猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

首蜻蛉 三話

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首蜻蛉 三話


トンボは劇的な速度で魔法が使える…らしいです。(僕はトンボしか見たことがないので比べかねますが)
ふつう魔法を使うには、大気中の魔素を体内で分解して解毒しないと扱えず、解毒前に無理矢理扱うと致命的な中毒症状を示します。
そのため普通は「貯蓄を超えないよう加減して」…ゲーム風に言うならば最大MPを超えた魔法は万病の元なので避けます。
これはトンボといえど受ける制約です。
ただし、この土地の魔素は特殊で「トンボに限り、ほぼ加工済み」という状態で自然にあります。
もっとも、トンボに近い虫ならば「1000倍」くらい行くこともあります。(その中で飛びぬけてトンボに適正があるのです)
それゆえ魔法が多少苦手でも、ここに住めば扱えるようになる、という場合があるそうです。
よって、通常の魔法使いが「おっと、今日のMPは999かもー!?」というときに
トンボは「私の魔法力は53万です」になります。正確には自然回復力がネコの53万倍ですね。
もっとも個体差が激しく、ハチのリートさんなんか最初は煙も出なかったのにトンボに近いほどの魔力を得ました。
逆に欠点は、トンボはこの特殊な環境に非常に強く依存していることです。「トンボ魔素」の届かない空域では、魔力で造った羽の維持で精一杯。
魔法を使おうものなら、あまりにも高出力慣れしているので一瞬で枯渇します。
そして、加減した状態での戦闘知識があまりにも未発達です。センスないので負けちゃいます。
それゆえ、トンボ一族この地域を出るつもりはないそうです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~けーぶの日記より抜粋~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


実は高いところって怖いんですよね。原因は主にご主人様にあります。
まったく手加減しない。ご主人様の速度と高度がです。耳元の音が怖くて目が開けられないんです。
怖い音って「ひゅごご」みたいな?というレベルではなく
 チュバガギゴゴゴ!ゴゴゴゴガギガバババババ!!!!
みたいなもう世界の法則が乱れる音がします。
「だってさーーー、風を感じたいじゃないーーー!?」
 五月蝿いので自然と大声です。
 ご主人様はガンダム飛行スタイルと申しますか。進行方向に対して若干前傾姿勢となっております。
これは遠目に見たときの記憶で胸元の景色は絶望に満ちているので存じ上げておりません。
あと初回加速で音速の壁を突き破る所為で衝撃波が酷く景色が揺れるため確証もなかったり。
ちなみに僕は顔を胸に押し付けられている代わりに、足が、なんかもう風圧でちぎれそうです。ぶらんぶらんです。
「僕は死にそうです、はやく無風フィールドしてくださーーーーい!!」
「えーーーー!! やだしーーーー!!! うわ、ぶつかるぶつかるーーーーー!!!!!」
「ふにゃーーーーーー!!!」
「うっそーーー!!!」
「こらーーーー!!!!」
 やっぱり僕なんかからかわれているんだ! うわーんもういやだー!!
「ほらつくよーーー!?」
 ボヒュ!と風が途切れます。今頃になって無風フィールドで減速しています。
 無風フィールドってガシャポンみたいな球状膜なので、空気抵抗が増えます。
しかし、トンボは射撃戦の都合上、それより推進力が悪くなる姿勢が必要になるので、この魔法は一般化したそうです。

 停止したのかと思い目を開けると、そこは足元から地平線まで手が届きそうな大きさの花畑の、上空でした。
「わあ…きれい…あれ?」
 距離感がおかしいことに気がつきました。けっこうな高度にいる、と体感があるのに、花々の大きさが手でつかめそうに見えます。
「…!? でかッ!? お花でか!!」
「そーよ、ここの花は、花びら一枚が人間より大きいんだから」
 徐々に高度を下げると、あまったるい香りに囲まれていることに気がつきました。
「いつもここでハチミツをとるのよ」
「いや、ハチじゃなくて花の蜜じゃないですか」
 ぴくり、とご主人様の触覚が動いたかと思うと
「あ、ごめ、きた」
 ぽん、と上空数十メートルから、放り投げられます。
「ふえ、ふにゃああああ!?!!」

どすん、とマンモスチューリップ(命名者は僕です)に尻餅をつくのと、
バッキィィィ!! という金属がひん曲がるような轟音のどちらが早かったのでしょうか。
ただ分かった次の音は、僕を吹き飛ばさんばかりの突風と共に来ました。
 シュボフウゥッ!
「うにゃーーーー!!!」
ごめんなさい、間違えました。吹き飛ばされました。
 花から花へと投げ出され、ツボミの中にストライクしてなんとか突風を凌ぎます。
ぐらぐらする頭を抱えてツボミから顔をだすと、二人がいました。
 その【突風の原因】は、ハチでした。
はい、あの「ぶんぶんぶん~♪ご飯にする?御風呂にする?それとも死ぬがよい?」のハチです。
…いえ、魔法少女と名乗る格闘少女でしたね。
それがご主人様に向かって拳を突き立てて球体防御フィールドを突き破らんとします。
重力を味方につけんと斜め45度方向から拳を突きたて、球体フィールドの表面を魔力のムラ解消に流れ込むエネルギーがバリバリと放電のように輝いています。
 アカネ様はいつの間に召還したのか、両手に二挺の拳銃型魔法射出装置が収まっております。
無機質なメタルじゃなく魔力の影響で七色に滲むテカり具合です。まるで拳を拳銃で受け止めているようでした。
球体フィールドを展開する『力点』はアカネ様の両の手に納まった獲物です。これを内側からフィールド壁に押し当てて維持しています。

「…やあやあ、アカネちゃん。よくもここまで来たものだ、といいたいところだが…死ぬがよいッ!!!!」

 ハチさんの「ぱー」が「ぐー」になり、フィールドを叩き割ろうとすると

「正に至極恐悦だけどそれむりッ!!!!」
 アカネ様の球状防御フィールドが青白く輝いて、破裂します。

 ぼむッ
「きゃう!」
 彼女は驚いて縮み上がりましたが、無傷でした。
「ふはは、『ばくはつはんのーそーこー』だ、おばかさんめー!」
「おのれー! ボムバリアとはー!」
 ご主人様がいいかんじに悪の幹部しています。あ、このハチさんはお友達なんです。
お名前は「リート」さんです。ご主人様とは殺し合うほど仲がいいんですね。
「よくも卑怯な!」
 素早く上空へと距離をとったリートさんは
「これは許されざる行為といえよう!」
 トンボ村での暮らしが長いためすっかり風習に馴染んでいます。
この前口上も大切な儀式なんですよ。テンション上げるための。
「貴様の罪に私自らが処罰を与える!」
 右の拳を握り締め素早く胸の前に掲げます。
「死ぬがよい!」
 その拳には、いつの間にか無数のハリが握られていました。
「そしてさよならだぁッ!!」

 つづく



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