医学とHの関係 外伝01
医学とHの関係 記録その零 語られぬ真実
「いざ尋常にっ!!」
「勝負っ!!」
――KOF戦闘開始定型文より
これは意気消沈したヒトに、希望を取り戻させるべく奔走した、
一人のネコの戦いと……愛の記憶である。
先生のターンその一
我々はネコである……名前はミケール、ヒトの国の礼儀作法に曰く、
ネコは自己紹介から始めるべし、うむ、完璧である。
現在我々はホームグラウンドである町を離れ、
少々……思えば遠くにきたものなのである。
わが愛しきヒトが表情を暗くし、毎日触っていた彼と共に落ちてきた、
ノウトパソコンなる多目的記憶装置を使うことが無く、
それでいて、じっと其れを見つめている姿に嫉妬した時、我々は閃いたのである。
つまり、ノウトパソコンが破壊されて、それ故に使用しないのではなく、
出来ないので無いか? と。
まず第一に考えられるのが物理的に損傷した事。
しかし此れは直ぐに却下したのである……彼のノウトパソコンを触る手つきは、
我々にブラッシングをかける時と同等……あるいは、それ以上の心配りを感じるのである。
我々ちょっとジェラシーなのである。
さて……此処まで推測してしまえば、結果はもう想像がつくいてしまうのであるが、
魔洸家電の初期起動不全理由ナンバーワン 注:我々調べ である……電源が入って居ません。
と、推測するのである。
つまり、魔洸で無く、電気と呼ばれるエネルギーを、
供給出来れば良いわけであるが……魔洸から電気に変換する機器は、
王都あたりに行けば、入手も容易かと思うのである。
しかし、それは非常に個人的理由により却下である……うーむ。
悩んでいる我々の処に、神の福音か悪魔の誘いか……一通の手紙が届いたのである。
幕間あるいは解説者のターン
KOF(きゃっと おぶ ふぁいたーず)と呼ばれる大会がある。
古くは落札会場で起きた暴動を起源とするこの大会。
決闘、オークション、ギャンブルの三位一体によって成立しているものであり。
命を賭けて希少道具(れああいてむ)を安価で手に入れようとする。
四年に一度の拳と誇りと執着心を見せる舞踏(たたかい)のための会場なのである。
最大の疑問は何故COFでないかでありますが。
まず、蒐集王(これくたーきんぐ)の異名を持つ謎の人物が所持する船でKOFは開かれる。
帆船では無くガレー船であるが、入場の際に左右に並んで出迎える男達の、
鍛え上げられた肉体を見る限り、その速力は侮れないものと推測出来る。
船腹の入り口から入った、参加者達を歓迎するのは、
このために各地から集められた珍品や奇品の数々。
右を見ればかの大ヒット商品であるタイヤキ板、
それもロットナンバーが一桁と言う今回の目玉商品。
左を見ればカモシカの国で実際に使用されたと言う銃、
しかも、銃身が途中から切り落とされているという奇品。
提供者によると、内戦以前のとある事件において、
かの伝説の剣技を継承するハイランダーに、一太刀のもとに切断されたとあるが、
此れが事実と見るかブラフと見るかは貴方方の鑑定眼しだいですっ!
そして、正面に見える巨大な石柱は、今回の最大の曰く品。
かの有名な虎の国にあるダンジョン、その一つである未踏遺跡から持ち出された、
古代トラ語ですらない、解読不能の文字が記されたものであり。
何故あるのか、何が書かれたのか、誰が書いたのかすら謎っ! 謎っ! 謎っ!!
果たしてこの謎をとける者が、皆様方に居るのでしょうか?!
盛り上がってる解説者の横を抜けて、吹き抜け部分から上部に移ると、
甲板部分を望むラウンジが入場者達を歓迎します、此処は落札のための競り場であり、
まだ見ぬライバルとの出会いの場であり、富豪と貧民の交差点でもあります。
何を掴み何を失うかは貴方次第です。
最後にご案内するが戦いの舞台になる舞踏甲板でございます。
え? 戦いで床が抜けるのではないかと?
いえ、そのようなご心配は……お客様方は運がよろしゅう御座いますな、
会場予定位置に到着で御座います、まず左右に随伴する船に鎖と足場を巡らし、
一つの大地と成す……異国の伝承より紐解きました、
連環という技法をこらしました後に……さあ、おいでになりましたっ!
戦いの場となります舞台、ヒトの国の伝説にある、世界最強を決める大会に肖りまして、
蒐集王四天王が一人、地のアズライール様がそれを作り出すとっ!
海を割って現れしこの舞台、素材は石、形状は正方形、
いかなる衝撃にも耐えると断言出来る、伝説の武舞台でありますっ!!
先生のターンそのニ
よく見ると素材は左右の船に積んでいる、
石材であったりするのであるが……この大会もしばらく来ないうちに変わったものである。
我々が此処に来たのは先程の、煩い解説者の言う目玉商品ではなく、
九十九式変換機が出品されると聞きつけたからである。
九十九式変換機とは、エレキテルを起源に持つ零式変換機から、
数年に一度の更新を経て遂に防音性、魔力変換効率向上、
電圧の安定性に関西圏及び関東圏対応機能に加え、
アーク溶接なる新機能を搭載した芸術的最終変換機積層型なのであるっ!
……最終の理由は、イワシ姫にあっさり性能で抜かれてショックで寝込んだたためである。
うむ、何時かは復活して自己進化、自己修復、自己増殖を備えた百式を作ってほしいものである。
さて、上手く落札出来れば良いのであるが……まあ、
我々の事等誰も覚えて無いであろうし、この良さも理解出来ぬであろう。
ちゃっちゃと落札して、笑顔を取り戻すのである。
フェザーのターンその一
ざわざわと数年ぶりの喧騒を感じ、青春と挫折と強敵(とも)達との思い出の詰まった、
KOF(ふるさと)に返って来たのだなと、らしくもなく感傷的な気分になる。
受付に華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)と登録すると、
何時もの受付の娘が「おかえりなさい」と、片翼をあげ「たたいま」と返す。
無駄口を返すなどらしくない……だが、悪い気分ではなかった。
しかし、彼女の次の言葉に、歓喜と恐怖に身を凍らせることになった。
「今年は、不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)が来ておられます」
「判った、第七甲板か?」
「はい、何時ものように」
ネコである彼女には判りづらいであろう、鳥人の顔に感謝しながら、
震える声を抑え、ヤツの居場所を聞き出す。
「感謝する……またな」
「はい……ではまた」
生きて再び出会えるのだろうかと思いながら、
ヒヨコの時代から世話になっている彼女に背を向け、
ここしばらく音沙汰のなかった強敵(とも)に会いに行く。
……闘志を胸に秘めながら歩くその姿は、敵に怯える鶏(ちきん)ではなく、
獲物を狙い空を舞う……華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)の姿であった。
幕間あるいは観客達のターン
「おいっ! 聞いたか? ヤツが来たらしいぞっ!」
「ふっ、ヤツもネコだったと言うことさ
……あのタイヤキプレートには、それだけの価値がある」
最初の混乱は、それでもまだ静かなものであった。
ネコであるなら炬燵と鯛焼きの魔力には勝てない。
KOF初回からの古参兵と言えども変わらない。
そう、それは必然であり世の摂理であると。
「いや、それがだ、ヤツが挑むのは九十九式変換機らしいぞっ!!」
「馬鹿なっ! ヤツは魔洸家電に興味は持たなかったはず……偽者か?!」
ああ……しかし……ネコ達よ知るが良い。
摂理に逆らうゆえの不死(りたーにんぐ)
理解出来ぬがゆえの恐怖(ほらー)
数々のお約束を愛し、されどネコの感性からは何処かずれる。
それこそが不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)と知るが良い。
「華麗なる羽音が挑戦者となったぞっ!」
「ならばヤツは本物だと言うのかっ?!」
そう、大空の覇者はヤツに執着している、偽者ならば歯牙にもかけない。
「……12年前の決着が、まさか今年見ることに成ろうとは」
「ああ、当時無名だったヒヨコを、華麗なる羽音に押し上げた切っ掛け」
当時を懐かしみ、あの試合と興奮をもう一度と期待してしまうのは、
KOFファンの業というものなのだろうか?
「負け無しのヤツが、唯一引き分けた試合か……オッズはどうなっている?」
「7:3で華麗なる羽音だな、新参の連中はヤツを噂でしか知らん」
しかし、そこはネコ、利益を計算し冷静に動く心は忘れない……だが、
彼等は気がついて居るのであろうか? 言葉にすればヤツが来るかもと、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)の名を出せずにいる事に。
「どう見る?」
「ヤツが倒れる処など、見た事が無い、だが……見たくも有る、難しいな」
混乱と期待に踊る観客達、その中で受付嬢が静に瞳を閉じていた。
聖句も無く、戦いと欲望に溢れた戦場(いくさば)の中で願う姿。
ああ、それは正しく乙女の祈りであった。
「どうかご無事で……」
先生のターンその三
「久し振りだな」
「む……おお、あの時の、確か今は華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)であったな」
パインジュースを飲みながら、試合の見学と待ち時間を潰していた我々に、
長い尾羽を自らの腰に巻いた鳥人が声をかけて来る、目立つような事したかなと、
ちょっと自己反省と確認を並行作業でしていると、ようやく思い出す。
華麗なる羽音、近年頭角を表して四天王に迫る勢いとか。
「ふむ、会報で色々見ているのである、四天王に迫る勢いとか、うむ、
やはり我々の目に狂いはなかったのである、入れ替わり戦であるか?」
「いや、貴公と戦う」
っ?! ……冷静に素数を考えるである……2、4、6、8、10、12……うむ、
落ち着いた、つまり我々の愛を阻もうというのであるなっ?!
「我々も愛ゆえに譲れない戦いなのである、うむ、先達として胸を貸すつもりは合っても、
敗北イコール失恋なので、本気で来るが良いのである」
片翼を上げて肯定の意を示すと、横で試合の観戦を決め込む、
華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)つまり、
対戦手続きは既に取ってあると、そう言う事であるな?
……その挑戦愛の為に受けて立つのであるっ!!
幕間あるいは状況説明のターン
KOFは競売であり、戦闘行為や賭け事はあくまでも、
競売方法の一つである……と、言うのが建前とまっております。
まず始めに、求める値段を商品に付けて頂くのも、普通の競売と同様ですし、
もっとも高い値段をつけて頂いた方に、購入権があるのもまた、お聞きの通りです。
例外は最高額と同額を記入なされた場合で、ここからが独自の取り決めとなっており、
対象が二人であり、どちらの方も値段の上昇も、購入の辞退もなさらなかった場合には、
お客様同士での戦闘行為によって、購入者を決定していただく……と、言うもので御座います。
なお決着は、武舞台からの転落、意識の消失、敗北宣言及び、
イージーモードでは、審判が攻撃を受けると死亡すると見なした場合に、
試合終了を宣言するドクターストップが追加されます。
なお、戦闘前に死亡しても構わないと念書を書いて頂きますが、
戦闘終了後の攻撃は、四天王が責任を持ってお守りいたしますし、
医療行為も当方で負担いたします、さらに、
戦闘行為に対する賭けにおける純利益の2割(イージーモードでは1割)を、
落札金額より差し引かせていただきます。
他にご質問は? では、本日最大の激戦が予想される最終試合、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)vs華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)をご覧下さい。
フェザーのターンその二
控え室で深く……丹田に力を貯めるように、細く……長く息を吸い、そして吐く。
翼に力が満ち、両足に力が満ち、尾羽に力が満ち、いかなる者にも勝てる気がしてくる。
愚かっ! 慢心する自分を叱咤し、深い息吹を繰り返すと、
心配そうに自分を覗き込む……あの子の姿が胸に浮かぶ。
12年前の思い、無敵と思い込んでいた……殻の取れないヒヨコだった頃に、
自分に刻まれた恐怖(ほらー)。
しかし、その恐怖を包み込むような暖かなものも溢れてくる。
戦場で色事を思う等……愚か、けれども不快ではない。
幼き日より鍛錬を重ね、何時か空を舞う日が来ると夢見ていたあの頃……
強靭な脚力で、数件の家を飛び越える事も出来たし、翼により姿勢制御もお手の物だった。
空は自分の物と傲慢にも思い、故郷を出て初めて、
他の鳥人を知り……所詮自分は、跳んでしか居なかった事を思い知った。
絶望の中で空を飛べる魔法の品の事を知り、
安易にもそれを求めるために金を稼ぎ……KOFの存在を知った。
幾度かの戦いも、強靭な足腰と跳躍力の前に、相手を海に叩き込んでいた。
物珍しさに人気も出始め、三度目の参加で資金もたまり遂に空を飛べると思った時だ。
飛行のアンクレット……姿勢制御に翼が必要なものを、
何故あの男が求めていたかは覚えていない。
あの時に理解出来たのは、自身が如何に小さかったかと、あの子の優しさのみ。
所詮鳥頭の自分など、大切な事を心に刻めば良い。
それからの数年は鍛錬を再開し、自身がどれだけ慢心して、弱くなっていたかを理解した時。
華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)として、生まれ変わった時でもあった。
部屋に近づく足音に、思考の海から控え室に戻ってくる……体調は万全。
体に染み付いた呼吸法は、無意識でも戦いに向けて調整をしていた事に……嬉しさを感じる。
かって心に刻んだ事、鍛錬は自身を裏切らない。
「華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)さんお時間です」
「承知」
憎しみは無い、あるのは恐怖と感謝、そして、昂ぶる心……戦へ赴く気構えだけがあった。
幕間あるいは実況放送
お待たせいたしました、ただ今より本日最大の激戦が予想される、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)vs華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)が
行われます場外への被害が想定されますので、
自衛手段の無い方は第一から第八甲板にてご覧下さい、
なお、専属ボディガードの雇用を行いたい方は、黄色い天幕で契約を行っております。
先生のターンその四
日がそろそろ傾いてきて、書置きもせずに出かけてきた事を思い出し、
寂しさで死んでしまわないか、不安だったりするわけである、主に我々が。
正直に言えば普通に落札出来ると思ったのであるが、まさかフェザーが、
九十九式変換機の良さに気が付いているとは、思わなかったのである。
工業製品と言うよりは芸術品、枯れた技術の集大成にして、
一品だけの新技術を付与するセンス……これだけの物を、
我々だけが気付いていると思ったのは、傲慢な考えだったのである。
「大会最古参にして、四天王に勝る実力を噂されておりますが……」
「四天王への昇格を断り続け、有望な新人を潰してまわる忌まわしき恐怖っ!」
「しかし、潰されなかった新人が、現在上位陣に名を連ねている事もまた事実っ!!」
「まさにKOFの試金石とも言うべきこの生ける伝説がっ!」
「唯一引き分けた男と決着を付けるべく……」
「死して冥府に消えたと思っていたあのネコがっ!」
「12年目の今、黄泉返ったっ!!」
「黒龍の門より不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)っ!!」
……我々もしかして、嫌われてる?
「四天王入りを蹴ってまで守るべき誇りがあった……」
「かって……屈辱の炎に身を焼かれ灰となったトリは……」
「恐怖を超えて、その身を疾風と化して蘇ったっ!!」
「KOFファンならご存知の通りっ!」
「若手最強、大空の覇者、美しき白蛇」
「称える言葉は数あれど、やはり名は体を表すこの言葉しか無いっ!!」
「白龍の門より華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)っ!!」
……やはり我々の事を凄く嫌ってないか? 解説者に回答を求めたい処である。
フェザーのターンその三
呼び出しの声に武舞台へと脚を進めると、やや傾いた日差しに近視感を感じる。
12年前のあの時……闇のために視力を失い、それなのに止めを刺すでもなく、
戦いの中止を宣言したホラー、悔しさよりも安堵を感じて、
受け入れてしまった自分への嫌悪で……彼女がいなければ、潰れていたのだろうと思う。
雑念を置き去りにするように、両足に力を込めて跳躍、両翼を用いて静に武舞台に着地する。
「違いの判る男は大好きであるが、愛のためにもこの試合譲るつもりは無いのである」
「承知」
12年前と変わらぬ、何処か雲を掴むような物言いに、けれど確かな闘志を感じる。
愛と臆面もなく口にするネコに、思いを口にする事さえしてない自分を少々恥じる。
否っ! 戦の中で色事を挟む余地など無い……終わった後に告げるべきと、
心に刻み気息を整える。
「お待たせいたしました、ただ今より本日最大の激戦が予想されます、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)vs華麗なる羽音(ふぁんたじっく ふぇざー)戦を行います」
否と解説者の言葉を心の中で否定する、今日限りではなくKOFで最大の激戦にしてみせると。
「いざ尋常にっ!!」
「勝負っ!!」
ホラーの放つ定型文の叫びを聞き、同じく定型文で返しながら両足に力を込めて、
全力跳躍、両翼は姿勢制御にまわして開始直後の油断を狙う。
対するホラーは直立不動……否、小規模の爆発と共に漆黒のステッキを取り出した。
すれ違いざまに蹴爪にて肩に打撃を与え、反撃のステッキを僅かに翼を傾けて回避。
浅い……それに危険だった、ホラーが狙ったのは風切り羽……当たれば、
速度の利点が消されるとろであった。
「流石」
「どうもこちらこそであるな、以前よりずいぶん早く……」
今の一合で確認、体格と威力、それに耐久力に加え打撃の正確さも相手が上、
鶏としては長躯の自身を越える体躯と、3倍は楽に越える体重の差、正面突破は愚策。
ならば……狙うのは、速度と呼吸法により余裕のあるスタミナを用いての一撃離脱戦法。
すなわち字(りんぐねーむ)となりし、華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)
「参る」
「いやはや、たかだか12年でこうまで変わるとは、年は取りたく無いものであるな、
我々は永遠の255歳故に関係無いであるが」
傾く陽光を浴びながら、蹴爪、蹴爪、右翼、左翼……そして、嘴による噛み付き、
跳躍と全身を用いての、変幻自在の高速飛翔打撃っ!!
しかし、揺るがずそこにある不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)
口惜しい、幾度攻撃を加えても、変わったと口では言う、
そのよく滑る口を……止める事すら出来ぬのかっ?!
防御の隙間を縫って、肩に幾度目かの一撃を与えて……?!
「うむ、もう気がついたであるか、以前は暗くなっても気が付かなかった、
うっかりさんであるに、これは早く愛の巣に戻れという啓示であるか?」
「治癒術かっ!!」
根本的な思い違いをしていた、投射型魔法を使用せず、
障壁さえ張らない戦術(ふぁいとすたいる)から短杖を魔法強化しての剣士型。
大型ネコの耐久力で耐え、体格に物を言わせた火力と、ネコの豊富な魔力を利用し、
仮初の魔剣と化した杖の威力による一撃必殺タイプ(きんきょり ぱわーがた)
と思っていたが……真実は技巧特殊タイプ(てくにかる ぷろびでんす)
本来なら魔法使いは痛みに弱く、戦闘中の自身への治癒行為は困難。
痛みに耐えてこの短時間に治癒しているとすると、255歳と言うのも真実だと思われる。
一旦距離を取ると、強敵(とも)達との舞踏(たたかい)より対策を導く。
「どうしたのであるか? 来ないならこちらから行くのである」
考える時間は僅か、複雑に考えても鳥頭により忘れる、ならば単純に、方法はただ一つ。
……痛みに耐えられないほどの損傷か、頭部への打撃により意識を刈り取るのみっ!!
「参るっ!」
先生のターンその五
いや、困ったものである、動きは速いし勘は鋭くなっているし、魔力はかなり使うし、
油断はしてくれないし、散々である。
ああ男子12年見づば活目して見よっ! であるか?!
――軽度裂傷部分の治癒完了、毛皮の治癒には、要:時間
――中度裂傷部分17箇所は軽度裂傷に軽減、再治癒には、要:時間
――かなり いたいのである。
「どうしたのであるか? 来ないならこちらから行くのである」
むしろ、いっておかないと、危険そうなのである。
「参るっ!」
フェザーが言った時には目の前に来ていた、蹴爪を上体をそらして軽症で済ませると、
ステッキで迎撃……直線でしか無かったフェザーの跳躍が、ここにきて急角度で旋回する。
足元に感じる違和感……純白の蛇がそとこにいた、いやこれは尾羽であると?!
再開した時から腰に巻いていた、長尾鳥特有のそれが、
まるで中に骨でもあるように、しっかりと足首に絡まっていた。
トリは天に昇り、ネコは地に倒れる。
きつく絡まっていた尾羽は一瞬で解け、フェザーは上空へ、我々は転倒状態。
まずいのである、ああ、このままでは大草原の鷲と哀れな野兎?!
――該当条件を推測、布操術に類似
――飛翔原理確認、純跳躍……非常識、最終予想速度予測困難 武舞台より撤退推奨
――ヤるべきときにはヤるである
嫌な予感がするのでステッキに魔力を込める。
愛のために此処は引くわけには逝かないのである。
飛行機雲、上空にフェザーの鶏冠を見たと思った時には……
幕間あるいは解説者のターン
「あーっと、美しき白蛇と呼ばれる尾技が防戦一方だった、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)をさらに追い詰めるっ!」
会場に起きる突風、それが飛べないはずの鶏が空を舞った証。
武舞台から消えた華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)を探す観客たち。
「跳躍を越えた、まさに飛翔っ!」
そして、見るが良い、聞くが良い、鶏にしてそれを越えたトリの羽音(ふぇざー)
大空の覇者であるその飛翔はまさに華麗(ふぁんたじっく)
「今、12年前の雪辱を晴らすべくっ! 全てを賭けての急降下っ!」
ドムッ! 武舞台の中央、不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)がいた位置に、
閃光、砂煙、そして、暴風が吹き荒れる。
会場の中で何が起きたか理解出来たものは僅か、姿を認識出来たものに到っては数人。
次の解説者の言葉で、他の者たちはようやく事態を理解する。
「華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)の振り下ろす覇者の剣っ!」
「伝家の宝刀っ! これぞ展空の弦技(てんくうのつるぎ)っ!!」
フェザーのターンその四
天空を翔ける。
鍛え上げた脚力と、姿勢制御のための両翼、それを用いて天空に翔け上がる。
空を飛べぬ理(ことわり)に反逆する代償に、刻一刻と体力を失い……それすら心地よい。
愚かっ! 戦いの中でそれを忘れる自身を叱咤すると、天空の極みに到る。
眼下に広がるは青い海、僅かに……故郷で見る笹の葉の如き其れ。
横に3枚連ねた其れの如き、蒐集王の船(これくたーしっぷ)
両翼を閉じると、弓を絞るかのように力を込め……解き放っ!!
「参るっ!!」
大地へと加速を始める自身を両翼を用いて加速、さらに削れる体力を無視し、
ただ強敵(とも)を見据える。
先程まで考えていた空を舞う喜びも過去の恐怖も忘れ、ただこの時ばかりは、
忘却を是とする鳥頭に感謝する、覚悟は胸に刻めば良い。
全力を込めた最後の羽ばたきに、体に走る衝撃と共に周囲から音が消える。
僅かな間に眼前に迫る強敵(とも)と交錯する視線……これがっ! 12年前の答えだっ!!
翼の先より飛行機雲の跡を残し、大地を目指す鶏と、
大地に背を預け、障壁によって抗する猫。
永く、そして一瞬の交錯の後に視覚化出来るほどの障壁を貫き、
されど、両の手に掲げられた漆黒の短杖に阻まれる。
それすらも貫き肉を抉ろうとする蹴爪は、ぴしりと、貫き……光が溢れた……
跳ね飛ばされ、煙と暴風を両翼を用いてこらえながら、
鶏(にわとり)にあって魔法の素質の無い自身にさえ感じる魔力に、原因を悟る。
魔力の暴走(おーばーろーど)だ、術の触媒たる杖に限界以上の魔力を込め、
それを貫いてしまったがための爆発、上手いと思い、
しかし、杖を奪い治癒を阻害できるなら上々と……そこに慢心があった。
翼ごしにも判る気配、跳ぼうとするも、爆発による軽度の火傷が動きを阻害し、
鋭い痛みが二度、距離を取り、そして視界に飛び込む舞い散った羽毛……やられたっ!
爪による攻撃は正確に両翼の風切り羽を、切り落としていた……天空より追い落とされた?!
「ぐっ!!」
その衝撃に呆然とする心を叱咤したのは皮肉にもホラーの攻撃、
正面からの岩の如き体当たりに跳ね飛ばされ、武舞台の端にて止まる。
そして、思う……飛べないトリは鶏(ちきん)なのであろうか?……と。
「否っ!」
否定する、天空より追い落とされても、地を走るしかなくても、
この身は華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)KOFに生きる一羽の鶏(にわとり)
答えは出た、強敵(とも)に向かって地を翔けるのみっ!!
対する不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)は不動、爆発で負ったと思われる火傷と、
無理に動かしたために力無く垂れ下がる両腕が、決して不死(りたーにんぐ)などでは無いと、
証明する、そして、心に恐怖(ほらー)も最早無い……視線が交錯し……
「参るっ!!」
普段の饒舌な喋りも無く、ただ不動である強敵(とも)に己の全てを叩き込むのみっ!
蹴爪、蹴爪、右翼、左翼、尻尾……そして、首筋に嘴による噛み付きを叩き付けると、
不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)の上体が崩れ……否?!
ホラーの口がネコ特有の、耳まで裂けた笑みを浮かべると……ただ力任せに、
己が頭を叩き付けてきた。
意識が朦朧とする中、二度鈍い音が鳴り、痛みより何故か笑いが押し寄せ、
強敵(とも)に己が頭を叩き付ける、ああ、愚か……けれど悪くは無い。
幕間あるいは終了放送
本日はKOFにおいでくださり、まことに有難う御座いました。
本船は2時間後に寄港予定となっております。
その間、武舞台ではヤギの方々による演奏会を開催しており、
舞台脇の白の建物では、占い等を行っております。
第四から第八甲板では立食パーティが行われ、
各国から招いた自慢のコックが腕を振るっております。
なお、出港予定時刻は翌朝10時となっておりそれまでは、
船内の施設をご自由にお使い下さい。
なお、本船での出来事は他言無用、記録媒体も会報のみで行う事を、
再度確認させていただきます。
この船はただの競売船であり、武舞台で行われたのは、
競い合う舞踏(おどり)であります。
なお、係員が確認を求めてきた場合には、お手数ですが指示に従うようお願いいたします。
その際にお渡ししている、四天王サイン予約券は本日のみ有効となっております。
なにとぞ、お早目のお引き換えをお願いいたします。
では、再会を祈りつつ、此れで最後の放送とさせていただきます。
良き舞踏(たたかい)の巡りがありますように。
先生のエピローグ
――安全地帯への帰還を確認
――記憶の封印及び、攻撃衝動の封印
――封印記憶を記録に移行
――再起動
――りたーん とう まいほーむ である
うむ、気が付いたら我が家であった。
背中にずっしり感じる重さは、間違い無く九十九式変換機の重量感。
無意識でも愛を貫く当たり、流石は我々であるな。
そう納得しながら、扉をあけようとしたら弟子が迎えいれてくれた。
「先生おかえりなさい」
「うむ、ただいまである」
言い馴れない言葉を返すと、家から美味しそうな夕食の香り……ふと言葉が出る。
「ヤらニャいか?」
「お断りします!」
なあ、弟子よ、そう言いながら抱きついてくるのは、判断に困ると我々思うのだが?!
何処にいってたんですかと、呟く弟子の声を聞きながら、
そう言えば、何も言わずに出て行ったのであるなと思い出す。
「うむ、戦利品である、ノウトパソコンめに嫉妬しつつも手に入れたのである」
背中の九十九式変換機を見せながら、細大漏らさず機能説明していたところ、
どちらかと言うと泣きそうであった弟子が急に笑い始めたのである。
笑顔を取り戻すのが目的であったのであるが、気妙な物を見る様に笑われるのは、
不本意である、特に、酒樽を背負ったトトロと言うのは、
意味不明ながら、肖像権の侵害なのであり……まあ、
弟子が元気になったので、良しとしておくのである。
後日、正確にはノートパソコンと発音すると知った、
うむ、弟子に笑われぬように、発音には気をつけねばであるな。
フェザーのボーナストラック
頭部に柔らかな感覚、そして良き香りを感じて目覚める。
……彼女がいた、そして、膝枕をしている、だれに?
そう、素数を数える、一、二、三、一、二、三……鳥頭ゆえに続きを忘れた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
話をして落ち着く、お互いに素っ気無い会話をする仲であるはずだ、
彼女がこのような事をした事など……心が告げる、そう、過去に励まされていたな。
「そうか……不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)が勝ったのだな?」
「はい」
そうでなければ、この様な事はすまいと思いながら尋ねると、予期できた答えが返ってくる。
「そうか世話になった」
「……待ってください」
立ち上がろうとしたら上半身を抑えられて引き止められる、その、非常に言いにくいのだが、
体ごと止められると……胸が顔に当たってしまうのだが?!
「当ててるんです……いえ、治癒が終わってません」
「いや、何処にも異常は無いようなのだが?」
聞こえなかった事にしないと、大変な事をしてしまいそうなので、体調を確認するが、
あれほどの戦いであったのに、体に残る疲労感位で外傷は確認出来無い。
「いえ……此処が苦しそうです」
受付嬢のターン
最後の戦いは凄惨なものでした、技術も速度も無く、ただ殿方達の意地の張り合い。
お互いに一撃に耐え、そして返す単純なもの。
けれど、目が離せなく、何故あんなに楽しそうにしているだろうと思い。
嫉妬で胸の奥が痛くなってしまいます。
そんな醜い思を込めながら、ただ、フェザーが無事に戻ってきてくれる事を祈り。
その願いは叶いました。
夕日の中に立っていたのは一匹のネコ。
敗者に向けて花を投げる姿に、憎しみと感謝を感じます。
私の願いはフェザーの敗北と言う形で叶い、私の処に返って来てくれました。
治癒をするからと部屋から他の者を下がらせました。
……あのネコが投げた花の匂いがいます、不快です。
ですがあの花は、殺菌と炎症止めの簡易治癒魔法だと思い。
フェザーの為にした事だと思って、我慢します。
うん、私も匂いをつければ良いんです。
気を取り直して、ベットで血まみれになったフェザーの傷に舌を這わせます。
指を切った時に舐めるくらいですから、手で治癒魔法をかけるより良いはずです。
ただ……それだけなんです。
「んっ! こんなになって……心配、んっ! したんですからねっ!」
意識の無いフェザーに舌を這わせて、一人で息を荒げてる変態のメスネコだと、
ちゃんと手で治癒しようと、理性がさけんでいるんです、でもとめられない。
「にゃっ、ダメっ! こんなの変なのっ!」
肩に舌を這わせていた時に、抱えるように抱いた翼の先が、私の敏感な部分を擦って、
舌を這わせるたびに、擦れてしまって止められません、
こんなのを見られたら嫌われるって思っても、気持ち良いのが止まらないんですっ!
息を荒げながら、今度は胸板に舌を這わせると、肋骨が折れてるのがわかりました、
多分、あのネコが体当たりした時の怪我だと思います、あんなネコしんじゃえば良いのに……
我に返って、抱きつくように手をまわし……回しかけて、自身の服を脱いで、
改めて抱きつきます、直接触ったほうが良いに決まってます、それだけです。
「無茶して、そんなに私に、んっ! 心配させたいんですか?」
返って来ない事が分かってる問い掛けをしながら、抱きついて治癒魔法をかける。
フェザーさんは傷の治りが早いから、もう骨折がひび位に変わっていた。
Hな気分のほうが、魔法は上手くいくから、それだけで、変な事なんで無いですから。
「んっ! すごいっ! 逞しい……これ、ほしいっ!」
変な意味なんかじゃ無いんです、過負荷で炎症を起してる太ももを、
マッサージしてるだけなんです、上に乗っちゃって、重いかなって心配だけど、
擦れて、下の方が羽毛でっ! 擦れて、ぴちゃっ! ぴちゃっ! て、音がするのっ!
目の前が真っ白になって、ようやく息が収まりました、身を起こした時に、
フェザーの羽毛と私の間に糸が垂れるのを見て、恥ずかしさに顔が赤くなってしまいます。
あらかじめ用意して置いた布と湯を使って、彼の体を清め、
新しい服に替えてさしあげて……医療行為としてです、それ以上は無いです。
自身の体も清め、服も着替えます、淫らな女とは思われたくありません、
そう言った対象にみられているとも思いません、ただの受け付けか、良くても姉です。
シーツを取り替えたベットに寝かせると、枕が無いのに気がつきました。
そうです、怪我人に枕が無いのはダメなので、仕方がありません。
靴を脱ぐとベットの上に座り、フェザーの頭を膝の上に置きます、これで良いです。
「ほんと……なんで好きになっんでしょう?」
あんな戦いの後だと言うのに、フェザーの顔は満足そうです。
それが分かるくらいには付き合いだって長いんです、はじめはヒヨコだったのに……
フェザーに最初に会ったのが24年前、ネコにとってし大して昔でも無い時間。
でも、ニワトリならヒヨコから男に変わるには十分に長い時間。
「私に絡んでいる男共を、黄色い塊が蹴散らした時には、こうなのとは予測できなかったです」
馬鹿で高慢で自信過剰で、でも真っ直ぐだったフェザーは、
目が放せなくて世話を焼いたものです……私なりにですけど。
出会うのは四年に一度、話すのは単語ばかり、戦い方は単純と、
良いとこ無しを好きになったのは、12年前のあの時。
フェザーが不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)に潰されそうになった時に、
慰めてた私を頼って来た時に少し、うん、ほんのすこしだけ好きになった。
「うん、あれは気の迷いですんだ……そのはずなんです」
うん、あの後ヒヨコからトリに変わったり、試合の後にかならず会いに来る様になったり、
ふと視線が合った時に笑いかけて来きたりしなければ、それに……うう、心当たりが多すぎです。
「すきになったら……しかたないんです」
寝てるフェザーに囁くように告白すると、体のおくがまた熱くなってきて、
ネコは淫乱といわれてるのを思い出す。
10年前なら否定出来たこの言葉も、頭に「好きな相手には」と付くと全く否定できなくなった。
こんな寝込みを襲う事しか出来ないのは、振られたら私は壊れてしまうから、うん、たべちゃうかも。
そんな事を考えている時に、急にフェザーが目をさましたので、
思わずいつもの仮面をつける、平常心、平常心。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
心臓の音がうるさい、腰の奥が熱い、膝枕はダメだったかも、
濡れてるのに気がつかれたらと思うと、息があらくなるです。
「そうか……不死と恐怖(りたーにんぐ ほらー)が勝ったのだな?」
「はい」
私がこんなに乱れているのに、フェザーは何事もなさそうにしていて、
起きた時の慌ててる姿が残念におもって、見たくて止まらないです。
「そうか世話になった」
「……待ってください」
立ち上がろうとするフェザーを押し止める、押しのけられないように体ごと、
私の胸をよく見てる事……知ってたんです。
「当ててるんです……いえ、治癒が終わってません」
「いや、何処にも異常は無いようなのだが?」
失敗したかも、我慢出来ない、こんな良い匂いがするようになって、
子供だとおもったのに、大人になって、逞しくなって……視線の先に、
窮屈そうな膨らみをみたら、嬉しくなったです。
「いえ……此処が苦しそうです」
先程着せたばかりのズボンをずらすと、びくっ! て、
凄い勢いで、アレが飛び出してきました。
う、こ、これは想定外です、こんなのって本当に入るのでしょうか?
そして、視線にさらされる度にびくっ! って、痙攣するアレに、
恐る恐る手をのばします、うう、先程までは、もっと小さくて、
しわしわだったはずなのですが。
「病室からは、治療してからでないと出れませんよ」
声だけは冷静に、アレを恐る恐る擦るのですが、無理な姿勢で手を伸ばしているので、
胸がフェザーの顔に当たって、潰れてしまいます、鼓動が早くなるのを感じながら、
フェザーさんが息が出来るかなと、心配になって覗き込んだら、我慢してるのを見て、
私が我慢出来なくなりました、手でアレを激しく擦って、
胸を顔に押し付けて、自分も気持ち良くなって、いえ、
自分が気持ち良くなりたいから、そんなことしたんです。
「我慢しなくて良いです、治療ですから」
「治癒なら不要だ」
フェザーに否定された私の顔は真っ青になってたと思います。
あんなに熱くなっていた体から熱も引きました。
どうして良いか分からず固まって……滑稽です。
ずっと年下の言葉に、翻弄されています。
「お前に言うべき事がある」
「なんですか?」
そう答えながら、頭の中が沸騰してます、押し倒すか、逃げるか、
手に入らならころしちゃおっか、しんだら、アレからびゅくっ! て出るらしいから、
いまから入れちゃって、うん、初めてだから痛いと思うけど、
しんじゃうのはもっと痛いからしかたないよね。
「強敵(とも)から学んだ教訓だ、愛は言葉にしないと伝わらないらしい
……お前が好きだ」
「本気ですか?」
うん、うそならアレを入れちゃおう、小さくならなかったら本気だよね、
嫌ったりしないよね、こんな私、好きで良いんですか?
「否というなら仕方が無い、だだ言葉にしておきたかった」
「嫌じゃないです……でも」
私の返事で誤解したフェザーの声は本気だった、だけど心変りが怖くて念を押す。
「その言葉忘れないでください」
「否、鳥頭故に確約は出来ない」
うん、たべよう、まるごと全部たべたら、ふぇざーさんのあかちゃん出来ないかな?
まず、しぼって、ぜんぶ出してもらって、ダメならぜんぶたべましょう。
「ただ、心に刻んだ、お前が好きだ、お前を守りたい、
言葉は忘れても、この思いは絶対消さない」
……フェザーは酷いです……淫らな私を知られない為に、心に仮面をつけていたのに、
こんなに嬉しい言葉で、仮面なんて砕けて、狂った心が……愛に狂ったです、すき。
「フェザー、嘘だったらたべちゃいますからね、
絞ってカラカラにして、骨まで残さずたべちゃうです」
そういって、膝枕していたフェザーさんの頭をベットに横たえると、
一旦立ち上がって、太ももの上に腰を下ろす……その、直接入れるのは、
怖かったから……フェザーを殺そうとしてたのに、浅ましい。
「本当だったら、私を使って気持ち良くなってください、治癒なんかじゃなくて、
奥が熱くて、フェザーのが欲しいんです」
無口を装うのもやめて、スカートが邪魔なので、尻尾で捲って、
下着は濡れて張り付いていたのを横にずらして、フェサーのアレに、
私の割れ目を当てる、それだけで準備の整のっていたそこは、刺激を与えてくるんです。
「いれて、ください」
「否」
ひっくりかえされたです?! あとは腰を付き上げてもらって、
奥にまで入れてもらうだけだったのに、今は、後から抱き寄せる体位になって、
翼で私の割れ目が愛撫されだした、フェザーに壊されちゃうかも。
「にゃぅ! どうして、なんでですの?」
何故こんなに優しいかは分からないけど、どうやって引っ繰り返したかはわかりました。
今も私の体に絡んでいる尻尾です、私達ネコとは違って、
骨は無い筈なのにしっかりと絡まって、
そして、微妙にうねりながら肌を愛撫してくるそれに、翻弄されながら、
美しき白蛇と、フェザーが言われていたのを思い出したです。
「愛を囁く言葉を知らん、故に態度で示す」
ダメです、反則です、そんな事言われると、溶けちゃうからっ!
私なんていいのにっ! フェザーが気持ち良くなってくれれば良いのっ! いいのっ!
「にゃっ! ダメそこっ! こすっちゃ! ダメっ! 良すぎてっ! ダメにゃっ!
ふにぁーーーーーっっっ!!」
尻尾で拘束されての愛撫、それも先程自慰で擦り付けてしまった翼による愛撫で、
元々燻っていた官能の火が付くのは早く、目の前が真っ白になってしまったです。
「ふにゃ?」
「我慢出来なくなった、苦痛が紛れる、噛め」
えっと、正気を取り戻すと、私がベットに仰向けです。
そして、フェザーがの上に乗っていて、割れ目の処にアレが、
ちょっと入るか不安なのですけど、押し付けられていて、
そして、口元には手羽先、痛くするけど、これを噛んで我慢しろって事ですか?
気を失ってる間に奪ってくれても良かったのに、フェザーの不器用な優しさが嬉しくて、
手羽先をこりって噛むと、私はこくりと頷いたんです。
「んっ! んっーーーっっっっ!!」
体の奥まで熱いのが貫いて、一番奥で止まって、充足感と満足感を感じて、
……何で痛くありませんの? 殿方のお相手は初めてで、
その、幼馴染を7番アイアンで美味しく頂いたことはありましても、
自ら慰めた事は無いですのに……そこで彼女の言葉を思い出す。
激しい運動をしていると破ける事が有るんですよ……心当たりが多すぎます。
この時ばかりは、希少道具狩り(れあいてむ はんと)に人生を賭けていた、
潤いの無い半生を本気で恨み……混乱している私の奥を、
フェザーが再び突いて、引き抜いて、擦ってくれたのです。
「んっ! 殿方のお相手は初めて……んっ! なんですの」
「ひぅっ! 嘘だと……っ、お思いです、んっ! よね?」
「否」
フェザーが突き付けてくれる甘い衝撃に耐えながら、手羽先から口を離して、
必死に言い訳しようとする私を抱き起こして、フェザーは否定の言葉と共に、
両翼で私を包むことで答えてくれたです。
「にゃっ! 深いっ! 深いんですのっ!」
私の重みがフェザーのアレを奥に押し込んで、ぐりっ! って、なって、
胸にすがり付いて泣いていましたら、ふいに動きを止めてくださいました。
「だ、大丈夫なのです、その……もっと、動いて良いの……です」
「否」
フェザーは私の言葉を拒絶すると、その、つらいと思いますのに、
そのまま動かないでいてくれましたので、呼吸が落ち着いて、
ようやくフェザーと一つになれんだなと、そう思ったら胸に電気が走りました。
「にゃっ!? し、尻尾ですの? ひゃう! そこっ! 胸縛っちゃだめっ! ダメですのっ!」
いつの間にか、フェザーの長い尻尾が私の胸を縛っておりました、
密かに自慢にしておりましそれが、縛られてハムのようになってると自覚した時、
顔が赤くなると共に、耳と尻尾がびくりっ! て、震えてしまいました、
ダメです、淫らなのが、わかってしまうです、胸……敏感なんですっ!
「だめにゃのっ! 胸っ! 弱いのっ! 我慢……みだらって、嫌われちゃうですのっ!」
「否」
縛られてるって、フェザーのものになってるって思ったら、我慢が出来なくなって、
必死で抑えていたら、否定の言葉にフェザーの目を見る、うん、我慢しなくていいんだ。
否としか言ってくれなくて、わたしのこと、ぜんぶ、ひていしてくれて、うれしくて。
「ずんっ! ってくるのっ! 背中、羽根が擦れてっ! いいっ! いいのっ!!」
がまんしなくてよくなって、こしをずんっ! って、ゆらされて、きもちよくて、とけちゃった。
「硬くてっ! ごりっ! って、はじめてなのっ! それなのにっ!!」
「いまっ! びくってなったのっ! 出すの? 出すですの?!」
「奥にとくって! とくとくって! あったかいですの……」
「ひゃう! だめっ! まだおなかっ! とくって! したはがりだからっ!」
「むねっ! 絞られてっ! びんかんなのっ! なめちゃダメだからっ!!」
「ダメですのっ! おりれなくっ! おりれなくなっちゃうですのっーーーっ!!」
フェザーのエピローグ
胸部に柔らかな感覚、そして良き香りを感じて目覚める。
……彼女がいた、そして、抱き寄せている、だれに?
そう、素数を数える、一、二、三、一、二、三……鳥頭ゆえに続きを忘れた。
ただ、充たされた思い……悪くは無い、彼女と共に居たい、その思いを胸に刻む。
この思いを鳴声に乗せて朝日へと向ける、彼女が起きたようだ。
「すまぬ、起こしたか?」
「いえ」
そう言って彼女は抱きつくと、充たされる心と……押し付けられる胸。
素数を数え平静を保とうとし……心がそれを否定する、幸福を偽る必要無しと。
彼女と共に居るだけで、全身に満ちるは何者にも負けぬ力。
慢心……されど事実にすれば良し。
そう、ただ彼女と共にいるために。
「ずっと……いっしょにいて良いですか?」
「承知」
思いは共に在ると、そう言葉に乗せて答えると、彼女を抱き寄せた。
終 劇
付録 あるてぃめっと ふぁいたー
ただ、心に刻んだ、お前が好きだ、お前を守りたい、言葉は忘れても、この思いは絶対消さない
――ある舞踏家(ふぁいたー)の言葉
オープニングとこれまでのあらすじ
あの後に順序は逆になったが、文通から始めることと成った二人。
フェザーは次のKOFに向けて修行の日々、彼女は蒐集王のお手伝い。
そしてたまの休日に二人で会うと言う、ほのぼのながらも幸せな生活を送っていた。
男としての成長が、戦士としての成長を助けてたのか?
それとも、守るべき女性を見つけた事が切っ掛けとなったのか?
さらに舞踏家(ふぁいたー)の技に磨きをかけるフェザー
KOFを間近に控えた休日のある日。
ついに背中に、彼女を乗せて飛ぶ事が出来た日に悲劇がおきる。
別れを惜しむ二人に、突如謎の影が襲い掛かる。
長期の飛翔により体力を消耗していたフェザーは、彼女を守りきる事が出来ず。
彼女を連れ去られたフェザーに残されたものは、取り戻すための最後の鍵。
蒐集王の船(これくたーしっぷ)で待つと、そう書かれた一枚のカードのみ。
連れ去ったのは蒐集王(これくたーきんぐ)の手のものなのか?
一体なんのために? 疑問は尽きないものの、鳥頭ゆえに忘れ。
胸に刻んだ彼女を守ると言う誓いを果たすべく、旅立つのであった。
エピローグ
「不本意ですが……お嬢様の事、お任せしました」
「承知」
地のアズライールとの戦い、精度の低い地の魔法の欠点を無くした、
黒金の城(ろっく あーまー)は強靭無比の強敵であったが、
飛翔能力を手に入れたフェザーは、相手の空を飛べないと言う弱点を突き勝利する。
そして、アズライールの口から話される衝撃の事実。
なんと救うべき彼女は蒐集王女(これくたーぷりんせす)だったのであるっ!!
トリとネコの恋など悲恋で終わる、お嬢様を悲しませる事は許せないと、
残った魔力で巨大な戦槌を作り出すアズライールに、ただ、己の翼で答えるフェザー
黒金の戦槌(ろっく はんまー)を砕き、気力を使い果たしたアズライールに告げる。
悲恋になどさせない、守ってみせると。
フェザーを睨みつけ、信頼させたいなら守り切ってみせろっ! と言い放ち、
蒐集門(これくたーげーと)を開けるアズライール……しかしっ!!
「勝手に開いてしまうなんて、アズくんいけませんねぇ」
「そうにゃふ、仕事が増えるにゃふ」
「まったく、せっかく美味しいお酒を飲んでたのに」
立ちふさがる残りの四天王、風のジブリール、火のジバクエル、水のエビチュエル。
3対1での戦いで劣勢に陥り、蒐集門(これくたーげーと)に入る事すら出来ないフェザー。
「まったく、まったく情けないのであるな、此処は我々に任せて、
ちゃっちゃと先に行って助けてくるのである」
「先生、私ではちょっと無理だと思います」
謎のネコとヒトの助力者。
「お嬢様を任せるって僕は言ったんだっ! 早く先にいけよっ!」
「渡しておいた魔洸ドリンクがようやく利いたであるな、ところでヤらニャいかね?」
「僕はお嬢様一筋ですっ!!」
「百合は百合で……感想に困ります」
戦場で生まれる強敵(とも)
蒐集門(これくたーげーと)を抜けたそこで待つのは、
謎の石柱に拘束された愛しき彼女……否、蒐集王女(これくたーぷりんせす)
そして、解説のネコ……否、そもそも不自然であったのだ。
強敵達との戦いにおいて、何故自分すら見切れない攻撃をこのネコは解説出来たのか?
まるで次の動きが判るように、動作の前に観客に伝える事が出来たのかと。
「ようこそ華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)私こそが蒐集王」
「……いや、かっての名で名乗ろう最良の時(まっくす たいむ)と」
「わが娘が欲しいのならば、KOFの流儀に従い、勝者となって権利を得よっ!!」
4年の歳月で磨き上げられた技術、それは前回のKOFの時より、
確実に上回っている……はずであった。
しかし、攻撃はすべて最良の時(まっくす たいむ)にかわされ、
逆に避けきれない攻撃に膝をつく。
「もしも……私が少しだけ、先の時を知る事が出来るとしたら……どうするかね?」
絶望に染まる心、しかし、彼女を見た瞬間に……鳥頭ゆえに全てを忘れた。
胸に刻まれた誓いのために、彼女と共にいるため。
華麗なる羽音(ふあんたじっく ふぇざー)は天空を翔けた。
「ばかなっ!! 避けられない攻撃だと?!」
「御父上殿、お嬢さんを貰い受けるっ!!」
かくて盛大な告白劇の幕は下り、今でもトリとネコが幸せに暮らしているそうです。
あるてぃめっと ふぁいたー 終幕
――KOF広報部絶賛未配送中