探偵にゃんこーの厄日 第3話
あの変な人間を拾って今日で4日目になる、あれから何の依頼も無く、
新規の依頼者も来ないままである。
まあ、そもそも探偵の仕事なんて不定期な物だと相場が決まっては居るが、
それでも、あまり歓迎できない休暇だ、何しろ金だ、金が無い。
金が無ければ憂さ晴らしも出来ないし、酒も飲めなきゃ女も抱けない、
家に帰ればあの、何を考えてるか分からない女が居るし。
あいつを拾ってきてから何もかもがろくでもない、やったら綺麗に
掃除された部屋も、見やすく整理された資料も、
何もかもが気に食わない、さらには花なんて飾ってやがる、
下町の薄汚れた探偵なんだぞ、俺は
いや、仕事場を片付けてくれるのは良い事なのだ、
依頼人に不愉快な思いをさせないほうが
後々有利なのは事実なのだ、だが生活空間まできっちり整備するのは落ち着かない、
まるで自分の部屋ではないようで、気に食わない
生活空間と接客の部屋との違いすら理解出来てないんじゃないか、あの女。
いや?あの女の私室は、未だに何一つ私物の無い
恐ろしく味気の無いものだし、ひょっとして
奴にとって私室はそういうものなのかもしれない、
娯楽も何も必要としない生き物なんて
面白みも無ければ可愛げもない、やっぱり拾うんじゃなかった。
そんなことを思いながら、繁華街を練り歩く
・・・・・中途半端な飲み方をしたせいで、
むしろ余計侘しくなりながら、自宅に帰る。
仕事机―整理された其れをどう散らかしてやろうか考えていると
、そこに見慣れない封筒が置かれて居ることに気がついた。
「灰猫さまへ」と宛先には書かれており、封筒の裏には、
優美な書体で「メアリー・アルバルナ」と書かれてある、
封筒の紙質からして上等な物、そこまで考えた所で
アルコールで染まった脳みそが、記憶を引っ張り出した、
あの哀れなヒト奴隷の主人、前回の依頼の依頼主の名前だ。
中には前回の依頼の報酬と、次の依頼の前払い分
―虐待死させた犯人を突き止めてほしい、という追加依頼の料金が入っている。
探偵にそんなことを頼むな、と言いたい所だが、この街の警官の腐れ具合を考え見ると
ほぼ確実に、犯人側に賄賂掴まされてお仕舞い、というのが見えている。
それよりは、名前の売れている探偵に任せたほうが、まだ確実性があると踏んだのだろう
・・それとも、あの貴婦人、犯人達を私刑にするつもりなのかもしれないな
そもそもヒトに人権などないから、壊したとしても
多少の賠償金で済む、しかし、あの愛着の入れ様じゃ
それでは納得すまい、犬なら我慢するだろうが、彼女は猫なのだ。
そして彼女は、この国において万能なる力、財力という物を
有り余るほど保有している。
たかだかヒト一匹の為に嬲り殺しにされる猫、
と考えると非常に理不尽な気もするが、自業自得なので
同情する気にはなれないな。
さて、此方も返事を出さないと行けない訳だが、
此処で大きな問題が発生する、この報酬に関係した事柄だ
つまり、ぶっちゃけ手紙を届けるより、本格的に酒を飲みに行きたいわけだが・・・
結局、私がお使いに行くことに成ったのだった、
ポケットにはご主人の書いた地図、右太ももには
護身用のリボルバーという、いでだちだ。
ちなみにリボルバーは、私達の世界の拳銃ではなく、
魔法銃とかいうものである、火薬の代わりに火炎魔法の札が
ぐるぐる巻きにして入れられており、
これをコックで叩く事で発砲することが出来る。
やたら高価な銃の代わりに、安価で作りやすい魔法銃は、
カモシカの国に大量に輸出され、外貨獲得に一役
買っているんだとか。
難点は、雨の中では札がだめになって使えなくなることと(火縄銃かよ)、
如何せん威力が実弾と比べて大きく下回る事らしい
その代わり反動が少なく、女子供はおろかヒトでも扱える。
しかし、街中を拳銃を持って徘徊するというのは、
ファンタジー世界か、アメリカでもない限りありえない
シュチュエィションだよなあ、などと思ったが、
よく考えたらここはファンタジー世界でした。
地図の場所にたどりついて唖然とした、
でかい、でかいですよこの家、家というか屋敷、屋敷というか
ちょっとした城、富豪とは聞いていたが、之ほどまでとは。
警備員のヒトに事情を説明する、私としては此処で手紙を渡して
さようならしたかったのだが(大きい家は、実家を思い出してすこぶる不愉快)、
彼らの主まあ、つまるところ依頼人は私に遭いたくて仕方がないらしく、
是非お呼びして是非お呼びして、と四回程言われたそうだった、
わがままである、実に我がままである、警備員のわんこのうんざりした顔が印象的だった。
お互い強く生きましょう、うちのご主人は今頃酒盛りしてます
豪華なシャンデリアがつるされたホールから、赤い絨毯が敷かれた廊下を通って
一室にたどり着く。
通された部屋には、数人の少年が裸でぐったりしているんですが。
あきらかにそっち用の道具が並べ立ててあるわけですが、コケシトカ
なんだろうこの生臭いにおいとか考えたくもねー!たくもねー!
こんなところに招待って何する気ですカー
えっと、帰っていいかな?、いや、帰る、帰る!カエシテー、むしろ助けてー。
「すみません、客間は隣でした」
かちんかちんに硬直した私の目の前で、何事も無かったかのように扉は閉められました、
看守の犬の言葉のどこかしらしれっとした響きが大変気にかかります、むしろ警告か?、
今から会う人はそういう猫ですよっていう意味の・・・
あるいは、いっぺん見せてからつれて来いと命令されたとか、後者だと、ヤバス。
通された客間は、先ほどの部屋とはまったく異なり、
非常に清潔感のある部屋で、上等な椅子が並んでいて
一番豪華な椅子には一人の女性が座っていました、
外見年齢は私より少し上のおねえさんといった感じ、髪の毛は
軽くウェーブを書いて、腰辺りまで伸びていて、
ブロンドの髪の上に白い耳が違和感なく乗っかってる感じです
「はじめまして、私はこの館の主の、メアリー・アルバルナといいます」
「私はヒト召使の晃子といいます、よろしくお願いします」
「ご主人様は、この度の依頼を受けると言っておりました、
正式な書類は、此方の封筒の中に入っているのでご確認ください」
「ああ、之はご丁寧に、ですが、私があなたをお招きしたのは、
あなたのお話を聞きたかったからなのですよ」
そう言って、口を押さえて上品にくすくすと笑う、
メアリー夫人、うー、美人さんなんだけど、さっきの光景が
脳裏に浮かんでは消えしてる訳で、落ち着かない
「私の話ですか?」
「グレイさんがヒト召使を持っているという話は始めて聞きました、
買えるとも思えませんから、落ちたてなのでしょう?
それなら、是非むこうの話を聞いてみたいな、と思ったのです、
私の持っているヒトは、いずれも子供のころから此方の世界に居る子達
ばかりですから」
「ああ、それで」
よかった、あなたを食べたい(性的な意味で)とかお近づきになりたいわあ(はあと)
とか言われたらどうしようかと思った、幸いそっちの趣味は無いらしい。
っていうか、ご主人様グレイって名前なんだ、すっげえ安直だなあ、
シロクロブチとなんら変わらないじゃないですか。
いろいろ世間話をしていると、時計が五時を回る、
そろそろ帰らないと、暗くなってから帰るのは危なそうだし。
「帰りは送らせますよ、危ないですから」
「あ、いいえ、おかまいなく」
種族とか関係なく人に迷惑をかけるのは嫌いである、
それに正直それほど長居したくもないのです
第一印象が第一印象なので。
「せっかく、暗くなってからでも、ゆっくり楽しもうと思いましたのに」
ごくごく普通な調子で、さらっと言ってみせやがりました
なにをですか?と聞きたい所だが実践で教えてくれそうなのでやめておこう
・・・私を少年と勘違いしてるとか?
ほら、性別を見た目で判断できないという、
素敵なコメントをご主人からいただいてるからなあ。
「わたしは女ですよ?」
「いっこうに構いませんが」
はいアウトー!
はいはいアウトー!
「晩御飯作らないといけないので、もうしわけありません」
作らなかったとしても正直百合は簡便というか、私まだ処女ですので、初体験女性とか嫌杉
しかしなんでこんなにオープンなんだこの人。
「これをグレイさんに渡してください、夜用といえば
分かってくださるでしょうし」
別れ際に紙袋をいただきました、中身はきっと考えないほうが良いんだろうなあ
ヒトであれば男でも女でも見境なしですか。
なるほど、「ヒト狂い」と聞いてはいたが、此処までとは、
本当に恐ろしいお人やでこの猫
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くすくすと
くすくすと
たまらなさげにメアリーは笑う
無表情さとか
ちょっと性的なニュアンスを加えただけで面白いくらい反応する初心さとか
綺麗なアーモンド形の目とか
少女と女性の中間のような、未完成な体つきとか
かわいいなあ、わりと本気でほしいな、と思っている自分に気が付いた。
とりあえず、明日、内の子の中で最年長の子と、あの子を引き合わせてみよう
あの子も最近人間の子が気になって仕方が無いみたいだし、うまく行くかもしれない。
彼女には自信があった
異性を落とすための技は仕込んだし、あの子たちの親だって
そうやって子供を生んだり生ませたりしているのだから
今回だけ、うまくいかないなんて事は無いだろうと。
もっとも、堅物そうだから時間はかかるかもね
それはそれで楽しみの時間が長くなって、嬉しいことだった。
しかしこの貴婦人、子供ゲットする気まんまんである