「……っ、派手にやられたものだな」
藍色から橙色に変わりつつ有る街をクロノは駆ける。切り落とされた右手の出血を止めるための医療道具がないかを探しながら。
肘から先が存在しない右腕を残った左手で抑えながら薄く笑う。どう見ても重傷な自分の身体、おそらくは長くは持たないだろう。
今もアースラにいるであろう、リンディ・ハラオウンにエイミィ・リミエッタ。
二人は自分達の失踪をもう知り捜査をしているだろうか。
此処で自分が果てようとも、まだこの島にいるであろう三人が残っている。
この殺し合いについての調査は無駄にはならないだろうと結論づけた。
肘から先が存在しない右腕を残った左手で抑えながら薄く笑う。どう見ても重傷な自分の身体、おそらくは長くは持たないだろう。
今もアースラにいるであろう、リンディ・ハラオウンにエイミィ・リミエッタ。
二人は自分達の失踪をもう知り捜査をしているだろうか。
此処で自分が果てようとも、まだこの島にいるであろう三人が残っている。
この殺し合いについての調査は無駄にはならないだろうと結論づけた。
「三人には……生きていてほしいな」
ここまで気力で立っていたがもう限界、身体が地面に崩れ落ちる。
冷たい、ひんやりとした石の地面が熱を持った頬を吸収してくれた。
足はもう動かない。手に持っていた空虚の感触はもうわからない。
そして目をゆっくりと閉じていく。
冷たい、ひんやりとした石の地面が熱を持った頬を吸収してくれた。
足はもう動かない。手に持っていた空虚の感触はもうわからない。
そして目をゆっくりと閉じていく。
「ああ、終りか」
世界が闇に包まれていく。そこは月明かりも石造りの道もレンガの洋風の家も何も無い無。
黒。そこは生者も死者も等しく包みこみ、最後には消えていく。
どれほど強靭な意志であろうとも、平等に。
黒。そこは永遠の世界。考えることも動くこともない。
意志は、止まったまま。
黒。そこは生者も死者も等しく包みこみ、最後には消えていく。
どれほど強靭な意志であろうとも、平等に。
黒。そこは永遠の世界。考えることも動くこともない。
意志は、止まったまま。
「母さん、父さん、僕は、誇れる息子だったか、な」
短い人生だったけど、意志は最後まで貫いたと最後に思い。
僕は死ぬ――――
【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは 死】
――――それでも僕は生きようともがいていた。
「は、は。やっぱり、まだ終わりたく、ない――っ!」
世界に光が戻る。黒から白へと色が変わる。
「くう、きょっ! お前の、力っ! 使わせてもらうぞ」
手に持つ空虚が光を放ち始める。最初は弱々しい光だったが徐々に夜の闇を弾くほどに強く、強く。
そして地べたに這いつくばっていた身体をゆっくりと起こす。
寝たままだとこのまま眼を閉じて終わりそうだからだ。クロノの世界は今も黒と白が点滅している。
意識は十全とは言えず、今もまだ生きていることが奇跡とすら思えるほどに重傷だ。
それでも諦めかけていた自分を否定する、その思いが再びこの身体を動かす結果となった。
そして地べたに這いつくばっていた身体をゆっくりと起こす。
寝たままだとこのまま眼を閉じて終わりそうだからだ。クロノの世界は今も黒と白が点滅している。
意識は十全とは言えず、今もまだ生きていることが奇跡とすら思えるほどに重傷だ。
それでも諦めかけていた自分を否定する、その思いが再びこの身体を動かす結果となった。
(ひとまずは、出血を止める)
身体は熱さで崩れそうになろうとも心は冷静に。今、最優先で行うことを正確に計算する。
当然、第一に行うのは出血を止めること。このままだと出血多量で死んでしまう。
だがここには治療道具など存在しない。
止血のための包帯すらない状況で治療をクロノはどうやってするのか。
その答えは。
当然、第一に行うのは出血を止めること。このままだと出血多量で死んでしまう。
だがここには治療道具など存在しない。
止血のための包帯すらない状況で治療をクロノはどうやってするのか。
その答えは。
「空虚よ、傷口を電撃で燃やせ」
空虚に宿る電撃の力を利用して傷口を焼くこと。
無茶を通り越して蛮行とも言える。
無茶を通り越して蛮行とも言える。
「あがげさふぁふぁががああああがあがえっああげっぐあええれぎっぎいぎぎぎっがああああああ!」
焼けるような痛みに耐え切れず口からは奇声とヨダレが濁流のように流れだす。
意識が消えたり現れたり断続的に途切れた。
それでも生きる為に必要なことだと思うと耐えられた。
全ては死にたくない、ただそれだけなのだ。
意識が消えたり現れたり断続的に途切れた。
それでも生きる為に必要なことだと思うと耐えられた。
全ては死にたくない、ただそれだけなのだ。
「…………ま、だ…………い、きて……いる」
息も絶え絶えに出た言葉はこれだった。感覚もある。軽く目を開けてみると視界には石畳が延々と続いている。
まだ地獄には呼ばれていないようだと独りごちる。
ゆっくりと身体を起こしてフラフラと立ち上がる。
まだ地獄には呼ばれていないようだと独りごちる。
ゆっくりと身体を起こしてフラフラと立ち上がる。
「とりあえず、どこかの民家に」
クロノは疲労と痛みで満身創痍な身体にムチを入れて一歩づつ歩き始めた。
今は身体を休めることが先決、この状態で戦闘なんて出来る訳がない。
今は身体を休めることが先決、この状態で戦闘なんて出来る訳がない。
<契約者よ……>
「何だ……」
「何だ……」
クロノはどこからか脳内に響いてくる声に足を止めた。
その声には聞き覚えはあった。
この力を手にするときに聞いた声。
空虚に宿る人格だ。契約者に力を貸す代わりにマナを求める存在。
その声には聞き覚えはあった。
この力を手にするときに聞いた声。
空虚に宿る人格だ。契約者に力を貸す代わりにマナを求める存在。
<なぜ先程の戦闘で電撃を使わなかった? 身体強化のみで戦う意味などない。
我は説明したはずだ、永遠神剣の本来の力について>
「人を殺さないために、決まっているだろう……あんなモノを使ったら、簡単に死ぬ」
我は説明したはずだ、永遠神剣の本来の力について>
「人を殺さないために、決まっているだろう……あんなモノを使ったら、簡単に死ぬ」
空虚による電撃の力、それは確かに強力だ。
先程の戦闘で使えばこんな状態にはならなかったのかもしれない。
だがその力を使っていたら相手を殺していた可能性は大いにあった。
クロノ自身も完全に制御しきれていないのだ、空虚の力は。
先程の戦闘で使えばこんな状態にはならなかったのかもしれない。
だがその力を使っていたら相手を殺していた可能性は大いにあった。
クロノ自身も完全に制御しきれていないのだ、空虚の力は。
<だが、使わねば契約者が死ぬぞ>
「それでも、だ……僕はこの力を護るために使うって決めたから」
<例え、命を落としてもか>
「そうだ、執務官としてそう、すべきだって僕は」
<その決意に偽りはないか?>
「ない」
「それでも、だ……僕はこの力を護るために使うって決めたから」
<例え、命を落としてもか>
「そうだ、執務官としてそう、すべきだって僕は」
<その決意に偽りはないか?>
「ない」
沈黙が辺りに流れる。クロノは空虚からの声が響かないことを確認すると再び歩き出した。
<致し方無いか>
その声が頭に入ったと同時にクロノは膝を付いて倒れこんだ。
つい1秒前までギリギリではあったが動いていた身体が今はコンクリート詰めをされたかのように身動きがとれない。
加えて頭に締め付けるような痛みが襲いかかる。
苦痛の声をあげることが出来ないほどの痛みに耐え切れずのた打ち回る。
つい1秒前までギリギリではあったが動いていた身体が今はコンクリート詰めをされたかのように身動きがとれない。
加えて頭に締め付けるような痛みが襲いかかる。
苦痛の声をあげることが出来ないほどの痛みに耐え切れずのた打ち回る。
<徐々に、ゆっくりと支配していこうと思っていたが……このままだと契約者が死んでしまいそうでな。
我の力を惜しみなく使わないのが悪いのだぞ>
我の力を惜しみなく使わないのが悪いのだぞ>
変わっていく。
言葉には出来ない、形容しがたいが大切な何かが手を離れていく。
響く声を聞いていくにつれて消えていく大切なクロノ・ハラオウンの欠片。
言葉には出来ない、形容しがたいが大切な何かが手を離れていく。
響く声を聞いていくにつれて消えていく大切なクロノ・ハラオウンの欠片。
<ふん、まずは体力の補給が最優先か。若い女がいれば犯してマナを奪おう。
幸いのことに此処には上質な女はたくさんいる、補給には困らん。絞りとったら殺せばいいだけの話。
ククク……最後に勝ち残るのは我だ……!>
「ふ、ざ……ける、な!」
幸いのことに此処には上質な女はたくさんいる、補給には困らん。絞りとったら殺せばいいだけの話。
ククク……最後に勝ち残るのは我だ……!>
「ふ、ざ……ける、な!」
途切れ途切れだが口を動かして空虚に反抗の意志を示す。
女性を犯して殺すなんて吐き気のする行為をそのまま見過ごしてなるものか。
そうなるくらいなら死んだほうがマシだとクロノは心中で叫ぶ。
ともかく手に持つ空虚を離そうとするが、握る手はガチガチに固まっていて不可能。
自分の指が他人の指なのだろうかと錯覚してしまうくらいだ。
他の身体も意志に反してまったく動かない。
女性を犯して殺すなんて吐き気のする行為をそのまま見過ごしてなるものか。
そうなるくらいなら死んだほうがマシだとクロノは心中で叫ぶ。
ともかく手に持つ空虚を離そうとするが、握る手はガチガチに固まっていて不可能。
自分の指が他人の指なのだろうかと錯覚してしまうくらいだ。
他の身体も意志に反してまったく動かない。
「お前に、操られるくらいなら、僕は死を選ぶ」
歯を食いしばり、身体の自由を奪われまいと空虚からの支配を耐え忍ぶ。
頬からは汗が滴り落ちて地面を濡らす。
頬からは汗が滴り落ちて地面を濡らす。
<あくまで抵抗するか……まあいい。直に契約者の身体は我のモノとなる。神に祈る時間ぐらいはくれてやろう。
せいぜい悪あがきをすることだな……>
せいぜい悪あがきをすることだな……>
最後にそう言い捨てて頭の中に響いていた言葉は消えた。
空虚に言われたことを胸の中で反復する。
無論、クロノ自身も分かっていた。抵抗は無意味、自分が消えてしまうことがもはや逃れられない運命だということにも。
だが、抵抗しないということは選択肢にはない。
最後まで諦めない。不屈の心をこの胸に戦い抜くのみ。
そう決意した時だった。
空虚に言われたことを胸の中で反復する。
無論、クロノ自身も分かっていた。抵抗は無意味、自分が消えてしまうことがもはや逃れられない運命だということにも。
だが、抵抗しないということは選択肢にはない。
最後まで諦めない。不屈の心をこの胸に戦い抜くのみ。
そう決意した時だった。
「お、おい、おまえ大丈夫か」
クロノが上を仰ぎ見て真っ先に視界に入ったのは夜の闇の中でも目立つ金色の髪だった。
全体的に細身の体付きで背はクロノよりも高く、顔は整っているとも言えるだろう。
この金髪の青年――春原陽平はブラブラと歩いている内にクロノの絶叫を聞き、この場に急行したのだ。
だが着いてみたら、呻き苦しんでいる少年が一人。
本来なら何も考えずに拳銃で撃ち殺せばよかったのだが余りにも痛々しすぎてつい声をかけてしまったのだ。
全体的に細身の体付きで背はクロノよりも高く、顔は整っているとも言えるだろう。
この金髪の青年――春原陽平はブラブラと歩いている内にクロノの絶叫を聞き、この場に急行したのだ。
だが着いてみたら、呻き苦しんでいる少年が一人。
本来なら何も考えずに拳銃で撃ち殺せばよかったのだが余りにも痛々しすぎてつい声をかけてしまったのだ。
(さっき決めたばっかなのに何声かけてんだよ、僕……殺すって、芽衣の為にみんな殺すって!
……どうしても非情に、なりきれない……!)
……どうしても非情に、なりきれない……!)
かといって、陽平はまったくもって甘い訳でも油断している訳ではない。
腰に差している拳銃をクロノにいつでも撃てるように手を拳銃のグリップに触れさせている。
腰に差している拳銃をクロノにいつでも撃てるように手を拳銃のグリップに触れさせている。
「ちか、よるな!」
そろそろと陽平はクロノに近づくがその歩みは途中で止まった。
クロノはガバっと起き上がり手に持った空虚を向ける。
刃の切っ先からは敵意が漏れ出している。
それにつられたのか陽平も手を当てていた拳銃を構えた。
場に一色触発の空気が浸透する。
こいつは敵だ、撃つんだ。そう心の中で唱えるがトリガーの指は引かれない。
この期に及んで迷っているのか。もう戻れないくせに。
親友を殺した身分で、この偽善者。
自分で自分を罵倒しても、指は動かなかった。
クロノはガバっと起き上がり手に持った空虚を向ける。
刃の切っ先からは敵意が漏れ出している。
それにつられたのか陽平も手を当てていた拳銃を構えた。
場に一色触発の空気が浸透する。
こいつは敵だ、撃つんだ。そう心の中で唱えるがトリガーの指は引かれない。
この期に及んで迷っているのか。もう戻れないくせに。
親友を殺した身分で、この偽善者。
自分で自分を罵倒しても、指は動かなかった。
「近寄らないでくれ……」
併せて次に発せられた言葉が今向けられている敵意とは真逆の善意が込められていたからだ。
よく見てみると片方しかない手は震えていた。ぶるぶると今行っている行為に拒絶しているかのように。
よく見てみると片方しかない手は震えていた。ぶるぶると今行っている行為に拒絶しているかのように。
「見ず知らずの、貴方に。頼むのは気が引ける……だけど……! お願いが有るんだ」
「何だよ……何を頼もうっていうんだ」
「僕を、殺してくれ」
「何だよ……何を頼もうっていうんだ」
「僕を、殺してくれ」
放たれた言葉に陽平は耳を疑った。何故殺されたい? 何故自分で自殺しない?
疑問が頭に充満する。自殺の補助となる武器がないのならまだわかる、だが手元にあるのだ。
疑問が頭に充満する。自殺の補助となる武器がないのならまだわかる、だが手元にあるのだ。
「貴方が疑問を覚えるのもわかる……だけど、僕は、自分の手では死ねないんだ」
「何でさ、お前の手に握られている剣で自分の体をぶっ刺せばいいじゃん」
「それができたら、苦労はしないさ……」
「何でさ、お前の手に握られている剣で自分の体をぶっ刺せばいいじゃん」
「それができたら、苦労はしないさ……」
クロノは絞り出すように漏らした後、地面に蹲り何かを抑えるかのごとく荒く息を吐く。
そして幾らか時間が経った後、陽平が何故と思っていた疑問の答えをポツポツとしゃべりだした。
疑問の答えは陽平にとっては奇想天外な話だった。
魔法、次元の向こうに存在する世界。永遠神剣の呪縛。今までの常識では考えられないものだった。
殺し合いに巻き込まれた時点でそんなことを言う資格はないのかもしれないが。
そして幾らか時間が経った後、陽平が何故と思っていた疑問の答えをポツポツとしゃべりだした。
疑問の答えは陽平にとっては奇想天外な話だった。
魔法、次元の向こうに存在する世界。永遠神剣の呪縛。今までの常識では考えられないものだった。
殺し合いに巻き込まれた時点でそんなことを言う資格はないのかもしれないが。
「クロノっていったか、お前が何を言ってるかなんて全然わかんないし理解出来ない。
時空管理局、永遠神剣、ミッドチルダ……僕の理解の範疇を越えているよ。
説明も大雑把だったしね」
「当然、ですよね」
「それに、その剣に操られて自分では死ねないっていうのも胡散臭い」
「……」
「だけどお前から出てる殺気っていうのかな、僕みたいなただの学生でもわかるぐらいに。
それを受けて信じないっていうのもどうかなって思ってる」
時空管理局、永遠神剣、ミッドチルダ……僕の理解の範疇を越えているよ。
説明も大雑把だったしね」
「当然、ですよね」
「それに、その剣に操られて自分では死ねないっていうのも胡散臭い」
「……」
「だけどお前から出てる殺気っていうのかな、僕みたいなただの学生でもわかるぐらいに。
それを受けて信じないっていうのもどうかなって思ってる」
空虚の切っ先は再び陽平に向いていた。今にもその白刃で刺し殺す勢いで殺気が漏れ出している。
それをクロノは必死で押し殺している。意地でも凶行を起こさせないという意志が両目の奥からは感じ取れた。
汗は依然とだらだらと流れ落ち、口からは舌を噛んだのか血が一滴ポツンと下に落ちた。
それをクロノは必死で押し殺している。意地でも凶行を起こさせないという意志が両目の奥からは感じ取れた。
汗は依然とだらだらと流れ落ち、口からは舌を噛んだのか血が一滴ポツンと下に落ちた。
「お前の言っていることは本当でこのまま放っておくと僕まで殺すかもしれないってのもあながち嘘じゃない。
どっちにしろ僕は――死にたくないんだ。
お前の言うことにわずかでも可能性がありそうだし……望みどおり殺すよ、クロノ・ハラオウン」
どっちにしろ僕は――死にたくないんだ。
お前の言うことにわずかでも可能性がありそうだし……望みどおり殺すよ、クロノ・ハラオウン」
拳銃の先をクロノの眉間に合わせる。後はトリガーを引くのみ。
だけど。陽平の決意にはまだ迷いがあった。
だけど。陽平の決意にはまだ迷いがあった。
(迷うなよ、春原陽平。僕は僕自身の目的を達成する為に殺す! なのはちゃんの時と違う、後悔なんて、あるわけない。
この道を僕は進むんだ、人殺しの道を)
この道を僕は進むんだ、人殺しの道を)
親友である朋也を殺した時は今とは違って勢いがあった。
二人の少女の首が飛んで危機感が最高潮に達していたために殺さなくてはいけないと気持ちが煽られていた。
だが、落ち着きを徐々に取り戻すにつれて迷いが生まれた。自分のやっていることが本当に正しいのだろうか。
ただの自己満足なのではないか。こんなことをして芽衣は喜ぶのか。
二人の少女の首が飛んで危機感が最高潮に達していたために殺さなくてはいけないと気持ちが煽られていた。
だが、落ち着きを徐々に取り戻すにつれて迷いが生まれた。自分のやっていることが本当に正しいのだろうか。
ただの自己満足なのではないか。こんなことをして芽衣は喜ぶのか。
(でも、後戻りする資格は僕にはないんだから)
どんなに苦悩しても既に人殺しとなり果てた自分にそのような資格はない。
進む以外の選択肢など有るものか。
進む以外の選択肢など有るものか。
「最後に何か言いたいことはないわけ?」
「ありがとうございました……本当はこんなこと頼むべきではないってわかるのに……」
「ふん、恨み言はないのかよ……僕は自分の都合の為にお前を殺すんだぞ? 恨んで当然だろ?
それにあいにくとお前が思ってるようないい奴じゃないんだよ、僕は」
「ありがとうございました……本当はこんなこと頼むべきではないってわかるのに……」
「ふん、恨み言はないのかよ……僕は自分の都合の為にお前を殺すんだぞ? 恨んで当然だろ?
それにあいにくとお前が思ってるようないい奴じゃないんだよ、僕は」
皮肉げに陽平は頭を掻きむしりながら言い捨てる。
顔は苦い薬を飲んだように渋い。
陽平はクロノの曇りがない顔を見て自分が殺し合いに乗っていて既に一人殺しているんだ、と叫びたい衝動に駆られた。
だがそれは余計であり自分の利益にはならない。陽平の拙い頭でさえろくなことにならないと分かっていた。
顔は苦い薬を飲んだように渋い。
陽平はクロノの曇りがない顔を見て自分が殺し合いに乗っていて既に一人殺しているんだ、と叫びたい衝動に駆られた。
だがそれは余計であり自分の利益にはならない。陽平の拙い頭でさえろくなことにならないと分かっていた。
「あくまで“たまたま”乗っていないだけなんだからな、僕は」
そして陽平はクロノに嘘をついた。自分は殺し合いなんかに乗っていない、と。
殺し合いに乗っているという事実を言ってもめんどくさいことにしかなりそうにない。
それにこの賞賛は自分みたいなクズがうけていいものではない、そう感じていた。
殺し合いに乗っているという事実を言ってもめんどくさいことにしかなりそうにない。
それにこの賞賛は自分みたいなクズがうけていいものではない、そう感じていた。
「そんなことは、ない。貴方は、そうやって悪ぶってはいますが……とても心が強い人だって」
「買いかぶり過ぎだっての。で、もういいかい?」
「最後に、お願いが、僕の仲間に会ったら力になってあげてください……! お願いします……!」
「確かお前、妹がいたよな。同じ名字だったから目についたよ」
「ええ、義理ですが。だけど、血縁がなくとも大切な人に代わりはありません」
「買いかぶり過ぎだっての。で、もういいかい?」
「最後に、お願いが、僕の仲間に会ったら力になってあげてください……! お願いします……!」
「確かお前、妹がいたよな。同じ名字だったから目についたよ」
「ええ、義理ですが。だけど、血縁がなくとも大切な人に代わりはありません」
それからクロノは仲間の簡易的な外見の説明と名前をさらっと陽平に教える。
合間には自分の名前を出したら信用してくれるなど配慮を入れて。
異変はその説明の最中に起こり始めた。
合間には自分の名前を出したら信用してくれるなど配慮を入れて。
異変はその説明の最中に起こり始めた。
<黙って聞いてやっていればいい気になりおって。ふざけるな、そのようなこと我が認めん。貴様は我の操り人形となるのだ>
「お生憎様だな。僕はそのような、ものに……っ! なるつもりは、ないっっっっ!」
<最後の時間くらい自由に過ごさせようと考えていた我が甘かったようだ。
消えろ、契約者よ>
「っが……ぁあ、ああぁ嗚呼ぁ嗚呼ぁあああああっああああああ!!」
「お生憎様だな。僕はそのような、ものに……っ! なるつもりは、ないっっっっ!」
<最後の時間くらい自由に過ごさせようと考えていた我が甘かったようだ。
消えろ、契約者よ>
「っが……ぁあ、ああぁ嗚呼ぁ嗚呼ぁあああああっああああああ!!」
空虚の精神侵略が急に早まったのかクロノの身体が大きく揺れ出した。
目は大きく見開かれて今にも飛び出しそうだ。
顔は青白く染まり感情が消えつつある。
目は大きく見開かれて今にも飛び出しそうだ。
顔は青白く染まり感情が消えつつある。
「はや、くっ! 撃って、下さい!!」
「……あぁ」
「……あぁ」
陽平は改めて手に持った拳銃の銃口をクロノの身体に定める。
距離は近い、故に銃弾が外れることはないだろう。
後は覚悟を決めてトリガーを引くだけ。数分前と同じ状況だ。
だが前と違うのはもう迷っている猶予がないことだ、時間はない。
距離は近い、故に銃弾が外れることはないだろう。
後は覚悟を決めてトリガーを引くだけ。数分前と同じ状況だ。
だが前と違うのはもう迷っている猶予がないことだ、時間はない。
「……」
「……なんで笑ってるのさ」
「……なんで笑ってるのさ」
クロノは下を向いてた顔を上げて陽平に向き直る。
その顔を見た陽平は驚いた。
笑顔だったのだ。それは何かをやり遂げた、澄み切った笑顔だった。
何故、そんな顔をしている。今から死ぬっていうのに。
そう聞いてやりたい衝動に駆られたが、断念。
早くこの指にかけているトリガーを引かないと殺されるかもしれないと思った為に。
センチメンタルな感傷に浸ってられる程の余裕はなかった。
そして。
その顔を見た陽平は驚いた。
笑顔だったのだ。それは何かをやり遂げた、澄み切った笑顔だった。
何故、そんな顔をしている。今から死ぬっていうのに。
そう聞いてやりたい衝動に駆られたが、断念。
早くこの指にかけているトリガーを引かないと殺されるかもしれないと思った為に。
センチメンタルな感傷に浸ってられる程の余裕はなかった。
そして。
「貴方のおかげで僕は――――救われた」
「…………っ」
「…………っ」
軽い銃声が、朝焼けの街に反響した。
◆ ◆ ◆
「ははっ、何が救われただよ」
両膝を地につけて陽平は嗤う。ただ、空っぽな笑みを浮かべて自分をあざ嗤い続けた。
クロノの最後に残した言葉が胸に突き刺さる。
“救われた”。
その言葉は陽平にとって刃物で突き刺されるよりも、拳銃で撃たれるよりも痛かった。
無償の信頼。ふざけるな、と叫び散らした。だけど、返事はなかった。
死んでいる者に返事を促しても返ってくるわけがない。
それでも叫び散らした。そうしなければ自分の中にある感情の濁流に押し潰されてしまいそうだからだ。
クロノの最後に残した言葉が胸に突き刺さる。
“救われた”。
その言葉は陽平にとって刃物で突き刺されるよりも、拳銃で撃たれるよりも痛かった。
無償の信頼。ふざけるな、と叫び散らした。だけど、返事はなかった。
死んでいる者に返事を促しても返ってくるわけがない。
それでも叫び散らした。そうしなければ自分の中にある感情の濁流に押し潰されてしまいそうだからだ。
「僕は、そんな上等な奴じゃねえ……! 最低のクズに、言ってんだよ!!」
地面を何度も両の拳で叩き続ける。何度も何度も、今までため込んできた激情を吐き出すかのように。
最もどんなに苦しんでもその言葉は否定されない。陽平が望む答えは永遠に返ってこない。
最もどんなに苦しんでもその言葉は否定されない。陽平が望む答えは永遠に返ってこない。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
血を吐くような絶叫が橙色に染まりつつ有る西洋の街に響いた。
見上げた空は朝焼けで薄い橙色に染まって綺麗だった。
だが、それを感じる感傷も今の陽平には存在しない。
頭の中には“救われた”、この言葉が延々と繰り返されているだけ。
故に気づけなかった。背後の足音に。
見上げた空は朝焼けで薄い橙色に染まって綺麗だった。
だが、それを感じる感傷も今の陽平には存在しない。
頭の中には“救われた”、この言葉が延々と繰り返されているだけ。
故に気づけなかった。背後の足音に。
「へー、殺り損なったから始末しに来てみりゃあ面白いもんが見れたな」
男の陽気な声に陽平は現実に引き戻された。
それからの行動は早い。
振り向きざまに腰に差していた拳銃を抜き、一発。その後も弾切れになるまで弾丸を連発した。
だが、放たれた銃弾は虚空を穿つのみ。
突如後ろから声をかけてきた男には一発足りとも当たらなかった。
それからの行動は早い。
振り向きざまに腰に差していた拳銃を抜き、一発。その後も弾切れになるまで弾丸を連発した。
だが、放たれた銃弾は虚空を穿つのみ。
突如後ろから声をかけてきた男には一発足りとも当たらなかった。
「っと、最初から隠れててよかったよかった。危うく蜂の巣になってしまうところだったぜ」
声の元は家の影から流れてきた。こうなることも予想していたのか言葉とは裏腹に声に焦りはなかった。
余裕。圧倒的な自信。それらが声には含まれていた。
余裕。圧倒的な自信。それらが声には含まれていた。
「そんな殺気立たないでさ、俺とちょっと話そうぜ」
「あんたと話すことなんてない」
「そんな事言うなって。情報交換は有益だろ。なあマーダーさん?」
「……!?」
「まあわかっていたことだけどやっぱり乗ってたんだな、何も言わずに撃ってきた時点でバレバレ」
「あんたと話すことなんてない」
「そんな事言うなって。情報交換は有益だろ。なあマーダーさん?」
「……!?」
「まあわかっていたことだけどやっぱり乗ってたんだな、何も言わずに撃ってきた時点でバレバレ」
こいつは一筋縄ではいかない。おそらくは自分より数段頭が切れる。
短いやりとりながら陽平はそう判断した。
その流れで改めてこの島での情報の有益性について考える。
この島にいる参加者の名前は配られた名簿で知ることが出来るが、姿形までは乗っていない。
最初から知っているのは元々の知り合いぐらいだ。
そんな中見知らぬ参加者の誰が乗っているか、乗っていないか。
積極的に他者と争うと決めたとはいえ、争ってばかりでは疲労する。
効率的にも悪いばかりだ。
信用するに足るのかはわからないが聞くだけ聞いてみるのもいいのかもしれないと陽平は結論づけた。
短いやりとりながら陽平はそう判断した。
その流れで改めてこの島での情報の有益性について考える。
この島にいる参加者の名前は配られた名簿で知ることが出来るが、姿形までは乗っていない。
最初から知っているのは元々の知り合いぐらいだ。
そんな中見知らぬ参加者の誰が乗っているか、乗っていないか。
積極的に他者と争うと決めたとはいえ、争ってばかりでは疲労する。
効率的にも悪いばかりだ。
信用するに足るのかはわからないが聞くだけ聞いてみるのもいいのかもしれないと陽平は結論づけた。
「わかった……姿を見せろよ」
「交渉成立ってね、物分りが良くて助かる。おっと出てきたらいきなりズドンっ! ってのはかんべんしてくれよ。
まあ、そうしてもいいがその代わり――覚悟しろよ」
「交渉成立ってね、物分りが良くて助かる。おっと出てきたらいきなりズドンっ! ってのはかんべんしてくれよ。
まあ、そうしてもいいがその代わり――覚悟しろよ」
家の影から出てきたのは陽平と同じくらいの年代の高校生だった。
茶色い髪に軽薄そうな顔つき。見るものが見ればイケメンと評されるかもしれない。
だけど陽平が気になったのはそこではなかった。
茶色い髪に軽薄そうな顔つき。見るものが見ればイケメンと評されるかもしれない。
だけど陽平が気になったのはそこではなかった。
「ん? なんかゴミでもついてるか?」
顔に張り付いた笑み。普段どおりの日常で振舞っているような笑みに陽平は恐怖を感じた。
こいつはこんな状況でもいつも通りの笑顔を作れるのか。
心中で厄介な奴に遭遇してしまったものだと悪態をつく。
だがこの遭遇にはもう取り返しがつかない。
せいぜい利用出来るだけ利用して相手が付け入る隙をなくすしかないのだ。
そう、割りきって応対することに陽平は決めた。
こいつはこんな状況でもいつも通りの笑顔を作れるのか。
心中で厄介な奴に遭遇してしまったものだと悪態をつく。
だがこの遭遇にはもう取り返しがつかない。
せいぜい利用出来るだけ利用して相手が付け入る隙をなくすしかないのだ。
そう、割りきって応対することに陽平は決めた。
「自己紹介といこうか。俺は、伊達スバルだ。こんな場所で言うのも仲良くやろうぜ」
「……僕は岡崎朋也。出来ればこれっきりにしたいね」
「……僕は岡崎朋也。出来ればこれっきりにしたいね」
互いに偽りの名前を名乗って相対する二人の青年。
春原陽平は妹を護る為に。
杉崎鍵は大切な人達を護る為に。
名前を偽ろうとも表面上を欺こうとも、その想いだけは本物だった。
春原陽平は妹を護る為に。
杉崎鍵は大切な人達を護る為に。
名前を偽ろうとも表面上を欺こうとも、その想いだけは本物だった。
【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのは 死亡】
【E-2 /1日目 黎明】
【春原陽平@CLANNAD】
【状態】:健康
【装備】:Sturm Ruger Blackhawk(0/6)、IMI Micro UZI(20/20)
【道具】:支給品一式×2 不明支給品0~4、.41Remington Magnum予備弾60、予備マガジン×3
【思考・状況】
基本:芽衣のために皆殺し
1:スバル(鍵)と情報交換。
2:クロノの仲間とであったら……?
3:甘さは見せない……はずだった。
【状態】:健康
【装備】:Sturm Ruger Blackhawk(0/6)、IMI Micro UZI(20/20)
【道具】:支給品一式×2 不明支給品0~4、.41Remington Magnum予備弾60、予備マガジン×3
【思考・状況】
基本:芽衣のために皆殺し
1:スバル(鍵)と情報交換。
2:クロノの仲間とであったら……?
3:甘さは見せない……はずだった。
【杉崎鍵@生徒会シリーズ】
【装備】IMI デザートイーグル(6/7+1)予備マガジン×5、月詠の太刀@魔法先生ネギま!
【所持品】:支給品一式×2、空のマガジン、不明支給品0~4
【状態】:疲労(小)
【思考・行動】
基本:大切な人達を護るために殺し合いに乗る。
1:朋也(陽平)と情報交換。
※空虚@永遠のアセリア、斬られた右手首、スタングレネード×3、支給品一式、不明支給品0~1がデイバックに入って辺りに落ちています。
【装備】IMI デザートイーグル(6/7+1)予備マガジン×5、月詠の太刀@魔法先生ネギま!
【所持品】:支給品一式×2、空のマガジン、不明支給品0~4
【状態】:疲労(小)
【思考・行動】
基本:大切な人達を護るために殺し合いに乗る。
1:朋也(陽平)と情報交換。
※空虚@永遠のアセリア、斬られた右手首、スタングレネード×3、支給品一式、不明支給品0~1がデイバックに入って辺りに落ちています。
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