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アイドル活動をしてるんだが、もうアタシは限界かもしれない

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アイドル活動をしてるんだが、もうアタシは限界かもしれない




アタシの名前は舞浜歩
ナンバーワン目指して、得意のダンスを武器にして日々頑張ってるアイドルさ。
まだまだ苦手な事も多いけど、頑張って乗り越えて、いつかは皆が憧れる存在に!


「はぁ……」


……って、思ってたんだけどなぁ。

誰もいない街中で1人、アタシは溜め息をついた。
溜め息をつくと幸せが逃げる、ってよく聞くけど、正直今だけは勘弁してほしい。
実際、今のアタシに逃げるような幸せもないんじゃないかな……とさえ思っちゃったりして。

「殺し合い、かぁ……」

ぼそりと呟いた、物騒な言葉。それこそが、アタシを悩ませているものの正体だった。
アタシもまだ実感しきれてはないんだけど、今、その言葉通りのヤバい事態に巻き込まれてる、らしい。
たった1人になるまで、他の皆と殺しあわなくちゃいけない。何かの比喩とか冗談でもなんでもない、本気の。
ありえない? うん、アタシもそう思いたいんだけどね……。

「………うぇ」

思い出しちゃって、思わず口を押える。
あの時目の前で流れた、その……社長の首輪が、爆発した映像。
首の上が無くなって、グロテスクな姿になって。高木社長は、死んでしまった。
あんな映像をみちゃったら、とてもドッキリと思う事はできない。
だから、これも現実だと認識するしかなかった。嫌だけど。絶対に嫌だったけど。

「あー……まぁ百歩、いや一万歩譲っても、さぁ」

一度、気を取り直す。
口ではそう言っても、正直な話一歩も譲りたくない。理解はできても、納得なんて到底できないし。
ただ、今のアタシにはそれ以上に深刻な当面の問題があったわけで。だから、一旦置いとく。
背負っていたバッグを下ろし、開ける。

「ヂュッ」

と同時に聞こえてきた、可愛らしい(?)鳴き声。
アタシのバッグの中にいたのは、一匹のハムスター。その姿には、馴染みがあった。
確か、同じアイドル仲間の我那覇響がいつも連れてたハム蔵……だっけ。そんな感じの名前のペット。
その子が、このバッグに入ってた。これにも色々言いたいことはあるけど……まぁ、それもひとまずスルー。

「ヂュッ?」

中にいたハム蔵をそっと外に出して、他の中身を確認する。
水の入ったペットボトルに、缶詰。うんうん、必需品だね。
懐中電灯と、方位磁石。道に迷ったら困るし、夜には確かにいる。
この赤い十字架が書かれてるのは救急箱かな。少しくらいのケガなら、なんとかなるかな。
で、あとは携帯みたいなの。電話とかはつながらないみたいだけど、色々と大事な機能が入ってそう。
そして……うん、それだけ。何度見ても、それだけ。

「………」

黙りこくるアタシを、ハム蔵は怪訝な表情で見つめてる……ような、気がする。
仕方ないのかもしれない。ここに鏡はないから分からないけど、多分今のアタシは怪訝な顔をしてると思うし。
現状を冷静に理解し、率直に言わせてもらうと……今のアタシには武器がなかった。
あの時、武器類が支給されるって言っていたのにもかかわらず、だ。
強いて言うのなら、ハム蔵がいわゆる『武器等』に該当する支給品、って事になるのかな、うん。

「………………」

すっと、立ち上がり。
周りに誰もいないことを確認して、アタシは大きく息を吸って。



「こんなんでどうしろっていうんだよーッ!?」


思いの丈を、思い切り叫んだ。



「ほとんど手ぶらじゃんか! オーマイガー!!」

怒りを声に出しても、誰も返してはくれない。むなしい。
そんな静けさが、よりアタシの怒りを増幅させてるような気がした。
本当に、わけがわからない。殺し合いさせるなら、せめてそれなりのもの用意するべきだと思う。
こんなところでも、アタシはいじられ役なのか? ああ、誰かの嘲笑が聞こえる……。

「くそー……なんでアタシだけ……」

未だに収まらない微妙な感情で、ぶつくさと呟くアタシ。
傍からみたら、きっと今のアタシはとてもみじめに見えてるんだろうな……。
あぁ、ダメだダメだ! 卑屈になるな、アタシ!
大体、アタシだけじゃないだろ。他の皆も多分、苦しんでて、一生懸命に頑張ってるはずなんだ。
情けない考えはやめて、前を向かないと。

「ホント、どうして……」

そう考えて、なんとか冷静を取り戻せてきた。ただ、その代わりに別の感情があふれてくる。
情けない話だけど……哀しい、というか。悔しいというか。
だって仕方ないじゃん、いきなり投げ出されて、殺し合いをしろ、だよ?
――ほかでもない、一番信頼していた人の手で。


「どうして、なんだよ……プロデューサー……っ」

口に出た疑問に、答えは返ってこない。
いつも一緒に頑張ってきたと思ってた、アタシ達のプロデューサー。
失敗も多かったアタシの事も、気にかけてくれたし、勇気づけてくれた。
だから、ずっと味方だと思っていたのに……この場所に突き落としたのが、その人だった。
結局、アタシの思い違いだったのだろうか。アタシの思っていた程に、絆は築けていなかったのか。
どんどん広がるマイナスな感情を、全く否定できずにいた。

「……真は、どう思ってんのかな」

ふと思い浮かんだのは、いつもダンスの練習をしたりして意気投合してた、仲間の事。
そういえば、真も結構プロデューサーの事を好意的に思ってたような気がする。
今、どう思ってるんだろう。さすがに、ショックを感じてるとは思うけど。
……それでも、しっかりと反抗するんだろうなぁ。真は、芯が強いし。
きっと、どこまでもまっすぐに想い続けるんだろう。アタシは、それが少しうらやましく感じた。

「………はぁ」

それに比べて……と、また溜め息をつく。
アタシは、どうしたいんだろう。
武器がないのもそうだけど、仮にあったとしても『よし殺そう』なんて決断もできなかっただろう。
今だって『どうしたいか』すら分からない。今から、何をすればいいのか、何ができるのか。
悩んでも悩んでも、答えは出そうにない。アタシは、ますます参ってしまって。

「ジュッ!」

そんなアタシの肩に、ハム蔵が駆け上ってきた。
耳元で、せわしなく鳴いている。
そのしぐさは、なんだかアタシに話しかけてるようにも思えた。

「……慰めて、くれてるのか?」

その疑問に返ってくる言葉も、やっぱり鳴き声。
当たり前だよな……と、そんな反応にアタシは苦笑する。
ちょっとでも動物と話そうとしてた自分が、おかしく感じて。
暗い気持ちも、ほんのちょっとだけマシになったような気がした。

「はは……いや、落ち込んでても始まらないよな」

何を言ったのなんてわからないし、実際大した事は言ってないのかもしれない。
でもまぁ、とりあえずアタシは好意的に受け取っとく事にした。
落ち込んでたって、何も始まらない。なんにせよ、ここで終わるわけにはいかないんだから。

「ハム蔵だって、ご主人がいなくて不安だと思うし……早く、会わせてやんないと」

まさか、響も自分のペットがこんな場所に巻き込まれてるとは思ってもないだろうし。
今どこにいるのかはわからないけど、さっさと会わせてあげたいよね。
殺し合いの場……なんて言っても、あの響が殺し回るとは思えない。
どちらかといえば、混乱して「うぎゃーっ!」とか言ってた方がらしいんじゃないかな、なーんて。

「……プロデューサーには悪いけど、やっぱりアタシには無理そうだよ、殺し合い」

そんな、悪く言ったら日和った事ばっかり考えてる自分がいて。自分の想いもなんとなくまとまってきた。
前提として、アタシは死にたくない。こればっかりは仕方ない。
でも、かといって生き残るために誰かを殺す……のも、多分無理だ。
一緒に頑張ってきた大切な仲間を、裏切ることなんてできそうにない。
じゃあどうする、なんて具体的な方針はまだないんだけど。
だから、だからアタシは―――


「暫くは様子見かなぁ……うん」

肩に乗ってたハム蔵がずっこけた……ように、見えた。

いや、仕方ないじゃんか。考えても答えがでないんだから。
というわけで、とりあえず先送りにすることにした。こんな状況でパッと決められる方がすごいんだって。
そもそも、他の皆だって乗ると決まったわけじゃない。もしかしたら、誰かが脱出の糸口をつかんでたりするのかも。
まだ焦る時間じゃない。うんうん、暫くは流れに身を任せてみよう。

……うん、情けないのは分かってるよ。ちゃんと少しは考えるから……。
アタシは誰に宛てたものでもなく、心の中で言い訳をしていた。

「でも、せめて身を守るものぐらいは欲しいよなぁ……」

そんな事を考えていたって、現状が変わるわけでもなく。
今のアタシに武器がないのは、揺るがない事実だった。
仲間を信じたくはあるけど、それはそれとして襲われた時に抵抗できるようなものがほしい。
さて、どうしたものか……と思ったところで、ハム蔵がまた鳴き始めた。

「ヂュッ、ヂュッ!」
「ん、どうしたハム蔵?」

その姿は、何かを伝えようとしてるのかな。
もしかしたら、エサの催促だろうか。ハムスターが何食べるかなんて、知らないんだけどなぁ。とか考えてるアタシをよそに。
なんとなく、どこかを指差してるように見える。その方向に視点を移してみると……大きな建物があった。

「ショッピングモール? ……あ、そっか!」

その建物を見上げて、アタシは気づいた。

「ないんだったら、ここで調達すればいいんだよな!」

そういえば、この島には街があるんだから、店ぐらいあるのは当たり前だよね。
結構そのまんまになってるっぽいし、こういうところを覗いてみれば、案外役に立つものが手に入るかも!

「よし、そうと決まれば早速探索だ!」

善は急げ。やることを決まったならささっとやってしまおう。
まずは現地で武器を調達。そのあとは……まぁ、その時に考えよう。
少しばかり元気の入った足で、アタシはショッピングモールへ入っていった。



    *    *    *



「………ヂュッ」


そんな歩の事を、『やれやれ、大丈夫かな』という目でハム蔵は見ていた……かも、しれない。



【一日目/朝/H-3】

【舞浜歩】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:死にたくない。でも、殺し合いにものれない。どうするかなぁ
1:とりあえず、ショッピングセンターで武器になるようなものを探す


【ハム蔵】
[状態]健康
[装備]なし
[思考・行動]
基本: ???


【ハム蔵】
舞浜歩に支給。
我那覇響が飼っている数多くのペットのうちの一匹。その名の通り、ハムスター。
人間のようなリアクションを取ったり、響に対し的確なアドバイスを送っていたり、
他のアイドルの演技指導なんかもこなしたりと、とても普通のハムスターとは思えないほど多才。



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