そうだ病院に行こう。
そう思い立ったのは、つい今しがた襲われたからである。
次にいつ襲われるか分からないことを考えると、余裕のある内に包帯あたりは是非とも手に入れておきたい。
そう思い立ったのは、つい今しがた襲われたからである。
次にいつ襲われるか分からないことを考えると、余裕のある内に包帯あたりは是非とも手に入れておきたい。
(とりあえず病院に寄ったら和を探さないとな)
自分にとっての天使・原村和。
彼女を守るイカした自分を妄想しながら、北東へと歩みを進める。
彼女を守るイカした自分を妄想しながら、北東へと歩みを進める。
「酷いよ、京ちゃん!」
「私も探さないか、この馬鹿犬!」
「私も探さないか、この馬鹿犬!」
幻聴が聞こえてきた。
妄想でくらいナイトと姫ごっこをやらせてくれよ……
冗談抜きで、お前らだって出会えたら守るからさ。
一度くらい、格好付けて和のこと、守らせろよな。
妄想でくらいナイトと姫ごっこをやらせてくれよ……
冗談抜きで、お前らだって出会えたら守るからさ。
一度くらい、格好付けて和のこと、守らせろよな。
☆ ★ ☆ ★ ☆
ハロー、ハロー。
こんにちは、マイスウィートハニー。
そしてようこそ、極上の絶望さん。
まさかまさか、こんなに早く出会えるとはね。
こんにちは、マイスウィートハニー。
そしてようこそ、極上の絶望さん。
まさかまさか、こんなに早く出会えるとはね。
――Hello, Ms.No Future.
☆ ★ ☆ ★ ☆
「男ってのは悲しい生き物だ……
そこに浪漫への扉があると、つい開きたくなってしまう」
そこに浪漫への扉があると、つい開きたくなってしまう」
例えばそう、白く伸びた足の上、ひらひらと舞うスカートがそうだ。
男たるもの、めくってみたい衝動を持たない者などいない。
勿論通常はめくろうものなら即お縄につき臭いご飯をエブリデイ食べるはめになってしまうのでやらないが……
男たるもの、めくってみたい衝動を持たない者などいない。
勿論通常はめくろうものなら即お縄につき臭いご飯をエブリデイ食べるはめになってしまうのでやらないが……
「何をしても許される状況ならばっ! 扉を開こうとする者が現れてもおかしくはないっ!」
もし目の前に、完全に眠りこけた美少女がいたとしたら。
5人に1人は布切れの端を持ち上げるのではなかろうか。
重力に逆らって上を向く豊満なバストに手を添える者もいるかもしれない。
或いは、平時恋焦がれ続けたその唇を貪るか。
何にせよ、見ず知らずの女性にいきなり口づけをかました白雪姫の王子様よろしく、男は大抵獣なのだ。
5人に1人は布切れの端を持ち上げるのではなかろうか。
重力に逆らって上を向く豊満なバストに手を添える者もいるかもしれない。
或いは、平時恋焦がれ続けたその唇を貪るか。
何にせよ、見ず知らずの女性にいきなり口づけをかました白雪姫の王子様よろしく、男は大抵獣なのだ。
「しかしオレは違うっ! 断じて違うぞぉ!
今だって、ちょっとくらい触りたい衝動があるのに、グッと堪えているんだ!」
今だって、ちょっとくらい触りたい衝動があるのに、グッと堪えているんだ!」
こんなことを言ったら、軽蔑されるかもしれない。
いや、いっそ軽蔑してくれ。
所謂ジト目で俺を見てくれ。
また溜め息を吐いてくれ。
いや、いっそ軽蔑してくれ。
所謂ジト目で俺を見てくれ。
また溜め息を吐いてくれ。
「だから、オレを信じてオレと行動しないかっ!?
そうしたら、オレがケダモノから守ってやるから!」
そうしたら、オレがケダモノから守ってやるから!」
出来ればこの手を握ってほしい。
そして微笑み、感謝の気持ちを述べて欲しい。
そして微笑み、感謝の気持ちを述べて欲しい。
でも今はもう、そこまでのことは求めない。
拒絶してくれて構わないんだ。
貴方の方がよっぽどケダモノみたいですとか、そう言ってくれて構わない。
だから、だから――
拒絶してくれて構わないんだ。
貴方の方がよっぽどケダモノみたいですとか、そう言ってくれて構わない。
だから、だから――
「なぁ、返事してくれよ、和ぁ……」
原村和は返事をしない。
綺麗だった瞳を恐怖の色に染めたまま、その表情を凍り付かせ、彼女は眠りについている。
白かった顔の半分は、赤い染料をぶちまけられて汚れていた。
その染料が口から出たのか鼻から出たのか、区別なんてつかないほどだ。
綺麗だった瞳を恐怖の色に染めたまま、その表情を凍り付かせ、彼女は眠りについている。
白かった顔の半分は、赤い染料をぶちまけられて汚れていた。
その染料が口から出たのか鼻から出たのか、区別なんてつかないほどだ。
その柔らかそうな豊満な胸は、些かも上下していない。
二つの山の間には、引っくり返された精肉工場の屑籠のように肉片が散っている。
細身だった体から溢れる臓物は、和の受けた苦痛を象徴しているようだ。
二つの山の間には、引っくり返された精肉工場の屑籠のように肉片が散っている。
細身だった体から溢れる臓物は、和の受けた苦痛を象徴しているようだ。
そう、助けたかった人、原村和は、既に命を落としていた。
勝利に酔い、ヒーロー気取りでいる間に。
本当に助けなくてはならなかった大切な人は、救わなければならなかった人は、舞台を降りてしまっていたのだ。
勝利に酔い、ヒーロー気取りでいる間に。
本当に助けなくてはならなかった大切な人は、救わなければならなかった人は、舞台を降りてしまっていたのだ。
「咲と一緒に全国行くんじゃなかったのかよっ……」
返事なんて、あるわけがない。
そんなことが分からぬほど、哀れな頭はしていなかった。
しかし同時に、割りきって先に進めるほど賢い頭もしていない。
そんなことが分からぬほど、哀れな頭はしていなかった。
しかし同時に、割りきって先に進めるほど賢い頭もしていない。
「……ごめんな、和……」
最初はただの“ごっこ遊び”だった。
普段の日常会話を模したやりとりを、亡骸相手に繰り広げる。
そんな現実逃避から、この会話は始まっていた。
普段の日常会話を模したやりとりを、亡骸相手に繰り広げる。
そんな現実逃避から、この会話は始まっていた。
「オレ、何にも出来なくて……」
虚しく実のないごっこ遊び。
そんな遊びにも終わりは来る。
やればやるほど悲しみは積もっていき、感情を爆発させた。
そんな遊びにも終わりは来る。
やればやるほど悲しみは積もっていき、感情を爆発させた。
今はもう、原村和が生きてる体で会話することもままならない。
現実逃避すら出来ない。
出来ることは、縋り付いて嘆き叫ぶだけ。
現実逃避すら出来ない。
出来ることは、縋り付いて嘆き叫ぶだけ。
「お前のことっ……オレ……守りたかったのにっ……」
視界が霞む。
鼻から液体が垂れてきてるのを感じ、手の甲で鼻を拭った。
鼻水に濡れた手の甲が、テラテラと輝いている。
鼻から液体が垂れてきてるのを感じ、手の甲で鼻を拭った。
鼻水に濡れた手の甲が、テラテラと輝いている。
「……俺……」
それからどれほど泣いていただろう。
現実逃避で喋りかけていた時間を入れれば、かなりの時間だと思われた。
現実逃避で喋りかけていた時間を入れれば、かなりの時間だと思われた。
「守るから……」
その言語に覇気はない。
目の前の原村和の顔色同様、暗く沈んだものだった。
目の前の原村和の顔色同様、暗く沈んだものだった。
「咲の事、守るから」
宮永咲。
中学時代のクラスメート。
今はそれ以上の意味を持った相手である。
中学時代のクラスメート。
今はそれ以上の意味を持った相手である。
原村和が、誰より大切にしていた人。
片岡優希も友人として大切にしていたが、咲に対するそれは優希に対するそれの数倍はあるように思えた。
少なくとも、須賀京太郎はそう思っている。
少なくとも、須賀京太郎はそう思っている。
「だから……安心してくれよ……」
絶対、守る。
それは確かに誓いだった。
心の底からの誓い。
それは確かに誓いだった。
心の底からの誓い。
けれどもそれは、行動には繋がらなかった。
頭では動かねばと分かっていても、すぐに立ち上がることができない。
頭では動かねばと分かっていても、すぐに立ち上がることができない。
もう少し、もう少しだけ彼女といたい。
その感情が、彼を縛り付けていた。
その感情が、彼を縛り付けていた。
「なあ、和……」
話し声は、止まらない。
☆ ★ ☆ ★ ☆
この少年には未来がある。
守る力も殺す力も無いわけではない。
目の前には、無限に広がる選択肢。
なのに彼は、未だ歩を進めずにいる。
守る力も殺す力も無いわけではない。
目の前には、無限に広がる選択肢。
なのに彼は、未だ歩を進めずにいる。
この少女には未来がない。
どう足掻いても、何が起きてももはや何の影響もない。
見捨てても問題など生じないのだ。
けれども彼は、未だに彼女に囚われている。
どう足掻いても、何が起きてももはや何の影響もない。
見捨てても問題など生じないのだ。
けれども彼は、未だに彼女に囚われている。
彼はいつ動くのか。
彼は何か覚醒するキッカケを得られるのか。
それはまだ分からない。
彼は何か覚醒するキッカケを得られるのか。
それはまだ分からない。
分かっていることは、一点。
彼が特に守ろうとする、少年と少女の共通の親友・宮永咲は、既にこの世にいないということだ。
その真実を知ったとき、彼はどうするのだろうか。
彼が特に守ろうとする、少年と少女の共通の親友・宮永咲は、既にこの世にいないということだ。
その真実を知ったとき、彼はどうするのだろうか。
――Are you ready? Mr.No Future.
【G-09 /1日目 黎明】
【須賀京太郎@咲-Saki-】
【装備】:アリス・イン・ワンダーランド@武装錬金
【所持品】:支給品一式、IMI ミニウージー(32/32)
【状態】:疲労(中)、興奮(大)
【思考・行動】
1:和のためにも皆を守る(特に咲)
2:みんな無事に帰る
3:動かなきゃいけないと分かっていても、なかなか動けない
【須賀京太郎@咲-Saki-】
【装備】:アリス・イン・ワンダーランド@武装錬金
【所持品】:支給品一式、IMI ミニウージー(32/32)
【状態】:疲労(中)、興奮(大)
【思考・行動】
1:和のためにも皆を守る(特に咲)
2:みんな無事に帰る
3:動かなきゃいけないと分かっていても、なかなか動けない
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