タイプ:ワイルド(後編)◆/VN9B5JKtM






その姿を確認したウルフウッドは一瞬我が目を疑った。
そして、それが幻ではないと分かると、どうしようもない怒りに全身を支配された。

(梨花!! 何でこんなとこに居んねん! おどれが来ても殺されるだけやっちゅうんは分かり切っとるやろが!)

ここに居るはずのない少女。
ここに居てはならない少女。
自分が守ろうと思った少女。
このままでは守れない少女。

「悪いがそれは出来ない相談だ。元の世界で乗客達が俺の助けを待っているんでな。俺は一刻も早く帰らなければならない」
「だから、ここに居る全員を殺すって言うの?」
「そうだ」

その答えを聞いた梨花が、杖を握る手に力を込める。
杖の先端には六枚の羽を広げる天使の像が蹲っている。

「どうして……? それだけの力があって、どうしてギラーミンと戦おうとしないの!? どうして皆で帰る方法を探そうとしないの!?
 …………どうして、そんな簡単に人を殺せるの……?」
「その帰る方法とやらに当てはあるのか? 無いのなら、どれだけの時間があれば見つけられる? 一日か? 一週間か? 一ヶ月か?
 ……悪いがそんなに待ってはいられない。言ったはずだ、俺は帰らなければならない。一刻も早く、だ。
 そのためにはここに居る64人を皆殺しにするのが手っ取り早い、それだけの話だ。……まあ犠牲になるお前らは気の毒だとは思うがな……」
「ッッ!! ふざけないでっっ!」

梨花が蓮の杖を横の壁に叩きつける。
数秒の間を置いて、ガゴンと金属をハンマーで殴りつけたような音がクレアの手元で鳴り響く。
同時にパニッシャーの先端が何かで強打されたように真横に弾かれる。

「そんな、そんな自分勝手な理由で……これ以上、私の大切な人を奪わないでっっっ!!」

叫び声と共に、梨花が杖を地面に振り下ろす。
数秒のタイムラグの後、クレアの頭上から見えざる鉄槌が振り下ろされる。
梨花の攻撃が頭に激突する寸前、クレアは体を横に一歩ずらし、事も無げにこれを回避する。

「衝撃を移動させているのか? 面白い能力だが……タネの割れた手品は二度も通じるものじゃない」

クレアが梨花にパニッシャーを向ける。
ほんのちょっと引き金を引くだけで、解き放たれた鋼鉄の暴威が梨花をズタズタに引き裂くだろう。
死が、目前まで迫っている。それでも梨花は一歩も退かない。
自分とは比べ物にならない強大な怪物が、目の前で牙を剥いている。
その事をはっきりと理解しながらも、その両の目に確固たる意思を灯し、しっかりと敵を見据えている。
カタカタと小刻みに震えながらも、それでも戦う意思は捨てていない。

(ウルフウッド! アホか、おどれは! いつまで寝とんねん! 梨花を守るんやなかったんか!?)

ウルフウッドは自分自身に対してどうしようもない程に怒りを感じていた。
梨花は必死に恐怖に耐えてウルフウッドの助けになろうとしているのに、自分は何を諦めているのか。
今、パニッシャーはウルフウッドではなく梨花の方を向いている。
守るはずが、逆に守られている。

情けない。
こんなザマでよく守るなどと言えたものだ。

梨花が杖を振りかぶる。
クレアが引き金に力を込める。
ウルフウッドの指先が地を引っ掻く。

(マシンガンの弾幕を防ぎ切る人形? 最強にして最高の個人兵装? 時を止める能力?
 それが何やっちゅうねん!)

わざわざ銃弾を防ぐという事は、弾が当たれば殺せるという事だ。
パニッシャーの事なら誰よりも知り尽くしている。昨日今日初めて手にした奴が使いこなせる代物ではない。
時を止められるのもコンマ数秒が限界だろう。何秒でも止めていられるのなら、自分などとっくに殺されているはずだ。

ならば、勝てない道理など無い。

(その程度や! たかがその程度や!
 おんどれが今まで一緒に旅してきたんは誰や! その気になれば一瞬で大都市一つ消し星を滅ぼす正真正銘の化物やろが!
 その力を、その生き様を、隣でずっと見てきたおどれが! たかがあの程度の怪物にビビってどないすんねん!!)

体の奥底から、力が湧き上がって来る。
いつしか、目の前の怪物に対する恐怖は消え去っていた。


「オオおおおォォオおおォォォおおオォォッッ!!!」


獣のような咆哮と共に、ウルフウッドが上半身を跳ね上げる。
梨花にパニッシャーを向けていたクレアの左手首がウルフウッドの剛腕にガッシリと掴み取られる。
渾身の力で締め上げられた骨がミシミシと軋み、握力が緩んだクレアの手からパニッシャーが零れ落ちる。
ズシンと十字架が地に落ちると共に、片膝立ちの足に力を込める。

「ガアアアァァァァァァッッッ!!!」
「オラアアァァァァァァッッッ!!!」

ウルフウッドが立ち上がり様、クレアの顔面に拳を振り上げる。
スタープラチナが拳を振り下ろし、これを迎え撃つ。
拳と拳、力と力がぶつかり合う。
一瞬の膠着の後、双方共に後ろへ大きく弾き飛ばされる。


ウルフウッドは受身を取りつつデイパックに手を突っ込み、中から十字架状の二重牙を取り出す。
ジャカッと音を立てて銃身を展開させた二重牙を左手に構えると、僅かに身を沈ませる。
クレアは空中で体勢を整えて着地すると、左拳を軽く開いては握り、感触を確かめる。
問題なく動かせる事を確認し、正面を見据えて後ろ足に力を込める。

両者、同時に地を蹴る。





左手の二重牙から鉛弾をばら撒きながら、ウルフウッドが地を駆ける。
唸りを上げて殺到する銃弾の嵐を左右に動いて避け、時にスタープラチナの拳で弾きながら、クレアも距離を詰めて行く。

これ以上長引かせるのは危険だ。
スタープラチナと拮抗するほどの力を見せた。
あの瞬間、クレアでさえも僅かにたじろぐような、鬼気迫るものを感じた。
今までは自分が圧倒していたが、明らかにさっきまでとは雰囲気が違う。
指一本すら動かせない、死にかけだった男と同一人物とは思えない。
自分は死なないという自信はあるが、それでも東方仗助と戦った時のように手痛い反撃を受けるかもしれない。
その前に全力で叩き潰す。

青筋が浮かぶほどにきつく左拳を握り締め、クレアが疾走する。
あと一歩で手が届く距離まで近づいたところで、ウルフウッドの右腕がブレた。
視線を向けると、その手に握られた無骨な拳銃の、暗い銃口が火を噴いた。
クレアの視力を以てしても捉え切れないスピードで懐のデザートイーグルを抜き放ち、一瞬で狙いを定めて引き金を引いたのだ。
目にも留まらぬ抜き撃ちが、クレアの眉間を貫く。



刹那――

「ザ・ワールドッ! 時よ止まれ!」

世界が、鼓動を止める。


静止した時の中、クレアは右足を一歩踏み出してウルフウッドの横に回り込む。
そのまま顔面にスタープラチナの拳を叩き込もうとして、

クレアの動きが止まる。
その原因はクレアの胸の前。
一発の銃弾が宙に浮いて、ピタリと静止している。
弾丸が放たれた元を辿れば、ウルフウッドが腕を交差させるようにしてクレアの胸部に銃口を向けていた。

時が止まっている間はウルフウッドはクレアの動きを知覚する事が出来ないし、指一本動かす事も出来ない。
つまり、ウルフウッドがこの弾丸を発射したのはクレアが時間を止める直前という事になる。

「時間停止のタイミングから俺の動きまでを全部読み切って、移動先を予測して銃弾を撃ち込んだのか? 人間に出来る事じゃないぞ。
 すごいな、お前。ひょっとしたら俺が今まで見てきた中で二番目ぐらいに強いんじゃないか? 無論、一番は俺なんだが。
 いや、マジですごいよ。最初からそれぐらい本気で殺しに来られてたら、俺も少しは追い詰められてたかも知れないな」

その言葉がウルフウッドの耳に届く事はないと知りつつも、惜しみない称賛を口にする。
口を動かしながらも自らの手を伸ばし、胸の前に浮いている銃弾を左手で払い退ける。
更にスタープラチナの左手を伸ばして、未だクレアを狙っている銃口を逸らす。
満足に動かせない己の右腕の代わりに、スタープラチナの拳をウルフウッドの後頭部に目掛けて全力で振り抜く。

――そして時は動き出す。


ウルフウッドが得たのは、ほんの僅かな時間。
一瞬後には容赦なくスタープラチナの拳が叩き込まれる。



だがウルフウッドにとっては、その一瞬で十分だった。

スタープラチナの拳が頭蓋を砕き脳漿を撒き散らす、寸前。
ウルフウッドが背を丸め、上半身を折り曲げた。
銃弾を目視で回避するこの男の反応速度を持ってすれば容易な事だ。
拳が空を切り、肩に担いだデイパックを掠める。
デイパックが拳圧で切り裂かれ、中身が四散する。
と同時に、スタープラチナの肩に二重牙の後ろ側の銃口が押し当てられた。
感覚を共有しているスタンドを通して、冷え切った銃身の感触がクレアにも伝わってくる。

「一本目」

銃声。
銃声。
また銃声。

二重牙から放たれた弾丸が、スタープラチナの肩を貫く。
クレアの右肩に激痛が走り、スタンドが撃たれた場所と同じ位置に穴が穿たれる。
コンクリートと混ざり合った肩にひび割れが広がり、腕がボロリと取れる。

ウルフウッドが勢い良く体を起こし、その反動を利用して上体をひねる。
振り向き様にクレアの額に二重牙の銃口を突き付け、引き金に力を込める。
クレアは咄嗟にスタープラチナの左手で銃身を掴む。
同時に左膝を曲げ、体ごと沈み込ませるようにして死線から逃れる。

直後、発砲。
左掌に熱を感じる。
至近距離で爆音が轟き、右耳の鼓膜を破る。
射出された銃弾が、コンクリートと肉の溶け合ったこめかみの皮膚をこそぎ取っていく。

「二本目や」

二重牙をスタープラチナで押し退けようとするが、まるで腕ごと彫像と化したかのように微動だにしない。
いや、それどころか逆にクレアの額に弾丸を撃ち込もうと、スタープラチナを超える力で押し返されている。
僅かでも力を緩めれば即座に均衡は崩れ、クレアの頭が撃ち砕かれる。

クレアはスタープラチナで二重牙を押さえながら左足を大きく踏み込み、最後に残った己の左拳を全力で振るう。
だがソレさえもウルフウッドは体躯をずらし回避する。

拳銃を持ったままの右腕をクレアの左腕に絡ませ、肘の裏を持ち上げるようにして脇に抱え込む。
腕を伸ばした格好のまま動けないクレアの左胸に、銃口が押し当てられる。

「三本目。これで終いや。」

ガチリと撃鉄を起こす音がやけに大きく聞こえる。
心臓狙いのゼロ距離射撃。
クレアといえども心臓を撃ち抜かれれば死は免れない。

(……はずがない)

『この世界は俺が見ている夢のようなものだ。
 だから世界は俺にとって都合がいいように出来ている』

そう信じているクレアにとって、自身の死はすなわち世界の終焉だ。
そしてクレアはまだ世界の終わりを望んではいない。


(……出来るはずがない)

故に、クレア・スタンフィールドは確信する。
絶対の自信を持って断言する。



(たった一発の銃弾で世界を滅ぼすなど、出来るはずがない!)

己が死ぬ事など有り得ないと。
この程度で己を殺せるはずがないと。

「スタープラチナッッ!!」

クレアの命を受け、スタープラチナが動く。
二重牙を掴んでいた左腕を離し、拳を引き戻す。

「オラアアアアァァァァァァァァッッッッ!!!!!」

スタープラチナが雄叫びを上げる。
裂帛の咆哮が大気を震わせる。
その隻腕に渾身の力を込め、



その拳が振るわれる事はなく。


くぐもった炸裂音が轟き、鋼鉄の牙がクレアの背を食い破った。

銃弾が胸部を突き抜け、クレアの体がビクリと大きく痙攣する。
自身と重ねるように出現させていたスタープラチナが掻き消え、ドサリと地に倒れ伏す。
仰向けに倒れるクレアの胸から血が溢れ出し、返り血で赤黒く変色した車掌服を鮮やかな紅色に染め上げていく。


こうして怪物クレア・スタンフィールドと魔人ニコラス・D・ウルフウッドの死闘は幕を下ろした。



   ◇   ◇   ◇





――スマンなぁ、怪物。おどれにも帰らなアカン理由があったんやろうが、ワイにも負けられへん理由があるんや。
――ああ、そや。せっかくやからパニッシャーはワイが貰とくで。このままおんどれの墓標にしとくんは勿体ないからなぁ。

「梨花、終わったで。……梨花?」


――おい…………ちょお待てや。おかしいやろが。あの怪物は倒したやんか。心臓ブチ抜いたったやんか。

――なのに。

――何でや。
――何でや。

――なぁ。



「梨花ァァァアァァアアアァッッッッッ!!!!!」

――何で梨花が倒れとるんや。





「鹿ァァァァァァッッッッッ!!!!! 居ったら返事せえェェェッッッッ!! 鹿ァァァァァッッッッッ!!!!」

――クソッ! あん時か! パニッシャー落とした時に、あの人形が指弾飛ばしとったんか!
――迂闊やぞ、ウルフウッド! アイツが指弾飛ばして攻撃するんは分かっとったやろが!
――パニッシャーに気ぃ取られて失念しとった! とんでもない失態やで!

「……ぁ…………。ニコ……ラス……」

――梨花! 無理して喋るなや。口開けるだけでも苦しそうやないか。

「良かった……生き、てて」

――アホ! ワイの事なんかより自分の心配せえや。お前の方がよっぽど重傷やないか。
――分かっとるんか? 腹ぁ撃たれとんねんで。血ぃ止まらへんねんで。

「守って……くれて……ありがとう……」

――何言うてんねん。ワイがヘタ打ったせいでおどれが撃たれたんやろが。
――クソッ! クソッ! クソッ! 何が守るや! 全然守れてへんやないか!

「……お願い…………沙都子、を……」

――アホな事抜かすなや。言ったやろが。これ以上ガキのお守りは真っ平やっちゅうねん。
――友達なんやろ? 心配なんやろ? やったらワイに押し付けんと自分で何とかせえや。



「どこやァァァァァッッッ!! 居らへんのか!? 鹿ァァァッッッ!!!」
「ウルフウッド! こっちだ!」

――居ったで! 鹿や! ほれ、こんな傷パパッと治してもらいや。
――見ぃや。嬢ちゃんも大丈夫そうやで。さっきよりも随分と顔色良くなっとるやないか。



――なぁ梨花、何でや。

――何で返事せぇへんのや。
――何で目ぇ開けへんのや。





――何で……息、してへんのや。



【古手梨花@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【残り19人】



【G-3 遊園地内レストラン/1日目 夜】


【チーム名:○同盟チョッパー組】
1:主催者の打倒。
2:劇場を迂回して遊園地、廃坑、古城跡を訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
3:グラハムとの合流(先発が会えなかった場合)
4:サカキミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
  クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
  ハクオロも一応信用。真紅、沙都子は情報不足で保留。


※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。



トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:腹部と顔にダメージ(中)、全身にダメージ(中)、右前足に銃創(止血済み)、疲労(小)、腕に○印、深い悲しみ、人獣形態
[装備]:包帯、ランブルボール×4@ONE PIECE
[道具]:支給品一式×4(2食分、水1/10消費)、タケコプター@ドラえもん、タオル、救急箱、病院で調達した医療道具、ホテルで調達したコーラ
[思考・状況]
 0:リカ……?
 1:レナや皆を守り抜いてみせる。その為なら……
 2:仲間と会いたい
 3:グラハムの様子を見る。(別れている為現在実行不能)
 4:ギラーミンを倒し、脱出する。
 5:イスカンダルの臣下になるかはまだ決められない。
 6:川に落ちたゾロが心配。
【備考】
 ※参戦時期はCP9編以降。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。



竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:右肩に銃創(治療済み)、深い悲しみ、私服、右腕に○印
[装備]:包帯、デザートイーグル(残弾数6/6)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、常盤台中学の制服
[道具]:支給品一式×4(4食分、水1/10消費)、ドライヤー、双眼鏡、ゾロの地図
    デザートイーグルの予備弾×12、不死の酒(空瓶)、絶縁グローブ@ポケットモンスターSPECIAL、通り抜けフープ、手榴弾×3
    ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)
[思考・状況]
 0:梨花ちゃん……?
 1:梨花、沙都子と一緒に必ず脱出する
 2:グラハムが心配
 3:何とかして首輪を外したい
 4:イスカンダルの勧誘は保留。
【備考】
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※梨花とウルフウッドの仲について察したようです。



【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身にダメージ(大)、深い悲しみ、無力感、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(4/8 予備弾17)、二重牙@トライガン・マキシマム(90%、95%)、包帯
[道具]:梨花のデイパック
[思考・状況]
 0:梨花……
【備考】
 ※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。
 ※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
 ※クレアを殺害したと思っています。
 ※梨花のデイパックの中身は以下の通りです。
  支給品一式×3(1食分消費)、ラズロのパ二ッシャー(弾丸数85% ロケットランチャーの弾丸数1/2)@トライガン・マキシマム
  インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム
  月天弓@終わりのクロニクル、フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL
  きせかえカメラ@ドラえもん、きせかえカメラ用服装イラスト集



【ラズロのパ二ッシャー@トライガン・マキシマム】
GUNG-HO-GUNSの一員、ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスの使用するトライパニッシャーの内の一丁。
ウルフウッドのパニッシャーとはカラーリングが違う(白と黒の配色が逆になっている)が、性能は同等。
クレアがG-4にあるカジノコーナーでコイン9999枚と交換したもの。
機関銃の予備弾薬1回分、ロケットランチャーの予備弾頭3個がセットで付いている。



   ◇   ◇   ◇



弾丸が胸骨を砕き、臓腑を突き破る。
衝撃が体内を突き抜け、頭が真っ白に染まる。
クレアが意識を手放しかけた、その瞬間。

『梨花ァァァアァァアアアァッッッッッ!!!!!』

ウルフウッドの絶叫が、深い闇の底へと沈みゆく意識を引き上げた。
霞がかったようにぼんやりとした思考を必死に働かせ、次に取るべき行動を模索する。

脳からの命令を受け、クレアの左手がピクリと動く。
良く見ればその手は親指、人差し指、中指の三指が歪にねじくれ、ひしゃげている。
クレアの左手が、這いずるようにデイパックへと伸びて行く。
その手がデイパックをゴソゴソと漁り、クレアはミカエルの眼の再生薬を取り出す。
ケースからアンプルを一本取り出すとスタープラチナの手を借りて蓋を外し、中身を喉の奥に流し込んだ。

直後、クレアの体中を内側から高熱で溶かされているような感覚が襲う。
全身の細胞が暴れ回る。
胸に開けられた風穴が白煙を上げ、見る見る塞がっていく。
コンクリートと一体化した顔の皮膚がベリベリと剥がれ落ち、肌色の表皮が顔を覗かせる。
肩が、足が、ボロリと零れ落ち、その下から新しい手足が生えてくる。
脇腹に引きつるような感覚を覚えたかと思うと、コンクリートと癒着した肌がポロポロと零れ落ちた。

「ッッ! ハァッ、ハァッ……! 思った以上にキツい……次は命に係わるかもな……。これはもう使わない方が良いな」

クレアは激しく脈打つ心臓を右手で押さえる。そこで半身の不随が回復している事に気付き喜びの声を上げる。

「おおっ! 治ってるじゃないか! これも再生薬の効果か? ハハッ、やっぱり自分の肉体に勝る物は無いな。今なら何だって出来る。
 ……っと、その前に靴が欲しいな。いつまでも裸足じゃ格好がつかないからな。着替えもあればいいんだが……まあそっちは後でもいいか」


ところで心臓を撃ち抜かれたはずのクレアがなぜ生きているのか。
もちろんクレアが心臓を撃たれても死ななかった訳でもなければ、ウルフウッドが狙いを外した訳でもない。
答えは簡単。「心臓に当たらなかったから」だ。

あの時クレアはスタープラチナの左手を引き戻したが、ウルフウッドが引き金を引くよりも早く拳をブチ込めるとは思っていなかった。
そこでクレアが選んだのは回避。
と言っても左腕をガッチリと捕らえられていたため身をかわす事は不可能。
スタープラチナとウルフウッドの腕力も超えていたため、左腕一本だけでは銃口を逸らす事も出来なかった。
この窮地からクレアが繰り出した起死回生の一手、それは「弾丸を逸らす」事。


かつてジョセフ・ジョースターは、スタンドとは『生命エネルギーが作り出すパワーある像(ヴィジョン)』だと説明した。
パワーある、つまり現実世界に干渉できるという事だ。
ヴィジョン、あくまで実体を持たない像だから物質をすり抜ける事も出来る。

ではスタンドが物体に触れようとした時、その物体に触れるかすり抜けるかはどのようにして決まるのか。
それは「本体の意思」である程度自由に決められる。
この性質を利用すれば、たとえば皮膚や骨をすり抜けてスタンドの手で直接心臓に触れる、といった事も可能だ。
そう、空条承太郎がDIOとの戦闘で、スタープラチナの手で自らの心臓を止め、動かしたように。

それならば。銃弾が心臓に到達する前に、体内でその軌道を曲げる事が出来たとしても不思議はないだろう。


ウルフウッドが引き金を引く瞬間、クレアはスタープラチナの左手を銃口の前に添えた。
そして銃弾が発射されると同時に、親指、人差し指、中指の三本で弾丸を摘んで勢いを殺しつつ、その弾道を横へと逸らした。
心臓を貫く中央よりの軌道から、肺を引き裂く外側の軌道へと。


ゼロ距離で撃ち込まれた弾丸が心臓に到達するまでの数cmの間にその軌道を逸らせば助かる、などと考える時点で正気ではない。
普通の人間はそんな事を考え付かないし、考えても実行しようとは思わない。いや、実行できると思わない。

それしか方法が無かったとは言え、これは相当に分の悪い賭けだった。
まず、上手く銃弾を逸らせるかどうかが分からなかった。
それに、もし成功して即死を免れたとしても、クレアが普段から仕事で心がけているように念入りに止めを刺されていれば命は無かった。
そうでなくても、再生薬を服用する前にデイパックを奪われれば為すすべなく死んでいただろう。

とは言え、クレアは自分が賭けに負けるなどとは微塵も思っていなかった。
自分は必ず銃弾を逸らせるという確信があったし、その後も再生薬を服用して回復すると信じて疑わなかった。

結果、銃弾の威力が予想以上に高かったせいで意識が飛びかけ、危うくそのまま死にかけるというハプニングがあったものの、クレアは生き延びた。
それどころかミカエルの眼の再生薬を服用したおかげでコンクリートと一体化した右半身も元に戻った。

「まさか俺が遅れを取るとはな。心臓に銃を突きつけられた時にはヒヤヒヤしたが……それでも俺は生きているし、右半身の不随も治った。
 おまけに奴はあの少女の治療を優先したのか、銃器を回収せずに去って行った。
 ――やはり、この世界は俺の都合がいいように出来ている。そういう事だな」

パニッシャーは持って行かれたが、その代わりと言わんばかりに大量の銃器が散らばっている。元はウルフウッドの持っていた武器だ。
クレアはそれらを拾い上げ、使えそうな物を回収していく。

「この散弾銃は……あの時俺のナイフを受け止めた銃か。これは使えそうにないな……。
 こっちの拳銃はまだ使えそうだな。弾丸は……これか。
 ん? この弾丸は何だ? 対応する銃が無いようだが……指弾として使えばいいか。
 このコインは何だ? 見た事も無いマークだが……一応持って行くか。邪魔になる事もないだろうしな」

クレアは銃器を回収し、梨花が倒れていた場所に視線を向けた。
赤く広がる血溜まりの傍に銀色の杖が落ちている。
先程は大きく広がっていた六枚の羽が今は閉じ、先端の天使像を包み隠している。
拾い上げて軽く地面に叩きつけてみるが、カツンと硬質な音が響くだけで何も起こらない。

「駄目か。そう言えばあの少女は隠れている間に何かを呟いていたな。あれがキーワードか何かなんだろう。まあ鈍器ぐらいには使えるか」

蓮の杖を無造作にデイパックに放り込むと、クレアは今後の方針を考える。

「今から追えばさっきの奴らに追いつけるかも知れないが、一度死にかけたせいか体力の消耗が激しい……。追うか?
 それとも地下を探索するか。あるいは北上して市街地に向かうという手もあるな。さて、これからどうするか……」

ウルフウッド達を追うか。地下に降りるか。このまま中央の市街地に向かうか。
僅かに逡巡し、クレアは歩き出す。


怪物は、未だ滅びない。



【G-2 遊園地/1日目 夜】


【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:疲労(大)、拳に血の跡
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険、スプリングフィールドXDの弾丸×7、拳銃の予備弾×30
    二重牙@トライガン・マキシマム(60%、100%)、AMTオートマグ(7/7 予備弾×21)
[道具]:支給品一式×5<クレア、一方通行、レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、未確認支給品(0~1)
    クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ、ミカエルの眼の再生薬×3@トライガン・マキシマム
    噴風貝(ジェットダイアル)@ONEPIECE、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
    パ二ッシャーの予備弾丸1回分、ロケットランチャーの予備弾頭2個
    ○印のコイン、ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾6、マシンガン残弾65%、徹甲弾残弾10)
    AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
 0:靴が欲しい。出来れば服も。
 1:ウルフウッド達を追うか、地下を探索するか、このまま北上するかを決める。
 2:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
 3:再生薬はもう使わない方が良い。
 4:ウルフウッド、梨花、沙都子、クリス、カズマ、チョッパー、レナと再び出会った時には彼らを殺す。
 5:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
 6:スター・プラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
 ※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
 ※名前を聞いていなかった為、カズマとクリスの死を知りません。
 ※コンクリートと一体化していた右半身の機能が元に戻りました。
 ※もう一度ミカエルの眼の再生薬を服用すれば、命に係わるかも知れないと思っています。
 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。



 ※・━━地に足が着いている。@終わりのクロニクル(概念)
  LOW-GのUCATにおいて使用されている概念。
  この概念の影響下では、足が着いている方向が「地面」だと認識される。
  壁や天井を歩く事も可能だし、その途中で物を落とせば当人にとっての「地面」に向かって落ちていく。
  当然、地下に降りるのにロープなんかは必要ない。

 ※カジノコーナーの概念空間内に、地下へと続く穴が空いています。湖に隠された鍵と関係があるかどうかは不明です。

 ※カジノコーナーの景品には以下のものがあります。
  【ウソップの輪ゴム@ONEPIECE】
  ただの輪ゴム。それ以上でも以下でもない。
  【一枝の六法全書@WORKING!!】
  小鳥遊家長女、一枝(職業・弁護士)の六法全書。本来の用途の他、一枝はこれで弟を殴ったり、弟に投げつけたりする。
  【トニオの包丁@ジョジョの奇妙な冒険】
  M県S市杜王町にあるレストラン・トラサルディーのオーナー、トニオさんが料理に使用する包丁。
  【ロットンのファールカップ@BLACK LAGOON】
  ロットン・“ザ・ウィザード”が着用している(のと同タイプの)ファールカップ。これが無ければロベルタに潰されていた。
  【デリホウライのトンファー@うたわれるもの】
  カルラの弟、デリホウライの使用するトンファー。ギリヤギナ族の怪力に耐えられる程度には頑丈だと思われる。
  【ギラーミンの拳銃@ドラえもん】
  ギラーミンがオープニングで使っていた拳銃。没収されて景品にされたらしい。
  【ジョンガリ・Aのライフル@ジョジョの奇妙な冒険】
  盲目の狙撃手、ジョンガリ・Aのライフル。当然だが、人工衛星は付いて来ない。筋肉は信用できないから骨で支えよう。
  【キクロプスのナイフ@ARMS】
  超人部隊X-ARMYの一員、千里眼のキクロプスが使用したナイフ。超振動で良く切れる。
  【ステファニーの軽機関散弾銃@とある魔術の禁書目録】
  暗殺者のくせに派手な近接戦闘を好む、ステファニー=ゴージャスパレスの使用する散弾を連射する軽機関銃。
  【ラズロのパ二ッシャー@トライガン・マキシマム】
  リヴィオのもう一つの人格、ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスの使用するトライパニッシャーの内の一丁。

  【キースのトランプ@BACCANO!】
  ガンドール三兄弟の長兄、キースがダラスを沈める時にドラム缶に入れたトランプ。何故か52枚全てジョーカー。
  【黒の騎士団員の仮面@コードギアス ナイトメアオブナナリー】
  黒の騎士団がブリタニアに宣戦布告した際に団員が被っていた、ゼロを模した仮面。
  【HOLYの制服@スクライド】
  HOLY隊員が着用している制服。
  【エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に】
  興宮のファミレス、エンジェルモートのウェイトレスが着用している制服。
  【ソーヤーの人工声帯@BLACK LAGOON】
  ロアナプラの“掃除屋”ソーヤーが会話に使用する人工声帯(マイク型)。
  【ベナウィのウォプタル@うたわれるもの】
  ベナウィが騎乗する白いウォプタル(通称「ウマ」。外見は二足歩行のトカゲのような生物)。
  【アーチャーの酒@Fate/Zero】
  アーチャーの宝物庫に収められた至高の酒。アインツベルン城で、セイバー、アーチャー、ライダーの三人が飲み交わしたもの。
  【佐山の新庄君抱き枕@終わりのクロニクル】
  新庄君のコスプレをした抱き枕。抱き枕のコスプレをした新庄君、ではない。


 ※G-2のどこかに以下のものが放置されています。
  支給品一式×2(1食分消費、地図と名簿は3つずつ)、SPAS12(使用不能)、チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
  ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、洋酒、ヴァッシュの衣装、包丁@あずまんが大王





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最終更新:2012年12月16日 07:14