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朋也「軽音部? うんたん?」 5/15 土
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meteor089
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朋也「軽音部? うんたん?」
660:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:29:16.08:+UZ/pLeq0
5/15 土
火、水、木、金と過ぎ、創立者祭前日の土曜。
今日は午後から、体育館と講堂で明日のリハーサルが行われる。
三年のほとんどは真っ直ぐ帰宅することになるが、その他の生徒は昨日に引き続き明日の準備に入る。
学祭のような催しに、合計して一日分しか準備時間を割かないというのが実に進学校らしい。
今日は午後から、体育館と講堂で明日のリハーサルが行われる。
三年のほとんどは真っ直ぐ帰宅することになるが、その他の生徒は昨日に引き続き明日の準備に入る。
学祭のような催しに、合計して一日分しか準備時間を割かないというのが実に進学校らしい。
和「ふぅ…」
律「お疲れだなぁ、和」
澪「生徒会、すごく忙しそうだもんな」
和「ええ、まぁね…」
創立者祭は生徒会主導らしく、真鍋は昨日から各種業務に追われ奔走していた。
それはもう、昼食をゆっくり食べる時間さえまともに取れないほどに。
それはもう、昼食をゆっくり食べる時間さえまともに取れないほどに。
和「ん…」
腕時計を見る。
和「もうこんな時間…そろそろいかないと」
言って、弁当を片して席を立った。
和「また後でね」
律「おう」
661:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:30:28.87:jpDSDOMkO
唯「頑張ってね、和ちゃん」
和「あんたたちもね」
―――――――――――――――――――――
律「んじゃ、リハ行くか」
昼を済ますと、俺たちはそのまま部室へやってきた。
これから機材の搬入が始まるのだ。
これから機材の搬入が始まるのだ。
律「あんたらは重いもの持ってくれよ」
朋也「ああ、わかってるよ」
春原「へいへい」
がちゃり
さわ子「ん…まだみんないるわね」
唯「あ、さわちゃん」
さわ子「ふふふ、今回のステージ衣装を持ってきたわよ」
その両腕にはケースが5段重ねで抱えられていた。
律「今週全然来ないと思ってたら…それ作ってたの?」
さわ子「ん~、ちょっと違うわね。確かに、衣装を作ってたっていうのもあるけど…」
662:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:30:52.08:+UZ/pLeq0
さわ子「主な原因は、新しく出来た合唱部の面倒をみてたことかしらね」
紬「え? 合唱部、できたんですか?」
さわ子「ええ。二年生の子が新しく部を作るために4人集めてね。あなたたちと似てるでしょ?」
律「あー、確かに。思い出すなぁ~…私たちは廃部になりかけてたところをギリで防いだんだよな」
唯「私という逸材が入ったことで救われたんだよね」
律「なにが逸材だよ、ハーモニカ吹けますとかハッタリかましてきたくせに」
唯「てへっ」
さわ子「ま、それで、技術指導を頼まれてしばらく出張してたのよ」
律「指導って、それ顧問の仕事じゃないの?」
さわ子「いろいろ事情があって、担当顧問は幸村先生がされてるんだけど…」
さわ子「先生、もともとは演劇部の顧問をされてらしたから、細かい技術面の指導はしてあげられないのよ」
あの人が演劇部の顧問…知らなかった。それほど活動が慎ましい部だったのだろう。
春原「あのジジィに大声出させたら、すぐに天からお迎えが来ちゃいそうだもんね」
さわ子「失礼なことを言わないっ」
ぽかっ
663:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:32:13.77:jpDSDOMkO
春原「あでぇっ」
紬「でも、ちゃんと活動できてるんですよね?」
さわ子「ええ、もちろんよ」
紬「そうですか…よかった」
律「そういや、ムギは最初合唱部志望だったんだよな」
春原「マジで? ムギちゃんが合唱って…それ、もう天使じゃん」
律「あー、はいはい、そうですね」
唯「でも、一年生の頃はまだ合唱部がなくてよかったよね。ムギちゃん取られちゃうなんて絶対いやだもん」
澪「そうだな。ムギは作曲もしてくれるし、放課後ティータイムに欠かせない存在だからな」
律「菓子も紅茶も用意してくれるしなっ」
澪「おまえは即物的すぎて嫌なやつに見えるな」
律「え、マジ? いや、でもそれだけじゃないぞ? もちろんムギの存在自体が必要だって思ってるよ」
紬「ふふ、ありがとう、みんな」
さわ子「ま、合唱部の話はさておき…はい、みんなどうぞ」
部員たちにケースを配る。
664:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:32:44.80:+UZ/pLeq0
さわ子「あら、梓ちゃんは?」
律「多分クラスの出し物関連で時間食ってるんじゃないの」
さわ子「そ。じゃあ、これはあとで渡しましょうかね」
言って、中野の分であろうケースを机に置いた。
朋也(ん?)
よくみると、そのケースには文字が書かれていた。
『かめしいくがかり』とある。
『かめしいくがかり』とある。
律「で、これなに? 『かちゅーしゃ』とか書いてあるんだけど」
紬「私のには『とだりゅうななだいめ』って書いてあるわ」
澪「私のは…うぅ…」
律「『しまぱん』って書いてあるな、澪のは」
唯「私は『うんたん』だけど…これ…もしかして…」
さわ子「ふふ、唯ちゃんは知っているようね。そうよ、その通りよ。開けてみなさい」
唯「うん」
ケースを開けて出てきたのは、近未来を思わせる皮製の真っ黒な全身スーツだった。
俺もよく知っているそのデザイン。それはまさしく…
俺もよく知っているそのデザイン。それはまさしく…
665:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:34:54.26:jpDSDOMkO
唯「やっぱり、フンススーツだっ」
春原「うお、すげぇっ」
さわ子「ふふふ、そうでしょうそうでしょう」
律「なんだよ、フンススーツって…」
唯「りっちゃん、FUNSZU知らないの?」
律「知らないけど」
唯「FUNSZUっていうのはね、星人との生き残りをかけた戦いを描いた物語なんだよ」
律「星人? 火星人とかそんなあれか?」
唯「う~ん、なんていうか、地球外生命体のことかな。プレデターとかエイリアンみたいな」
律「ふぅん…」
唯「それでね、このスーツを着ると体がすっごく強くなって、人間でも星人と互角に戦えるようになるんだよ」
律「へぇ…それでなんかSFチックなのか、これ」
スーツをつまみ、眺めながら言う。
さわ子「唯ちゃん、ちょっと物置で着替えてきなさい」
唯「はぁ~い」
666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:35:26.92:+UZ/pLeq0
―――――――――――――――――――――
唯「どう? かっこよくない?」
スーツを身にまとった唯が戻ってくる。
そのぽわぽわした顔に戦闘服はミスマッチかとも思ったが…意外にアリかもしれない。
そのぽわぽわした顔に戦闘服はミスマッチかとも思ったが…意外にアリかもしれない。
律「おお、確かに、かっこいいなっ」
紬「うん、いい感じ」
さわ子「絶対ウケるわよ、これ」
澪「でも…なんかピチピチしすぎてませんか?」
さわ子「大丈夫よ。澪ちゃんスタイルいいし、ボディラインがはっきり見えても問題無いわ」
澪「いえ、そういうことじゃなくて…」
律「あたしこれ着るわ」
紬「私も~」
澪「って、ちょっと待て、本気か? これ、絶対暑いぞ」
唯「けっこう涼しいよ?」
さわ子「その辺のことも考慮して、通気性がよくなるようにちょっと構造をいじってあるのよ。私のオリジナルでね」
667:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:36:47.40:jpDSDOMkO
澪「で、でも…」
律「なんだよ、澪。着ないつもりか? ひとりだけ普通だと、逆に浮いちゃうぞ」
澪「だ、だって、恥ずかしいし…」
律「いいから、着とけよ。これ着れば、こけてもパンモロしないですむぞ?」
澪「な、そ、そんなの気をつけてればいいだけの話だろっ。っていうか、梓も着たがらないと思うんだけどっ」
律「あいつは事後承諾でいいんだよ。後輩だし」
澪「そんな理不尽なことが許されるものかっ」
律「なんだその口調は…。まぁ、ともかく、ムギ。あたしらも着替えてこようぜー」
紬「うんっ」
澪「あ、ちょっと…」
律「諦めろ、澪。多数決的にもこれで決まりだ。唯も着る気まんまんだしな」
唯「いぇ~い」
澪「うぅ…でも…でも…」
律「みんな一緒の衣装で、結束力を固めようぜ? 同じ放課後ティータイムの一員としてな」
澪「…放課後ティータイムの…一員…?」
668:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:38:24.84:jpDSDOMkO
律「ああ、そうだ。私たち、仲間だろ?」
澪「うん…」
律「だからさ、おまえも来いよ。一緒に着替えようぜ?」
澪「…う、うん…わかった」
部長の口車に乗せられ、一緒に物置へと連行されていた。
春原「ねぇ、さわちゃん。僕もスーツ欲しいんだけど」
さわ子「あんたは着ても意味ないでしょ。エリア外に出てすぐ頭吹き飛ぶんだから」
春原「スーツ着てるのにそんな初歩的なミスで死ぬんすかっ!?」
朋也「まぁ、おまえは最初からエリア外に転送されてるからな」
春原「なんで僕だけ詰んだ状態から始まるんだよっ!」
朋也「カタストロフィの余波だな」
春原「納得いかねぇえええっ!」
―――――――――――――――――――――
人の行き交いの激しい昇降口を抜け、俺たちは講堂に向けて機材を運んでいた。
澪「うぅ…やっぱり目立つなぁ、この格好…」
670:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:47:08.55:+UZ/pLeq0
確かに…ここにくるまでにどれだけの注目を集めてきただろうか。
すれ違った生徒なんかは総じて興味津々な様子で振り返っていたのだ。
中にはこのスーツにピンとくる奴もいたようで、そんな連中は訳知り顔でにやにやとしていたが。
すれ違った生徒なんかは総じて興味津々な様子で振り返っていたのだ。
中にはこのスーツにピンとくる奴もいたようで、そんな連中は訳知り顔でにやにやとしていたが。
唯「気にしちゃダメだよ、フンスッ」
律「そうだぞ、フンスッ」
紬「頑張って、澪ちゃん、フンスッ」
澪「なんでそんなに気丈でいられるんだよぉ…」
―――――――――――――――――――――
和「…まぁ、なんていうか、けったいな格好ね」
唯「かっこいいって言って欲しいなぁ」
律「そうだそうだぁ」
和「澪も、よくそんなの着ようと思ったわね」
澪「深い事情があったんだ…しょうがなかったんだ…私の真価が試されていたんだ…」
ぶつぶつと呪文のようにつぶやく。
和「そ、そう…とりあえず、順番が来たら呼ぶから、それまで待機しててちょうだい」
―――――――――――――――――――――
671:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:48:44.89:jpDSDOMkO
舞台袖に荷を下ろし、観客席側に出る。
壇上では、白いスクリーンが用意されていて、そこに映像が映し出されていた。
なに部かは知らないが、映像の調子を見ているようだった。
壇上では、白いスクリーンが用意されていて、そこに映像が映し出されていた。
なに部かは知らないが、映像の調子を見ているようだった。
声「すみません、遅れましたっ」
唯「あっ、あずにゃんだ」
見ると、楽器を背負い、こっちに向けて小走りで駆けて来るところだった。
梓「準備が忙しくて、なかなか抜け出せなくて…すみませんでした」
梓「搬入も、もう終わっちゃってますよね…?」
澪「ああ。けど、しょうがないよ。一、二年生は大変だもんな、この時期は。だから、気にするな」
梓「は、はい…」
梓「………」
梓「えっと…それで、みなさんが着てるそれは一体…?」
澪「う、こ、これは…」
唯「ライブの衣装だよ」
梓「え? マジですか?」
律「超大マジだよん」
672:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:49:26.70:+UZ/pLeq0
梓「そんな…澪先輩まで…」
澪「梓…これは試練なんだ。放課後ティータイムの絆が問われているんだ」
中野の肩をがしっと掴み、力強く語りだす。
梓「は、はぁ…」
澪「だから、梓…おまえも本番ではこれを着るんだ。いいな?」
梓「は、はい…わかりました…」
その有無を言わせない迫力を前にして、首を縦に振るしかないようだった。
和『合唱部の方、次なので準備をお願いします』
拡声器を使った声が届いた。
すると、端の方に腰掛けていた女の子たち4人が、そろってステージの方に歩いていった。
すると、端の方に腰掛けていた女の子たち4人が、そろってステージの方に歩いていった。
梓「あれ…うちの学校って合唱部ありましたっけ」
紬「新しくできたのよ。それも、一から部員を集めて、顧問の先生まで見つけてね」
674:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/26(日) 07:51:48.00:+UZ/pLeq0
梓「へぇ…すごいですね」
合唱部のリハーサルを俺たちは見届ける。
上手いとか下手とか俺にはわからない。
けど、間違いなく心は動かされた。
それは聴く前と、聴いた後の気分が違っていたのだから間違いない。
それを感動と呼ぶのは簡単な気がしたけど、でも、きっとそうなのだと思う。
続けて、軽音部が呼び出された。
上手いとか下手とか俺にはわからない。
けど、間違いなく心は動かされた。
それは聴く前と、聴いた後の気分が違っていたのだから間違いない。
それを感動と呼ぶのは簡単な気がしたけど、でも、きっとそうなのだと思う。
続けて、軽音部が呼び出された。
律「うし、いくかっ」
唯「おーうっ」
澪「うんっ」
紬「やってやるですっ」
梓「って、それは私が言おうと思ってたのに…ひどいです…」
気合が入ったのか入ってないのかよくわからない号令をもって、歩き出す。
俺と春原はそれを見送った。
我が軽音部の、誇らしい部員たちを。
俺と春原はそれを見送った。
我が軽音部の、誇らしい部員たちを。
―――――――――――――――――――――