探偵にゃんこーの厄日 第1話
今日は厄日だ
深く溜息を付きながら、家への道を歩く、具合が悪いことに、天気まで一転しての大雨、傘を持っていない為、濡れるしかない。
雨宿りしたい所だが、深夜の為、書店も開いておらず、時間を潰す事もできない、体力の無いマダラじゃあるまいし夏場の雨如きで体調を崩す事も無いだろうが、それでも体毛が肌に纏わり付く感触は、不愉快だった。
本当なら今頃は、依頼料ももらって、酒場にでも転がり込んでいた筈なのだが、あの貴婦人の錯乱した様子では暫く収入は無いだろう、否、それどころか、ヒト奴隷の死の責任まで追及されかねない。
只でさえ、未だにあの奴隷の惨殺死体が、瞼の裏にこびりついて、酒を使ってでも流さなくては、夢見まで悪くなるに決まっていると言うのに、まったく持って泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目とはこの事だ。
遠くから雷鳴が聞こえる、本格的に天気の具合も悪くなってきたらしい、少し、急いだ方が良いかもしれない、雨は気分だけの問題だが、雷はさすがに命に関わる。
そう思い、駆け出した矢先、俺の目の前に天を裂く様な音と共に、光の柱が降り立った。
闇に順応していた目を焼く閃光にふぎゃあという、知人が聞いていれば思わず噴出すような悲鳴を上げる痛い、目が痛い、糞っ!なんだこれは!ヒト奴隷の呪いか何かか?、俺は恨まれる筋合いねえぞ!
暫く蹲っていると、鼓膜も痺れから復活してきたのか、再び雨音だけが響き始めた
音だけを頼りによろよろと歩き始める、確かここら辺にバックを落とした筈なのだが・・・・
そして、妙に柔らかく、弾力のあるものに手を触れ、予期せぬ感触に思わずうめき声を上げる
なんだこれは、まさか落雷の被害者でも出たのか?、糞、また夢見が悪くなる事確定じゃねえか
しかし、ゆっくりと回復してゆく視覚が捕らえた現実は、そんな予測のさらに斜め上を行っていた
ヒトが落ちてくる、と慣用句としてはよく使う、だが実際の所は必ずしも天から降ってくる訳ではないらしい、川から流れてきたり、何の前触れも無く突然箱の中に現れたり・・・・、たとえば、いま、まさしく目の前にあわられた男だか女だかわからんヒトの様に、雷と共に落ちてきたり。
えーっと、つまり、なんの前触れも複線も無く目の前にヒトが振ってキヤガリマシタヨ、と。
明らかにこの世界のデザインではない服を身に着けた(かがくごうせいせんい、だったかなんだったか)
その明らかにがきくせぇヒトは、丸まったまま今は雨に打たれている。
ここで成金野郎や乞食だったら、「うっひょー!、大金ゲットゥ!ひゃふーぃ!」とか大喜びするんだろーが今日の俺はこの上なくナイーブでっつーか陰鬱だ、その上こんな面倒ごとに関わろうという気にはなれない。
朝になれば、きっと誰かが気が付くだろう。
三度目の落雷、目を瞑った表紙に、脳裏に映像が浮かぶ
四肢を外され、骨盤が砕け、腹を割かれて中に精液を貯められた、まだ雄にも成り切っていないヒト奴隷、泣き叫ぶ猫の貴婦人。
ほんの数分目を離しただけだった、ヒト特有の強い好奇心がそもそもの原因だ、そして二つ目の原因は糞ったれた変態サディストに目を付けれれたということだった。
俺達に比べて恐ろしいほどに、残酷なまでに貧弱なヒトという種族。
・・・・・・・・糞、なんだお前は、汚れきった野良猫じゃねえのか?、どこのヒーロー気取りだよ
軍で散々な目に逢って、二度と正義漢ぶったりしねえって、思ったんじゃなかったのか。
そのヒトが目がさめて最初に言った一言は、「この変態!獣!しかも両方かよこの化け物!」だった。
で、今はなぜか俺自身の借家から追い出されてまた雨に打たれている
・・・・・・・心底、正直、ほっとけばよかった。
いやね、殴って黙らせる事も出来たんですけどね、屈強な狼の肋骨でもたたき折れる俺が、
ヒト(その上メス)に暴力を振るうわけには いかないでしょう、常識的に考えて。
いやまあ、服を脱がした俺にも責任はありますが、あくまでそのままじゃ病気になるかもしれないという親切心からでしてね?下心とかなかったんですよ?ちゃんと拭いたし。まあ、メスだと予測していなかった俺にも多大に問題点があるわけですが
そうだよ、最初に触れたのは胸だったんですよ、見た目小さいくせに以外と柔らかいのな、いやまあ、それはどうでもいいとして
はやく家の鍵をあけてくれないかなー、鍵中に置いちまったんだよなー、
・・・・・叩き割るにしてもここ俺の家だから 俺が修理代払う羽目になるし・・・・・
あ、空が青くなってきた・・・・・・本当に今日は厄日だ。