猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

夕焼け色の贄 第二話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

夕焼け色の贄 第二話




 僕と姉さんは激しい雨の音を聞きながらフィオ君の話を聞いた。
 薄暗い部屋の中、僕たちはこの世界での僕たちの立場を知ることになる。
 僕たち、別の世界から「落ちて」きたヒトは魔法が存在するこの世界じゃなんの力も持っておらず、
 貴族とか上流階級の人たちのペット…、夜の相手をさせられるだけの存在。

 そして元の世界に戻る方法は…ない。



夕焼け色の贄 第二話 「茜色の斜光」



「ぼくたちサルはずっと昔、ものごころついたときから自分たちの肉体に鍛錬を架して修行のために生きてきた…この先のもっと霧深い山奥でね」
「修行のため?」
「そう、ぼくたちは生まれた山に生えているたった一本の霊木をご神体として祭ってきた…冠婚葬祭?
そんな儀式の全てをその霊木のもとでね。修業はその霊木のために」
 フィオ君が言葉を区切るたび雨の音が聞こえる。
 僕たちがここに落ちてきたときもすごい雨だった、この雨があの大きな河を作ったんだろうか。
「霊木は強大な魔力を持つ。ぼくたちが祭ってきた霊木はその魔力ゆえに周りの魔素を吸いつくしてしまう」
「魔素って?」
「魔法の源の魔力のさらに源、きみたちヒトの世界にはない成分。これを使って魔法は行われる…あとでやって見せてあげるよ」
魔法と言うと、本や漫画やファンタジー映画のようなものなんだろうか。
 姉さんが嬉しそうだ、体育座りのままちょっと左右に揺れている。
 昔から魔法とかファンタジーとかこういう話好きだったもんね、姉さん。
「魔素を吸いつくす前に木は寿命を迎える、その時に魔力の結晶として残るのが…きみたちがおいしく食べてしまったマーロウなんだ」
濃いオレンジ色の木の実、思い出すだけでもあのいい香りがふんわり漂う。
「マーロウには種と呼べるものがほとんどない。多分種族として滅びるはずだった木なんだろうね、ご神木が最後の一本だったんだ。
…ぼくたちサルのご先祖様はその神木の種になることに決めた、マーロウをその身に宿してご神木のために身を捧げる。
マーロウの魔力媒体となり、その魔力に耐えるために修業を積む、そして一族の中から選ばれた神子だけがマーロウに口をつけることを許されるんだ」
 すっとフィオ君の瞳が細くなる、僕たちを見ているんだけどどこか違うものを見ているようだ。
 ぴんとした空気が僕の方にまで伝わってきて、なんとなく息が苦しい。
 大勢の人の望みを背負うってどんな気持ちなんだろう。
「…フィオ様はその神子だ、私たちサルの中で最も尊い御方、ヒトどもが到底越権出来るような…」
「だからそれはいいってヤオシー、神子とはいえ遊びたいざかりなんだからちょっとぐらい自由にさせてよ」
 もー、と口を尖らせてヤオシーさんに抗議するフィオ君。
 ついさっきのフィオ君と全然違う表情。
 ……大勢の人の望みを背負うってどんな気持ちなんだろう、きっと大変なんだろうな。

・・・・ ・・・・ ・・・・

「さて、ここからが本題だよ。きみたちがマーロウを食べてしまった今、マーロウの魔力は君たちに宿ってる」
 ずびし、と指をさされたのでなんとなくお腹をさすってみる。
 別に普段と変わりはない、ただちょっとお腹がすいてるような気はするけど。
「しかも完全に熟す前のマーロウを、ね。なんでヒトが食べれたのかはわかんないけど…」
「…本当なら今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい所だがマーロウの魔力がお前たちにある以上、私たちサルは手出しできない。
ヒトども、今はお前たちがマーロウそのものなんだ」
 悔しそうなヤオシーさんの声、張り詰めた空気が僕と姉さんを包む。
 事情はわかった、わかったけれども…。
「僕たちは何をすればいいの…?」
「さっきの話の通りだと、私たち二人が地面に埋められるってことですか?」
「いや…マーロウの魔力は練られていない。木が発芽できるように魔力を練らなきゃいけない…きみたちをどうするか、か」
 ふらんとフィオ君のしっぽが揺れた、すると何かを思いついたようにぴんと上向きに尻尾が立った。
「そうだ、カカルヒの小父に聞いてみよう」
「そうですね…確かにカカルヒ様なら何か分かるかも知れない…」
 カカルヒ、というまた聞きなれない名前。
 ヤオシーさんが様付けするってことはきっと偉い人なんだろう。
「さっき、きみたちをマーケットに連れていくって言ってたよね、カカルヒはそのマーケットにいるんだ。ヒトに詳しいからきっとなにか知ってると思うよ」
 よかったよかったと少し安心したようにフィオ君が背伸びをする。

・・・・ ・・・・ ・・・・

「じゃ、今日はこの辺で…ぼくは昼寝でもしようかな」
「あ、フィオ様。このヒトオス、少々貸して頂けないでしょうか」
 ぐい、とヤオシーさんが僕の頭を引っ張る。
 一緒に髪の毛も引っ張られて痛い。
 …貸す?え、貸すってどういう…
「いいよ。なに、ヤオシーたまってるの?」
「!」
 にやつくフィオ君からふいと視線をそらすヤオシーさん。
 たまってる、という単語を聞いて脳裏に浮かんだのはさっきの「ペット」という単語とその意味。
「ほら、ヨネ。外出よう」
「え?え?」
 フィオ君がぐいっと姉さんの手を引いてベッドから立ち上がらせる、そうすると姉さんがいなくなった分のスペースが空いた。
「!?」
 急に視点が天井に切り替わった、そしてヤオシーさんの顔が見えたかと思うと長くてサラサラの髪が顔に降りかかる。
 よくわからないけど、何かすごくいい香りで頭の奥の方をかき回されるような感覚…。
 その匂いにぼうっとしているとヤオシーさんに着ていた上着をあっという間に鎖骨の辺りまで捲りあげられて、おなかの上に圧し掛かられる。
「!?米次!」
「ね、姉さん…」
 ヤオシーさんの髪でうまく前が見えないけれど姉さんの慌てた声が聞こえた。
「ほら、弟が襲われるとこ見たいの?」
「え、え?でも、だって米次が…」
「今のヤオシーに下手に手出したら何されるかわかんないからね、さ早く」
 何回かの押し問答の後、ばたんと扉が閉められた。
 扉の向こうから米次、と必死に僕を呼ぶ姉さんの声とそれをなだめるのんびりとしたフィオ君の声が何度か聞こえた。

・・・・ ・・・・ ・・・・

 そしてそれも聞こえなくなると、僕の頬にひやりとした手が添えられる。
「ヒト…か」
 すす、と頬、首筋、鎖骨、胸、とヤオシーさんの長い指が僕の体をなぞる。
「ひ…」
 今まで感じたことのない感覚に背中がぞくりとして変な声が出てしまった。
 心臓がどくどくいってて体が熱い、変だ、こういうときはこうなるって頭で理解してても体が付いていかない。
 ヤオシーさんの指がおなかの辺りまできたところで僕の下半身が急に熱くなった。
「ん」
 ヤオシーさんの尻尾の付け根にちょうど僕のアレがあたり、綺麗な色をした薄い唇から上ずった声が漏れる。
 ぴくんとふさふさの耳が動いて、髪の毛がまたひと束僕の顔に落ちてきた。
「早い反応、流石年中発情してるだけはある…」
 指がお腹を通り越してズボンに手がかかる頃にはそこは熱く膨れていて、ヤオシーさんのふかふかとした尻尾を押し上げていた。
「は、発情って…」
「そう聞いた。ヒトがペットとして最適な理由の一つだ」
 指先で布越しに先の方をするすると円を描くようにこすられる。
 いつの間にか着替えさせられていた白い服だったから、先走って出てきたぬるぬるとした液体…いわゆるカウパーがよく目立つシミを作っている。
「や、やめて下さい!」
 必死に抵抗するけど、ヤオシーさんはその細い体からは信じられないような力で僕の体をベッドに押し返す。
 結構強く押しつけられてくらくらする頭で、僕は“ヒト”と呼ばれる所以を思った。

「いちいちわめくな、さて…」
 冷たい声で一気に意識が引き戻される。
 ズボンをずり下げられて、下半身が雨の湿気でひんやりとした空気に触れた。
 ゆったりとした下着から僕のモノがおずおずと頭をもたげている。
 それを根元の方からやわやわと握られてゆっくり、ゆっくりなであげられる。
「ひ…あ!」
 腰とお腹の間がきゅんと痛いような、むずがゆいような感じになる。
 この感じは、僕は覚えたてで…まだあんまり慣れてない。
「く、メスみたいな声だな」
「だっ…て、なんか…」
 心臓がばくばくとやたら大きな音を立てて、頭の血液が全部下の方に流れていく。
 ぼやけた視界のはしでヤオシーさんの赤い舌が僕のを包みこむのが見える。
 反射的に僕は姉さんを心の中で呼んだ。
 その瞬間、背中に走ったあの変な感じ…快感が全身に広がる。
「あ、あぁ…!や、やめ、やめて下さっ…!ああ!」
 にゅるんと殆どがヤオシーさんの口の中におさまってしまう。
 ずるずるとねばっこい音と粘液とが零れ落ちて、腰のあたりがもうべちゃべちゃになっている。
 舌とのどでぐちゃぐちゃにしながら、しっかり根元の方をゆるく握ってくれるのが…あぁ、これは、そう、気持ちいいんだ。
 でもそのぶん、すごく、恥ずかしい。
 こんな恥ずかしいことをされながら僕は姉さんをほんの少しでも考えてしまった。
 それがなんか、悲しくて悔しくて、あとはもうこの気持ちよさに飲まれるだけになる。
「ぁあのっ!で、ちゃ…出ちゃい、ますから…、ああぁ!」
 そう言ってなんとかヤオシーさんの頭に手をかけて引き剥がそうとする僕を、めんどくさそうに一瞥して唇を離す。
 それとほぼ同時にいつもより少なめの精液が小さな音を立てて溢れる。
 ヤオシーさんは指に流れたそれをまじまじと眺めてからひとすくい舌でなめとった。
「!?」

・・・・ ・・・・ ・・・・

 薄暗い廊下を歩く。
 辺りは360度密林だというのに、この建物は随分近代的だ。
 私が先ほどまで居た部屋はそれなりに窓や床などの装飾が、この国らしさを漂わせていたようにも思うけど。
 私の手を引いてすたすたと歩くフィオ君、ふさふさと尻尾がむき出しのすねに当たってこそばゆい。
「あ、あの、放して下さい」
 遠慮なく廊下の先に進むフィオ君の手を引っ張って歩みを止める。
 そうだ、こうしちゃいられないんだ弟が大変な目にあってるって言うのに。
「…だから」
 呆れたように溜息を一つついてフィオ君は振り向いて言った。
「君が今行ったって意味ないってば、もう」
「でも、弟が…!」
 なおも食い下がらない私に、どうしてわからないのかとでも言いたそうな顔をしてフィオ君が首をかしげる。
 こうしてる今もかわいい弟の貞操が危機に瀕してるというのに、この世界の人たちのソッチ方面の観念はとてもじゃないけど私には考えられない。
「…き、興味無いって言ったじゃないですか」
「ぼくはね」
 混乱する頭でやっと振り絞った一言に、彼はしれっと返す。
人が襲われてるって言うのに、自分には関係ないとでも言いたそうな物言いだ。
「…じゃあ私が止めてきます」
「待ってってば」
 もと来た道への一歩を踏み出した私の前に、すっとフィオ君が回り込む。
「今君が行ったらそれこそ、ツグはどうなるかわかんないよ?
ほら、ヤオシーはあれ…頭に血が昇ったらどうなるかわかんないやつだから」
「でも…きっと米次、困ってる。もしかしたら泣いてるかもしれない。気が 弱くて、流され安くて、それにまだ13歳なのに…」
「ぼくとおんなじじゃん。もう交配できる年齢なのにどうしてそんな世話焼くのさ」
「…こう、はい」
「こ・う・は・い、繁殖、子づくりのこと」
 面倒くさそうに眉根を寄せるフィオ君。
 本当に、私たちをペットぐらいにしか思っていないような口ぶりに戸惑う。
「確かに、米次は段々大人に近づいていってる年ですけど…」
「けど?」
「…でも、やっぱり私の大事な弟です」

 フィオ君が眉間のしわを解く。
 それから、なぜか寂しそうな顔をして私から目をそらした。
「大事、か」
 尻尾がぱしんと小さな音を立てて床に落とされる。
 なにか考えてるようなフィオ君の表情に伴って尻尾も揺れた。
「…わかったよ、ぼくからなんとか言ってみよう」
「!」
「途中までいたしちゃってるかもだけど。ま、何もしないよりはいいんでしょ?」
「あ、ありがとうございます!」
 廊下を戻る、同じような扉を二つ三つ通り過ぎて先ほどの部屋の扉の前に来た。
短く深呼吸してドアノブに手をかける。
「米次!」「フィオ様!」
 私が勢い良く押したのと同時に中から引いて飛び出してきたヤオシーさん。
 タイミングが同じなのだから、当然勢いよくぶつかって跳ね飛ばされる。
「な、何をするこのヒトメス…!」
 すんでの所でフィオ君に支えられた私と違い、軽やかに体制を立て直したヤオシーさんはすぐさまこちらの胸倉を掴みにかかる。
 最初には会った時もそうだった、この人は胸倉を掴むのが癖なのだろうか。
「まあまあ、落ち付いてヤオシー。何があったの?」
「あ、フィオ様……実はですね、そこのヒトオスの精液から純度の高い魔力が含まれていることを確認しました」
 すっとヤオシーさんが差し出した指には、白くてねばっこい…。
「よ、米次!」
 私はあわてて部屋の中に入る。
 ベッドの上にはすごく疲れたようにまどろんでいる米次がいた。
「姉さん…」
 米次は汗だくで私を見ると、安心したような顔をしてふっと目を閉じた。
 やがて荒い息がおさまり、静かな呼吸が聞こえてくる。
 いったい、どこまでされたんだろう…けがとかはしてないみたいだけど。
 腹が立つような、安心したような、複雑な気持ちで私は戸口に立つ二人を見た。
 フィオ君がヤオシーさんの手についたあれを顔をしかめながらもちょっと舐める。
 そしてすぐに何かに気がついたように、眼を輝かせてこちらを見た。
「なんとか、なるかもしれない…」
 フィオ君の小さな呟きは狭い部屋によく聞こえたように思う。

 いつの間にか雨は止んでいた。
 木でできた窓から夕日が差し込んで薄暗かった部屋を茜色に照らす。
 この世界でも、夕日は同じ色で照らしてくれるようだ。
 それはとても当たり前で安心するようなことだけれど、同じように夜も来るということ。
 夕日はあっという間に落ちて、辺りは真っ暗になり…雨は、またすぐにこの国を覆い尽くしていく。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー