猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

太陽と月と星08

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太陽と月と星がある 第八話

 

「ねぇコレみてみて!」
 御主人様曰く居候二号のスナネズミ幼女、チェルが抱えていたのは―――なんだろう。
 チビトトロを彩色してふさふさ尻尾をつけて一つ目にしたような怪生命体。
 昔、家庭科の時間に作ったぬいぐるみを思い出します。失敗的な意味で。
 トドメに形容し難い音声発してます。異界の神様召還系の。
 
 
 どうせ一つ目なら唐傘お化けとか一つ目小僧の方が。と言いたいのを堪え笑顔を作ってみる。
  
 うっかり馴染んでいましたが、ここは異世界です。
 不思議生物の闊歩するファンタジーです。
 そりゃ見たことのない生命体が千や万はいるのは当然です。
 
「それは、煮込み?焼き?刺し?それとも漬け?」
 チェルは質問の意味が分からなかったのか、きょとんとした顔になりました。
「寄生虫とか怖いから、火は通すべきでしょうね。二人の意見も聞いてみましょうか」
 きびすを返そうとしたところで後頭部に何か当たって私は思わず蹲りました。痛い。
「チェル、ソレ、元の場所に戻して来い」
「えー?なんで?飼っちゃダメ?」
 食べ物じゃないんだ。アレ。てっきり今日のおかずにする分かと思ったのに。
 というか、前振りもなく後頭部チョップはひどいです。御主人様。
「ダメ」
「雨にぬれてふるえてたんだよ?」
「今日は晴れてるだろうが」
 あ、でもそもそもアレを捌く包丁は無かった気が。
刃毀れしたら困るし、頼むとしたら肉屋さんかな?
「がっくんのケチーたんしょー!」
「どこで覚えたそんな言葉」
 押し問答をする二人をよそに、手にふさふさした感触。
「キヨカ、大丈夫?」
 しゃがみこんでいる私にフンフンと心配そうに鼻を寄せてくる強面わんこ。
 御主人様曰く居候一号のサフです。
 真剣な目とピンクの鼻とふさふさした毛とピンとたった耳を見ると手がむずむずします。
 じっと見ていたのを何か勘違いしたのか、心配そうな表情のままサフが私に手を貸してくれました。
 立ち上がるとイヌとはいえ子供なので私の胸くらいまでしか身長のない彼は、「でっかいふさふさわんこ」そのもので
 思わずぎゅっとしたくなる様な愛らしさです。
 サフは真剣そうな表情になり、ピンクの口を開いて一言。
「キヨカ、大きくなったら結婚しようね!」
「オマエは骨でも齧ってろ」
 間髪居れずに御主人様の尻尾がサフの頭を直撃。
 予想外にいい音が室内に響き渡り、驚いた怪生物がチェルの腕から飛び出しました。
 ちなみにサフは微動だにしません。
 …丈夫過ぎるだろ常識的に考えて。
 
 それはともかく、奇声を発しながら部屋中を飛び回る怪生物。
 壁に当たっても平然とバウンドし、ゴムボールのように別方向へ飛び回ります。
 それを大はしゃぎで追いかけるチェルとサフ。
 怪生物は二人の手を避け、花瓶に激突しましたが、そのまま何事も無かったように跳ね回ります。
 花瓶は破壊されました。
 鼻先でバウンドされ、興奮したサフが思いっきりこけ、流し場に凄まじい破砕音が響き渡りました。
 ああ、最後の陶器製食器が…。
 明日からは全部木製食器です。
 窓際で必殺の一撃をかわされ、意外と鋭いチェルの爪が換えたばかりの春物カーテンを引き裂きます。
 御主人様は無言でその光景をみつめています。
 春らしく爽やかな印象を醸しつつ、意外と厚手で暖房効果ばっちりの素材を選んだのは御主人様でしたね。
 
 怒りのオーラとともに普段の三割くらい体が大きく見えるのは気のせいでしょう。きっと。
 
「さて、じゃあ私は晩御飯のおかずを買いに行きますね」
 後ずさりして付け耳を手に取り、そのままダッシュ。
 
 同時に足元を怪生命がすり抜けて行き―――背後から物凄い音が聞こえたような気がしましたが、きっと気のせい。
  

 晩御飯はエセブッフー肉大セールというのがやっていたので焼肉にしました。
 美味しかったです。

 
 

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