空見て笑って
太陽が少し傾きかけてきた頃。
風が草木を撫でる道を二人は行く。
終わりの見えない旅路を想起させる、どこまでも広がる森林地帯。
風が草木を撫でる道を二人は行く。
終わりの見えない旅路を想起させる、どこまでも広がる森林地帯。
「二人と合流したら何か食べよう。お腹が空いてたら元気出ないからね」
わざとらしいほどに明るく、響が語りかける。
風花もまた深入りすることはせず、静かに頷く。
風花もまた深入りすることはせず、静かに頷く。
結構な距離を歩いただろうか。
約束の場所はここからそう遠くないはずだ。
約束の場所はここからそう遠くないはずだ。
「環たちが亜美を見つけてくれてればいいんだけど」
「ほんとに、どこに行っちゃったのかなぁ?」
「案外この近くにいたりして、なーんて」
「ほんとに、どこに行っちゃったのかなぁ?」
「案外この近くにいたりして、なーんて」
冗談めかして言いながら、響は辺りを一瞥する。
何者かが木陰に姿を隠すのが見えたが、何の変哲もない林道だ。
何者かが木陰に姿を隠すのが見えたが、何の変哲もない林道だ。
「…………え?」
いや、そんなはずは。
しかし、今確かに響の目に映ったのは――
しかし、今確かに響の目に映ったのは――
「亜美……?」
先程まで血眼になって探していた、双海亜美その人なのだから。
だが、名前を呼んでも返事はない。
だが、名前を呼んでも返事はない。
「亜美ちゃん? 亜美ちゃんなの?」
響の声に気付き、風花もまたその名を呼ぶ。
依然として、応える者はいない。
真相を確かめるべく、風花は背後の大木へと歩み寄る。
依然として、応える者はいない。
真相を確かめるべく、風花は背後の大木へと歩み寄る。
「待って! 風花! 近づいたら危険だ!」
呼び止められ、思わず足を止める。
響も風花も、亜美を連れ戻したい気持ちに嘘はない。
だが、一度襲われたことがどうしても尾を引いてしまっている。
響も風花も、亜美を連れ戻したい気持ちに嘘はない。
だが、一度襲われたことがどうしても尾を引いてしまっている。
「……亜美ちゃん、ちょっとだけでいいから、私の話、聞いてくれないかな」
「……」
「……」
幾許かの沈黙を経た後、亜美はゆっくりと姿を現した。
手を後ろで組み、ばつの悪そうに視線を逸らしている。
手を後ろで組み、ばつの悪そうに視線を逸らしている。
「亜美ちゃん、急にこんなことになって、不安な気持ちなのはわかるよ。
でも、だからってみんなを傷つけるのは、絶対間違ってる……」
でも、だからってみんなを傷つけるのは、絶対間違ってる……」
子供を諭すように風花は語りかける。
「早まっちゃ駄目……こんなときこそみんなで力を合わせなきゃ。
だって私たち、同じ事務所の仲間でしょう? もっと私たちを頼ってよ……」
だって私たち、同じ事務所の仲間でしょう? もっと私たちを頼ってよ……」
その声は、彼女の本心からの言葉。
楽しかった日々を取り戻す。
それを切に願う悲痛の叫び。
楽しかった日々を取り戻す。
それを切に願う悲痛の叫び。
「私だけじゃない。響ちゃんも……みんなも待ってる。
きっとまたやり直せるよ。だから……一緒に行こう、亜美ちゃん」
きっとまたやり直せるよ。だから……一緒に行こう、亜美ちゃん」
そう言って、風花は手を伸ばす。
その優しい笑顔は、かつて見た面影と全く変わらなくて。
その優しい笑顔は、かつて見た面影と全く変わらなくて。
「わかったよ……」
亜美が答える。
弱々しく、けれど確かな決意を秘めた眼差しを向けて。
弱々しく、けれど確かな決意を秘めた眼差しを向けて。
そして、差し伸べられた手を…………掴むことはなかった。
「……やっぱりこうするしか方法はないって」
腕を振り抜く。
肉を穿つ生々しい音が木霊した。
肉を穿つ生々しい音が木霊した。
「風……花……?」
風花の首から鉄の杭が顔を出していた。
中に詰まった赤い液が隙間から滲み出る。
やがて杭が引っ込むと、腕を伸ばした体はゆっくりと倒れ伏した。
中に詰まった赤い液が隙間から滲み出る。
やがて杭が引っ込むと、腕を伸ばした体はゆっくりと倒れ伏した。
「なんでだよ! 風花はこんなに亜美のことを想ってくれていたのに!」
「うるさいうるさい! ……もう、イヤなんだよ……。
助かりっこないのに、期待したくないんだよ……。
夢見させるようなこと言わないでよ!」
「うるさいうるさい! ……もう、イヤなんだよ……。
助かりっこないのに、期待したくないんだよ……。
夢見させるようなこと言わないでよ!」
亜美が吼える。
あの頃に戻れるものなら戻りたい。
そう願っていたのは亜美も同じだ。
だが、もう遅い。
ここで折れてしまったら、何の為にひなたを殺したのかわからなくなってしまう。
もう、戻れない領域まで来てしまったのだ。
あの頃に戻れるものなら戻りたい。
そう願っていたのは亜美も同じだ。
だが、もう遅い。
ここで折れてしまったら、何の為にひなたを殺したのかわからなくなってしまう。
もう、戻れない領域まで来てしまったのだ。
「もう決めたかんね……! 亜美、みんなをブッ殺して、絶対生き残ってやるから!」
「亜美! 話を聞いてくれ! 亜美っ!」
「亜美! 話を聞いてくれ! 亜美っ!」
だが、響の言葉も亜美の耳には届かない。
躊躇いなく、一直線に駆け寄る殺意を前に、響は――
躊躇いなく、一直線に駆け寄る殺意を前に、響は――
「っ! ……ようやくやる気になったんだ?」
自身の武器をその手に構えていた。
【豊川風花 死亡】
◆ ◆ ◆
「ひびきとふうか、遅いなぁ……」
「どうしたんだろう。道に迷っちゃったのかなぁ」
「どうしたんだろう。道に迷っちゃったのかなぁ」
待ち合わせの場所には琴葉と環しか来ていなかった。
約束の時間はとうに過ぎているのに、響と風花がくる様子がない。
約束の時間はとうに過ぎているのに、響と風花がくる様子がない。
「……ちょっと探しに行こっか」
「うん! 早く行こう!」
「うん! 早く行こう!」
何か事故に巻き込まれた可能性もある。
二人の無事を祈りながら、彼女らが向かった方角を目指す。
二人の無事を祈りながら、彼女らが向かった方角を目指す。
「ねえことは、何か聞こえない?」
「そういえば……何の音だろう」
「そういえば……何の音だろう」
しばらく道なりに進んでいると、彼方から妙な音が聞こえてくる。
金属同士がぶつかり合うような音だ。
まるで剣戟のような――
金属同士がぶつかり合うような音だ。
まるで剣戟のような――
「――ッ! 環ちゃん! 行こう!」
「え? う、うん!」
「え? う、うん!」
この音は恐らく戦闘によるもの。
誰かが命の危機に晒されていることは想像に難くない。
やや強引に環を引き連れ、音の源へと急行する。
誰かが命の危機に晒されていることは想像に難くない。
やや強引に環を引き連れ、音の源へと急行する。
「響ちゃん! 風花さん!」
悪い予感が的中してしまった。
今正に戦闘を行っていたのは響ともう一人、双海亜美。
今正に戦闘を行っていたのは響ともう一人、双海亜美。
「あ……ふうか……」
風花は……見るに堪えない姿になり果てていた。
事態が呑み込めず、環はその場で硬直している。
事態が呑み込めず、環はその場で硬直している。
一方、響の状況も芳しくない。
亜美の暴走を止めようと奮闘してはいるが、武器を振るうことにまだ迷いが見える。
当然、全力で殺しにかかる亜美とぶつかり合えば劣勢に陥ることは必然。
琴葉の呼びかけに応じる余裕もない。
亜美の暴走を止めようと奮闘してはいるが、武器を振るうことにまだ迷いが見える。
当然、全力で殺しにかかる亜美とぶつかり合えば劣勢に陥ることは必然。
琴葉の呼びかけに応じる余裕もない。
「ぐっ、しぶといなぁ!」
鶴橋と鉈が幾度も衝突する。
命を刈り取るため、何度も何度も必殺の一撃が放たれる。
命を刈り取るため、何度も何度も必殺の一撃が放たれる。
「どうしよう……このままじゃ響ちゃんが……!」
助けに行きたいが、迂闊に近づくことすらままならない。
亜美の攻撃をなんとか凌いでいるが、次第次第に響が押され始めていた。
あとどのくらい攻撃を捌けるのかも定かではない。
亜美の攻撃をなんとか凌いでいるが、次第次第に響が押され始めていた。
あとどのくらい攻撃を捌けるのかも定かではない。
(やっぱり、これを使うしかないの……?)
琴葉は自身が携帯する銃に目をやる。
この距離なら亜美に反撃されることなく響を援護出来るだろう。
だが、撃てるのか。
かつての友を射殺す、その覚悟が自分にあるのか。
先程出来なかったことが今急に出来るようになるのか、と。
琴葉は自問する。
この距離なら亜美に反撃されることなく響を援護出来るだろう。
だが、撃てるのか。
かつての友を射殺す、その覚悟が自分にあるのか。
先程出来なかったことが今急に出来るようになるのか、と。
琴葉は自問する。
「そこっ!」
「ッ!? あぁっ!」
「ッ!? あぁっ!」
などと思案している内に、戦況が大きく変化する。
鶴橋が鉈を掠め取り、地面に落下させたのだ。
すかさず腕を振り上げる亜美。
万事休すか。
鶴橋が鉈を掠め取り、地面に落下させたのだ。
すかさず腕を振り上げる亜美。
万事休すか。
「響ちゃん!」
まだ終わらない。終わらせない。
琴葉は半ば無意識の内に銃を構える。
琴葉は半ば無意識の内に銃を構える。
――轟音が響き渡った。
沈黙。
辺りは静寂に包まれる。
鶴橋を構えたまま硬直する亜美。
引き金に力を込め続ける琴葉。
そして――
辺りは静寂に包まれる。
鶴橋を構えたまま硬直する亜美。
引き金に力を込め続ける琴葉。
そして――
「なん……で…………」
響の体が崩れ落ちた。
「…………え?」
呆気にとられる。
亜美を狙って銃を構えた。
そして引き金を引いた。
なのに、なぜ響が倒れる?
亜美を狙って銃を構えた。
そして引き金を引いた。
なのに、なぜ響が倒れる?
「違っ……そんな……っ、私……」
言うまでもない。
外したのだ。
銃など見たこともない少女が覚悟を決めたところで、使いこなせるはずがなかった。
外したのだ。
銃など見たこともない少女が覚悟を決めたところで、使いこなせるはずがなかった。
(私じゃ、ない……私は……ちゃんと、狙って……)
犯した罪の大きさに耐えきれず、無心で逃避する。
私じゃない。
私は悪くない、と。
私じゃない。
私は悪くない、と。
(違う、違う、違う違う違う違う!
私じゃない私じゃない私じゃない!
私のせいじゃな
私じゃない私じゃない私じゃない!
私のせいじゃな
響いた音が途絶えた後、少女が倒れ伏した。
後悔に顔を歪め、首筋から鮮血を吹き出す琴葉。
隙をつき、頭蓋を陥没させてやるつもりであったが、逸れてしまったらしい。
走りながらの攻撃では精度に欠けたか。
後悔に顔を歪め、首筋から鮮血を吹き出す琴葉。
隙をつき、頭蓋を陥没させてやるつもりであったが、逸れてしまったらしい。
走りながらの攻撃では精度に欠けたか。
「……っ!? うあうあ~っ!?」
一息ついた直後、不意に亜美の天地が逆転する。
何故倒れてしまったのか。
その原因は亜美の眼前にあった。
何故倒れてしまったのか。
その原因は亜美の眼前にあった。
「っ、たまきち……!」
「返せ……」
「返せ……」
亜美を押し倒し、上から睨みつけているのは環だった。
「返してよ……」
呟く声が聞こえた刹那、亜美の顔に重い痛みが走る。
「返せ……! みんなを……返せぇっ!」
怒りに身を任せ、環は拳を振るい続ける。
右。左。右。左。
何度も何度も、何度でも。
右。左。右。左。
何度も何度も、何度でも。
我に返った頃には、環の目の前は真っ赤に染まっていた。
腫れ上がり、痣に歪んだ亜美の顔。
皮膚が擦り剥け、血に塗れた両手。
倒れた琴葉の体から流れ続ける血。
腫れ上がり、痣に歪んだ亜美の顔。
皮膚が擦り剥け、血に塗れた両手。
倒れた琴葉の体から流れ続ける血。
何も残らなかった。
ふうか。ひびき。ことは。
何度痛めつけても、何度怒鳴っても、もう誰も帰って来ない。
ふうか。ひびき。ことは。
何度痛めつけても、何度怒鳴っても、もう誰も帰って来ない。
「うう……うあぁああああぁ!」
急に居た堪れなくなり、環は走り去る。
凄惨な光景から目を背けるように。
失った希望を追い求めるように。
これで本当に、何もなくなってしまった。
凄惨な光景から目を背けるように。
失った希望を追い求めるように。
これで本当に、何もなくなってしまった。
(あー……亜美、まだ生きてるんだ……)
壮絶な責め苦を味わいながらも、亜美はまだ死に至ることはなかった。
体が重い。
意識が朦朧とする。
顔が燃えるように熱い。
それでも、生きていた。
体が重い。
意識が朦朧とする。
顔が燃えるように熱い。
それでも、生きていた。
(いっぱい、殺しちゃったなぁ)
ひなたの頭を叩き割った。
風花の首に風穴を空けた。
響を殺す寸前まで追い詰めた。
琴葉の体に楔を打ち込んだ。
風花の首に風穴を空けた。
響を殺す寸前まで追い詰めた。
琴葉の体に楔を打ち込んだ。
たった一日で四人。
沢山の仲間を手に掛けた。
もう、人としての尊厳を保てない程に。
それでも、生きていた。
沢山の仲間を手に掛けた。
もう、人としての尊厳を保てない程に。
それでも、生きていた。
(風花お姉ちゃん、最後の最後まで心配してくれたっけ)
薄れゆく意識の中、脳裏に浮かぶのは風花の最期。
決して諦めず、何度も何度も、優しい言葉をかけ続けてくれた。
結局、亜美には届かなかったけれども。
今となっては、彼女の慈愛が骨身に染みる。
決して諦めず、何度も何度も、優しい言葉をかけ続けてくれた。
結局、亜美には届かなかったけれども。
今となっては、彼女の慈愛が骨身に染みる。
だけど、死ぬことだけは絶対に嫌だった。
どんなに無様でも。
何の為に生きているのかわからなくなっても。
地を這ってでも生き延びてやるつもりだった。
どんなに無様でも。
何の為に生きているのかわからなくなっても。
地を這ってでも生き延びてやるつもりだった。
(でも……今は少しだけ……)
もう体の感覚がない。
今だけは、これ以上何も考えたくなかった。
虐殺に身を投じる破滅の未来にほんの少しの恐れを覚えながら、亜美は静かに瞼を閉じる。
今だけは、これ以上何も考えたくなかった。
虐殺に身を投じる破滅の未来にほんの少しの恐れを覚えながら、亜美は静かに瞼を閉じる。
【一日目/日中/B-1】
【双海亜美】
[状態]体中に擦り傷、顔面に無数の殴打痕、心身共に疲弊
[装備]鶴嘴
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:死にたくないから、殺し合いに乗る
1:もう疲れたよ……
2:真美には、会えない。けど……
3:希望って……なんだろうね?
[状態]体中に擦り傷、顔面に無数の殴打痕、心身共に疲弊
[装備]鶴嘴
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:死にたくないから、殺し合いに乗る
1:もう疲れたよ……
2:真美には、会えない。けど……
3:希望って……なんだろうね?
※琴葉、響、風花の支給品一式はB-1に放置されています。
◆ ◆ ◆
たまきを置いていったふうかが嫌いだ。
弱っちいひびきが嫌いだ。
ひびきを撃ったことはが嫌いだ。
みんなに酷いことするあみが嫌いだ。
弱っちいひびきが嫌いだ。
ひびきを撃ったことはが嫌いだ。
みんなに酷いことするあみが嫌いだ。
助けに来てくれないおやぶんが嫌いだ。
みんなみんな、大っ嫌いだ!
【一日目/日中/B-1】
◇ ◇ ◇
終わってしまった。
何もかも、これで本当に終わり。
結局、だぁれも助けられないまま。
何もかも、これで本当に終わり。
結局、だぁれも助けられないまま。
……いや、それだけで済んだならどれだけよかっただろう。
響ちゃんは私のせいで死んだ。
私さえいなければ、まだ生きていられたのに。
響ちゃんは私のせいで死んだ。
私さえいなければ、まだ生きていられたのに。
「うぅ……うあぁっ……うあぁああぁ……っ」
私は子供みたいに泣きじゃくっていた。
あまりにも無力な自分が情けなくて。
惨めで。悔しくて。
あまりにも無力な自分が情けなくて。
惨めで。悔しくて。
嗚咽を漏らすたびに体が軋む。
心が悲鳴を上げている。
痛くて、痛くて、苦痛は増していくばかり。
それでも、涙は止め処なく溢れ出した。
心が悲鳴を上げている。
痛くて、痛くて、苦痛は増していくばかり。
それでも、涙は止め処なく溢れ出した。
これはきっと、私への罰。
偉そうに指示するだけで何の結果も残せない、役立たずな私が背負う十字架。
ならば、甘んじて受け入れましょう。
誰に看取られることもなく、苦しみを抱いて逝きましょう。
偉そうに指示するだけで何の結果も残せない、役立たずな私が背負う十字架。
ならば、甘んじて受け入れましょう。
誰に看取られることもなく、苦しみを抱いて逝きましょう。
「やっぱり……琴葉は……泣き虫、だなぁ……」
耳を疑った。
もう決して聞こえるはずのない声が響き渡る。
もう決して聞こえるはずのない声が響き渡る。
「ひび……き……ちゃん……?」
掠れる声でそっと呼んでみる。
もう届かないと思っていたその名前を。
声を発するだけで喉が焼けるように痛い。
もう届かないと思っていたその名前を。
声を発するだけで喉が焼けるように痛い。
「自分が、いないと……だめ、みたい、だね……」
聞き間違いじゃなかった。
響ちゃんはまだ生きている。
響ちゃんはまだ生きている。
だけど、それもきっと時間の問題。
「ごめん……なさい……ごめん、なさい……っ」
だって、貴女の声は今にも消えてしまいそう。
「わたしの……せいで……!」
「琴葉は……悪くない、ぞ……」
「琴葉は……悪くない、ぞ……」
私の言葉を響ちゃんが遮る。
「ちがうの……! わたしが……はずした、から……!」
「琴葉が……誰かを、殺す……ところ、なん……て……見たく、ない……よ……」
「でも……でも……!」
「琴葉が……誰かを、殺す……ところ、なん……て……見たく、ない……よ……」
「でも……でも……!」
言葉を続けようとする私の手に温かい感触が触れる。
もう視界が霞んでわからないけれど、響ちゃんが手を握ってくれているみたい。
もう視界が霞んでわからないけれど、響ちゃんが手を握ってくれているみたい。
「自分……気にして……ない、から……泣かない……でよ……」
体を撃たれて。
理不尽な痛みを与えられて。
それでも尚、私を気にかけてくれる。
理不尽な痛みを与えられて。
それでも尚、私を気にかけてくれる。
「琴葉は……ずっと、頑張って……きたん……だから……」
どうして?
どうしてそんなに優しくしてくれるの?
最初にここで会った時もそう。
こんな私に構ったって、なんにもいいことなんてないのに。
どうしてそんなに優しくしてくれるの?
最初にここで会った時もそう。
こんな私に構ったって、なんにもいいことなんてないのに。
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
何度謝ったって、決して許されることじゃないけれど。
本当にごめんなさい。
何度謝ったって、決して許されることじゃないけれど。
ねえ、正直に言ってよ。
こんな目に遭うのは琴葉のせいだって、もっと怒ってよ。
こんな目に遭うのは琴葉のせいだって、もっと怒ってよ。
言いたいこと、伝えたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこない。
「綺麗な……空、だなぁ……」
響ちゃんが誰に語りかけるでもなく、そっと呟く。
もう何も見えないけど、きっと綺麗な青空なのだろう。
もう何も見えないけど、きっと綺麗な青空なのだろう。
「みんな……この空の……上で、待ってる……のか、なぁ……」
何となく、その言葉の意味が分かった。
春香ちゃんを始め、ここで散っていったみんな。
世迷い事かもしれないけど、確かにどこかで待っててくれているような気がする。
……私たちも、今からそっちへ向かうのかな。
春香ちゃんを始め、ここで散っていったみんな。
世迷い事かもしれないけど、確かにどこかで待っててくれているような気がする。
……私たちも、今からそっちへ向かうのかな。
「ほんとう、は……じぶんも……こわいんだ……」
不意に、私の手を握る力が強くなる。
「ひとりは……いやだよ……」
さっきよりも更に弱々しい声で、私に語りかける。
「て……はなさない……でね…………」
なんだ。
同じなんだ。
私も、響ちゃんも。
同じなんだ。
私も、響ちゃんも。
私もそっと手を握り返す。
響ちゃんの気持ちに応えるように。
響ちゃんの気持ちに応えるように。
貴女はいつも気丈に振る舞っているけれど、本当はとっても寂しがり屋で。
そんな貴女がとても近しい存在に思えて。
そんな貴女がとても近しい存在に思えて。
ずっと私を支え続けてくれた響ちゃん。
ようやく気付いた。
貴女に捧げる言葉は謝罪なんかじゃない。
ようやく気付いた。
貴女に捧げる言葉は謝罪なんかじゃない。
ありがとう。
一緒にいてくれて。
こんな私でよければ、どうかその手を離さないで。
一緒にいてくれて。
こんな私でよければ、どうかその手を離さないで。
正直に言えば、今も怖くて怖くてたまらない。
だけど、貴女がついていてくれるなら――
だけど、貴女がついていてくれるなら――
「わたしは……もう……だい、じょう……ぶ…………」
【我那覇響 死亡】
【田中琴葉 死亡】
【田中琴葉 死亡】
| Walther Groggy | 時系列順に読む | ひなた |
|---|---|---|
| "のろい" | 投下順に読む | |
| Walther Groggy | 田中琴葉 | 死亡 |
| 大神環 | ||
| ♪空の向こうへ | 我那覇響 | 死亡 |
| 豊川風花 | 死亡 | |
| 双子の星座 | 双海亜美 |