猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

太陽と月と星27

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「おい、はろーうぃん とは何だ?」
 キツネの雑貨屋さんの奥さんでタヌキの花矢さんから教わったカボチャの煮つけを食べていると、例の如く訊かれた。
 いつものように整った顔に疑問と、少しの不安を浮かべている。
 口の中のホクホクを飲み込んでしばらく考えた。
 これ、すごく美味しくできたと思うんだけど、どうかな?
 花矢さんはノリで駆け落ちした面白い人で、最近は色々料理を教えてもらっている。
「……子供が仮装してご近所でお菓子をせびる行事?」
 何故か微妙な表情を浮かべてます。
 とりあえず、カボチャの煮つけを食べさせると大人しく咀嚼し、ちょっと驚いたように眼を見開いた。
 あ、この表情も素敵。
「美味いじゃないか」
 ……。
 明日の晩御飯は、鳥の香草焼きにしよう。この前喜んでたから。
 強い視線を感じて目を上げと、サフが複雑そうな表情でこちらを見ていた。
 口の回りが黄色くなっている所を見ると、ちゃんとカボチャを食べてくれたらしい。
 和食苦手なのに。
 でもカボチャ、ほとんど蒸かしただけだから厳密には和食じゃないのだろうか?
「そういえば、ジャックさん昨日も今日も晩御飯要らないだなんてどうしたんでしょうね」
 空いた席がなんとなく寂しい。
「明日も要らないって言ってたよ。僕も明日は出かけるけどさ」
「え!」
 サフの大好きな肉大盛りにしようと思ってたのに、結構ショック。 
「あ、ちーもおとまりだよ。ハロウィンパーティーだから」
 からのどんぶりを差し出しながらあっけらかんというチェルに思わず驚愕する。
「は、ハロウィンてそういう事するの?」
「お前の国の行事だろうが」
 テーブルの下でこつんと尻尾が足に当たる。
 そういえば、前はスリッパでツッコミされたりチョップされたりしてたけど、最近は概ねコレくらいの威力のことが増えたなー。
 前訊いてみたら、それが礼儀だと聞いたとかわけのわからないことを言ってたし。
 どこの国の礼儀だろうか。
 まぁ・・・いいけど。
「ハロウィンは日本じゃなくてアメリカですよ。外国です。一応隣ですけど、海越えるから遠いですよ」
 眉間に皺が寄り、ちょっと困ったような表情。
 ……すてき。
「食べるのに違うだと?」
「どういう認識ですかそれは」
 ……今度、花矢さんに納豆の作り方教えてもらおう。
 毎日出してやるんだから。


 翌日。
「ねぇねぇヘンじゃない?」
 オバケの衣装・・・白いシーツに目の部分に穴を開けたものを被ったり引っ込めたりしながら尋ねるチェルは凄くかわいい。
「気になるなら後ろにリボンとかつける?」
 リボンと裁縫道具を取り出したところで、呼び鈴が鳴った。
 あいにく、耳を付けていないからすぐには出られない。
「僕がでわっワンっ」
 ミイラ男をやろうとしていたサフが包帯を踏んで転がり、事態が悪化する。
「ごめんチェルお願い」
「はーいっ」
 サフの足に巻きついてしまった包帯を解いていると、元気よく応対している声が聞こえた。
 チェル立派になったなぁ……。
 うっかり浸りそうになり、慌てて我に返る。
 宅急便らしいので慌てて耳を付けて玄関に出れば、チェルが包みを持ったまま月を見上げていた。
 尖った月が、暗闇に輝いている。
「あ…あれ?え、宅急便は?」
「すごいんだよー!バサバサバサーって!あ、サンタさん!」
 なんかよく分からない。
 首を傾げ道路の方を見下ろすと、オレンジの覆面が通りを全力疾走していた。
 残念ながら、宅急便の人ではない。
 仮装の一種だろう。多分。
 なんだかよく見覚えのある黒くて長い耳が覆面からはみ出し、風に靡いてるのはきっと気のせいに違いない。
 気のせいだ。きっと。
 似た格好で通りを爆走している人たちの手に棒やら斧が見えるのも、多分気のせいだ。
「さ、早く準備しなきゃみんな迎えに来ちゃう」
「そうだ!オバケオバケ!」
 ……うちの子、ホントかわいい。
 ほのぼのと後姿を眺めていると、やけに聞き覚えのある声と鈍い音が複数聞え、振り返る。
「チックショー!毎日毎日新婚見せつけやがってぇぇえ!みんなー頑張れ!頑張れ!」
 なんだかすごく馴染んだゴジラが覆面軍団を千切っては投げしているのを見ないことにして、家に戻る。


 今日もこの街は、平和だ。

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