猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

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scorpionfish 第6話

 
 
 いつもより蒼い海。
 月明かりが波間を照らして、黒々とした岩礁を浮かび上がらせている。
 上下に揺れる視界。
 海面には小さな波が立って。
 さっきまでの海の中の世界とは違って、クリアに見えた。
 空には大きな月。
 比重の違う青が見せる、水平線。
 外だ。
 水の上だ。
 何日ぶりだろう。
 あたしは、口に海水が入りそうになるのも忘れて。
 ぽかんと空を見ていた。
 
 ファルムの腕が浮き沈みしていたあたしの肩を引き寄せる。
 足ヒレが力強く水を蹴って。
 気がつけば、岩礁に手が届く位置に来ていた。
「ほら」
 ファルムの手に押しやられるようにして、岩礁にあがる。
 腕の力で体を持ち上げながら海から上がると、胸元に溜まっていた海水が、おへその前を通り抜けて、下から抜けていく。
 今着ている水着は、紺色で、ワンピースタイプになっている。
 背中はそんなに空いてない。露出度は少ないかな。
 おなかのところが二重になっていて、前からはぴったりしたスカートをパンツの上に重ねたように見えるけど、水は重なった筒状の部分から抜けるようになっている。
 ファルムは最初その筒って言うか、穴って言うか、その部分に気付いてなかった。
 きゅうくつなそれを無理矢理着た後に、ほんのちょっと裏地がめくれあがって見えてたのに疑問を覚えたらしく。そのパンツ側の部分を思いっきり引っ張られた。
 そのときのあたしがすっごくじたばたして逃げたから、記憶に新しいんだけど。
 ええと、これの固有名詞が思い出せないんだけど、落ちものらしい。
 ヒレも、尻尾も通る穴がないもんね。
 でもちょっぴり胸が出てるあたしにはきゅうくつで仕方なかった。
 一応、胸の部分は二重の生地になってるんだけど。
「どうしたんだい?」
 しきりに胸の辺りを直しているあたしに、ファルムが声をかける。
「ちっちゃくって」
 するとファルムが鼻で笑った。
「リテアナなら入らないというのもわかるが…、シロではまだまだ未発達じゃないかい?」
 む。
「きっついものはきっついんだもの」
 ちょこんと岩の上に腰掛ける。
 濡れて重くなった水着は水の上にあがると体に張り付いて、厚い生地の下から体の線があらわになる。
 ほら。胸の下とか空気入ってるじゃない?
「じゃあ、直してあげようかねえ」
 つつっと、ファルムの白い腕が海面から伸びて、あたしの鎖骨の下からおへそまで一直線に撫でる。
 な、なんか、こそばゆい。
「なにするのさ」
 ぱしゃっと、足をあげて水しぶきを立てる。
 ヒトなら一瞬目をつぶる攻撃にも、ファルムは平然として蒼い眼を開けたまま受けて。
 なにをやってるんだか、という顔をした。
 
「はあ……」
 あたしは脱力して、膝を抱えた。
 深いため息を吐くと、疲れがじわりと滲んでくる。
 警戒しながらここまでやってきたのは、ケモノもサカナも、寝静まった時刻だから。
(泳ぎの練習がしたい)
 そう、ファルムを説き伏せたのはあたしで。
 魔窟はここからはちょっと離れていて。しかも水底にある。
 水底に沈む魔窟の一番上の出口からでも、あたしには息が続かなくなるほど長かったんだけど。あたしはあえて、ファルムの手助けを拒んだ。
 今回、ファルムの施してくれた水中呼吸の魔法とかは、使われてない。
 だからこそ、こんなにばててるんだけど。
「どうしたんだい?」
 ファルムが波間から肩から上を覗かせて、こちらを見ている。
 あたしは、溜息を返して、ファルムを見つめ返した。
 海面から上半身だけ見せているファルムは、月明かりを受けて光る赤黄色のヒレ耳とか、鱗とかがなんとなく幻想的で。
 人魚ってこんなのかな、と思わせた。
 月明かりは、水平線から岩礁まで、銀色の帯のように海面を照らしていた。
 光の鱗がいっぱい。
 あたしの白い手足についた水滴にも、月光は降ってきて、青白く見える肌に波紋が映りこむ。
 ファルムが目を細めた。
「そうしていると、まるでサカナみたいだねえ」
 ヒレの無い細い手足に、青く揺らめく鱗模様の影。
「そっかな」
 あたしは、サカナじゃない。サカナにはなれない。
 深く潜れないし、長くも潜れない。
 ファルムの魔法がなければ隠れ家からも出られなかっただろう。
 でも、その方がよかったのかもしれない。
 
 ファルムのことはよくわかんない。
 あたしを、突然魔窟に連れてきたのも、「珍奇なケモノ料理が食べられるから」とかいう理屈をつけてたけど。
 もしかしたら、他にも用があったついでかも知れないし。
 でも、あたしからは目が離せないから、仕方なくなのかも知れないし。
 なんだか、あたしはぐるぐるしてる。
 迷いや悩みや、戸惑いや。
 そんなものよりもっとどす黒いものも、抱え込んでる気がする。
 
 魔窟はそんなに好きじゃない。でも温かい料理はありがたい。
 冷えきった関係は好きじゃない。でもファルムのひんやりした肌は好き。
 水鏡の間は好きじゃない。でも、あたしのせいで、あの隠れ家には帰れない。
 隠れ家に戻りたい。でも、また体調を崩すかも知れない。
 ファルムは戻る話はしない。でも、だんだん眉間に皺が寄ってる時間が増えてる。
 時々来るリテアナさんや、持ってくる服は嫌いじゃない。でもそんなことがどうでもよくなるときがある。
 魔窟にいる人の視線は好きじゃない。でもあたしはヒトだから目立つ。見られたくなければ隠れているしかない。
 ファルムは無理してる。
 それはあたしがかよわいヒトだからだ。
 魔窟で、ここでのヒトの意味を耳にした。
 ファルムはなにもいってなかったけど、今思えば、そういうことなのかもしれない。
 でも、あたしはファルムを信じたい。
 あたしには何もない。
 あのとき、身につけていたはずの服も。
 それまであったはずの記憶も。
 落ちものについての記憶も。
 だんだん、日々にながされ、薄れていく。
 あたしは、誰なんだろう。
 ふっと考える。そして、頭をぶんぶんと振る。
 今は。
 月明かりの下にいる今は。
「泳ぐ」
 そのために来たんだ。
 サカナまではいかなくても。
 泳げるように、もっと深く潜れるように。
 せめて、ファルムの足手まといにならないくらいに。
 
 
 
「干潮の間だけだからね、それが見えているのは」
 そう言い残して、ファルムは岩礁から離れた。
 来た時より岩場はちょっぴり小さくなってる気がする。
 タイムリミットは短そうだ。
 足を伸ばして、海面に足を入れる。
 はじめはゆっくりと音を立てずに、やがてぱしゃぱしゃと足をばたつかせる。
 長い間、運動といえばファルムの相手ばかりだったので、水の抵抗は重い。
 盛大な水音を立てると、ファルムがあきれ顔に、音もなく水の中に消える。
 水面に沈む、足のヒレ。
 波紋が消えると、そこはただ波うっているだけで。
 あたしは、白波にふと怖くなる。
 大きな月があたしの横顔を照らす。
 目の横の白い髪が月光に透けて。
 足の動きを止めると、波の音しかしない世界。
 指先を、海面につける。
 波紋。
 あたしの心の波紋。
 焦り。
 孤独。
 あたしはこわばった目の動きで、辺りを見回す。
 水鏡の間でひとりでいても怖くなかった。足がちゃんと踏みしめる場所があったから。
 なのに。海のど真ん中。辺りに何もないってだけで、あたしは不安になる。
 ファルムのヒレが見えない。
 ここは、もうすぐ沈んでしまう。
 あたしの居場所は、なくなってしまう。
 でも、この広い海で、どこを探せばいいの?
 ホントに探せるの?
「ファルム…」
 そう心の中で何度目か呟いたときだった。
 目の前に何かが浮上した。
  深紅の長いトゲヒレ。
 顔を上げて、ファルムがにいっと笑う。
「ちょいと目くらましの結界を張ってきただけだけさ。どうしたんだい? そんなに心細そうな顔をして」
 あたしは抱きつかんばかりに前のめりにダイブした。
 ファルムがあたしを抱き留めかねて、一瞬水の中に沈む。
 すぐに海面に二人とも顔だけ出して、ファルムが嗤った。
「おやおや、ちゃんと練習できてなかったのかい?」
「見ててくれないと、や」
 あたしはファルムの耳元で呟いた。
 我ながら小さな、しょんぼりした声。
 伏し目がちにファルムの肩に頬を寄せようとすると、軽く引き離される。
 目を見開いて顔を上げると、月明かりの中で、ファルムが嗤った。
 なんだか、どことなくよそよそしいような、そんな感じがした。
 
 
 
 前言撤回。
「ほら、ちゃんと足を揃えて」
 岩の縁に掴まって、顔を海水につけて、泳ぐ練習。
 サカナ流は、二本足を揃えて、キックだそうだけど。
 なんか、動きが難しい。
 でも、水音を立てると、すぐさま、ファルムの修正が入る。
「サカナらしくない泳ぎ方なんて、してほしくないねえ」
 んっ。
 だからって、なんでいきなり股間に手を突っ込んで姿勢を直すかな。たしかにそこに三角形の隙間は空いてるけど。
 ぶはっ、と水面から顔をあげる。
「潜ってなきゃだめだろう?」
「でもっ、そんなにあちこち触られたらうまくできないっ」
 さっきから水着の中にまで隙あらば手を突っ込んでくるんだもん。
 あらわな背中に口付けてみたり。
 手首のトゲヒレで、太股の付け根から水着の生地を持ち上げてみたり。
「しかたないねえ。とりあえず何があっても浮いててごらん」
 え?
 ふわりと、足もとの岩礁から足を浮かされ、あたしは流されないように慌てて岩礁の縁にしがみつく。
 う、指先にしか力入ってない。
 必死に顔をあげておく。
「満ち潮になる前に、体に覚えさせないとね」
 確かに、早くしないと岩がどんどん沈んじゃうけど…。
 でもお、水着の中に指が入ってくる、の、は!
 股布の部分だけ、食い込ませるように持ち上げて、ファルムの指が動く。
「おや? なんだか濡れているようだけれど…」
「海水に濡れてるんだから当たり前だもん」
「そうかい? じゃあなんだかぬめりけがあるのは何故だろうねえ?」
「そのへんのコケにでも、ファルムが先に触ったんだもん」
 苦しい理屈。
「そうかい? では確かめてこようかねえ」
 そういうやいなや、ファルムの姿が消えた。
 ?
 股間に、なんだか、変な感触が。
 なんだろ、水着の上から、舐め、られてる?
 指じゃない、この感触って……。
 やっ、足開いちゃうよっ。足揃えておかないといけないのにぃ。
 
「ひゃうっ」
 あまりの感触に、あたしはつい岩に足をつきかけた。
 上半身が海から出かかると胸元にも、同じ感触。
 あたしは腰を突き出すような形で、水から上がろうとした。
 その腰をがっちりと固定され、股間に顔を背後から埋められる。
「こ、こら、お尻にくっつくなー!」
 水音を盛大にたてながら、あたしは暴れた。
 う、なんか、変な感じが、ぞわって背筋を這い上がってくる。
 内股の敏感なところから、水着の生地を持ち上げて、舌が侵入してきた。
「んーっ!」
 水が入っちゃう、じゃなくて。舌が、はいって、きちゃう…。
 ひくっと足が上がる。
 つま先が浮いて、指の先にも力が入ってこなくなって、なんだかふわんと快感の波が押し寄せてくる。
 太ももはがっちりファルムに押さえ込まれてて。
 剥き出しになったあそこの割れ目を、何度もなぞられ、目の前がブラックアウトしそうになる。
 ヒトなら絶対息が続かないほど潜水してるのに。
 サカナだから平気、なんだ……。
 圧迫感が少し途切れて。
 きゅ、きゅ、と水着が割れ目に食い込む。
 じゅわっと水じゃないものが水着にぬるぬると染みていくのがわかる。
「ほら、違うだろ?」
 ファルムが海面に顔を出して、今にも沈みかけてるあたしの顔を引き寄せてささやく。
「にじみ出てきてるのは、シロの中じゃないか」
「ちがう、もん」
「そうかい?」
 あ、あたるよお……。
 くにゅくにゅと押し付けるように何度もなぞり上げられて、あたしはだんだん頭がぽおっとしてくる。
 胸を水着の生地の上からもみゅもみゅもみ上げられると、つんと立った箇所が、否応にも目立って。
 まるで岩場の上で背をのけぞらせるようなポーズで、あたしは、いやいやと首を振る。
 そこを、すかさず隙を狙ったように、水着のくいこみを指で持ち上げられて。
 ずん、と突き上げられた。
 海水が、生温いというか、冷たいというか、なんだかもうわけがわかんなくなってるのに、中が熱い。
 夜の海にあたしの吐息が響く。
 は、恥ずかしいよお…っ。
 なのに声はだんだん大きくなってて。
 ファルムは、岩場にしか足場のないあたしを翻弄するように、深く、浅く、楽しむ。
「胸にも、鱗をあげようねえ」
 ファルムが、水着の胸元を一気に押し下げた。
 押しつぶされた胸がぷるんと飛び出して。
 濡れた肌を外気がくすぐる。
「あっ、んっ、はぅ…っ」
 胸と、あそこ、両方いじくりながらするのはらめぇ…っ!
 手でじりじりと岩場を無意識にのぼっていこうとするけど、だんだん、岩がちっちゃくなってって。
 あたしが何度目かに達して、ぐったりしてからようやく、ずるりと中から引き抜かれて、岩の上にファルムの腕で座らされる。
「ほぇ…?」
 ぼーっとした顔で見上げると。
 ファルムのなんか意地悪い笑みをみたような気がして。
 その瞬間、胸から顔にかけて、熱いものがかかって、あたしは目を閉じた。
 顔を舐めるといがいがする。
 目をおそるおそる開けると、紺色の水着にもいっぱいかかってて。髪の毛にもくっついてて。
「うん、なかなかいい眺めだねえ」
 満足げなファルムにあたしは、言い返せず。
「はあ…」
 と、返したのだった。
 こんなんで潜水、上達するのかなあ。
 えっちな訓練は、まだまだ続きそうだ。
 
 
 
 
 

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