銃弾と交渉と◆OQO8oJA5SE



遊園地。
G-3ブロックを跨ぎ、数キロに渡って存在するそこは本来なら家族連れや恋人たちが楽しむための娯楽施設だ。
しかし電力の絶たれたその場所は今や、不気味な廃墟を思わせる何かへと変貌していた。
特に中央部、広場近辺は不自然な凹みや折れた街灯、各所に穿たれた銃痕などスラム街もかくやといった様相を見せている。

そしてその場所よりわずかに北……遊園地内の中央よりやや上に位置する場所にその建物はあった。
色こそ鮮やかなペンキで塗られているものの、形状はごく普通の二階建て。
そのドアプレートには明朝体で『総合事務所』と書かれている。
その一階部分、『STAFF ONLY』と書かれたドアを潜った先に医務室はある。
しかし本来ならそこにいるであろう医師の姿は無く、代わりに奇妙な一団がいた。

遊園地よりも真夏のビーチにいそうなホットパンツの女性――レヴィは椅子に腰掛け、
床の一部を赤黒く汚しながらも、左腕の大怪我と格闘している。
ここで発見した痛み止めの錠剤をスナック菓子のように噛み砕きながら、
テープと包帯を使い、折れた左腕をこれ以上動かないようにギチギチに固めている。
しかし一般的に売っている痛み止め程度では骨折の痛みまでは流石に緩和しきれないらしく、その額には大粒の脂汗が浮かんでいる。

そしてその向かい側、椅子に座り、一見楽にしているように見えて常にレヴィから視線をはずさないのは異様の男。
白目の部分が赤く、黒目の部分が白い瞳、歯茎に並ぶはそのどれもが尖った八重歯。
医務室よりはお化け屋敷の方が似合いそうな男、クリストファー・シャルドレードは剣先に隠された銃口をレヴィに突きつけている。
その背後に隠れるようにベッドに腰掛けるのは2人の少女――北条沙都子アルルゥ
アルルゥも沙都子に手伝ってもらいながら、レヴィに付けられた傷を治療している。

彼らは最悪の顔合わせの後、園内の地図に従い事務所へ移動。
そして怪我の治療と休憩の傍ら、情報交換を開始したのだが……

「チッ……使えねえな」

落胆するレヴィ。
それもそのはず、クリスたちは碌な情報を持っていなかったのだから。
この悪趣味なパーティーが開始してから6時間、
クリスたちのやったことといえば、ガキども同士でトラブルを起こし、襲ってきた赤毛の男から逃げていただけ。
しかもその赤毛の男はレヴィとも因縁浅からぬ仲で、ついさっきも一戦交えてきたところだ。
つまりレヴィにとって目新しい、有益な情報をほとんど持っていないということである。
舌打ち一つ、疲れた視線をクリスたちに投げてよこす。

「そ、それはあなただって同じじゃありませんこと?」

沙都子は先ほどの戦いを一部ながらも見ている。
したがってカズマを危険人物として認識している現在、
目新しい情報といえば『仮面を付けた黒服マッチョの男』の存在ぐらいである。
しかしそれも『コミックみたいな動きをする』という情報だけだ。
その男が名簿に記された参加者のうち誰なのか……それすらもわかっていないのだ。
至極最もなことを指摘され凶悪さを増したレヴィの視線に沙都子はクリスの背中に隠れる。

「……ったく、あの出来の悪いプレスリーみたいな髪型のガキといいアイツといい、
 ジャパニーズは細かいところを突っつくのが好きな人種だな」
「プレスリー? 何だいそれ?」
「……お前ほんとにシカゴにいたのか? プレスリー知らねぇアメリカ人がいるとか信じらんねぇぜ。
 ロックの神様が泣いてるぜ」
「そう言われてもねぇ。そもそも僕は"ロック"が何かも知らないし。
 まぁ、リカルドなら知ってると思うけどね!」

首をかしげる異形の男。
そう、こんな行き違いが先ほどから何回もあった。
レヴィ曰く、人類は宇宙に出たという。……だがしかしクリスはそんなこと聞いたことも無い。
レヴィ曰く、音楽はもっぱらCDに入っているものだという。……だがしかし沙都子はCDの存在自体を知らなかった。

まるでよく似たものを取り違えているような違和感を感じていた。
そのすれ違いを正す切欠になったのは壁にかかっていた2009年のカレンダーだった。

「それにしても21世紀のカレンダーなんて随分未来の物を飾ってるんだねぇ」
「はぁ? ボケが始まってんのか、あと5年もたてば香港も返還されるミレニアムだろうが」
「二人とも何を言ってるんですの? 今は……昭和58年……1983年ですのよ?」
「……よく、わかんない」

それぞれの発言の後、医務室に流れる一瞬の沈黙。
そして彼らは同時に口を開く。

「「「どういうこと(だ)(ですの)?」」」
「……?」



*     *




そしてしばらくの間、会話は自然と齟齬を埋めていく方向にシフトしていった。
クリスが話を脱線させ、レヴィが切れそうになり、沙都子がそれをなだめるという無駄なループの末、
彼らは一つの推測にたどり着く。

「……それにしてもあなたが未来からきただなんて信じられませんわね」
「あたしだって信じられるか。ハリウッドでも今時やらねぇよ」

1930年代のアメリカ、80年代の日本、90年代のタイ……
彼らはいわゆる『タイムマシンのようなもの』によっていろんな時代からつれてこられたのだと。
宇宙人陰謀説とどっこいどっこいのトンデモ説ではあるが、地続きである分、まだ想像がしやすかったのだ。
年代不詳の獣耳少女については沙都子は疑問が出たものの、

「だって僕みたいなホムンクルスがいるんだよ?
 アルルゥみたいなのがいた時代だってあるかもしれないじゃないか!」

というクリスの台詞には反論しようがなかった。
クリスの答えは普段だったら夢でも見たのだろうと笑い飛ばすところだ。
だがレヴィも沙都子もこの場所に連れて来られてから、『スタンド』とか言う謎の人型だの、ボールから出てくるモンスターだの、象に変わる剣だのといったファンタジーを目の当たりにしている。
しかしその推測を肯定すると、ギラーミンの正体についてもある程度想像が及ぶ。

「……ってことはあのギラーミンってのは未来人ってわけか? 
 どこのシュワルツネッガーだっつうの」

しかし事実、少なくともあのギラーミンという男は『何でも入るカバン』と『開始地点にテレポートさせる技術』、
『象に変化する剣』、『変な生物を呼び出す玉』といった彼女らの常識からはかけ離れた技術を持っているのだ。
生きている時代の違いから考えても、遥か未来の人間と考えるほうが自然だろう。

「……だったらどうすればいいんですの?
 そんな奴からどうやって逃げれば……」

自分でも知らないうちに、沙都子の声が曇る。
時間を自由に飛び回る――そんな奴ら相手に何が出来るというのか。
だがレヴィはそんな少女を鼻で笑う。

「何だ? 今更、ビビッてんのかよ」
「だって……そんな未来人相手にどうやったらいいっていうんですの!?」
「ハン、ガキは所詮ガキだな。
 いいかい、よく聞きな小さなお嬢ちゃん(アリス・キャロル)。
 引き金を引かなきゃ逆立ちしたって銃弾は出ないんだよ――Do you understand?」

出来るか、出来ないかじゃない。"やる"か"やらないか"、だ。
そしてレヴィにとって"やらない"という選択肢は存在しない。
ここまで人を舐めてくれた礼はしなくては気がすまない。
それもこの手で鉛の弾を叩き込むという方法で。
そして、そのために今ここでレヴィにはやることがあった。

「さて……そろそろ荷物を返してもらうぜ」

レヴィの視線は部屋の隅につまれた複数個のディバッグへと向けられる。
そう、ここにくるまでにレヴィは自分のディバックと銃を没収されていたのだ。
普段なら死んでも銃は放さないところだが、さすがに銃口を突きつけられた状態ではどうしようもない。
だが今なら、僅かに距離の開いた今ならば虚を突いて奪取できる可能性がある。
その意思を込め、豹のような引き締まった四肢に力を込める。

「うん、いいよ、はい」

だがその予想に反して、クリスはあまりにあっさりとディバッグを投げてよこしたのだ。

――罠か?

疑いながらもディバッグの中身を探るレヴィ。
そしてディバックから出てきたのはレヴィが求めていた銃器――散弾銃であった。
見たことの無い型であるものの、攻撃力不足を痛感していた今のレヴィにとって渡りに船の装備である。
だが今のレヴィにとっては喜びよりも疑惑の方が勝った。

「……何のつもりだ、テメェ」
「やだなぁ、もしかして僕疑われてる?
 友好の証ってことじゃ……あ、やっぱり駄目?」

それで信用できるほどレヴィの脳みそはお花畑ではない。
どう考えても彼らとレヴィの関係は決して友好的なものではない。
銃口越しに会話していることが何よりもその証拠だ。
その相手に強力な銃を渡そうというのだ。これで疑うなという方がおかしい。
そんな疑いのまなざしを目の前の吸血鬼に向ける。
だが視線の先の男はヘラヘラとした笑みを崩さない。
銃を一通りチェックしてみるものの、不審な点は見当たらない。
銃弾が少ないのが気になるが……スプリングフィールドの弾数とてそう多いとはいえない。
そういうものなのだろうと、割り切ることにする。

「まぁ正直に言っちゃうと、僕じゃ扱えないんだよね、その銃。
 だから君の荷物と物々交換でどうかな?」

レヴィは自分の持ち物と手の中にある銃を秤にかける。
が、当然その秤は一瞬で傾く結果に終わった。

「……オーケイ、交渉成立だ」

当然、訳のわからないものよりも、手になじむ鉄の感触を選択する。
ここでへそを曲げて、『やっぱりあげない』となっては結局損をするのは自分なのだ。
したがってなるべく穏便に済ます、という当初の方針通り、有難くいただくことにする。
レヴィは立ち上がるとディバッグを背負い、ドアへと向かう。

「あれ、一緒に行かないのかい?」
「ガキのお守りなら一人でやってろペド野郎」

物品を巻き上げるという当初の目的は達し、大当たりの武器を入手できた。
体力もある程度回復したし、テーピングと痛み止めのおかげで行動に支障は無い。
これ以上こいつらとかかわって、せっかく収まったイライラを再発させることもない。
特にまだこちらの方をじっと睨み付けているアルルゥとかいうガキと一緒にいるといつ切れてしまうか自分でもわからない。

「そっか、残念残念。――あ、そうそう」
「なんだよ……まだあんのかよ」

医務室を出ようとしたところを呼び止められ、レヴィはうんざりした顔で振り返る。

「いや、これはお願いじゃなくて忠告なんだけどね。
 もうあの赤毛の男と戦うのはやめといたほうがいい。
 アイツにはきっと誰も勝てないからね」

それはクリスにとってちょっとしたお節介。
ただでさえ超絶的な身体技能・体術に加え、自分の知らない謎の人型まで繰り出してきた。
そんな相手に向かっていってむざむざ殺されることも無い。
クリスはそう考えたのだ。

「――テメェ、もう一度言ってみろ」

が、それはレヴィにとってのドでか地雷に他ならない。
神速の抜き打ちをもって、スプリングフィールドXDの銃口がクリスに向けられる。
空気が、張り詰める。
深海の底の様に暗く、濁った重圧が医務室を埋め尽くす。

「いいか、その軽い脳みそをブチまけられたくなけりゃ、それ以上口を開くな。
 あたしが"出来る"だの"出来ない"だの、テメェが決めることじゃねぇんだよ!!」

レヴィにとってその発言は何よりも許しがたい。
自身の未来を勝手に他人に決め付けられる。
それはレヴィの『今まで自分で生き方を決めてきた』というプライドを踏みにじる行為に他ならなかった。
そう思った瞬間、穏便に行こうという思考は吹き飛び、銃を突きつけていた。
そして確信する。

「……お前、もしかして"撃てない"とか言うんじゃねぇだろうな」
「ははははははは、――バレた?」

笑みを絶やさずにそう答えるクリス。
だがよくよく見れば冷や汗が伝っている。

そう、最初から違和感はあったのだ。
銃口を向けられているにもかかわらず、あの肌がひりつく感じが無かったのだ。
俗に殺気とも呼ばれるそれは『殺すことのできない』クリスにとって持ち得ないものだった。
そしてそれならば『あの銃を扱えない』といったことにも合点がいく。
散弾銃は面の攻撃を行う武器だ。それはすなわち手加減のできない武器であるという事実を意味する。

だが超一流の拳銃使いであるレヴィが気づかなかったのには理由がある。
それはクリスがあまりにも武器の扱いに手馴れていたことである。

「……一応訊いておくぜ。何で引き金を引かなかった」
「え、だってさ、間違って殺しちゃったら嫌じゃない」

クリスの持つ武器はそもそもが近距離で放つ暗器である。
トイ・ソルジャーならまだしも、フリントロック式の旧型拳銃では、
今のレヴィとの距離では『確実に殺さない』という保障が出来ないのだ。

そう、ただそれだけが彼が引き金を引かなかった理由。
つまりクリスはこんな状況でさえ、『自分がレヴィに負ける』とは微塵も思っていないのだ。
そのことがレヴィのプライドをさらに踏みにじる。

「――!! どこまで人を舐めれば気が済むんだよテメェは!!」

殺意のまま、指に力が込められる。
クリスも無茶を承知でクロスレンジに飛び込もうとするが、スプリングフィールドの銃口は狙いをはずさない。
そばにいる沙都子も急激に膨れ上がったレヴィの殺気に当てられ、動けない。

「ダメッ!」

そんな中、動けたのはアルルゥ、ただ一人であった。
アルルゥはディパックから何かを取り出し、二人に向かって放り投げた
『それ』を見た瞬間、レヴィの背中に悪寒が走り、クリスも驚きに目を見開く。
レヴィは最初、この場所に飛ばされた直後の光景が、
クリスもかつて吸血鬼(ラルウァ)のメンバーと行動を共にしていた時の光景がフラッシュバックする。

アルルゥが投げたものは――爆弾。しかも複数個。
ご丁寧にピンまで抜かれている、とびっきりの危険物であった。

その正体を看破した瞬間、2人は即座に逆方向へと走り出す。
レヴィは床に置いてあったディバッグを2つ引っつかみ、出口へと体を放り出す。
対するクリスは呆然としている沙都子とアルルゥへと人知を超えたスピードで跳躍。
そのまま、窓へと身を躍らせる。
そして直後、放たれた三つの爆弾が連鎖的に爆発し、医務室を爆音と火炎が包み込んだ。


*    *



「ハァ……ハァ……くそったれめ」


数分後、生い茂る木々の中にレヴィの姿はあった。
あのタイミングなら確実に三人は爆発に巻き込まれたはずだ。
本来なら死体を確認し、無事な荷物を回収する方法がベターだといえる。

だがもしもあいつらが『何らかの方法』で逃れていたならば?
しかもそこに音を聞きつけてやってきた奴らがいたならば?
さすがの彼女といえども片腕で挟み撃ちを迎え撃つには難がある。
だからレヴィはひとまず爆心地から離れることを選択した。
遊園地のはずれ……生い茂る植木のところまで。
そこで奪ったディバッグの中身を探っていたレヴィは一枚の紙と円盤状の何かを発見する。
そしてその紙に書かれた文字を読み進めていくうち、整った顔に再び怒りの色が浮かび上がる。

「あのペドバンパイア、なめやがって……!」

怒りのまま紙切れをくしゃりと握りつぶす。
その紙切れに書かれていたのは渡された散弾銃の説明書。
そして円盤状の何か、とは手にした銃の予備弾倉に他ならない。
予備弾倉があるとないとではこの銃の使い勝手は天と地ほども開きがある。
この散弾銃の名はAA12――通称『マシン・ショットガン』。
その異名のごとく『散弾をフルオート連射する』という設計者の頭を疑うような過剰攻撃力の権化だ。
それを知ったあの男はただのショットガンとして渡したのだ。
恐らくはこちらの『何か奪ってやる』という意図を見抜いて。
そう、つまりこのレヴェッカ様を謀ろうとしたわけだ。

――今度会ったらあのにやけ面に一発ぶち込んでやる。

そうして心のブラックリストに化け物じみた顔を追加すると、思考を新しく手に入った銃へと移す。

このAA12、対人戦では明らかに過剰な威力だ。
だがこの戦場ではその過剰な威力も無駄にならない。
何せあの妙な人形や腕が変化したりもするのだ。火力はいくらあっても足りるものではない。
更には撃つ体勢さえしっかりしていれば、片手でも撃てるのだという。
いまや片手拳銃(ワンハンド)になってしまったレヴィにとってベストと言える武器だろう。

そして思考はさらに、これからの行動についてへと移り変わる。
望んでいた武器も手に入り、傷の治療も行った。
ならば彼女が次に求めるのは唯一手に入らなかったもの……情報だ。

彼女が知りたいのは"手っ取り早くギラーミンの元へ向かう方法"だ。
ギラーミンが未来人だろうが異世界人だろうが関係ない。
引き金を引けば銃弾が飛び、その弾丸が音よりも早く相手の命を食らう。
それこそが彼女たち拳銃遣い(ガンスリンガー)の信ずる絶対にしてたった一つのルール
それを実行するためにはあの男の喉下までたどり着かなければならない。
しかもギラーミンの想定していない方法で、だ。

だがそれと同時、今のレヴィには最優先事項がある。

『吼えるな、なにせ俺は不死身。どうせお前では俺には勝てないからな』
『もうあの赤毛の男と戦うのはやめといたほうがいい。
 アイツにはきっと誰も勝てないからね』

まぶたの裏に浮かぶのは笑みを浮かべた赤毛の男。
そして見開いたレヴィの目に浮かぶのは混じりっ気のない、純粋な殺意。

「上等じゃねぇか――殺してやる」

そしてレヴェッカは歩きだす。
ギラギラとした殺意を燻らせながら。



【G-北端 遊園地北口/1日目 昼】
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]疲労(小)、全身に負傷(一応手当て済み)、
    左腕使い物にならず(左小指欠損、複数箇所骨折等)をテーピングで固定。
[装備]スプリングフィールドXD 5/9@現実、スプリングフィールドXDの予備弾9/30 @現実、
    AA12@現実、予備弾薬(マガジン)×5
    支給品一式×2<クリストファー、カルラ>、クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ
    包丁@あずまんが大王、不明支給品(0~1)<クリストファー>、
[道具]支給品一式(一食消費、水1/5消費)、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
[思考・状況]
基本行動方針:悪党らしく、やりたいようにやる。
1:他の参加者と接触してなるべく穏便に情報を集める。他にバラライカの情報を集める。
2:クレア、カズマ、クリスは出会い次第殺す。
3:爆発?を起こしたゼロを許さない。(レヴィは誰がやったかは知りません)
4:他の参加者に武器を、特にソードカトラスがあったら譲ってくれるように頼む。断られたら力尽く。
5:アルルゥにとことん嫌悪感。
※クレア、カズマが何処へ行ったかは知りません。
※参戦時期は原作五巻終了後です。
※スタンドの存在を知りましたが、具体的には理解していません。ポケモンと混同してる節があります。
※ポケモンの能力と制限を理解しました。
ドラえもんの近くにあったカルラのデイパックを所有しています。


【AA12@現実】
フル・オートマティック式12口径散弾銃。
マシンショットガンの異名のとおり、散弾を連射できるとんでもない銃。
補充はドラム型のマガジンで行う。


*     *




「……行ったかな?」
「……みたいですわね」

それからしばらくの後、事務所の裏手を抜けたすぐ先にあるフードコートに動きがあった。
併設された店舗のうち、クレープ屋の軒先からひょっこりと顔を出したのは赤目の男と幼い少女。

そう、レヴィの想像通り、彼らは無事であった。
彼らを助けたのは一つの幸運――アルルゥに支給された最後のアイテム、ひらりマント。
それを払うことで爆炎と爆風を文字通りひらりとかわしたのだ。
炎の残る事務所を後にし、そのまま近くのフードコートに身を隠したのだ。

アルルゥの治療中、沙都子が説明書を読んでいなかったら、今頃丸焼きの死体が出来上がっていたことだろう。
だがクリスだけはかわしきれずに左手と背中にやけどを負っている。
現在は冷蔵庫にあった氷を布に包み、患部に当てている。
濡れタオルを当てているのはしょげた顔をしたアルルゥだ。

アルルゥにしてみれば前回は『うまくいった』のだ。
目が覚めたら仗助は無事で、怖い人はいなかった。
前回は衝撃で気絶していた上に、仗助自身がアルルゥのためを考え、詳しいことを伝えなかったのだ。
そのせいで危うく三人そろって死ぬところだった。
そのことは誰よりもアルルゥ自身が自覚していた。

「……ごめんなさい」
「ははは、気にしない気にしない! 僕ってば普通の人間よりも丈夫だから。
 自然治癒力ってやつだね!
 あれ、でも僕の場合は不自然治癒力とかになるのかな?」

だけど悪いことばかりでもない、と沙都子は思う。
身を挺してかばったのが功を奏したのか、クリスに対する先ほどまでの警戒心は大分薄れているようだ。
そして、それは沙都子にしても同じこと。

クリスの人間離れした身体能力を持ってすれば、二人を抱えて外へ飛び出すことはぎりぎりで可能であった。
それでも火傷を負ったのは少し離れた場所にあったディバッグに手を伸ばしたせいなのだ。
そして彼女のディバックの中に入っていた"それ"は今、壁を背にして座っている。
エメラルドグリーンのドレスを着た一体のビスクドール。
そう、直接聞いたわけでもなし、聞いてもはぐらかされる気はするが、きっとクリスは"彼女を助ける"ために手を伸ばしたのだ。
自分のダメージも省みずに。
……だからわたくしはクリスさんを信じれる。信じることができる。

「ところでクリスさん、さっきあの人が言っていたことってホントですの?」
「ああ、"殺せない"ってことかい? ……んー、まぁね。
 あ、でも戦うこと自体は楽しいから安心して!
 あの人ぐらいなら何とかできると思うし!」

クリスは別に博愛主義者ではない。だがこの武器は元々暗器だ。
剣としてならともかく、正確な射撃の出来ないこの銃とは『殺さない』戦い方はいささか相性が悪い。

「油断は大敵ですわよ。
 レヴィさんは何発かあの赤毛の男の人に撃ち込んでるんですから」

信じられない、という顔をしている。
それもそうだろう。
クリスが初めて相対した時、自分の打った銃弾を味方の槍を使って跳ね返したのだ。
あの反則的な存在を、不意打ちとはいえ出し抜いたというのか。

「あーあ、世の中って広いんだねぇ。
 もしかしてこの場に集められたのはそういう奴らばっかりなのかな。
 そういえばあの酒場で戦った青いつなぎの奴もいい線行ってたし、凹んじゃうなぁ
 そういえば沙都子ちゃんもあいつに勝ったんだっけ
 ……あれ、もしかして僕が一番弱い?」

『自然じゃないからかなぁ』としょげるクリス。
だがそんな哀愁漂う背中を沙都子は力強く叩き、衝撃にむせるクリスに向かって挑戦的な笑みを浮かべる

「しっかりしてくださいまし!
 そのためにわたくしがいるじゃありませんか!」

不自然の塊のような赤い瞳を真正面から見返しながら、沙都子は口を開く。

「どんなカードだって、戦略次第で化けますわ。
 だから……わたくしの力とクリスさんの力をあわせればきっと怖いものなしですのよ!」

自信満々にそう言い切る姿は部活で培った自信。
その笑みには少しも陰りはない。
まるで真夏の太陽のようなその笑みには、
何も知らないものさえ『勝てるのではないか』と鼓舞させる何かがそこにはあった。
それに対するクリスのリアクションは――

「……あはははははははははははははははははは!!
 すごいね、沙都子は!」

クリスは高笑いしながら沙都子の体を持ち上げて踊りだす。
友達って何って素晴らしいものだろう、という心からの歓喜とともに。

「ちょ、ちょっと! やめてくださいまし!」

恥ずかしいやら危ないやらで暴れる沙都子。
だがクリスの力は人間を遥かに超えている
ましてや非力な沙都子ではかなうはずも無い。
沙都子もそれを理解し、周囲に助けを求める。

「アルルゥさんも見てないで助け――」
「沙都子ばっかりずるい。アルルゥにもそれやって」
「ちょっと、アルルゥさん!?」
「OK、二人まとめてやっちゃうよ!
 歌も歌おう! あーるー晴れた昼下がりー、幼女がまーわーるー♪ ルラララララー♪」

こうして珍妙な歌をBGMに不気味な男に少女二人が振り回されるという奇妙な光景が現れた。
殺人者が現れなかったのは幸運としか言いようが無い。
……もしかしたら係わり合いになりたくなかっただけかもしれないが。

*     *


「まったく……クリスさんはレディに対する扱いがなっていませんわ!」
「はははははごめんごめん」

言葉とは裏腹に声も表情にも反省の色は一切見えない。
そんな彼らがいるのはいまだ熱の残る医務室跡である。

爆発を聞きつけた何者かが来るかもしれない。
その前にこの場所を離れようとする沙都子の提案に対し

『いいアイデアだね。でもその前にちょっと寄り道していいかな?』

そう言ってクリスが向かったのは爆心地。
窓ガラスはすべて吹き飛ばされ、化学製品の焼けるにおいがあたりに立ち込めている。

あの時医務室には6個のディバッグがあった。
うちクリスとカルラの分はレヴィに持ち出され、
アルルゥ、沙都子、仗助の分は自分たちで持っている。
つまり残ったレヴィの分だけは回収し切れていないのだ。

程なくして見つかる炭化したディバッグ。
そして周りに散らばるのはレヴィの所持品だ。
まず彼女たちが見つけたのは、見覚えのある二つの球体。

「ねぇ、これってさ」
「ええ、モンスターボールですわね。
 何が入ってるかわかりませんですけど……」

用心して触ってみたところ熱くは無い。
回収し、沙都子のディバックに放り込む。
その横でクリスは一心不乱に何かを探している。

「? 何を探しているんですの?」
「ええとね……ああ、あったあった、これだよ、これ」

そしてクリスは床に転がっていたそれを暗器銃で器用に引っ掛け、持ち上げる。
それは未だ爆発時の熱を持った、大きな銀色のわっか。
そう、ドラえもんの首輪だった。

「他のは替えがきくけど、こればっかりはきかないしね」

たしかに脱出するならこの首輪をつけたまま、というわけにも行かないだろう。
解析や実験用など、いくらあっても足りることは無い。
沙都子自身は半恐慌状態で記憶に残っていなかったが、クリス曰く何の前触れも無く首輪を爆破されたらしい。
喉に触れる冷たい感触に、今更ながら冷たい汗が背中を滑り落ちる。
そんな沙都子の様子を気にした風でもなく、クリスは笑顔を向ける。

「さて、目的のものも見つけたし、そろそろこの場所を離れようか」
「え、ええ……あれ、そういえばアルルゥさんは……」
「沙都子、クリスー!」

とてとてと近づいてくるアルルゥ。
そして、その手に握られたものを二人の眼前に突き出す。

「こんなの見つけた」

アルルゥが差し出したのは小さな宝石。
沙都子は美しい輝きを放つそれに見覚えがある。

「これは……ローザミスティカ……」

そう、彼女が拾ってきたのはレヴィに支給された雛苺のローザミスティカだった。
だがしかし沙都子は知らない。
だから命を失ったドールがいるということを考える。
もしもこれが水銀燈のものならば良い。
だがもしもこれが真紅か蒼星石のものだったとしたら。
沙都子の脳裏に映るのは人形を壊すレヴィの姿。
その光景を想像して湧き上がるのは大きな悲しみと――確かな怒り。
手に触れる柔らかく小さな感触に我を取り戻す。

「沙都子……こわい……」
「あ、ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたものですから」
「じゃあ、改めて聞くよ。これからどうしようか?
 彼女を追いかけるって手もあるけど……気づかれたら今度こそ撃たれちゃうかも」

レヴィを放っておくのもまずそうだし、真紅や蒼星石に翠星石のローザミスティカを渡したい。
しかし、今の沙都子にはまず優先すべきことがある。

「……アルルゥさんはどうしたいのですか? 遠慮なく言ってくださいまし」

ひざを突き、目線をあわせ、しっかりとした口調で語りかけた。
仗助とカルラの死を目の前にしたアルルゥが思うことはただ一つ。
この目で、この手でみんなの生きている姿を確認したいということだけ。

「おとーさんに、おねーちゃんに、みんなに、あいたい……」

沙都子は肉親と離れ離れになるつらさは誰よりもわかる。
泣いていたばかりの自分と目の前の少女の姿が重なり合う。
だから小さな手を握り返し、笑いかける。

「ええ、安心してくださいまし。
 私が絶対に皆さんに会わせてさしあげますわ」
「ふぅん、それで沙都子ちゃんはいいのかい?
 探している人がいるんだろう?」

クリスの問いかけに、わずかに息を詰まらせる。
ああ、確かに沙都子だってみんなに今すぐ会いたい。
あって無事を確かめ合いたい。

「……ええ、かまいませんわ」

でもかすかに震える自分よりも小さな掌を放っておくことなどでいはしない。
そう、わたしは今まで守られてばかりだったから。
にーにーに、みんなに、そして今はもう動かない"彼女"に。
だからこんどはわたくしの番。わたくしが誰かを守る番なのだ。
そして、今からすることはそのための儀式なのだ。

「……アルルゥさん、一つ、お願いがありますの」
「なに、さとこ?」
「わたくしのことは、"ねーねー"、と呼んでくださいまし」
「ねー、ねー?」

そう呼んでいる人がいることで強くなれる気がする。
詩音がそうしてくれたように、あの娘がそうしてくれたように。
わたくしも誰かの心の支えになってあげよう、と。
沙都子はそう決めたのだ。

「それじゃあ早速出発しましょう、クリスさん!」
「んー、もうちょっとどこか建物の中で休憩していこう」
「? なぜですの?」
「だって――もうすぐだしさ」

その真っ赤な瞳が見つめる先にあるのは通路沿いに設置された過剰な装飾の施された時計。
そしてその中を回る二つの針は後数分で重なり合おうとしていた。
そのことに気づいた瞬間、心臓がどくりとはねた。
自分自身に大丈夫と言い聞かせる。
梨花も、レナさんも、ねーねーも、魅音さんも、圭一さんも、きっと無事だと。
だがそれでも動悸は止まらない。

そして時計の針も止まらない。
どんな想いも、尊い祈りも全てを切り裂くように二つの針は螺旋を描く。
二つの針が共に頂点を指すまであと、少し――。



【G-3北端 遊園地医務室跡/1日目 昼】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3
[装備]:象剣ファンクフリード@ONE PIECE、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、
     翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、
     雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン
     F2000Rトイソルジャー@とある魔術の禁書目録(弾数30%)、5.56mm予備弾倉×4
     カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:アルルゥを家族に会わせる。
2:真紅、もしくは蒼星石にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
3:部活メンバーに会いたい。

※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。
※名簿は確認したようです。
※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません。
※レヴィに対して良い印象を持っていません。
 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑っています。


【クリストファー・シャルドレード@BACCANO!】
[状態]:健康、左手と背中に火傷
[装備]:アウレオルスの暗器銃(装弾100%)@とある魔術の禁書目録、マスケット銃用の弾丸50発
[道具]:大きめの首輪<ドラえもん>
[思考・状況]
1:さて、これからどうしようか
2:沙都子とアルルゥを守る(一応)
3:クレアには会いたくない。
※ローゼンメイデンについて簡単に説明を受けました。他のドールの存在を聞きました。
※名簿を確認しました。
※参戦時期は、『1934完結編』終了時です。


【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]健康、頭とわき腹に軽い痛み、いくらか擦り傷(治療済み)
[装備]なし
[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、
    不明支給品(0~1)<仗助> 、ひらりマント
[思考・状況]
1:ハクオロ達に会いたい
3:沙都子は信用。クリスは怖い(でもちょっと信用)。レヴィは謝るまで許さない。
※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。
※不明支給品(0~1) <アルルゥ>はひらりマントでした。

【ひらりマント@ドラえもん】
攻撃などを逸らしたり跳ね返したりできるマント。
ある程度使用するとボロボロになり、使い物にならなくなってしまう。




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最終更新:2012年12月04日 01:09