猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

猫の宅急便 03

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猫の宅急便 3話



「ゴミ共遅かったな、どうした?」
 今にも一つになってしまいそうな程くっついているアマシュとイツキ。
 作業パンツと上は下着だけで、髪も乾かさず不機嫌な顔をしている私。
 そしてやたら距離を取って震えているクロイ。
 全て見透かした表情で、ヴァシリは葉巻に火を点けた。

「猫ってのは万年発情期なのか?」
「うるせぇなほっといてよ!」

 私はアナグマから葉巻を引ったくり、たっぷりと煙を吸い込む。

(ねぇイツキー。私もイツキのお尻、いじめたいなー?)
(う、うん!アマシュさんなら喜んで!)
(にゃ、にゃあぁ犯されるとこだったにゃ!)

 周りの雑音はとりあえず聞こえない事にしよう。ますます機嫌が悪くなる!

「で、なんなのよ!急に呼び出すなんてのは、それなりの事なんでしょうね!?」
「説明はフィオがしてくれる」
「説明します」

 どこで手に入れたのか、ル・ガル陸軍の戦闘服に身を包んだ妖艶な美人兎が、真剣な表情でテーブルに海図を広げる。

「シュバルツカッツェ領海、ポイント・レイニー=ラウ付近で大型輸送船を確認したわ。形態は解らないけど、多分ワイバーンを二匹を滞空させてる」

 遠目の魔術が掛けられた眼鏡を輝かせながら、フィオが浅黒く細い指で海図の上に弾丸をこつりと置いた。

「アルジェリーノの三日月号だな。この海域の御同輩は、奴かチビのビザールだ」

 新しい葉巻に火を点けながら、ヴァシリが忌ま忌まし気に呟く。
 ボスの気持ちは良く解る。この仕事ってのは職業柄荒っぽい奴が多く、又横の繋がりってのが希薄なため、俗に言う島争いが絶えないのだ。ましてシュバルツカッツェ領海は、お国柄警戒がザルで、運輸会社が鉢合わせる事もざらだ。

「しかもよりによって三日月号だクソが。アルジーめ溺れ死ねば良い」

 そう吐き捨てたボスの肩を、フィオが優しく撫でている。
 アルジファミリオのボスはその激しい気性とダーティーワークの多さで、運輸仲間の間でも有名だ。
 そして彼の所有している[三日月号]は、六機の最新鋭魔洸発動機と、四本のガス圧発射カタパルトを持つ化物で、輸送船と言うより戦艦の風貌だ。
 以前会敵した時は、アレンが獅子奮迅の戦いを見せ圧勝したが、その時[三日月号]の所有するワイバーンは五匹足らずで、きっと数を増やしているはずだ。

「で、どうするのー?逃げるー?」

 アマシュがイツキを後ろから抱擁しながら、危機感の無い声を出す。
 な、なんて脳天気な・・・そこが良いんだけど。

「それが正解に近いが、タダでこの海域を取られるのは釈だな」

 色兎のマッサージに落ち着いたのか、フィオに葉巻を点けさせる表情に余裕が見え始める。

「どう思う、フィオ」

 ボスが彼女の腰に手を回しながら質問する。

「アレンさんの不在は不利ですが、コーディさんの成長は目を見張る物があります。五分五分、と言った所でしょうかね」

 フィオとのスキンシップを終わらせたボスが、真剣な目で私を見る。

「アレンの分、カバー出来るか?」

 私はさっきから聞こえる犬の名前に耳をぴくぴくさせながら、額が付きそうな距離まで身を乗り出して、ボスに言い返す。

「私もメルカバも昔と違うわ。アレンが居なくたって、アンタに勝利をプレゼントしてあげる」

 私の言葉に嘘は無い。私はアイツに負けて無い!
 沈黙。
 私の唾を飲み込む音。
 ボスの不敵な笑み。

「良いだろう。やってみろコーディ、俺にお前の才能を見せてみろ」

 おっしゃあ!!もしここにメルカバが居たら、きっとキスしまくってる!

「私は私はー?」

 開戦前の興奮でウキウキしたアマシュが両手を上げる。

「制限無しだ。お前のセンチュリオンにも存分に活躍してもらう」
「やったぁ!久々に飛べるよー。イツキ、ちゃんと見ててねっ!」

 アマシュがイツキの頬っぺたにキスをする。ち、バカップルが。

「で、でも射出はどうするにゃっ!?」

 相変わらず離れた場所で、クロイが苦言を呈する。
 その時、沈黙を保っていたイツキが、急に大声を出した。

「ぼ、僕が射出します!」
 その提案に、その場の全員が驚愕する。

「な、だダメだよー危ないよー」

 アマシュの泣きそうな声を遮り、更に言葉を続ける。

「僕、アマシュやみんなが働いてる中、待ってる事しか出来なくて、こんなに良くしてもらってるのに何にも恩返し出来なくてっ」
「ずっと役に立ちたいと思ってて、悔しくて、こっそりカタパルトの操作を見て、夜中に練習してたんです」

 イツキは一気にボスに詰め寄り、頭を下げる。

「やらせて下さい!役に立ちます、お願いします!」

 その迫力に、私は思わず感嘆してしまう。良い男に、なってるじゃない。

「奴隷風情がやれると思うか?」
「ヴァシリ!!」

 その言い方はっ・・・!

「ご主人様は黙ってて!・・出来ます。やります!」
「しくじったらワイバーンの餌にする。本気だぞ?」
「解ってます」

 睨める目付きで沈黙したボスは、やがてやれやれと鼻っ柱を掻き、もう好きにしろと呟いて爆笑した。
 おい!
 やるじゃねーかイツキ!
 心配そうなアマシュをよそに、私は男になりつつあるイツキの肩をバシバシ叩く。そこは気弱そうに痛いよと漏らす何時もの男の娘。ん?ギャップ萌え?

「話は決まったな。ドライバーはカタパルトにて待機。完全武装だ!フィオ、機関室に繋げ」
「完了しています」
「スオウ!第三のギアを用意しておけ。微速にて接近、射出後最大船速でズラかるぞ!」

 拡声器からもうやってると怒鳴り声、あの狐、今頃機関熱で汗だくだろうに。 私は何故か俯いているクロイを羽交い締めにする。おら、暴れん・・・暴れない。変な奴。

「良く解んないけど、ビール冷やしといてね!」
「う、うん・・・」
「何だよ元気ねぇな。続きはまた、き・ち・ん・と・してやるからさ?」
「別に、いらないにゃ・・・」

 原因不明の屈託を抱えたっぽいクロイを置いて、私は自室に向かう。二回振り返ったが、結局クロイは、何も言わなかった。

「変な奴!!」

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