アットウィキロゴ
ミリオンライブバトルロワイアル @ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ミリオンライブバトルロワイアル @ ウィキ

♪空の向こうへ

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

♪空の向こうへ



「ねえ、風花」

 長かった沈黙が破られる。
 先導を切り歩く我那覇響が、ふと上を向く。
 つられて豊川風花も首を上げた。
 特にこれといったものは見当たらない。
 風花は視線を響に戻す。相変わらず彼女は上を向いている。

「亡くなっちゃった人って、空にいるのかな」

 どうだろうね、風花は答えた。
 気が付けば、ざあざあと音がした。
 何だろうと思い、響よりもその前を見る。

「自分は空か海か、どっちかにいるんじゃないかって思うんだけどね。なんとなく空にいそうな気がしてさ」

 母なる海、父なる天。なるほど、似つかわしい場所だ。
 そういうことならば、風花も空にいたらいいのにと思う。
 亡くなってもなお、同じ空の下で笑っていられたら幸せなのだろう。
 響は拳を頭上へ掲げ、訥々と言葉を紡ぐ。

「父さんも、真たちもみんな、空にいるのかな」

 あの放送以来、四人が四人とも意図して噤んでいたことを、いよいよをもって口にする。
 風花の立ち位置からは、響の顔色は窺えない、しかし、語尾が震えていた。
 改めて見上げる。
 風花には何も見えなかった。

「空にいるのなら良かったぞ。どこにいたって、自分たちのこと見守っててくれるよね」

 そうだといいね。
 風花は頷く。けれど、響の反応は芳しくなかった。
 しばらくの間があって、ぽつりと言葉を落とす。

「みんな、空にいるのかな」

 繰り返す。
 寂しそうに、言葉を繰り返す。
 響に今の空はどのように映っているだろう。
 きっと広大な、どこまでも、どこへでも繋がっている空には、何が浮かんでいるのだろう。

「ねえ、風花」

 仕切り直す様に、響は問い掛ける。
 視線を落とし、ざあざあと、自然が雄大に吼える方へ顔を向けた。
 風花も視線を見遣る。当然のように、そこには何もない。
 だとすると、みんなはどこへ消えたのだろう。

「亜美がみんなを殺した、わけないよね」

 双海亜美
 生きるため、殺し合いに乗じてしまった少女。
 とはいえ、確かに6時間という時間の中で、きっと島中に散開する12人の少女を殺すのは無理がある。
 亜美以外にも、仲間を殺した人間が恐らく、いや、確定的に存在しているということだ。
 風花は目を伏せる。どうしてこんなにうまくいかないのだろう。

「なんで、こんなに死んでるんだ」

 そんなこと、風花にだって分からない。勿論響にだって分からない。
 ともすれば仲間に手を掛けた殺人犯にだって分からない理不尽な問答だ。
 けれど風花は響を諌めず、ただ、黙し、受け入れる。それが今の彼女にできる、せめてもの優しさだから。
 逆にいえば、今彼女に出来ることはこれぐらいのこと。
 風花は目を伏せる。どうしてこんなに何も出来ないのだろう。

「自分たち、仲間、家族だろ」

 彼女はたくさんのペットを飼っていた。
 一人で上京してきた寂しがり屋を、ペットたちのぬくもりが補っている。
 風花も猫が好きだから、動物たちが与える居心地の良さというものをよく知っている。
 ふと気付く。彼女は、そうしないといけないほどに、絆を重んじ、繋がりを欲しているのだ。
 だからこそこう思うのだ。今、彼女の隣に立っている自分は、彼女の支えになれているだろうか。
 風花は目を伏せる。どうしてこんなに、自分は情けないんだ。

「もっともっと、楽しい思い出を作りたかった」

 悲痛な叫びで響は続ける。
 どうしてこんな簡単だったことができないのだろう。
 昨日まで当たり前だったものが、どうしてこうも崩れ去ったのか。

「お別れなんてイヤだ。さよならなんてイヤだ。みんなと離れ離れになんかなりたくない」

 惨めだ。
 たくさんの人の勇気や希望になりたかったのに。
 看護の心得だって、そうだ。
 再三口にしていた“正統派アイドル”だって、そうだ。
 みんなを笑顔にしたいがために、いつも頑張っていたはずなのに。

「ずっと一緒にいたい、だけなのに」

 掛ける言葉が見当たらない。
 下手な慰めは逆効果のようにも思える。
 いや、実際逆効果なのだろう。
 みんなの死を、亡くなった12人の死を、それでも頑張ろうよの一言だけで流せるはずもない。
 くじけずに前を向こう、なんて言葉に、どれだけの意味があるのだろう。

「ねえ、風花教えてよ。亜美に会って、自分、どうすればいいんだ」

 自分に刃を向けた相手と対峙するのは怖いはずだ。
 下手をすると殺されるかもしれない。
 風花に恐怖を非難する権利はない、どころか恐怖に打ちひしがれているのは自分も同じだ。
 現実に12人の仲間が死んだと伝えられた今、宿す恐怖は一層増している。

「なんとかしなきゃって分かってるんだ。分かってるのに」

 それでも、と思う。
 それでも、なんとかしたいと思う。
 せめて自分にできる精一杯はしたいと感じているから。
 亜美にも、響にも、琴葉にも、環にも、自分にできることをやりたい。
 いつまでも、やられっぱなしの豊川風花では、いられないから。
 だからこそ。

「ごめん、風花。風花に言ったって、しょうがないよね」

 悔しかった。
 そう言わせてしまう自分の不甲斐なさが。
 せめて彼女を抱きとめることができたなら。
 彼女の不安を受け止めることができたなら。
 今の豊川風花は、あまりに無力だ。
 どうしたって、上っ面の言葉しか編みだせない。
 覚悟はしていたはずなのに。諦めないって決めたのに。
 心の底では、怖がっている自分がいるのだ。みんなが死んだと思いたくない自分がいるのだ。

「ありがとう、風花。自分の愚痴なんか聞いてもらっちゃってさ」

 響がこちらを振り返る。
 顔を見れば、涙の傷跡が窺えた。
 風花は見つめ返す。響は微笑む。
 支えになれたのなら僥倖である。
 けれど、これが自分の精一杯だっただろうか。
 もっとうまいやり方が、彼女の傷を癒す方法が、あったんじゃないか。

「そろそろ戻らないとね。二人が心配するし」

 確かにいい時間だ。
 現状が現状だけに、意味もなく遅れるわけにもいかないだろう。
 響はこちらへ歩みを進める。風花はその様を眺める。
 視線は前を向いていた。風花は大丈夫か問う。

「自分はカンペキだから大丈夫だぞ。それにね、琴葉泣き虫なんだ。環は甘えん坊だし。自分たちが付いてなきゃ」

 ふふん、と高らかな声色で返す。
 すっかりいつもの調子に見える。
 先ほどまでの困窮していた様子は欠片も覗かせない。
 いつものあっけらかんとした調子を取り戻せたのか。
 言葉の穂を繋ぎ、響は強く放つ。

「どうしたって、自分たちは生きなきゃね」

 響は意気込む。
 結局のところ、こうして意気込むことが今の自分たちにできる精一杯だった。
 どうしようもないほど的確で、どうにもならないほど、真理だ。
 分かっている。分かっていた。

「ほら、行こうよ」

 響は風花の横を過ぎる。
 風花は最後に、風に唸る自然の遠吠えを聞きながら、その果てを見る。
 綺麗に引かれた水平線にも、なにもない。
 眺望している最中、後方から響はぽつりと独り言のように零す。

「死にたくないんだ。忘れられたく、ないんだ」

 風花は振り返り、それから遥か上方を望む。
 空には亡くなったみんながいるかもしれない。
 同じ空の下、笑っていられたらどれだけ幸せなのか。
 だけど、風花が仰ぐ頭上には、“空”なんてものはやはり見当たらなかった。



【一日目/日中/B-1】

【我那覇響】
[状態]手に軽度の裂傷(応急処置済み)、動揺
[装備]なし
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(0~1)、鉈
[思考・行動]
基本:プロデューサーを探しつつ、他の皆とも合流する。
1:風花と行動。琴葉と環の元へ戻る。
2:亜美を助けたい。まだ少し怖いけど……

【豊川風花】
[状態]左腕に裂傷(応急処置済み)、失血(軽度)、服の左腕部分が切断されている
[装備]アイスピック
[所持品]支給品一式(救急箱一部使用)、ノコギリ、ランダム支給品(0~1)
[思考・行動]
基本:皆を信じて、このイベントに諦めないで立ち向かう。
1:響と行動。琴葉と環の元へ戻る。
2:亜美ちゃんを止めなきゃ……


 Follow my heart beat   時系列順に読む   悔しさも弱さも 
 Follow my heart beat   投下順に読む   悔しさも弱さも 
 desire   我那覇響   空見て笑って 
 豊川風花     


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー