探偵にゃんこーの厄日 第2話
私の名前は晃子(あきこ)、少しだけ文学オタクな普通の女子だ
・・・・まあ、友人にはよく
「アキコってほんと変わってるよねー、あれ、天然系?」だの
「もう少し見た目に気を使いなよ、それじゃ干物女になっちゃうぞ」
だの言われてるあたり、ひょっとしなくても普通の女の子の定義からは
大きく外れてるのかもしれない。
だがそんなことはどうでも良い、私は女という生き物でも、
じょしこーせーと言う生き物でも無く
私という一つのぱーそなりちーをもった人間なのである。
などといまいち意味のわからない単語を使ってみたりするが、
まあ、たぶんそんなに使い方は間違ってないはず?
まあ、飾らずに言うと
「皆と同じような顔するのめんどくせ、だる」
というのが本音、一応、料理掃除洗濯は同年代の子よりずっと
出来るので、女性としては終わってない、と思いたい、うん、心の底から。
ま、クラスに一人くらいはいる、苛められっ子と紙一重のハブられっ子というか、
休み時間にダルそうに教室の端っこで本を読んでるようなタイプ
だと思って頂ければたぶん当たりだろうわかっちゃいるけどやめられない、
いわいる喪女一直線のだめだめタイプ。
マンションの一室、愛しの我が家に帰る、
そう狭くない部屋に一人、というのはなかなか寂寥感がただようなあ
などと思う改めて思ったりしながら、
とりあえずいつの間にかベランダに居座っている野良猫のぷーにゃんに餌をやって、
ぐにぐに撫で回したりしてみる
にゃんこは食べて糞して寝るだけだから楽でちゅねー、
とか言ってみるが、よく見ると真新しい傷が出来ていたり、
戦闘の後が生々しいことに気が付いて、
猫も大変なんだなあなどと考えを改めた、
ごめんよぷーにゃん(♂)、お前を誤解していたよ。
自分で作った晩御飯を食べながら、学校での話題に取り残されないように
糞つまらない糞テレビの糞エンターティメントをダラダラと見る、
いや、正直言いすぎた、すまない、だけど興味ないとそんなもんなんだ、
本音、ほら、内輪の話とかされてもファンでない限り分からないし。
はたから見れば何を一人で突っ込んでるんだという思考の流れだが、
基本的に何か考えていないと孤独死しそうな環境下なものだから
そこらへんは多めに見てくれると有難い、
仕送りで生活費だけは義理親負担(正確には実親の遺産の一部)
だから、特にお金に困っては居ない辺りが実に性質が悪い、
・・・・いやほら、関係なくてもアルバイトとかはした方が良い、
というのは頭では分かっているのだが、目的が無い上、コミュニケーションが
苦手だから、どうも気乗りがしないのである。
食器洗いを終えて、ホワイトボードを見る、今日で切れた常備菜や、
牛乳、朝ご飯のパン等の書き込みがある、如何せん、忘れっぽい為、こうやってこまめに
ホワイトボードを活用することにしているのだ、
とりあえず、近所のスーパーに買出しに行ってこよう、特に常備菜は無いと困る。
雨の日の散歩は嫌いではない、確かに太陽が出ている時のような明るい気分には慣れないが、
音に包まれながらの散歩は寂しくないから良い、雨音の中にわりと頻繁に雷が混じりだした辺り、
そろそろヤバイかも知れないが、かといって早く移動できる交通手段を持っているわけでなし
バスを使うほどの距離でもないので、自分に落ちないように願いながら歩くだけだ、まあ、幸い、
16年も生きてきたが、雨の日に感電死した事は無いしそこまで運が悪い方でも無いとおもう、
たとえ玉突き事故で家族を三人無くしてたりしても、さすがにそこまでは酷くないはず
しばらく歩いていると、雨音以外の音程の高い音が聞こえ始めた、猫の鳴き声だ、
周りを見回すと、小さい子猫が、民家の塀の上でみーみー鳴いて
居る事に気が付いた、降りれよ、雨宿りせーよ、と思うが、
視界が当てにならず、髭などは濡れそぼってレーダーとしての役目を果たさない状態な為
やっぱり普段と違うと不安なのだろう、飛び降りる勇気が出ないようだ。経験も少ないし、しょうがないか。
でもそのままじゃ風邪引くぞ。
首筋を摘んでそこらへんの屋根下に強制連行すると、
そのまま、その家の床下に入っていった、どうやら、普段は其処で雨宿りをしていたらしい
危ないぞー、今度から注意しろよー、
高い所に水分が多いものがあると、そこに目掛けて雷というのは振ってくるものだとテレビでやっt。
パーンという何かが炸裂するような音が体の内側から響き、それと同時に全身がショックで引きつる感覚
・・・・・なにが起こったのか分からないまま私の意識は何の脈絡も無く切れて飛んだ。
・・・・・で、今に至る、と
自分で言うのもなんだが、まったく思考がまとまって居ないなあ、回想からして頭が悪そうである、
まあ、実際悪いんだろうけど・・・・
それでまあ、気が付いたら素っ裸で、
しかもなんか猫のような人間のような良く分からない生き物が目の前に居たのだ
え?何を言ってるかわからない?、大丈夫、私にも何が起こったのかまったく理解できない、
瞬間移動なんてちゃちなもんじゃないもっと恐ろしい以下略とか、
そういうAAを貼り付けたいぽるぽるな気分である。
「で、勢いとかその他諸々で、俺を閉め出して現在に至る、と」
若干やぶにらみっぽい目でこっちを見るのが、その猫だか人間だがよく分からない生物
自称してるから多分猫、どうやら雑種のようで、灰色のあんまり綺麗じゃない色をしたにゃんこである。
「うん」
「悪びれないなあ、お前常識無いでしょ」
「よく言われる」
「恥じろよ」
あー、と頭を抱えるにゃんこ、苦労性っぽいなあ、猫なんだからもっと
のんびりしなきゃだめっすよお、などと頭を抱えさせた原因が思ってみる
あ、ちゃんと家の中で話してますよ?、ドア越しとかそんな正に外道な事はしてません
服は彼のものを借りました。
ズボンが大きくて穿けなかったのは予想外、ワイシャツだけだからおなかが冷えます
「・・・・とりあえず、こっちの世界ではお前さんは奴隷、だという事は理解できたよな?」
この会話シーンの前に長ったらしいこの世界の説明があったのだ、
正直専門用語とか多すぎて理解できなかったので省略するが、とりあえず、私に人権はないらしい
売ったり買われたり、お金ももらえず労働させられたり、その上夜には性的な道具として使われて
しまうらしい。
「うん」
「・・・・いや、もっとショック受けろよ、人として」
「そうだね、よく言われる」
家族が死んだときとか、特によく言われた
でも変わらない事に対して、じたばたしても何も変わらないんだし
もともと人の力なんて大したものじゃないのだ、受け入れるしかない。
どの世界だって、基本的に理不尽に出来ているんだと言う事を、私は知っている。
まあ、あれもこれも全部夢だとうれしいなーとも思うが、そうなら本当は病院で
チューブだらけとか、そういう真実にぶち当たる可能性がある。
どっちがマシかと聞かれてもちょっと答えられない、どっち道ろくでもないなら
どっちでもいいかなーと思ったりする、痛かったり怖かったりするのも嫌だけどさ。
絶望はもっと嫌いである。
「で、私は何をすればいいのかな?、ご主人様、とりあえず家事全般はできるけどにゃ」
なんか沈黙が続くので、空気を換えるために明るいノリで聞いてみた、いやほら、
仕事が無いとかそういう退屈なのも、一つの恐怖である、働かざるもの食うべからずだし。
「・・・面倒は無いが面妖だな、お前は、にゃーとか言うな、せめてヒトらしくしてくれ」
気味が悪いものを見る目で見られてしまった。
どうやらこちらにも「ヒトはこんな感じの反応をするのが普通」みたいな定規は
存在してるらしい、うーん、生まれてこの方その手の定規からははみ出しっぱなし
なので、きっとそのご期待には答えられませんよ?
私みたいな可愛くも何とも無い人間を拾っちゃうなんて、なんて運の悪いご主人さまだろう
・・・・・まあ、悪いネコではないようなので、それなりに長く付き合いたいなあとか
思うわけですが、主に保身的な意味で