猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

獅子国外伝10

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匿名ユーザー

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 今年の夏も暑い。
 夏だから暑くて当然なんだけど、やっぱり冷房のない世界の夏はきつい。
「文明の利器に慣れすぎてるんです」
 ミコトちゃんがそう言ってくる。……反論の余地がない。
「北の避暑地に行くのもいいが、一応、これでも修行の合宿だからな。暑い時は水浴びでもしてたら気持ちいいぞ」
 フェイレンさんがそう言って気を使ってくれる。
 俺らが来てるのはリンケイから馬車で二日ぐらいのところにある山の中。去年は海だったけど、今年は山。
 セミの鳴く音がすごい。
「さ、二人とも水着に着替えてきたらどうだ? 向こうの二人は、もう準備万端みたいだが」
 そういって指差す先には。
 いつの間にか水着に着替えて準備運動してるご主人様とサーシャさん。
 今年も、水着はサーシャさんがネコの国からわざわざ取り寄せてきたもの。向こうでは水着もいろんなのがあるらしい。
 ご主人様は青のビキニ。紐で縛るタイプ……なんだけど、サイズがすこし小さくてかなり危なっかしく見える。
「んっ……んっ」
 準備運動をしながら、しきりに水着を気にしている。
「サーシャぁ……これ、ちょっと小さくない?」
「そう?」
「なんか、動いたらこぼれそうなんだけど……」
 確かに、かなりきわどい。
「あら、そのほうがいいんじゃない?」
「えぇ~っ!? サーシャ、それヒドいよぉ!」
 抗議するご主人様に、サーシャさんが言う。
「だって、キョータくんに見て欲しいんでしょ?」
 なぜそこで俺の名が。
「……それは……でもぉ……」
「きわどいぐらいの格好の方が、男の子は興奮するものよ」
 ……それはそうかもしれないけど。
 そういうサーシャさんも、セクシー系の黒いビキニだし。
「……その、着替えてきます……」
「え? ああ、じゃあ俺も……」
 恥ずかしそうに草陰に消えるミコトちゃん。俺も、とりあえず上着を脱いで、サーシャさんから渡された水着……

「…………」

 何ですか、この黒光りするレザー製極小ビキニパンツ。
 とりあえず、水着の女性三人に囲まれてこれをはく度胸は俺にはありません。

「あら、着替えてこなかったの?」
「……ほかの水着はなかったんですか」
 そう尋ねる俺に、サーシャさんが聞く。
「あら、駄目だった?」
「ちょっと……その……」
「だめよ、そんなの。不公平」
 ……不公平って。
「だって、女の子だけセクシーな水着なんて不公平でしょ。ちゃんと男の子だってそれっぽい水着じゃなきゃ」
 そう、指を突きつけて俺に言う。
「でも……」
 小声でまだ抵抗する俺に、サーシャさんがすこしきつめに問いかける。
「でも、何?」
「……これは……その……」
 困り顔でうつむく俺を見て、サーシャさんが笑う。
「っ……あははははっ……」
「何がおかしいんですか?」
「だって……」
 そう言って、物陰から別の袋を取り出す。
「ごめんね。キョータくんの困った顔見るのが楽しくて」
「…………」
 どうやら、最初から別の水着があったらしい。
「ごめんね。そっちは普通のトランクスだから」
「……最初から渡してくれてもよかったじゃないですか」
「だって、キョータくんの困った顔かわいいから」
「…………」
「さっきのキョータくん、泣きそうな顔してたよ」
 ご主人様が横から言ってくる。
「……泣きそうにもなります」
「あんなカワイイ顔するんなら、無理やり着せちゃってもよかったかな~♪」
「勘弁してください」
「それとも、無理やり押さえつけて……」
「ちょっ……待ってくださいよっ!」
 と、ばたばたしてたところに。
「……その……」
 後ろから恥ずかしそうな声が。
「これしか……なかったんでしょうか」
 小さな声でそう訴えるミコトちゃんの声に、つい振り向く。
「…………って」
 薄いピンク色の三角ビキニを着て、恥ずかしそうにしているミコトちゃんがいた。
「あら、かわいいじゃない」
「ほんとだ。すごく似合ってるよ」
「…………」
 恥ずかしそうなミコトちゃん。俺と一瞬だけ目が合い、そしてあわてて目をそらす。
「ほらほら、キョータくんもかわいいって思うでしょ?」
「あ、ああ……」
 華奢な身体を申し訳程度に隠す小さな水着。
 ご主人様やサーシャさんと違って、まだ幼さの残る体つきだから、なんか余計に背徳感がつのる。
「ほらほら、キョータくんも見とれてるわよ」
「そ、そんな……その……」
 顔を赤らめて身を小さくする姿がかわいらしい。
「その……すごく……」
 どういえばいいのか、言葉が出てこない。
 きれいと言うのか、かわいいというのか、セクシーとも言えそうだし、でもどう言っていいのかわからない。
「あらあら、二人して黙り込んじゃって。もっとこう、素直にかわいいとかきれいとか言っちゃえばいいのに」
 サーシャさんが茶々をいれてくる。
「…………」
「…………」
 おかげで、ますますこっちは意識して言葉が出なくなるわけで。
「む゛ぅ~……」
 なんか、後ろからご主人様の不満そうな唸り声が。
「あ、その、俺もそろそろ着替えてきますっ……」
 その場を逃げるように、草陰へと戻った。
「…………」
 袋から出てきたのは、普通のトランクスの水着。
 それはいいんだけど、今度はこっちの下半身が何かと問題なわけで。
「……二枚はいたほうがいいのかな……」
 とりあえず、トランクスだけだと勝手にナニが動いたときに隠しようがないわけだし。
 あんまり、下半身が勝手に動かれるとお互い気まずくなりそうだし。
 あの空間にいると、やっぱり、コレはコレで必要なのかもしれない。

 結局、革のビキニパンツを下にはいて、その上からトランクスをはきました。

 で、川辺に戻ると。
 ご主人様とサーシャさんはすこし深い方で泳いだり潜ったり。
 ミコトちゃんは……すこし浅いほうで、俺を待ってたみたい。
「あ、着替えてきたんですね」
「うん。最初、別の水着渡されたんだけど、ちょっとそれは……だったんで」
「それって……どんな水着だったんですか?」
「……黒のレザーパンツ」
「…………」
 言葉を失うミコトちゃん。まあ、そりゃそうだろう。
 けど、その後に続いた言葉は。
「それでもよかったのに」
「え゙……?」
「だって、私だって恥ずかしいのに」
 そう言って、ちょっと恥ずかしそうに目を背ける。
 そういえば、たしかにミコトちゃんの水着もかなり大胆。
「こういうの……あまり着たことがなくて」
「ミコトちゃん、ビキニ着るのは初めて?」
「……無理やり着せられたことはあるけど」
「……あ……」
 嫌なことを思い出させたみたい。
「……ごめん」
「…………」
「でも、それならサーシャさんひどいな。ちょっと行って文句言ってくる」
 そう言って、向こうで水遊びしているサーシャさんの方に向かおうとすると。

 くい。

 後から、ミコトちゃんが俺の手を掴んで止める。
「ミコトちゃん?」
「いいんです」
 そう言って、恥ずかしそうに微笑む。
「駄目だよ。言うことはちゃんと言わなきゃ」
「……だって」
 そう言って、俺の前に来る。
「この水着……似合ってますか?」
「え?」
「恥ずかしいけど……でも」
 そう言って、両手を後に回す。
「キョータさんになら、見てほしかったりするんです」
 頬を染めながら、そう言ってくる。
「…………」
「どう……ですか?」
「あ、ああ……」
 胸がどきどきする。
「すごく似合ってる。かわいいな」
「そう……ですか」
「それに、けっこうセクシーだし」
「…………」
 そういうと、恥ずかしそうにうつむく。
「嬉しい……けど、恥ずかしいですね」
 その仕草がすごくかわいい。
「そ、その……」
「なに?」
「そろそろ、川に入りませんか」
「そうだな」
 確かに、水に入らないと日差しがきつい。

 川の水は結構冷たくて気持ちいい。
 ご主人様やサーシャさんはもぐったり泳いだりして遊んでいた。
 ミコトちゃんは、腰ぐらいまで深さがあるところに入ってくると、ぱしゃぱしゃとこっちに水をかけてくる。
 こっちも、水をかけ返すと、かわいらしい笑顔でもっと水をかけ返してくる。
 ミコトちゃんの濡れた素肌に夏の日差しが輝いてる。
 いつの間にか、こんなに笑えるようになったんだなと思ったり。
 しばらく、水の掛け合いっこをしてから、もう少し深いところへ。
 そこまで行くと、サーシャさんとご主人様が待ってた。
「楽しそうじゃない」
「おかげさまで」
「ミコトちゃんのビキニ、結構かわいいでしょ」
「そうですね」
「けっこう買うとき悩んだのよ。セクシー系にするか可愛い系にするかとか」
「そんなにいろいろ種類があるんですか」
「最近は海水浴ブームだから。落ちもののカタログとかからいろいろ再現してるみたい」
「そうなんですか」
「ほんとは、もっと大胆なのもあったのよ」
 そう言って、サーシャさんがミコトちゃんにいたずらっぽい笑顔を向ける。
「お尻がヒモになってるのとか、布面積こんなのとか」
 親指と人差し指で小さな三角形を作って見せる。
「水に濡れると大事なとこが透けちゃうのとか」
「……それ、水着の意味ないです」
 俺が横から口を挟む。
「そういうの着せて喜ぶご主人様もいるの。あるいは、そういうのを着て、キョータくんみたいな純情くんに見せ付けて戸惑うのを楽しんだり」
「…………」
 やめてくださいと思っていたら。
「キョータくん、おねーさんのおっぱいが気になってるでしょ」
「!?」
 なにをいきなり。
「さっきから、妙に目をそらしたりそわそわしたり。意識してるのがわかっちゃうのよ」
「…………」
 いや、だって。
 そんな大胆な水着着てるほうが。
「あははっ、意識してる意識してる」
 そう言って、俺に近づいてきて。
「それ♪」
 いきなり、俺を両手で抱きしめてくる。
「!? な、なに……」
 戸惑って、そのまま身体が凍り付いてしまう。
 サーシャさんのおおきな胸が、水着越しに俺に密着してきて。
 ていうか、全身が密着してきて。
「な、なにを……」
 声が上ずってるのがわかる。
「んふふ~♪」
 嬉しそうに、サーシャさんは俺をぎゅーっと抱きしめてきて離さない。
 押し付けられてるおっぱいが気になって、なんか頭がくらくらしてくる。
「サーシャっ! キョータくんのぼせちゃってるじゃない!」
 ご主人様が叱ってくれて、ようやくおっぱいから解放された。
「…………」
 なんか、まだおっぱいの感触が残っていて頭の中がぐらぐらする。
「キョータくん」
 すこし怒ってるご主人様の声。
「大丈夫ですか?」
 こっちはミコトちゃんの声らしい。
「あははっ、ごめんねキョータくん」
 サーシャさんは……全く悪びれてない。
「すこし、向こうで寝させてあげたほうがいいかと思います」
「そーね。まったく、キョータくんったらドレイのくせに誰にでもベタベタするんだから」
 ミコトちゃんとご主人様がそう言ってる。
 ……俺から誘ったわけじゃないのに。

 すこし横になって頭を冷やす。
 向こうでは、三人が潜りっこして遊んでるみたい。
 ぼーっと寝ていると、フェイレンさんが近づいてきた。
「どうした、鼻血でも出たか?」
「いえ……鼻血はまだ」
「そうか。ま、もうしばらく遊んでたらいい。カマドと寝床の準備はもう少しかかる」
「……その、フェイレンさんは」
「何だ?」
「一人で晩御飯の準備してていいんですか?」
「気にするな。俺はどうも修行病でな、身体動かして汗かいてないと落ち着かない」
「……そういうものですか」
「昔はそこまででもなかったが、ミコトが来てからはな。あいつを守らなきゃならんと思うようになると、なんかしょっちゅう身体動かしてないと落ち着かん」
「そうなんですか」
「ま、そういうことだ。だから気にしないで遊んでてくれ」
「……はい」
 本当に、よくミコトちゃんはあの人に拾ってもらえたものだと思う。

 しばらくすると、ご主人様が俺のところにやってきた。
「キョータくんキョータくん、そろそろ元気出た?」
「ああ、もう動ける……」
「じゃあ、ウナギ取りに行こっ」
「ウナギ?」
「ちょっと距離あるんだけど、あっちの湿地に大きなウナギがたくさんいるんだよ」
「ウナギ……かぁ」
「最近、かばやき……ってのが流行ってるらしいんだ。サーシャが教えてくれたの」
「蒲焼?」
「おいしいらしいんだよ」
「ウナギの蒲焼か……」
 たしかに、こっちに来てから食べたことがない。
「行きますか」
「うん」
 ご主人様が、俺の手をとって起こしてくれる。
「その格好で行くんですか?」
 いまにもこぼれそうな小さな水着を着ただけの姿のご主人様に尋ねる。
「だって、水の中に入るもん。キョータくんもそのかっこでいいよ」
「……ま、いいですかね」

 いつのまに作っていたのか、ご主人様が紐の先に浮きの付いた竹筒をいっぱい持ってきた。
「これをあちこちに仕掛けておいて、一昼夜置いてから引き上げたらいいんだって」
「へぇ……」
 本当にそれでいいのか?
 スーパーで調理済みのウナギしか見たことがないからわからない。
 とりあえず、ご主人様の後についていくことにした。

 ご主人様が来たのは、樹木が生い茂る下の、少し薄暗い沼地だった。
 頭上を覆う樹から、緑色の蔓が何本も垂れ下がっている。
 水面は静まり返って、人の気配もない静かな場所。

「どのあたりに置けばいいんだろ」
 ……ご主人様もウナギの採り方はよくわかってなかったらしい。
「とりあえず、浅いところから深いところまで手当たり次第にばら撒けばいいんじゃないですか? これだけ竹筒あるんだし」
 俺も無責任なことを言う。
「……そうだね。初めてなんだし、それでいっか」
 簡単に頷くご主人様。
 ……いい加減だよな、俺ら……

 とりあえず、浅地に何本か、適当に置く。
 それから、すこし深いところにばら撒いて。
「もう少し深いところにも入れたほうがいいかな」
「そうですね」
 そんな話をしながら、俺が浅瀬の方、ご主人様がすこし深いほうへと移動しながら竹筒を置いていく。
 ……最初のうちは問題なかったんだけど。
 しばらくするとご主人様の動きが少し遅れてきた。
「んっ……しょ」
「どうしたんですか?」
「なんか……泥に足がとられて、動きづらいよぉ」
「その辺で切り上げますか?」
「ん~、もう少し奥まで」
 そういって、無理に深いところまで行こうとする。
 あまり無理しなくてもと思ったけど、別に止める理由もなくて。
 でも、すこしして本当に問題が起きた。
「んっ……ん……」
 ご主人様が向こうの方で動きを止めてる。
「どうしたんですか?」
「……ごめん、足が泥にとられちゃって……」
 いつの間にか、胸から下が水につかるぐらい深いところにいた。
「え、えーっと……ちょっと待ってくださいね、じゃあ……」
 俺も行こうとするけど、下手すると一緒に足とられるかもしれないわけで。
「なにか、樹の切れ端でもない?」
「ちょっと探してきます」
 そう言って、近くで浮きになりそうなものを探してると……
「きゃあっ!」
 ご主人様の悲鳴が聞こえた。
「ご主人様!?」
 あわてて、声の方を向く。
 ご主人様が、両手をばたばたさせてもがいていた。
「どうしたんですか?」
「う、うなぎ……うなぎぃぃ!!」
「ウナギ?」
 よくわからない悲鳴。
 足が取られない程度の場所まで近づく。
 すると。

 ご主人様の周りに、何十匹ものウナギが集まっていた。

 後から聞いたんだけど、ウナギって肉食性らしい。
 で、ウナギにもいろんなのがいるらしくて……
 ここのウナギは、得物が沼に落ちると集団で襲い掛かって、まず体力を消耗させて溺れさせてから、その死肉を食べるらしい。
 ……怖い話だけど。
 それで、何十匹ものウナギがご主人様によってたかって襲い掛かってた。
「やだっ! やだ、やだっ、助けてキョータくんっ!!」
 両脚を泥に取られて逃げられないご主人様に、何十匹のウナギが前から後から絡みつき、襲い掛かってくる。
 ご主人様の身体を隠すのは、ほんの小さな水着だけ。
 露出した肌をウナギに責められるたびに、悲鳴を上げて身悶えている。
「やだ、やだ、こんなのいやあっ!」
 両手だけでは、とても追い払えない量のうなぎがご主人様を弄ぶ。
 水中だと腕の動きも鈍る。
 それをいいことに、ウナギはにゅるにゅるとご主人様の腕をかいくぐり、全身に絡みつく。
「いやぁ! ダメ、そんなのやだあっ!」
 わき腹とかおへそとか、くすぐったいところを責められ、ご主人様の手が縮んだところで、別のウナギが布キレ一枚で隠された下半身に襲い掛かる。
 あわてて手でそれを払いのけようとすると、今度は胸。
 谷間にもぐりこんで暴れるウナギが、そのまま水着の中にもぐりこもうとする。
 それを取ろうとすると、背中やお尻にまた別のウナギが。
 どうすることもできずに、ただされるがままに弄ばれ続けるご主人様。
 ほんの数分の間に、ご主人様の頬は上気し、悲鳴に甘いものが混じっていた。
「やだ……やだぁ……もうやだよぉ……」
 目の前で繰り広げられる、ご主人様とウナギの痴態に目を奪われていたら、はっと気付いた。
 暴れているうちに、ご主人様の足がもっと深くにもぐりこみ、ほとんど肩から上だけしか水面に出ていない。
「ご主人様っ!」
「……キョータくん……?」
「上から伸びてる蔓をつかんでください! 絶対に離しちゃダメですよ!」
「……つる……?」
「そのままじゃ、首まで沈んじゃいます!」
「あ……」
 ようやく、自分の置かれている状況に気付いたらしい。
 一番近く似合った蔓に手を伸ばし、つかむ。
 けど、そのせいで抵抗の術を一つ失ったご主人様はより激しいウナギの責めを全身に受けてしまう。
「あっ……やだ、そこダメ……」
 たまらず、蔓から手を離してウナギを払いのけようとするのを見て、叫ぶ。
「離しちゃダメです! 両手を蔓に絡みつかせて、絶対に沈まないようにしてください!」
「だ、だって……」
「どんな目に合っても我慢してください! とにかく溺れないようにしないと死んじゃいます!」
 死ぬ、と言ってやっと気付いてもらえたのか、両手で蔓にしがみつくご主人様。
 無防備な裸身に、ウナギが一方的に襲いかかる。
「あっ! いや、いやあああっ!」
 身体をよじってウナギの責め苦に耐えるご主人様。
 本音を言えば、もう少し見ていたい気もするけど、今はそれどころじゃない。
「フェイレンさんとサーシャさん連れてきますから! それまで絶対に蔓を離さないでくださいね!」
「う、うん……やぁっ! そこやだあっ!」
 無抵抗な姿で一方的にいたぶられるご主人様に後ろ髪を引かれる思いだったけど、俺はとにかくもといた場所へと走った。

「ああぁっ! あっ、いや、やめてよぉっ!」
 ひとり残されたファリィにとって、そこからの時間は永遠のようにも思えた。
 両脚を泥に取られ、両手は溺れないように蔓にしがみついている。
 抵抗の術を持たないまま、ひたすらウナギたちの責めに耐え続けた。
 ウナギたちはからみつき、獲物の体力を奪い取ろうとよってたかって責め立てる。
 小さな口にはもとより殺傷力はないが、口の先端でかるくつつかれるだけでも、無抵抗の身体に甘い刺激を与えるには十分だった。
 そして、身もだえるたびに体力を消耗してゆく。
 太ももの内側や脇の下を責められると、まるで全身の力が抜けそうな感覚に襲われた。
 しがみつく力まで失いそうになり、するりと沼に落ちてしまいそうになる。
 あわてて我に返ると、ファリィは残された力で自分の手首に蔦をからみつけ、ほどけないようにした。
 あとは、ただ耐えるだけだった。
 胸も、おへそも、下腹部も、今はすべてがウナギたちの玩具になり、ファリィに絶え間ない刺激を与え続ける。
「はぁ……はぁん……ん……」
 息が荒くなり、頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
 そうしているうちに、ファリィの裸体を隠していた小さな水着の紐が解けてしまう。
「あ……」
 ファリィの口から、小さな声が漏れた。
 形のいい胸のふくらみがあらわになる。
 その先端に、直接ウナギたちが襲いかかってきた。
「あん……そこ……だめぇ……」
 むき出しの乳房にウナギがからみつき、桃色の乳首にはたちまち数匹のウナギが襲い掛かり、口先でつついてくる。
 そのたびに、びくんびくんと身体がはね、無駄に体力を消耗する。
 やがて、下の水着も解け、泥に落ちた。
「あっ……やだ……」
 むき出しの下半身。そこにウナギが襲いかかる。
 脚を閉じたくても、膝まで泥に埋もれた脚は閉じることさえ出来ない。
 それをいいことに、ウナギは下半身の茂みを、まるで藻のなかの虫でも探すようにまさぐり、そして潜り込んでくる。
「やだぁ……やだ……」
 異物の侵入する不快感が襲う。
 それでも、どうすることもできないまま、やがて不快感は挿入の快感となり、無抵抗なファリィを苛む。
 そして、前後の穴の中で暴れまわるウナギの快感に、理性が少しづつ削られてゆく。
「だめ……こんなの……だめ……あっ、ああんっ……」
 どうすることもできないまま、ただ快感だけが高まってゆく。
「……あっ……あ……あぁんっ……」
 やがて、声を上げる余力さえ失ったファリィが、数回全身を痙攣させてから果てた。
 が、絶頂を迎えたからと言って、ウナギの責めがやむはずもなかった。
 ぐったりとして抵抗しなくなったファリィを、ウナギたちはさらに追い詰め、責め立てる。
 一度絶頂を迎えた身体は、責めに対して敏感になっていた。
 声も出ないほどに消耗しきった身体を、それでも責められ続けるファリィ。
「きょーたくん……たすけて……」
 小さな声で、そう呼ぶのが精一杯だった。

 そのころ、ようやく。

「じつは、向こうの沼にウナギを取りにいったんですが……」
「あの沼かよ!?」
 フェイレンさんが驚く。
「あそこ、俺だって行かないぞ!」
「知らなかったんです」
「……あそこ、何人も溺死者出して誰も寄り付かなくなった底なし沼だからな……とりあえず、ロープと何か浮きになるもの……ああ、それから」
 フェイレンさんとサーシャさんがあわただしく準備する。
「あの、私は……」
 ミコトちゃんが尋ねてくる。
「……そうだな、一人でいたら危ないし、一緒に来てくれるか?」
「はい」
 みんなと一緒に、沼地へと戻る。
 そのころには、日も暮れかかっていた。
「あそこ……」
 と、指差したとき、俺はご主人様の様子がおかしいことに気付いた。
 ぴくりとも動かず、気を失ったようにぐったりとしている。
 両手に蔓を絡み付けて、落ちないようにしているけど、意識はなくなっているようにも見えた。
「……すこしまずいかな」
 フェイレンさんがいう。
「とりあえず、あのウナギをなんとかしないと」
「あの蔓を上から引っ張れば、ファリィを助けられるかな」
「そうだな。ちょっと登ってくれるか?」
「うん」
 フェイレンさんとサーシャさんがそう話すと、それぞれが分かれて行動を取ってゆく。
 サーシャさんは木の上に登り、蔓に向かって樹の上を器用に進んでいく。……やっぱりネコだな。
 で、フェイレンさんは……
 近くに生えていた葦や、近くにあった枝切れ、あと持ってきた板切れとかを縄で急いで編んで、即席のかんじきをつくる。
 そうして、ご主人様の方へと近づいていく。
 ウナギがフェイレンさんの方にも近づいてくるが……
 フェイレンさんは、振り払おうともせずに右手を高く上げると。
「はぁっ!」
 気合もろとも、掌を水面にぶつけた。
 すると、ものすごく細かな波が同心円になって広がってゆく。
 そして、ぷかりとウナギがうきあがってきた。
「すげ……」
 おもわず、声をあげる。
「発勁の応用だ。このくらい、落ち着いてたらファリィもできるんだがな。たぶん頭が混乱してそれどころじゃなかったんだろう」
 こともなげにそういうフェイレンさん。
 やがて、ご主人様がいるところまで来ると。
「この蔓かな?」
 樹上から、サーシャさんの声がする。
「ああ、それだ。じゃあ一緒に引き上げるぞ!」
「うん。せーのっ……」
 フェイレンさんとサーシャさんが、力を合わせてご主人様を助け出す。
 それから、解けて沼に沈んでいたらしいご主人様の青い水着を取り出すと、フェイレンさんはご主人様を背負って浅瀬に戻ってきた。
「まさかこのまま裸にしとくわけにもいかないしな、二人で着せてやってくれ」
「は、はぁ……」
 気を失ったままの裸のご主人様に、俺とミコトちゃんで水着を着せなおす。その間に、フェイレンさんがもう一度沼地に向かう。
「キョータさん……」
「あ、ああ……」
 正直、ちょっと恥ずかしい。
 水着を着せて紐を結びなおしたころ、
「よし、これくらいいれば十分だろう」
 フェイレンさんが、胴着を袋代わりにしてうなぎを数匹捕まえて戻ってきた。
「蒲焼の話を聞いてからというもの、ファリィの奴ずっと食べたい食べたい言ってたからな。とりあえずこれくらいいたらいいだろ」
「……ファリィ、食いしんぼだもんね」
「ま、これに懲りて少しは一人で動かないようになってくれたらいいんだが」
 まるで、いたずら好きの子供をみるような口調でフェイレンさんとサーシャさんが話していた。
 そうしてるうちに。
「あ……」
 ご主人様が、うっすらと目を開ける。
「大丈夫ですか?」
「あ……きょーたくん……」
 ご主人様が、俺に気付く。
「キョータくんが俺たちに知らせてくれたんだぞ。感謝しろよ」
 フェイレンさんが言う。
「そうそう。キョータくん大活躍だったんだから」
 大活躍……ってほどのこともしてないけど。
「……きょーたくん……」
 なんか、俺を見る目が涙ぐんでるような。
「うっ……うわあああああんっ!!」
 いきなり、おれに抱きついてきて泣き出すご主人様。
「ちょっ……ご主人様?」
「怖かったよぉ……怖かったよきょーたくん……うっ、えぐっ……」
「その、もう大丈夫ですからね、ご主人様」
「うん……ごめんね、きょーたくん……」

 その夜。
 サーシャさんが器用にウナギを裁くと、特性のタレで蒲焼を作ってくれた。
「本場は狐耳国なんだけどね。最近ではネコの国でもこの時期に食べるの。でも獅子国のウナギはあまり評判よくないんだけどね」
「どうしてなんですか?」
「……いろいろあってな。今じゃ獅子国の毒ウナギとか言われて散々な評判だ」
 フェイレンさんが沈んだ声で言う。
「毒ウナギ……」
 目の前の蒲焼を見て箸が止まる。
「まあ、だが、あそこのウナギに関しては品質は問題ない。何しろ人がこないんだからな」
「……おいしい」
 ミコトちゃんが飯盒で炊いたご飯。そのご飯との組み合わせが最高においしい。
「大丈夫ですか、ご主人様」
「うん、もう大丈夫」
「とにかく、今後は一人で行動するなよ」
 フェレインさんが言う。
「……うん」
 すこししょんぼりしてるご主人様。
「で、いつまで合宿するんですか?」
「いちおう、あと何日かはいてもいいだろ。表向きは修行ってことになってるからな」
「表向き……ですか」
「この時期にクソ真面目に修行してるやつの方が少ないだろ。この時期に修行だ合宿だと称してあちこち行くのは暗黙の了解だ」
「そうなんですか?」
 少し驚く。
「ま、大きな声では言えないがな」
「でも、楽しいよね」
「来年は花火でも見に行くか?」
「花火?」
「狐耳国の花火大会はなかなか壮観らしいからな。東方の武術を学ぶとでも言っとけばいい」
「花火ですか……」
「カモシカの国のフロミアって街じゃもうすぐ“盆踊り”って祭があるらしい。行きたい場所はいろいろあってな」
 そう言って、フェイレンさんが空を見上げる。
「人生、どうせなら楽しまなきゃ損だぜ」
 そう言って笑う。
「そうだよ。じんせー楽しまなきゃ損」
 ご主人様もそう言ってくる。
「……そうかも」
 世の中、確かにいろいろあるけど。
 どうせなら、楽しんだほうがいいに決まってる

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