涼宮『もし、ここでキャンプしているとしたら…決着は、ここでつくことになるわ』
朋也『…そうか』
涼宮『短時間で罠が用意できたかどうかはわからないけど、用心していきましょう』
417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:00:37.19:jpDSDOMkO
朋也『ああ、わかった』
俺はまず様子見のために、扉を慎重に開くだけで、中に突入することはなかった。
次に、銃を構えつつ辺りを見渡して、警戒しながら足を踏み入れた。
長机が多く並んでおり、最奥には人ひとり隠れられるだけの教卓のようなものがあった。
次に、銃を構えつつ辺りを見渡して、警戒しながら足を踏み入れた。
長机が多く並んでおり、最奥には人ひとり隠れられるだけの教卓のようなものがあった。
朋也(居るのか…?)
そこに注意を向け、進んでいく。
涼宮も後ろからついてくる。
涼宮も後ろからついてくる。
朋也(あそこしかないよな…居るとしたら…)
緊張が高まる。
ばたたたたっ!
奥から銃声。
身をかがめて長机の下に隠れる。
俺と涼宮は左右に散っていた。
身をかがめて長机の下に隠れる。
俺と涼宮は左右に散っていた。
朋也(やっぱりか…)
朋也(よし…)
身を起こして、教卓に銃を向ける。
その時…
右の壁にある窪みから、赤い光が尾を引きながら出てきた。
その時…
右の壁にある窪みから、赤い光が尾を引きながら出てきた。
朋也(な…)
418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:01:10.11:+UZ/pLeq0
ばたたたたっ!
朋也『うぉあっ』
咄嗟に伏せて難を逃れる。
男『ふん、なかなかいい反射神経してるじゃねぇか』
ばたたたっ!
涼宮が発砲する。
男『おっと』
しゃがみ、奥へ移動していった。
朋也(どうなってんだ…)
さっきは確かに奥から発砲してきたはずだ。
それで、あの場所に居ると当たりをつけたのだから。
それで、あの場所に居ると当たりをつけたのだから。
朋也(一瞬で移動…? いや、ありえない、あんな距離だからな…)
朋也(なら…銃が二丁あるのか…? 一つはおとり用で…)
朋也(でも、どうやって…)
朋也(あ…)
ひとつ思い当たる。
419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:02:15.82:jpDSDOMkO
あの大部屋のすぐ外で、春原がゲームオーバーになっていたことを。
おそらく、回収していたのだろう。
そして、仕掛けていたのだ。この罠を。
どうやって遠隔発砲できたのかは知らないが…やはり只者じゃない。
おそらく、回収していたのだろう。
そして、仕掛けていたのだ。この罠を。
どうやって遠隔発砲できたのかは知らないが…やはり只者じゃない。
朋也(しかし…)
マガジンを取り出す。
重さからして、残弾も残り少ないことがわかった。
それは、涼宮も同じことだろう。
このまま小競り合いを続けて消耗戦になれば、負け戦になることは目に見えている。
重さからして、残弾も残り少ないことがわかった。
それは、涼宮も同じことだろう。
このまま小競り合いを続けて消耗戦になれば、負け戦になることは目に見えている。
朋也(…ふぅ。仕方ねぇな…やるか)
俺は一つの賭けに出ることにした。
ともすれば、無駄死にするだけかもしれない策だったが…いや、策とも呼べないかもしれない。
だが、この状況を打破し、勝利できる可能性も秘めているはずだ。
ともすれば、無駄死にするだけかもしれない策だったが…いや、策とも呼べないかもしれない。
だが、この状況を打破し、勝利できる可能性も秘めているはずだ。
朋也『涼宮』
俺は銃を放った。
受け取る涼宮。
受け取る涼宮。
涼宮『なによ…どうしたの』
朋也『俺は今からあの男を拘束しに行く。丸腰でな』
朋也『おまえは発砲して動きを止めておいてくれ』
涼宮『そんなことできるの?』
420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:02:39.45:+UZ/pLeq0
朋也『やるしかねぇだろ。弾、もうないだろ?』
涼宮『…そうね。じゃあ、頼んだわ』
朋也『ああ』
朋也(さて…)
俺は長机のひとつを抱えると、それを盾にして突進していった。
昨日の水鉄砲遊びの時、ダンボールで防いでいたようにだ。
昨日の水鉄砲遊びの時、ダンボールで防いでいたようにだ。
男『かっ、馬鹿だな。蜂の巣にしてやるよ』
ばたたたたたっ!
朋也『うぐ…』
ミシミシと机が削られていく。
支える手にも、その振動が伝わってくる。
支える手にも、その振動が伝わってくる。
ばたたたたっ!
涼宮からの援護が入り、相手の攻撃の手が休まる。
朋也(ぐ、うおらっ…)
飛びかかれる位置までやってくる。
男『ちっ』
421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:03:46.36:jpDSDOMkO
逃げようとするが…
ばたたたたっ!
涼宮の援護射撃によって動きが止まる。
朋也『おらっ』
ついに組み付くことに成功した。
男『離せ、小僧っ』
ものすごい力で抵抗される。
この状態も、長くは持たないだろう。
この状態も、長くは持たないだろう。
朋也『撃てっ! 涼宮っ!』
涼宮『でも、あんたにも当たるじゃないっ!』
朋也『いいから、早くしろっ! もう解かれるっ』
涼宮『わ、わかったわよっ! 恨まないでよねっ!』
ばたたたたたっ!
男『あだだだっ!』
朋也『ってぇ!』
弾を受けながら倒れる俺と敵の男。
422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:04:06.26:+UZ/pLeq0
男『はぁー…はぁ…』
重く呼吸にあえぎながらも、フェイスガードと吸気弁を外す。
俺も寝転がったまま同じように装備を脱いだ。
俺も寝転がったまま同じように装備を脱いだ。
男「なかなか根性あるじゃねぇか、小僧」
朋也「あんたも、かなり手ごわかったぜ、オッサン」
小僧と言われたお返しに、オッサンを強調してやる。
男「かっ、しっかし、この俺様が負けちまうとはな…」
ポケットからタバコを取り出して、火をつけた。
そう、戦いは終わったのだ。俺たちの勝利を以って。
そう、戦いは終わったのだ。俺たちの勝利を以って。
―――――――――――――――――――――
男「おめぇら、最近のガキにしちゃ、骨があるな」
男「俺たち古河ベーカリーズに勝つなんてよ」
ベーカリー…パン?
涼宮「当然じゃない。私たちSOS団は世界最強なのよ」
涼宮「それを知らしめるために、日夜活動してるの」
涼宮「今は光坂だけだけど、いずれは全国に支部を置いてやるんだから」
423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:05:17.52:jpDSDOMkO
男「ん…おまえら、もしかして、光坂の生徒なのか?」
涼宮「そうよ」
男「そうか…じゃ、渚の後輩ってことになるのか…」
渚…?
朋也(う~ん…)
誰かがその名を言っていたような…。
記憶が曖昧で思い出せない。
記憶が曖昧で思い出せない。
男「ま、いいや。おら、ご褒美をやる」
言って、全員にパンを握らせた。
男「うちは古河パンってパン屋をやってるんだが、気が向いたら来い」
男「おまえらなら、全品一割引きの出血大サービスだ」
出血するどころか、ただのかすり傷だった。
それに、店の名前だけ言われても、場所がわからない。
この人には、絶対商才がないと思う。
それに、店の名前だけ言われても、場所がわからない。
この人には、絶対商才がないと思う。
男「それじゃあな。今日は楽しかったぜ」
それだけ言うと、背を向けて去っていった。
涼宮「ふふふ、勝った後はやっぱり気分がいいわね」
424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:05:40.18:+UZ/pLeq0
キョン「おまえはノーダメージだから、そりゃ気分もいいだろうよ…いつつ…」
涼宮「あ…キョン…その、大丈夫?」
キョン「まぁ、なんとかな…」
朋也「そういや、おまえ、涼宮を身を挺して守ってたよな」
キョン「お、おい、岡崎…」
春原「マジで? 愛だねぇ」
キョン「違うって…指揮系統をやられるわけにはいかないだろ」
春原「じゃあ、エースである僕の盾になってくれてもよかったんじゃない?」
春原「僕も、かなり喰らっちゃって…だいぶ体が痛むからね…骨まで堪えるよ…」
古泉「僕が居れば、その*だけは守り通して…いや、責め通してあげられたんですけどね」
古泉「ふぅんもっふっ!!」
春原「ひぃっ! なんで頭に喰らったのにこんな元気なんだよ、こいつ!?」
古泉「下半身は無傷ですからね…まっ↓がーれ↑」
春原「ひぃいっ」
手負いの春原に好き放題始める古泉。
思わず目を逸らしたくなるほど陰惨な光景だった。
思わず目を逸らしたくなるほど陰惨な光景だった。
426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:06:49.93:jpDSDOMkO
朋也(そういえば…)
長門有希も、至近距離で古泉のフレンドリーファイアを受けていたはずだが…
長門「………」
何事もなかったかのような涼しい顔。
………。
やっぱり、こいつからはなにか得たいの知れない深いものを感じる…
………。
やっぱり、こいつからはなにか得たいの知れない深いものを感じる…
涼宮「ところで、岡崎。あんた、正式にSOS団に入団してみない?」
朋也「あん?」
涼宮「あの金髪はともかく、あんたはなかなか使えそうだからね」
涼宮「もし、入るんなら、キョンより上の地位に置いてあげるわ」
キョン「なんでだよ…」
涼宮「あんたは定年まで平団員で固定なのよ」
キョン「ああ、そうですか…はぁ…やれやれ…」
朋也「せっかくだけど、遠慮しとくよ」
涼宮「なんですって? あたしの誘いを蹴るっていうの?」
キョン「やめとけ、ハルヒ。こいつは無理に押さえつけてられるようなタマじゃない」
427:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:07:32.59:+UZ/pLeq0
涼宮「だからこそ欲しいんじゃない」
キョン「諦めろ。最近は、こいつにも新しい居場所が出来つつあるんだ」
キョン「それを邪魔するのは、野暮ってもんだろ」
俺を見て、わずかに笑みを浮かべた。
それは…やっぱり、軽音部のことを言っているんだろうか。
それは…やっぱり、軽音部のことを言っているんだろうか。
涼宮「でも…」
キョン「いいから、もう帰るぞ」
言って、その背を優しく押した。
涼宮「もう…わかったわよ…」
キョン「長門も、いくぞ」
長門「………」
こく、と小さく頷いて歩き出す。
キョン「じゃあな、岡崎」
朋也「ああ、じゃあな」
春原「って、こいつも連れて帰ってくれよっ!」
古泉「セェカンドレイドッ!!! フンッ!」
428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 04:08:27.95:jpDSDOMkO
春原「ひぃぃいいっ」
後ろで悲鳴が上がったが、誰も振り返らなかった。
俺は、あのオッサンにもらったパンの袋を開けた。
一口かじってみる。
俺は、あのオッサンにもらったパンの袋を開けた。
一口かじってみる。
朋也(うげ…)
とてもマズかった。なぜか食感もボリボリしているし…
捨てようかとも思ったが…食べ物を粗末にするのもよくない。
道すがら、ジュースでも買って一気に流し込もうと、そう決めた。
捨てようかとも思ったが…食べ物を粗末にするのもよくない。
道すがら、ジュースでも買って一気に流し込もうと、そう決めた。
春原「って、助けてくれよっ!」
―――――――――――――――――――――